Change over(逆転)


相変わらず、諸星あたるは女の子を追いかけ回し、ラムが空を飛んで彼を捕まえては怒りの電撃ショックで制止する…そんな変わらぬ日常だった。いつもと同じ、ある日のはずだった。

休日のその日、やはり街でガールハントを始めたあたる。ラムが「デートしにきて、何だっちゃ、その態度は!」と怒って後を追う。

信号が変わりかけている横断歩道。追いかけていた女の子が走って向こう側へと逃げていく。それをしつこく追う、あたる。

歩行者用信号機が点滅し、“青”から“赤”へと変わった瞬間、十字路だったそこへ、ブレーキをかけずにカーブを強引に曲がってきた1台のトラック。

焦るあたる。後方から飛んでくるラム。トラックの勢いを見て、ラムは飛行を速めた。そしてあたるに背後から抱きつくと、そのまま道路の向こう側へ飛び込み、その勢いで歩行者の中へ転がり込んだ。

“ゴンッ!” ラムが背中から抱きかかえた体勢のまま、あたるはアスファルトの地面に腹ばいに倒れ、お互いの頭をしこたまぶつけ合った。

しばらくその場で動かないふたり。周囲がざわついている。少しして、ようやくラムがぶつけたおでこをさすりながら身を起こした。自分が一体何をしていたのかすぐにわからない様子で、あたるにのしかかったまま、ぼーっとしている。

あたるもラムのおでこが当たった後頭部と、地面に打ち付けた顔面に手を当てて、起き上がった。

互いに、互いの顔を、じーーーーっと、見ている。と、先に口を開いたのは、“ラム”の方だった。

「な、な、何で…“オレ”が目の前にっ!?」

「…痛〜い…あれ、ウチ…?何でだっちゃ?」

そうなのだ。頭をぶつけ合ったふたりは、“お約束通り”に中身が入れ替わってしまったのだ。

「これは、そうか…夢か?」

“あたる”に向かって問いかける“ラム”。

「ち、ち…違うっちゃ…ウチと、ダーリンが…」

「お前と、オレが?」

「か、か…体が!体が入れ替わってるっちゃ!!」

“あたる”の姿と声で、ラムがしゃべっている。もちろんその逆に“ラム”の姿になったあたるも、彼女の姿と声になっている。周囲の人々はたいした怪我も無かったようだし良かった良かった、と、その場から立ち去っていった。

が、ふたりにとって事は重大だった。今のショックで中身が入れ替わったふたり。一体どうすれば元に戻れるのか?呆気にとられながら、“ラム”と“あたる”は雑踏の中で、しばし呆然とするばかりだった。


(これではガールハントも出来んじゃないか…が、しかし)

腕組をし渋い顔をして歩く、中身があたるの“ラム”。

(これじゃあ、ダーリンが何かしても、止められないっちゃ…はぁ〜…)

中身がラムの“あたる”は、溜息をつきつき、“ラム”をチラチラと見やっている。すると、何を思ったか、“ラム”が駆け出した。一体どうしたのか?と、様子を見ていると。

「ねぇ、よかったら一緒にお茶でも飲まない?うふっ♪」

「ダ、ダーリン…」

呆れてものも言えない表情になる“あたる”。

「ちょっとダーリンッ!女になったのに女にちょっかい出すのけっ!?」

それは奇妙と言うしかない光景だった。“あたる”の声で、女言葉のラムが怒鳴っていれば、周囲が振り向かないはずがない。“ラム”の姿は女の子に声をかけるには好都合だった。何故ならば…もちろん相手が警戒しないからだ。

しかし“あたる”は“ラム”を追いかけては、片っ端から、相手のコから引き離した。それにイラつく“ラム”。

「何すんじゃいっ!せっかく“お友達”になろうとオレが声をかけるその側から、お前はっ!!」

「何するもへったくれも無いっちゃっ!ウチの姿でガールハントしようなんて、とんでもないっちゃ!…でも、いかにもダーリンが考えそうな事だっちゃ…」

大きな溜息をついている隙に、“ラム”はまたしても相手を見つけ、声をかけている。

「んもーーーーっ!!」 “あたる”の姿では、電撃が使えない。空も飛べない。一方の“ラム”は、飛行と電撃のコツをつかんできたのか、“あたる”が近づくと、軽く放電をかました。

「ちゃっ!!何するっちゃ!!」

「いつもお前にやられとる事じゃっ!!」

「とにかくっ!今日はもう帰るっちゃっ!ダーリンッ!!」

「やなこった!オレはまだまだお友達に声をかけまくるっ!」

そう言い捨てると、“ラム”は不安定ながら空に浮かんで、街の雑踏の中へと姿を消してしまった。

「ウチの体を変な事に使ったら〜っ!承知しないっちゃっ!!ダーリンのバカーーーッ!!!」

思いっきり街中で怒鳴る“あたる”姿のラム。そして怒りの収まりどころも無いままに、仕方が無いので先に帰る事にした。


「もうっ、まだ帰って来ないっちゃ…何してるっちゃ、ウチの体で…」

気が気ではない“あたる”。家に着くと、早速あたるの両親とテンには全てを話した。

「ラムちゃん、アホの体になってもうて大変やなぁ」 同情するテンと両親。

皆で夕飯を終えた頃、玄関のドアが開く音がした。

「ただいまー」

「ダーリンッ!?」  「あたるっ!?」

「いや〜腹減った〜。母さん、飯は?」

「今終わったところよっ!それより、あたる」  「何だよ?」

「いくらお前の性格だとは言っても…ラムちゃんの姿を勝手に使って!」

「しょうがないだろ、事故なんだから」

「母さんはねっ!男の子が女の子に興味を示すのはごく普通の事だと思ってるわよ。それが女の子の姿で女の子に声をかけるだなんて…」

「それより飯は?」

「母さんは、母さんは…お前をそんな風に育てた覚えは無いのよ〜〜〜っ!!!よりによって同性に興味を持つような子にはっ!!」

「でも中身は“男”のままなんだから、しょうがないじゃないか」

事故だから仕方が無い、と開き直る“ラム”姿のあたる。その側で泣き崩れる母。“あたる”姿のラムがあたるの腕を引っ張って2階へ連れていき、彼に詰め寄った。

「一体どこで、何してたっちゃ!?ダーリンッ」

「何って、女の子とお茶してきた。いやー便利だな、女のカッコだと」

「人の体使って〜〜何勝手な事を言ってるっちゃっ!早く元に戻る方法調べないとっ!」

「もうしばらくこのままでも、オレはかまわんぞ」

「ウチが困るっちゃ!ダーリンの体で…ずーーっとこれからも過ごすのけ!?」

「えっ、そうか…いや、それはちょっと…」

「とにかく、早く戻らないと…」

「うーーーむ…ラムの体のままじゃあ…ちょっと困るよなぁ」

「ウチだってこの体のままで、ダーリンと…だなんて、嫌だっちゃ。それより、ダーリン」

「何だ?」

“あたる”が顔を赤くして、もじもじしながら言った。

「お手洗いとか…行ったっちゃ?」

「何を今更…いや、今日はまだ」 それを聞かれて同じく顔を赤らめる“ラム”。

その晩は、何をどうしていいものやら困惑したまま、ふたりは別々に眠りに就いた。


翌日の2年4組は大騒ぎとなった。

「諸星がラムさんに、ラムさんが諸星にっ!?」

「そんな不条理が許されていいのかっ!?いや、俺は認めんぞ、ラムさんの中身が…よりによって、あたるだなんて事はっ!」

「そんな事言われたって、事故なんだから仕方無いだろ」

「…だっちゃ…」

わらわらと集まるクラスメート、そしてクラス以外の生徒達も噂を聞きつけて集まってきていた。いつもと違い、大人しくしている“あたる”と、とても女子とは思えない座り方をしている“ラム”。

「ダーリン、もうちょっときちんと座って!みっともないっちゃ」

「スカートっちゅーのは足がスカスカして…何だか落ち着かん」

“ラム”は頭の後で腕を組んで、足を大きく開いた“いつも”の格好で座っているつもりだった。

「ちゃっ!…ダーリン、制服がっ」

制服がどうであろうがお構いなしだった時のクセというのは恐ろしい。セーラー服のトップスの隙間から、チラチラと胸元やら腹部やらが見え隠れしているのだ。

恥じらいも何も無い“ラム”に男子達が群がる。一方の“あたる”はヤキモキしている。いつもの自分らしく、制服の乱れくらいは気にしていて欲しいのだが。

「何じゃ、皆して集まってきて」

「だからダーリン、みっともない格好しないで…男子が見てるっちゃ…“ウチ”を…」

それを言われてようやく気付いたあたる。

「お前らっ、何見とるんじゃっ!」

パリパリと軽く放電して周囲を脅かすあたる。そして学校でも昨日と同じように、自分があたるである事を知らない女子に、ラムの姿で声をかけまくった。

「もう、元に戻らないと、どうしようも無いっちゃ…」

憂鬱そうに溜息ばかりつくラム。その日は“ラム”があちこちで活躍しまくり、一方の“あたる”は、大人しくしているしかなかった。

そして放課後、帰路につくふたり。うんざりした顔付きの“あたる”と、ウキウキした表情の“ラム”。“ラム”は今日の楽しかった収穫で、その時は“元に戻ろう”などという事は、すっかり忘れている様子だった。

「ウチもう、疲れてきたっちゃ…ダーリンは楽しそうだっちゃねぇ…」

「そりゃもう。“ラム”の中身がオレだとは知らん女の子と仲良くなれて楽しいぞ」

今の状況が尋常で無い事をはっきり理解出来ていないのか、それとも一時的な楽しみで満足しているのか。ラムはあたるの気持ちを量り兼ねた。

「ウチ、今日だって…お手洗い行くの、すごーく困ったっちゃ…しょうがないからサクラにワケ話して、職員用のを使わせてもらったけど」

うなだれる“自分”の姿をしてはいるが、中身は確かにラムなのだ。あたるもそれ以上は何も言わずに、黙ったまま家路を歩いた。


「どうしたら元に戻れるのかなぁ…あの時を再現すれば、もしかしたら」

屋根の上に並んで座る“あたる”と“ラム”。

「タイムマシンとか持ってただろ、あの時間に戻って事故を防げばいいんじゃないか?」

「そんな事、簡単には出来ないっちゃ。それに…あの時間に戻って、ウチやダーリンが、本人と顔合わせたら…最悪だっちゃ」

「何がどう、最悪なんだ?」

「つまり同じ時空間に同じ人間は存在しないから(中略)最悪の場合、時空間が歪んで宇宙が爆発するかも…だっちゃ」

“あたる”は頭を悩ましながら、その場を立ち上がった。考え事をしていたので、足元をきちんと確認していなかった。

「ちゃっ!」

ズルッ!と傾斜に足をとられた“あたる”は一瞬体勢を立て直そうとしたが、前傾姿勢につんのめって、宙に浮かんだ。

「ラムッ!」

“ラム”が“あたる”にタックルする。が、飛行能力に十分慣れていない身では思うようにコントロール出来ない。抱き合ったまま、ふたりは2階のベランダに転落してしまった。

“ゴンッ!” 再び鈍い音とともに、その場に突っ伏すふたり。

“あたる”を抱きかかえたまま倒れている“ラム”。その彼女が先に気が付いた。

「…痛〜い…あれ?」

ラムは、自分が下に敷いているのが、あたるの体だという事を理解するのに、若干の時間を要した。

「…痛ぇなぁ…ったく…」

後頭部を押さえながら起き上がるあたる。確かさっき、自分の体に抱き付いて、屋根から落下したはずだったが…と、思っていた。が、自分の背中に重さを感じる。そしてゆっくり背後を振り向くと。

「ラム…」  「ダーリン…」

どうやら今の衝撃で、無事元の体に戻る事が出来たのだ。ほっと胸を撫で下ろすラムとあたる。

「良かったっちゃ、元の姿に戻れて。これでウチも安心して…」

下敷きになったあたるに、キスをするラム。その彼女を抱き寄せるあたる。少しして顔を離す。

「ちょっと寒くなってきたな…」  「続きは、部屋の中で…だっちゃ」

窓を閉めカーテンを引く。室内灯を消し、そして。

「あのままだったら、どうしようかと思ったっちゃ…」

「そうなったらなったで、慣れるしかなかろうが」

「でも変だっちゃ、自分の姿見ながら…なんて。絶対普通じゃないっちゃ!」

「そりゃそうだな…オレも…うっ、考えると気色悪いっ」

「やっぱり本来の姿でいられるのが、一番、だっちゃ…んっ、ダーリン…」

今夜はあたるの上にラムが覆い被さり、彼の顔にまんべん無くキスを与えた。舌先で外耳を軽く舐め、息を吹きかける。

「よせよ、くすぐったいだろ、ラム…」

あたるの顔を猫のようにペロペロと舐めるラム。彼の唇を自分の唇で咥えて軽く吸引したり、舌を口中に含んで弄ぶ。

その間、ラムの片手はあたるの胸に指の腹を這わせ、くるくる円を描き、もう片手は彼のペニスを刺激していた。今夜はラムが積極的にあたるを愛撫した。

ラムが自分の乳房をあたるの胸に軽く触れさせる。ラム自身もあたるの肌に乳首を愛撫され、それはあっという間にピンと立ち上がった。

ラムがあたるのサオや先端をさわさわと撫で、掌で包み優しくしごく。あたるの乳首に軽く吸い付く。そして自身の指でアソコを掻き回して濡らす。

やがてラムは起き上がると、膝を付いてあたるをまたぎ、彼のペニスに手を添えて、自身の下のクチへと導く。先端を入り口に当てると、少しねじ込み、そしてゆっくりと腰を落としてゆく。

「ああっ…」  「うっ…ラムッ…」

腰を落としきると、ラムは自身のカラダを淫靡にくねらせながら、あたるをしごいた。

「あっ、あっ、あっ…ダーリン…」

自身で好みのポイントを調節しながら、ラムは騎乗位で喘いだ。弓なりに反らした上半身。胸がたぷたぷと上下に揺れる。長い髪も四方八方に乱れ散り、尚一層、彼女の淫らな様を強調した。

あたるの上でカラダをよじり、悶えるラム。陰毛同士が絡み合い、ぬちぬちぬち…と、粘り気のある接合音が微かにする。

「ああっ、あっ、ダーリンッ、んっ、んっ、んっ、あんっ!」

「ラムッ…くっ…んっ…」

互いの腰や股間に力が込もる。じっとりと汗ばみ息遣いが大きく荒くなる。

…バチバチバチッッ!!

繋がったまま、無意識に軽く放電するラム。接合部分は体液で電気が通りやすい。接合部をコアとして互いの全身に軽く電気が回る。

「ぬおおおおーーっっ!!」

ラムの肉管によるしごきと放電の刺激がベスト・タイミングで重なり、あたるはラムのナカに勢いよくスペルマを放出した。

「あああ〜っ!…ダーリンッ!!」

接合部分を離すと、白濁の粘液が糸を引いている。ティッシュで後始末をしてやる、ラム。

「やっぱりこうじゃないと。ずっとあのままだったらエッチも出来ないと思って、心配だったっちゃ」 と、ラム。

「もうあんな目に遭うのはゴメンだな…オレもこのカラダが一番しっくりくるしな」 と、あたる。

「あのままだったら、キスも出来なかったっちゃ」

そしてまた、ラムから唇を重ねた。

「お前やけに、今夜は積極的…ちゅーか、もしかして欲求不満、だったか?」

「…本当にムードが無いっちゃ。ダーリンのバカッ」


しかし元に戻ったまでは良かったのだが。

「ねぇっ、しのぶっ、帰りにお茶してくっちゃ♪」

「いい加減に〜しなさいよ〜!あたる君っ!もう元に戻ってるのはわかってんのよっ!」

“バチンッ!”

「竜之介〜、帰りにお茶してくっちゃ♪」

「おめぇこれで何回目だ?いい加減にしやがれっ!この野郎っ!!」

“バキッ!!”

「…当分、あれ続けるつもりだっちゃね…まったくもう…」

ふたりが無事元通りになったのは、既に周知の事となっていたが、あたるは相変わらず“ラム”の口真似をしては女子に声をかけまくっていた。

(ラ ム)「もうっ、いい加減にするっちゃ!ダーリン!」

(あたる)「ちゃっ!何するっちゃ、ダーリン!」

(ラ ム)「いい加減〜そのクサイ芝居は〜〜やめるっちゃ〜〜〜っっっ!!!」



バリバリバリバリーーーーーーッッッ!!!



(あたる)「…ラム、お前…電撃はいいが…」

(ラ ム)「何だっちゃ!?」

(あたる)「もう頭ぶつけるのだけは、気を付けんとな…」

(ラ ム)「…だっちゃね…」

--- E N D ---

あとがき


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