花と蝶


ラムはあたるの匂いが好きだ。汗の匂い、体臭、行為の最中の様々な部位から発せられる、彼のフェロモン。そのどれもに彼女は惹きつけられ、心酔するのだ。

あたるの顔に顔を寄せてその匂いを嗅ぐだけで、鼻腔の奥が痺れ、胸が高鳴る。他のどの異性にも感じない心地良さを、“嗅覚”で感じていた。

一方のあたるはどうかというと、彼もまた、ラムの匂いが好きだった。汗はもちろん、髪の毛、乳先、秘所から漂う淫靡な香り…そのどれもが。

のべつ幕なしに他の女性に声をかけ、へばりついては張り倒される彼の“浮気心”は、あちらこちらへ飛び回り落ち着きが無かった。が、それは花粉を媒介する昆虫のようでもあり、結局最後に戻って来るのはいつも、別格の匂いを持つラムの元だった。

地球と鬼星という宇宙規模の遠距離を経て、鬼族の大将であったラムの父親が地球を支配しようと勝負を挑んだ時に、出会うべくして出会ってしまった…と言ってもいいかもしれない。それが“運命”と言うものなのか、それとも“見えない何者かによる悪戯”なのかは…誰にもわからないのだが。


ぺちょぺちょ…くちゅくちゅ…。

今夜も夜の褥(しとね)で、互いの匂いを嗅ぎ合い、五感全てを総動員して、ふたりは行為に耽っていた。

絡め合う舌のねっとりした感触が、ラムのカラダを痺れさせる。あたるの口中から注がれる唾液をごくり、と飲み込むと、それだけでうっとりした表情になり、更に彼の体液を求めた。

汗ばむあたるの肌をペロペロと舐め回す。頬に鼻先を押し付けて、匂いを思い切り吸い込む。それだけで、まだ触れられていない秘所がどんどん潤い、疼きが高まる。

あたるも彼女の匂いを吸い込みつつ、乳首に吸い付く。ちゅぱちゅぱ…と、乳を吸う赤ん坊のように、ラムの乳房の頂点をねぶる。ちろちろと舌先で嬲ると、ラムの乳頭はたちまち尖って、あたるにしか分からない“匂い”を先端から発した。

あたるの指がラムの秘所に届く頃には、そこは既に粘っこい蜜をたっぷり湛えていた。


暑くなってきたので掛け布団を払いのけると、今夜はあたるが下になり、その上にラムが乗った。“69”の体勢になるふたり。

ラムがあたるの男根を掴んで口中に頬張る。優しい指使いで睾丸を転がす。鼻息を荒くしたあたるが、たっぷり濡れて縦にぱっくり割れたラムの肉ひだを指先で割り開く。とろりとした愛液が糸を引きつつ垂れてくる。

それを口に受けて、そのままラムの肉ひだを咥え込む。唇で愛撫しつつ、舌を溝に這わす。包皮を被った肉珠を剥き出しにして、指先で刺激する。するとラムが可愛く、尻と内股を小刻みに震わせる。

そしてラムがあたるの股間に鼻息をかけながら、ディープスロートで攻め立ててくる。ラムの咽喉に篭った声が、あたるの股間側から聞こえてくる。

「んふっ…んっ、んっ、んっ、んっ…」

あたるも鼻息を荒くし、声をくぐもらせながら、ラムの股間を攻め立てる。ひくつくラムの尻肉と太股。

ちゅぶっ、ちゅぶっ、ちゅぶっ、ちゅぶっ…

あたるがラムの秘所を攻めると、ラムの口でのピストンが尚一層早まる。唇と舌でサオがしごかれ、口中の粘膜があたるの先端を刺激する。

“どぷっ!”

「んっ、んっ、んっ…んぐっ…!…ごほっ…」

ラムの口中に発射されたあたるの精液が、彼女の咽喉を直撃した。少し咳き込み、むせつつも、彼女はそれを咽喉を鳴らして飲み込んだ。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…ダーリン…」

ラムが自分の尻側に顔を向ける。執拗にクンニするあたるは股間に隠れていて頭がわずかに見えるだけだ。全身がぶるぶると震えてくるラム。

「あああっ…!」 感じるままに声をあげるラム。

「ああっ…ダーリン、早く…」

もどかしくなったラムは、くるりとカラダの向きを変えた。床に手を着き両足を大きく広げて、あたるを待っている。一度抜いたとはいえ、再び勃起するあたるの男根。それを悩ましげに見つめるラム。

むっくりと起き上がったあたる、ラムの両足を持ち上げると、まんぐり返しの格好にさせた。

「ちゃっ…ダーリンッ…」

太股ごとラムを押さえ込むと、彼女が求めている所へ、屹立したイチモツを挿し入れた。挿入しつつ、ラムの耳に、首筋に、キスをするあたる。

あたるのモノで肉壁を擦られ、奥まで突き倒されるラム。本能の赴くままに、彼女をぐしぐしぐしっ…と突き続ける、あたる。

「あっ、あっ、あっ!ダーリンッ!」

あたるの肩を掴んで、汗をほとばしらせるラム。そしてあたるも汗を撒き散らしながら、ラムを押さえ込んで自身を送り続ける。送り込みがどんどん早まる。ラムが顔を左右に振ったり顎を突き出したりして悶える。

「ちゃあぁぁぁーーーーっ!!」

声を押し殺してはいたものの、つい小さく悲鳴をあげるラム。深夜の寂とした空気がわずかに震える。

互いに絶頂に達した後も、汗だくになったふたりは、お互いの肌をぺろぺろと舐め合い、匂いを吸い込み続ける。

「終わった後の、ダーリンの匂いも…好きだっちゃ…」

「…ラム…」

そしてふたりは掛け布団をすっぽり被り、体温で発散されて中に篭る匂いに包まれる。包まれながら眠りに就く。

そして太陽が昇り新しい日が来ると、いつものようにトラブルを起こしたり、些細な事でケンカをしては電撃を浴びせたり、それから逃げ回ったりして過ごしている。

が、時々人目の無い所で、互いの匂いを確認し合うように、制服のままで抱き合いキスをする。そうして夜になれば…相も変わらず、だ。

もしかしたら、人目のある場所でのふたりの姿は、実は周囲へのわざとらしいカムフラージュ…なのかもしれない。

そんなある日、唐突に事件は起こった。


「これが例の…ものか」

「はっ。先日やって来たあの人物より、昨日届きました」

「それで奴は?」

「はっ、前金でこれだけ要求してきまして」

「ふんっ…まぁ僕にとっては金額などどうでもいいが、効果を確認出来なければ意味が無い、とそう伝えておけ」

面堂が手にしていたもの、それは、茶色の薬瓶に入った透明な液体だった。

「特に何の変哲も無い液体に見えるが…」

そして学校の昼休み。昼食を食べ終えたラムに、面堂がグラスに入った飲み物を持ってきた。

「今度、我が社の食品部門で発売が予定されているソフトドリンクなんです。ラムさん、ちょっと試して頂けますか?」

「ソフトドリンク?ふーん…」

ソーダのように気泡が浮いた透明なドリンク。それを眺めるラム。

「でもウチの味覚じゃ、あんまり参考にならないっちゃよ」

「いいんです、それで。色んな人達の意見をお聞きしたいので、ぜひ」

妙にしつこく勧める面堂だったが、ラムは特に疑うでもなく、そのグラスの中身を半分ほど飲んだ。

「やっぱりウチには味が薄いっちゃ」

「そうですか…ところでラムさん」

「何だっちゃ?」

「昼食後すぐに、で申し訳無いんですが、ちょっとお付き合い頂けますか?」

「どこに?」

「他にもリサーチしたいドリンクが何種類かあるんですが、ここに持って来られなかったもので。もちろん時間は取らせませんよ」

そしてラムは…まんまと面堂の口に上手く乗せられてしまった。ふたりして教室を出て行く。廊下を少し歩いて行くと、ラムの体が軽く痺れだし、足元も少しふらついてきた。

「…ウチ…何だか…変、だっちゃ…」

さり気無く、ふらつくラムの腰に手を回して支えるフリをする面堂。そして足元の覚束無いラムを、普段は使わない教室に連れて行き、ガラリと扉を閉めた。

扉を閉める音に、ラムははっと気が付いた。そしてこの感覚を思い出したのだ。カラダが…熱い。全身が軽く痺れてきている。そうだ、これは…あたるのフェロモンと梅干の成分で作られ、あのマッドな博士が自分に使った“催淫剤”ではないか?何故それを終太郎が?

「終太郎…どういうことだっちゃ!?」

全身に回ってきた“催淫剤”で、制服がかすっただけでも軽く感じだしてきたラム。胸先が切なくなる。股間が疼いてくる。動悸がして、息遣いが荒くなる。

(どうしよう…終太郎とふたりっきりで、こんな状態になって…)

「ラムさん、どうされました?顔が真っ赤ですよ」

「近寄らないでっ…終太郎…」

はぁ、はぁ、と肩で息をしながらも、どうにか理性を保とうとするラム。

「ラムさん、大丈夫ですか?」

つかつかと近寄る面堂。そして、ラムの頬に触れると。

「はあぁっ…!」 ラムはつい、おかしな声を漏らしてしまった。

(どんどん熱くなってくるっちゃ…ウチの、アソコまで…どうしよう…)

「だ、だめぇ…終太郎、ウ、ウチに…触らない…でっ…」

股間を踏ん張りながら、弱々しくも悩ましい声色でしゃべってしまうラム。面堂はしめたとばかりに、ラムの首筋に軽く触れる。その手が制服の上から、ラムの胸元を“さわっ”と、かすめる。

「ひっ!…ああっ…だめぇっ…」

がくがくと全身が震える。今のタッチで、乳首がたちまち立ち上がった。

(ああっ、だめぇ…でも、もっと触りたいっちゃ…ウチの、ココも、アソコも…)

そして一気に面堂は攻めの態勢に入った。ラムを抱き締め、制服の上から尻や背中を撫で回す。耳や首に息を吹きかける。その度にラムがあられもない声をあげて、身悶えするのだ。

「ひあぁっ!やめてっ…!」

尖った乳首がブラを押し上げ、背筋から頭のてっぺんへと痺れが駆け上がって行く。秘所の弱点がジンジンと疼いてたまらない。今にも面堂に身を任せたくなる衝動を、どうにか理性で抑えているラム。

「いやぁっ…だめっ、だめぇっ…終太郎…!」

「ラムさんっ…僕はっ!」

(終太郎が相手じゃ、だめだっちゃ…ダーリンッ…!)

目を閉じて身悶えしつつも、ラムは心でそんな事を念じていた。

「ラムさんっ…!」

「いやっ…!」(ダーリンッ!…お願い、早くっ…)

面堂の手が、ラムのスカートの中へと入ってきた。必死に踏ん張るラム。しかし何時ラムの理性が崩れてしまうかは、もはや時間の問題だった。既にアソコは薬の効き目でぐっしょり濡れていたのだから。

「ラムさんのここが…パンティの上からでもわかるくらいに、濡れていますよ…」

面堂の指先がラムの恥丘に軽く触れる。秘所がビクビクッ!と激しく引きつり、愛液が更に溢れてくる。つい、面堂の指でもいいから挿し入れて欲しい衝動に駆られる。

「ああっ!いやぁーーっ!!」(ああっ!だめっ!ダーリンッ、早くっ!)

「ラム…さんっ!」

面堂がラムを教室の机の上に一気に押し倒そうとした、その時。“ガラリッ!”扉が勢いよく開いた。

「面堂っ!何をやっとるかっ!!」

「も、諸星っ!?何故…どうしてここが!?」

「何故もヘチマもあるかっ!さっさとラムから手を離さんかっ!!」

「ダーリンッ!!」

面堂の手が緩んだ瞬間、ラムはそこから逃れて、あたるの元へと飛んで行った。悔しそうにあたるを見やりながら、無言でその場を後にする面堂。

「大丈夫か?ラム」  「やっぱり…来てくれたっちゃ…」

あたるにしがみつき、次いでキスをするラム。そして無人の教室の扉を閉め、彼女はそそくさと制服を脱いだ。

「終太郎に、あの催淫剤が入ったジュースを飲まされて…」

「だからこんなになってたのか…どうりで」

「もうウチ…我慢出来ないっちゃ…早く…ダーリン…」

「んっ…まったくしょうがないヤツだな…しかも昼間の学校で…というのは、もしかして初めて…か?」

「そんな事いいから…あんっ…早くっ…ウチのアソコがっ…ああっ、もうだめぇっ!」

立った姿勢のまま机に手を着き、尻を突き出すラム。その匂いで頭がクラクラするあたる。そそくさと着衣を脱いでイチモツを取り出すと、ラムのバックからインサートする。激しく下方から突き上げられるラム。

「あああっ!」

「あんまりっ…声出すなよ…ラムッ…」

「でもっ…あの薬のせいでっ…ああっ!だめぇっ!我慢出来ないっちゃっ!!」

「くっ…薬の効き目が切れるまで…どれくらい…だ!?」

「ひあぁっ!…ウチが…イク…までっ…ああっ!!」

とにかくあたるは、ラムがイケるよう奮闘した。その間、ラムはあられもない痴態で乱れまくり、学校だということもお構い無しに声をあげ続けた。

「もう、ちょっとでっ…ああぁっ…!!」

「くっ…くっ…ふんっ…!」

パリパリパリ…バチバチッ…

「ああっ!もうっ…ちょっとっ…!!ダーリンッ!!」

バリバリバリバリーーーーーッッ!!

「ちゃああぁぁぁぁーーーーーっっっ!!!」

「ぐおぉおぉーーーーーっ!!」

ようやく催淫剤の効果が切れて、ぐったりするラム、そしてあたる。その日はふたりして、こっそりその教室の窓から、エスケープしたのであった。


「まったく面堂も、つまらん事を思い付きおって」

「ウチもどうしようかと思ったっちゃ。でもやっぱりダーリン、思った通り来てくれたっちゃ」

「昼飯の後、面堂とどこかへ行ったと聞いたから、匂いをたどって行ってみれば…」

「ウチがダーリンの事、一生懸命呼んでたの、わかった?」

「ん…何と無くな…」

「でも良かったっちゃ〜…ダーリンが間に合ってくれて」

「でもオレ以外じゃ…絶対満足出来んくせに…んっ…」

「だって、ダーリンの匂いが無いと…ダメなんだもん…そう言うダーリンだって…」

室内の明かりを消して、抱き合うふたり。まずは互いの“匂い”を心行くまで吸い込み合う。そしてその後は…いつもの通り。

恐らくは…宇宙レベルでどんなに遠く離れた所にいても、いつかは必ず互いの“匂い”を“嗅ぎ当て”、どこかで出会うべくして出会っていたのだろう。

もしかしたら鬼族の大将は、最初地球などにまったく目もくれずにいたのかもしれない。そして現在から少し時間を遡った鬼星にて、こんなやり取りがなされていたのかもしれない。

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「父ちゃん、この“地球”って星…どうだっちゃ?」

「何言うとるんや、ラム。そないにランクの低い惑星支配したところで、大した資源にもならんわ」

「でもウチ…すっごく興味あるっちゃ…」

「お前がそないに言うなら…まぁええぞ。鬼ごっこの役目はいつもお前に任しとるから、好きにせぇ」

「ありがと、父ちゃん。…何だかこの星見てるだけで…ウチ、すごく楽しみだっちゃ、今度の鬼ごっこ…」

「えらい珍しいなぁ。お前が鬼ごっこを楽しみにしてる言うのは。…ところで、ラム」

「何だっちゃ?」

「そろそろ、どや、見合いでもせえへんか?もう婚約解消してから大分経った事やし」

「お見合いなんかしなくたって…全然大丈夫だっちゃ」

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そして現在。今夜も、がっしりした肉体に、しなやかな肢体が絡み付く。互いの鼻腔をくすぐる“匂い”によって、ふたりはより深いレベルで交わり、より高いところへと昇り詰める。

「…ヤリ過ぎは…カラダに毒だって…言うけどっ…ああっ…」

「…毒を喰らわば…皿まで…じゃっ…くっ…」

「…ダーリンッ…大好きっ…ああんっ!!」

そうしてこってりこてこてに濃厚な時間が、今夜も静かに…いや、若干うるさく、過ぎてゆくのであった…。

--- E N D ---

あとがき


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