そして彼女はそれを嫌悪する


ある日の諸星家の夕飯の食卓にて。あたるとその両親、ラム、テンの5人で卓を囲んでいる、いつもと変わらぬ光景だった。

いつもと変わらぬ質素なメニュー。それらを突付いている。と、ラムが突然口を押さえ顔を蒼くして、その場から飛び出して行った。

「どうしたんだ?」 怪訝そうになるあたる。母親も気が付いて、部屋から出て行った。

ラムは洗面所で具合悪そうにしていた。下を向いて呼吸が少し苦しそうだ。

「どうしたの、ラムちゃん?」

「…何でもないっちゃ」

「でも顔色が真っ青じゃないの…吐き気でもするの?」

「うん…ちょっと」

「あのね、ラムちゃん…あなた、心当たりは?」

それを聞いて、ラムは僅かだが、体をびくっとさせた。

「どうなの?私にだけ、正直に言ってちょうだい。女同士なんだし」

「そういえば…ちょっと、遅れてるみたいだっちゃ」

「一度診てもらった方が良くないかしら?…私で良ければついてってあげるわよ」

「…でも、まだわからないから…」

「そう…もしその気になったら遠慮なく言ってちょうだいね」

そして母親はラムをあたるの部屋に連れて行くと、布団を整えて寝かしつけてやった。


翌日、学校にて。隣の席で早弁をするあたる。するとまたしてもラムが口を押さえて教室から飛び出して行った。

保健室へ駆け込むラム。授業中はサクラも暇で、茶を飲みながら菓子をつまんでいた。

「ちょっと休ませて欲しいっちゃ…」

湯呑みを机に置くと、ベッドを整えてやり、彼女を横にしてやる。

「どうしたのじゃ、顔色が真っ青じゃぞ」

「昨日から…気分が悪くって…」

サクラも、あたるの母と同じ事に、はたと思い当たった。

「ラム、おぬし…アレは順調か?」

「ちょっと…今月は遅れてるみたいだっちゃ…」

「うむ、そうか…取り敢えず少し休んでゆけ」

そんな彼女を見やり、心配が杞憂であればよいのだが…と、サクラは思っていた。

そしてその夜、ラムは夕食の席に現れなかった。


押入れで横になっているラムに、食事が終わったあたるが話し掛けてきた。

「どうしたんだ?」

「うん、ちょっと…気分、悪いっちゃ…」

様子をうかがおうとラムの近くまで来たあたる。するとラムが口を押さえて飛び起きた。

「ちゃっ!…ダーリン、臭うっちゃ…」

「オレは何も臭いもんは食っとらんぞ!…いや、そういえば…」

ここ数日間、同じものが続けて副菜として食卓に並んでいたのだ。

「ウチの苦手な…アレ、だっちゃ…うっ…」

ラムが鼻をつまんで階下に降りる。冷蔵庫を開けると、“それ”の臭いが充満していた。

「これだっちゃ…うっ…」

冷蔵庫の扉を叩きつけるように閉めると、またあたるの部屋へ。窓を開けて深呼吸をするラム。胸に手を当てて新鮮な空気を思い切り吸い込む。

「…はーーーーっ…」 やっと人心地ついた様子のラム。そこにまたあたるが近づいて来ると。

「ダーリンはしばらく近寄らないでっ!」

「何でじゃっ!」

「まだしばらく夕飯は一緒に食べられないっちゃ!…それにダーリンも臭うから、しばらくダメだっちゃ」

あたるも、はたと思い当たり、自分の口を押さえた。そう、ここ数日卓に並んでいた副菜…“それ”は。

「…キムチ、か?」

「だっちゃ…ウチの嫌いな、にんにくの臭いが、ものすごいっちゃ」

そういえば母が、お隣さんから韓国土産の本場キムチを、白菜丸ごともらった、と喜んでいた事を思い出したあたる。

「まだしばらく、あれが出るからなぁ…」

「だっちゃ…」

「何とかならんのか?」

「強力消臭剤とか、ある事はあるけど」

「じゃあ、それ使ってみろよ」 口を押さえながら、もごもごとしゃべるあたる。

「前にも使ってみたけど、どうしてもにんにくの臭いだけは、完全に消えないっちゃ」

「お前んとこの化学の力をもってしても、地球のにんにくは最強、っちゅーわけか…」

「今までもちょっとくらいならウチも我慢出来たけど、今度のは強烈過ぎだっちゃ」

そう、ラムの大好物の唐辛子と、一番苦手なにんにくのコンビネーション、韓国の薬味唐辛子「ヤンニョム」を使った“キムチ”は、キムチ自体の発酵も手伝ってか、普通のにんにく以上にラムにとって苦手な臭いとなっていたのだ。

「だからダーリンとは、しばらくお預け、だっちゃ」

「うーーーむ…キムチが憎い…」


「キムチのせいで、ひどい目に遭ったっちゃ」

UFOで独り、ぶつくさ言っているラム。寝る前にシャワーを浴びる。

「ウチにまで臭いが移ってきそうだっちゃ…」

シャワーの水圧を上げて、全身を清めるラム。しかし、あまりにも水圧を強くし過ぎたため、吹き出す湯がラムの柔らかい肌を刺激しだした。

胸に当てると、先端が弾かれる。股間に当てると、狭間にお湯が潜り込んでくる。

「あっ…」

思わず知らず、両足を広げて、股間に湯を当てるラム。吹き出す湯が嬲るように、柔らかい粘膜をこする。陰唇や肉珠の包皮を押しやる。

「はああっ…」

立ったまま吹き出す湯を秘所に当てて、胸を指先で愛撫しだすラム。あたるとの余韻を思い出しながら。

「ちゃっ…あっ、ああっ…」

やがて床に横たわり、自身の秘所に指を這わせる。片手で胸先をころころと転がす。びくびくとカラダが正直に反応する。

「ダーリンッ…はああっ…」

染み出す愛液でにゅるにゅると滑り出す指先。それを肉珠にこすりつけ、腰を浮かせて愛撫するラム。

「んっ、んっ、んふっ…ダーリン…ああっ、いいっちゃぁ…」

あたるに抱かれている時を思い出しながらの自慰行為。ラムはどんどん興奮していった。

「あんっ、ダーリン、だめぇっ…」

くねくねとカラダをよじりながら、ラムは独り身悶えし、浴室でのオナニーを続けた。

とにかく、自分の指では奥まで届かない。徹底して肉珠と乳首への愛撫に没頭するラム。

「あっ、あっ…気持ち、いいっちゃぁ…そこがいいっちゃ…もっと…」

わざと淫らな言葉で興奮をたかめる。

「ダーリンの…早く欲しい…っちゃ…ああっ…」

秘所の手指の動きが早まる。乳首を指で摘み上げ、引っ張ったり撫で上げたりする。

「んっ、んっ、んっ、んんっ…!ああっ…!」

ガクガクガク…膣口が収縮する。下腹部が波打つ。両足が大きく左右に揺れると、ラムは自身の指先で軽くイッてしまった。

それ以上の高みへ昇り詰めるまではイケなかったが、取り敢えず愛液でぬるついた秘所を洗い清めると、浴室から出た。

バスタオルで水分を拭い取る。上気した肌からは白い湯気が立ち昇り、ほんのり紅色に染まっていた。

「ダーリンの臭いだけでも、どうにかならないかなぁ…」

ドライヤーで髪を乾かしながら、ラムはいい案が無いか考えていた。


「実は、キムチのせいで…」

ラムはあたるの母とサクラに、実はキムチが原因だった事を話した。そして少しすると、遅れていた月のモノも無事に来た。

それから何日かが過ぎて。ようやく食卓からキムチが姿を消した。が、あたるからはまだ、キムチの中の嫌な臭いが微かに感じ取られた。

「まだ臭うか?」  「うん…ちょっとだけだけど」

「少しくらい我慢せいっ」  「でも、苦手なものは苦手だっちゃ」

「しょうがないな…ったく」

「だから、しばらくキスだけは、お預けだっちゃ」

あたるは堅牢な防臭マスクで鼻と口をすっぽり覆い、口だけ使えない状態で、久々にラムとカラダを合わせた。

ラムはUFOでの自慰行為以上の快楽を、再び得る事が出来たとはいえ、外出先でキムチを見るたびに思った。

一番好きな唐辛子と一番嫌いなにんにくがタッグを組み、それに野菜を漬け発酵させた結果出来た食べ物・キムチ。きっと宇宙のどこを探しても、これほど嫌いになるものは無いだろう、と。

--- E N D ---

あとがき


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