例えばこんな日々0 〜prelude(序幕)〜


社会人になっても実家に居座り続けるあたる。つまりラムも諸星家で生活している。そんなふたりに対して、あたるの両親は、ある事を思っていた。

両親は“人様から預かっている娘さんで、いずれは正式な嫁”とは思っていたが、“若い男女がひとつ屋根の下”に居る以上、“暗黙の了解”として、“わざと見過ごしている部分”が少なからずあった。

つまり“週に数回はある夜の営み”の事である。暗黙の了解というのも、至極当然の事だったかもしれない。もう長い事一緒に生活しているわけだし、何も無い方がおかしい、とも思っていた。

若夫婦とその両親が同居するケースも決して珍しい事ではない。が、両親は思っていた。やはりここでひとつ、ケジメをつけさせ、ふたりには独立した生活をしてもらおう、と。

いつまでも正式な結婚もせぬまま、だらだらとここで過ごさせていたのでは、何の進展も変化も無かろう。学生時代とはわけが違うのだ。あの頃は親の保護下に置いておき、万が一何かあった場合、親が責任を負わなければいけない、と思っていた。

だがもう社会に出て働いているのだ。保護する必要も無く、ラムに万が一の事があったとしても、責任は息子に負ってもらう。そうすれば万事丸く収まる、というわけだ。

夕食後ふたりだけになった居間で、そんな内容の会話を、あたるの両親は毎晩のように交わしていた。


「あたる、ちょっと」

ある晩、改まった様子で母親があたるを呼びつけた。

「前々から言おうと思ってたんだけどね、あたる。お前ももう一人前の社会人になった事だし。母さんと父さんはずーーっとお前とラムちゃんの事で話し合ってたのよ」

「何だよ、出し抜けに。オレとラムの事で?」

「そう。もう子供じゃないんだから、ここら辺できっちりケジメをね…つけたらどうか、と思うのよ。わかるわね?母さんの言ってる事」

「で、オレとラムにどうしろって?」

「つまり…お父さんからも言ってやって下さいよ」

新聞で顔を隠していた父が、それを畳んで脇に置くと、ひとつ咳払いをして、言った。

「あたる、お前もいい加減長い事ラムちゃんと一緒なわけだし…どうだ、ここいら辺でひとつ…ふたりだけで生活してみる、というのは」

あたるはそれを聞いて眉根を寄せた。

「急にそれを言われても…ここに居ても同じだと思うんだけどさ、オレとしたら」

「こういう事をだな…面と向かっては、父さんも言いにくいんだが…お前、ラムちゃんに何かあった場合、責任持とうとか、そうは考えとらんのか?」

それを言われると、あたるは押し黙ってしまった。確かに、ラムにいつ何があってもおかしくはない。

「まぁ、ここまで来たんだから、正式な結婚はまだ少し先でも、とは思ってるけどな。そうした方が私達も安心出来る」

「そうよ、あたる。ラムちゃんを待たせっぱなしなんだから、せめてそれくらいは…ね、わかるでしょ?」

結局、あたるは両親に押し切られる形で、住まい探しをする事になってしまった。その話を後で聞いたラムは、満面の笑みで喜んだ。

「ダーリンとふたりっきりの生活っ!もちろん、嬉しいっちゃ♪」

(しかしその前に、ラムの作る飯だけでも、どうにかならんものか…)

あたるにとってはそれが唯一の不安材料だった。当然の事である。


休みごとに、ふたりで不動産屋を訪ね歩いたり、情報誌を見たりしながら、あーでもないこーでもない、と“新居”についての議論が交わされた。

結局、ふたりだけだし部屋数は少なくとも特に困らないだろう、ということで、賃貸の少し築年数が経ったアパートに絞り込んだ。

「ここならキッチンが少し広いし、お部屋も悪く無いっちゃ。どう?ダーリン」

という事で、ラムの意見で部屋が決まった。そして、テンはあたるの実家に残る事になった。

「いくらワイでも、新婚さんの邪魔するほど野暮やないで〜」

「アホかっ、このマセガキがっ!」

しかし引っ越す前に解決しておかねばならない事がある…と、あたるは思った。そう、食事の事である。

他の事ならそれほど心配せずに任せておけたが、食事といえば毎日の事だ。これだけは安心して任せておけん。どうしたら地球人の体質に合い、尚且つ味もそこそこのものを作れるようになるのか。

「ラム、引っ越す前にひとつ、言っておきたい事があるのだが…」

「何だっちゃ?来週引越しなんだから、そろそろ準備しないと」

「お前、その…飯は、どうするつもりだ?」

「もちろん、ウチの手作り料理だっちゃ」

「お前いい加減、今までの事から学べんのか?人に変なものばっかり食わしておいて」

「だって地球人の味付けだと、ウチには薄過ぎだっちゃ」

「そういう事じゃなくてだなっ!昔、月見団子で犬にされたりとか…とにかくお前の味覚や体質と、オレのとは違う、っちゅー事を…」

「そういう事なら早く言ってくれればいいのに」

「へ?」

「そうだと思って、お母様からちゃんと教えてもらってるっちゃ。前みたいに犬になったら困るし」

「そ、そうか…(ほっ)」

という事で、一番の懸案事項だった“食事”の件も、一応の解決を…見たようだ。

「言いたいのはそれだけ?それよりダーリン」  「何だ?」

「もしウチが居ない間に、女連れ込んだりしたら〜〜っ!」

「(ギクッ)何を言っとるかっ!」

引っ越す前から早速こんなやり取りが繰り返された。そして会話の中で、あたるはある事に気が付いた。

(そういえば今までは母さんやテンがいたから、昼間こいつがひとりっきりになるっちゅー事はあまり無かったわけだが…)

問題がひとつ解決したと思ったら、また新たな心配事が浮上してきた。

そして引越し当日。それほど荷物が多くなかった事もあって、割合短時間で大方の片付けを済ます事が出来た。


「あと必要な物とかは、ちょっとずつ揃えていけばいいっちゃね」

部屋の中は取り敢えずひと通り片付いた。そのひと仕事の後、タオルで汗を拭きながらキッチンの床に直に座って休む、あたるとラム。

「もうお風呂使えるから、ダーリン先に入ったら?汗びっしょりだっちゃよ」

(これからここで、ラムとふたりっきり、というわけか…親やジャリテンが居ないというだけで、あまり変わらんと思うのだが)

「洗濯するから、着てるもの脱いで、ダーリン」

あたるが着ていたトレーナーを脱ぐ。するとラムがすぐ間近に寄って、まだ少しだけ噴き出してくる汗をタオルで拭ってくれた。ラムがあたるの首に近付けた鼻先をくんくん鳴らす。

「ダーリンの汗の臭い…ウチ、好きだっちゃ…」

するとあたるが、やにわにラムのトレーナーの裾に手を掛け上に引き上げ、あっという間に脱がしてしまった。

「ちゃっ…ダーリン、先にシャワー…」  「オレも…」

床に座したままの格好で、あたるもラムの肌の匂いをくんくん嗅ぐ。そしてラムのジーンズも脱がす。

「ダーリン、まだ…早いっちゃ…あっ」

「何を言っとる…先にその気にさせたのは、お前だろ…」

ラムの谷間を覆うパンティ。その生地の上からあたるが指をぐいぐい食い込ませてくる。柔らかく適度に弾力のあるその狭間に、パンティの布地も食い込み、いやらしい染みが次第に広がってくる。

「ああっ、だめぇ…ダーリン…」

「もうこんなに湿らせてんじゃないか…ラム」

ラムは両手を腰より後に着いて上体を支え、膝を立てて体育座りの体勢になった。眉を寄せ恥ずかしげに顔を赤らめ、あたるの成すがままにカラダを任せる。

そしてあたるの手が、ヘソを撫でて、パンティの中へ。すっかりぐちゅぐちゅに濡れているラムの淫らな谷間。あたるの手指がクリトリスをかすめ、膣口を突付く。つぼんだそこに指先を挿入する。

「あっ、あっ!だめぇっ…」

「だめとか言って…本当は気持ちいいんだろ?ラム…」

「いやぁっ…ダーリン、そんな事言わないで…」

「ここがこんなになってるじゃないか…指だけじゃ物足りないだろ?」

「いっ、いやだっちゃ…そんな事言うなんて…バカッ…ああんっ!」

パンティが伸び切って破れるかと思うほどに、ラムの秘所を少々乱暴なまでに弄ぶ、あたるの手指。挿し入れた指で入り口や少しナカの肉壁を嬲る。ぐじゅぐじゅぐじゅ…と、ラムの愛液がナカから溢れてくる。

「ひっ!ひあぁっ…!」

パンティで覆われたままあたるの手指で弄ばれるラムの秘所。愛液が乾きにくい分、パンティの中がたっぷり濡れる。あたるの親指がラムのクリトリスを脇から押さえ込み、包皮を押し退け指の腹で愛撫する。

「ひああっ!あっあっ!だめっ、だめぇっ!ダーリンッ!」

「ラム、お前のここが…こんなにぐずぐずだぞ…気持ちいいだろ?ラム…」

「…ダーリンッ…あっ…き、気持ち…いいっちゃっ…すごく…ああっ!」

今日のあたるは、まるでイジメッ子のように、ラムのカラダへの攻めに言葉の攻めを加えて、彼女を焦らしに焦らした。

ラムのねだるような顔に、あたるは時々舌を絡めてキスを与え、彼女の首筋や乳首にも触れる程度のキスを何度か繰り返した。

「ダーリンの…早く…」

「早く…何だ?」

「あんっ…わかってる…くせにっ、ダーリンの…意地悪っ…ああんっ!!」

目を閉じ天井側に顔を振り上げ、胸先へのキスをもっとしてくれとばかりに、バストを突き出すラム。

「んっ、んっ…んっ」

それに応えるように、ラムの乳首をしゃぶるあたる。

「ああっ…いいっちゃぁ…ダーリンッ!…ああっ…そこがっ…あっ!…ひっ!…いいっ!」

上を向いたまま、はぁはぁ…と荒い息遣いになるラム。その呼吸と言葉が入り乱れる。頭を左右に小さく振って快楽に身悶えする。

胸と秘所への攻めで、全身がガクガク…と震え、乳首がピン、と立ち上がる。脈動が早まり股間が激しく疼く。目眩と痺れがカラダを巡り、早く早く…と欲するラム。

ラムは顔を紅潮させ息遣いも荒く、もどかしげにあたるのジーンズと下着を脱がす。そして彼女は自分自身でパンティも脱ぎ捨てた。ねっとりした淫らな体液が糸を引く。その小さな当て布は、その汁ですっかりべとべとに汚れていた。

「ダーリンだって…ウチのココに…早く入れたいくせにっ…」

すっかりいきり立ったあたるのモノを愛しげに眺め、今度はラムが積極的に彼のイチモツを愛撫しだした。

前屈みになり、舌なめずりした唇でまずは先端に軽くキスをする。そして唇で挟み込み、歯を立てないよう気を付けながら、ゆっくり口中に飲み込んでゆく。咽喉の手前で元来た方へ戻し、そんな往復を数回繰り返す。

「うぐっ…ラムッ…」

「まだ出したらダメだっちゃ…ダーリン…」

さっきの仕返しとばかり、今度は彼を焦らすラム。フェラを途中で切り上げ、先端に軽いキスを繰り返し、サオを軽く握った掌をさわさわと上下に動かす。

「…どう?気持ちいいっちゃ?ダーリン…」

「はぁっ、はぁっ…ラムッ…」

両足を床に大きく投げ出し、両手を後ろ手に着いて上体を支えるあたる。ラムが彼の肩に手を置き、腰を浮かして照準を合わせる。屹立したそれにラムが手を添え、ぴとっ、と入り口にあてがう。

やがてラムがゆっくり腰を落とし、あたるがラムのナカに入ってゆく。座位で繋がるふたり。ラムがあたるの首に腕を回してぎゅっと抱き付き、あたるもラムの背に腕を回してきつく抱き締める。

胸と胸が密着し圧迫し合い、擦れ合う。あたるの腰に両足を回してカラダを揺するラム。あたるもカラダを振動させ、ラムと繋がった部分を彼女の肉壁でしごく。

「んっ、んふっ、んんっ、んんんあっっ!!ダーリンッ!!」

「ラムッ…ラムッ…!!」

引越し当日の、まだ少し早い時間の情事に没頭するふたり。全裸で抱き合い繋がり合い、労働で流した汗もそのままに、全身を更に汗でベタつかせる。

「ふっ、んっ、んんっ!あんっ!あんっ、あんっ!もう…ちょっとでっ!…ああっ!!」

「んっ、んっ、んっ!んっ…んんっ…!」

ラムがあたるに更に強くしがみつき、腰をガクガクガク…と激しく揺さぶる。

「…ダッ…ダーリンッ!ああ…っ!!」

やがてラムが顎を突き出し天井に顔を振り上げた。あたるもラムの肩に顔をうずめて大きく溜息をつく。

「…汗で、ベタベタ…だっちゃ…」

そしてふたりしてバスルームへ。シャワーを出しっぱなしにして、汗を流しつつ、再び絡み合うあたるとラム。狭いバスタブの中に少しずつ湯が貯まってゆく。

パチパチッ…パリパリパリッ…

「んっ…ダーリンッ…」

バチバチバチッ!バチバチバチバチッ!!

「ちょっ…ラムッ…待てっ…!」

「ああ…っ!!」

バチバチバチッ、バチバチバチバチーーーッッ!!!

「ぐわーーーーーっ!!」

パチパチパチッ…パチパチ…パリッ…

「…ダーリン?どうしたっちゃ、ダーリンッ!?」

バスタブの中でぐったりするあたる。電気に水気は禁物だった。バスタブの湯とシャワーによって、いつも以上に強烈な電気があたるの全身に回りやすくなっていたのだ。

「ラム…風呂場では…やめとこうな…」

「ちゃっ…そうだったっちゃ…お湯で…」

やっと事情が飲み込めたラム。

「大丈夫?ダーリン…ごめんちゃ…」

その日は結局、後片付けとその後の行為の疲れとで、ぐったりしたまま終わってしまった。


翌日も休みを取っていたあたるはラムと一緒に、同じアパートの住人に引越しの挨拶をして回る事にした。

まずは隣の部屋のチャイムを鳴らす。

「はーい、どなた?」 ガチャッ、とドアが開く。出て来たのは、ラムよりいくらか年上に見える女性だった。何故かその女性、ふたりを見て“ぎょっ”とした顔になった。

「今度隣に越してきた、諸星です、っちゃ」

「諸星さんって…まさか…あの、4丁目…の?」

「そうです、っちゃ。…あの、ウチらの事、知ってるっちゃ?」

「知ってるも何も…どうりで昨日、テレビにノイズが入りっぱなしだったわけね」

何の事やらわからないラムとあたる。

「私、同じ友引町におりましたのよ、おほほほほっ。兼ねがねお噂はよーーーっく、聞いておりましてよっ」

「はぁ…そうですか…」 何故か冷や汗が出てくるラム。

「宅にも主人がおりますけど、あいにく今日は仕事でしてっ。昨日はお引越し当日だったんじゃありませんの?」

「そ、そうです…っちゃ」 何故だか笑顔が引きつってくるラム。

「お引越し当日からテレビにノイズが入るほどの事でも、そちらでありまして?雷が近付くと画面が乱れますでしょ?」

今度はあたるとラムが“ぎょっ”とした。

「もう電化製品まで動きがおかしくなるしで、昨日はっ!大変でしたのよっ!」

「はぁ…どうも…すいません、だっちゃ…」

彼女の気迫に気おされて、思わず謝ってしまうラム。

「あら、何かお心当たりでも?」

「えっ!?いえ、そういうわけじゃ…あはは…」

「まぁわざわざご丁寧に挨拶の品まで頂いちゃって、ご苦労様でございますことっ」

どうにもトゲと含みのある言葉でやり込められるラム。それを傍らで聞いているあたる。

(何だかこの人、苦手なタイプだっちゃ〜…誰かに似てる気がするけど…)

そしてひと通り挨拶を済ませて自室へ戻るふたり。

「うーーーむ、オレもなかなかの有名人だったというわけか」

「いい意味で有名なわけじゃないっちゃよ…きっと」

憂鬱そうに、ひとつ溜息をつくラム。これから先が思いやられる気がしてきた。が、当のあたるは、悪い意味で有名であろうが、そんな事など気にしていない様子だ。

そしてその夜の食事の席で、あたるはラムに“引越し後の心得”を説教しだした。

「いいか?ラム。とにかくこれからお前は昼間ひとりになるわけだ。新聞や保険の勧誘はきっちり断れ!ドアも開けちゃいかんっ!開けたが最後、洗剤やビール券をサービスすると称して新聞は2紙、3紙と増えていき、余計な保険にだって入らされるんだからなっ」

「大丈夫だっちゃ。あんまりしつこかったら電撃で追い返すし…物が壊れない程度に放電して…」

「しかしお前はちょっと…警戒心が足りんからなぁ…昨日もそうだったし」

「あれは仕方が無いっちゃよ。だって…アノ時は…無意識に放電しちゃうんだもん…それにっ」

「何だよ?」

「昨日のはダーリンが先だったんだから、ウチは悪くないっちゃ」

「変に挑発したのはお前が先だろーがっ」

食事中に昨日の行為について軽い口論になりかけたが、途中で恥ずかしくなったふたり。

「…もうやめよ、ダーリン…」  「ん、ああ…」

さすがに何をしていたかまでは、お隣さんが気付いていなければいいのだが…と互いに思いながら、食事を済ます。

食事が終わった後も、あたるは“引越し後の心得”を、くどくどと説いて聞かせた。しかしいい加減うんざりしてきたラムは、耳をふさいで寝たふりをした。

「こらっ、聞いとるのか、ラムッ!」

「明日から仕事でしょ?ダーリン。とにかくわかったから早く寝るっちゃ!」

すると今までうるさくしていたあたる、突然静かになると、何食わぬ顔をしてラムのカラダに絡み付いてきた。

「明日仕事なんだから…早く眠るっちゃ…ダーリン」

「でも昨日のも、なかなか…場所が変わると、新鮮、っちゅーか…実家を出るというのも…悪く無いかもな…」

そして引越し後の疲れも何のその、またしても一戦交えるあたるとラムであった。そしてここから、いくつかの短い物語へと続いてゆくのである。

--- E N D ---

あとがき


[ MENUに戻る ]