例えばこんな日々5 〜余計なお世話様〜


ある日、あたるが勤める会社が入ったビルのエントランス前に、黒いリムジンが停まった。
各階の窓際がざわつく。車の後部座席のドアが開かれると、中から上等なスーツに身を包んだ面堂が、降りて来た。

「おい、あれ見ろよ、面堂財閥の御曹司の…」

あたるの耳がでっかくなった。

「面堂が?何で?」 思わず席を立って窓から覗き見る。

女子社員達も色めき立った。

「面堂財閥の…終太郎様よ!」
「でもどうしてこんな所に?」
「さぁ…?」

黒メガネ達に囲まれた面堂が、あたるのいるフロアの入り口から入って来た。顎を振って指図する面堂。すると黒メガネのひとりが、あたるに近付き声をかけた。

「何だ、お前らまで。何か用か?」

「若がお話があるそうで」

「相変わらず仰々しいな。あいつのやる事は」

フロアの社員達がざわついている。上司は汗を拭き拭き「本日はどのような御用で?」と黒メガネ越しに声をかける。

その後からあたるがやって来た。スラックスのポケットに手を突っ込み、ワイシャツの袖を捲くった格好で。

「久しぶりだな、諸星…」

「どういう風の吹き回しじゃ、面堂」

「こことも多少の取引があるのでな。それに…貴様と久しぶりに話がしたくなった」

「んなわけあるか」

「まぁこんな所で立ち話も何だ。昼食にでも付き合わんか」

「お前のおごりなら、付き合ってやってもいいぞ」

そんな短い会話の後、ふたりして外へ出て行った。

「うっそー!あの終太郎様と諸星君が…同級生!?」
「何でも…諸星君の彼女を取り合った仲とか、何とか…」
「あたしなら絶対、終太郎様なのにっ!」
「だから宇宙人の考える事は、わからないのよねぇ。あんな男のどこがいいんだか」


「昼間っから随分また豪勢な…」

あたるが面食らうのも無理はなかった。VIPルームでのフレンチ・フルコースなのだから。

「お前がタダでオレに飯おごるわけ、無いよなぁ…どういう魂胆だ?」

「諸星、貴様が実家を出た話は既に聞いている。ラムさんと一緒にな」

「で?まさかお前も、ラム目的でオレんちに来たい、って言うんじゃあるまいな」

「んっ…ああ、まぁ…簡単に言えば、そういう事だ」

「それならきっぱり断る!」

「ならば、自分の食べた分は、自分で支払うんだな」

「お前がおごると言うから…」

「僕はご馳走してやるとは、一言も言ってないぞ。勝手にそう思っただけだろう」

「汚ねぇなぁ、面堂…ああ、わかった、わかったよ、勝手にしろ…」

「お前の早退の手続きは既に済ませてある」

「今からか?何ちゅー気の早い…」

あまり気が進まないが、こんな所の支払いなど出来るわけもなく、面堂の申し出を渋々了承したあたるだった。


リムジンの中で。

「で、面堂。何で急にこんな事を?」

「ラムさんが…心配でな」

「貴様に心配されるような事はひとつも無いっ!余計なお世話じゃっ」

「彼女は、元気か?」

「ああもう、ピンピンしとる…お前、メガネと一緒だな。ったく…」

どうしてこうも周りが放っておいてくれないのか、と、あたるは面白くなかった。そして間も無くアパートの前に到着した。

「こんな所に…住んでいるのか」

「ああそうだよっ、悪かったなっ!」

玄関のカギを開けると、中から掃除機の音が。「おーい、ラムー!」声をかけても掃除機の音で聞こえないらしい。靴を脱いでキッチンに行くと、掃除をしているラムの後姿。肩をポン、と叩くあたる。

「あれっ、ダーリン!?どうしたっちゃ、こんな時間に…それに、終太郎まで…」

「ラムさん、お久しぶりです。お元気そうで…それに」

「終太郎も元気そうだっちゃね」 にっこり微笑むラム。

「ますます…お美しくなられて…」

すると、あたるが面堂を肘で思いっ切り小突いた。

「何にも無いけど…まだ掃除の途中だし。適当に座ってて」

ラムはその辺から茶菓子になりそうなものを適当に集めて、お茶を出した。そしてまた家事の続きをする。

「どうだ?ラムを見て安心したか?面堂」

「貴様のいい加減さが治ったとも思えんが。それにこんな狭い所で家事をするラムさんが…痛々しい…」

「だから余計なお世話だと、さっきから言っとろーがっ!」

すると、キッチンの隣の部屋からラムが手招きをしている。

「ダーリン、ちょっと…」  「何だ?」

そして部屋の戸の陰に入って、面堂から見えなくなるふたり。面堂は音を立てずに席を離れて、こそこそと物陰に近付いた。ちょっとした出来心だ。

こっそり覗くと、互いに向き合い息がかかるほどの距離で、こそこそと会話をするふたりが見えた。

「何で急に終太郎なんか連れて来るっちゃ?これから夕食のお買い物だけど、どうする?ダーリン」

「あいつが勝手に着いて来ただけじゃ。飯なんぞ用意する必要無いぞ」

「そう…じゃあ、ダーリンは今夜、何食べたい?」

「夜、食いたいものと言えば…」 ラムの耳にふぅっ、と息をかけるあたる。

「やんっ…ダーリンのエッチ…冗談は置いといて…ねぇ、何にする?」

ラムがあたるのシャツの上から人差し指で、彼の胸の辺りに小さく「の」の字を書きながら、尋ねる。

「何でもいいぞ」

「じゃあ一緒にお買い物、付き合って」  「ああ」

そして…ラムがあたるの首に腕を回した。目を閉じて、軽いキスを交わすふたり。

「今はここまで…終太郎がいるんだし」  「当たり前じゃ」

見てはいけないものを見てしまった気がした面堂、音を潜めて、慌てて席に戻った。それとほぼ同時にキッチンに戻ってきたふたり。

「終太郎、悪いんだけど…今から夕食のお買い物行くから…」

「あ、いや…急にお邪魔してしまったし、せっかくなので夕食は僕にご馳走させて下さい、ラムさん」

「ラム、面堂に借りは作らん方がいいぞ。後で何言われるか」

「僕はただ純粋に、ラムさんと…ついでにお前にも、夕食をご馳走する、と言っているだけだっ!」

「今度は本当〜〜に、お前のおごりか?何の見返りも交換条件も無しの?」

「ああ、そうだっ。武士に二言は無いっ」

「それなら…遠慮なく、面堂のご馳走になるか、ラム」

そして再度、面堂に念を押すあたる。

「本っ当〜〜〜にっ!何も条件は無し、だな!?後になって何か言わないな!?」

「貴様もしつこいなっ!本っ当〜〜〜にっ!何も無いっ!!」

「変な下心で言っとるんじゃないな?」

「失敬なっ!貴様と一緒にするなっ!!」

肩を小突き合いながら、しつこく問答を繰り返すあたると面堂。

「高校の時と変わってないっちゃ。ふたりとも」

そして夕方頃、UFOでドレスアップをしてきたラムと、少しきちんとしたスーツに着替えたあたるは、面堂の車に乗り込んだ。


「随分豪華だっちゃねぇ…毎晩こんなもの食べてるのけ?終太郎は」

「とにかくおごりだからな…しっかり食っとかんと」

「いかがですか?ラムさん、お味の方は」

「うん、美味しいっちゃ。ウチにちょうどいい味付けだっちゃ」

「それは良かった。貴女の料理はお口に合うよう、辛口に仕上げてありますから」

「ありがと、終太郎。…でもどうして急に、尋ねて来たっちゃ?」

「久しぶりに…旧交を温めたくて」

「…おいラム、こいつの言う事は半分は信用せん方がいいぞ」

「ダーリンもそんな事言ったら悪いっちゃ。せっかくご馳走になってるのに。ほら、ソースが付いたっちゃ」

ナプキンであたるの口を拭ってやるラム。

「ところでラムさん、今の生活は、いかがですか?」

するとラム、これ以上は無いほどの、満面の笑みで答えた。

「うん、もちろんすっごく、幸せだっちゃ♪」

予想していたとはいえ、本当に幸せそうな笑顔で答えられて、一瞬手元が止まる面堂。

「そうですか…それは、良かった…」

「ところで終太郎は、まだ結婚とかしないのけ?」

「いえ…今の所は、何も変わりはありませんよ」

「ふーん、そうなの」

そして昔話を交えての食事も終わり、先に外に出るあたるとラム。

「しかし本当に、おごりだったな…あいつにしては珍しい」

男におごる事など無かった面堂が、昼と夜の2回も、あたるにご馳走してくれた。昼食の交換条件は、ラムに会わせる事だった。しかし夕食までとなると…と、あたるは内心、心配になってきた。さっき何回も問答を繰り返して、確認したにも関わらず。

「おい、ラム」  「何だっちゃ?」

実は昼飯をおごられた見返りとして、面堂を家に連れて来た事を、あたるはラムに打ち明けた。

「だから晩飯まで、ってのを考えるとだな…」

「考え過ぎだっちゃよ、ダーリン。人の好意は素直に受け取ったら?相手は終太郎なんだし」

「面堂だから、心配しとるのがわからんのか?」

「それじゃあ…ウチからお礼しとくっちゃ」

「お礼?」

「ダーリンはちょっとここで待ってて」

店から出て来た面堂に小走りで駆け寄るラム。

「ご馳走様、だっちゃ、終太郎」

そして。本当に軽くだが、面堂の頬に“チュッ”と、キスをした。突然の事に驚き、次いで呆然とする面堂。

「今日の、ウチとダーリンの分のお礼っ。それじゃあ、おやすみなさ〜い」

腕を組みぴったり身を寄せ合って歩き出すあたるとラム。そんなふたりの後姿を見送る面堂は、しばらく頬に手を当て顔を崩して、その場に立ち尽くした。

「…若?大丈夫ですか?」

黒メガネが呆けた主人に声をかける。はっと我に返る面堂。

「…心配には及ばん…」

ふと、アパートの中で見た光景を思い出す。ラムの柔らかな唇の余韻にわずかの間だけ浸ると、夜空を見上げつつ、面堂はこう思った。

(僕が心配する事など、何も無かった…というわけか)

「ふっ…我が青春に悔い無し…か…」

そう呟くと、気を取り直して、黒メガネに命じた。

「屋敷へ戻る。車を回せ」


その夜の寝室にて。

「ダーリン、いつまで拗ねてるっちゃ」  「…ふんっ」

並んで床に就いているが、ラムに背を向けているあたる。さっきの事で怒っているのだ。

「だってアレは、ちょっとしたお礼だっちゃ。ダーリン変に心配してたし」

「…だからってオレの前でする事は…」

「じゃあ見えない所なら…もっと心配するくせにっ」

「当たり前じゃっ!」 くるり、とラム側に寝返りを打つあたる。

「鳥が突付いたみたいなもんだっちゃ…それに終太郎なら、アレで十分お礼になったと思うけど…」

「むぅっ…面白くないわっ…よりによって面堂に、オレの前で…」

「ごめんちゃ、ダーリン…だから、ね?もう怒らないで…」

困ったような表情のラムは、あたるをなだめるように頬や髪の毛を撫でてやる。すると今までむくれていたあたる、ラムの唇を指でなぞりだした。

「他のヤツを突付いた唇は…これか?」

あたるはそう言うと、ラムの上に覆い被さり、彼女の唇に思いっ切り吸い付いた。しばらくの間、ラムの唇をねぶる。やがて唇を離すと、恍惚とした表情でラムが言った。

「…ダーリン…昼間の、続き…」

「夜、食いたいもんと言えば…」

ふぅっ…と、ラムの耳に息を吹きかけるあたる。

「ちゃっ…くすぐったいっちゃ、ダーリンッ…」

「今後オレの前で…他の男を突付くのは、絶対禁止じゃ…」

「んっ…もちろん…だっちゃ…」

互いの寝巻きを剥いで肌を合わせれば、さっきまでのケンカも、すっかり忘れてしまう。

「ダーリンのが…ウチのナカに入りたがってるっちゃ…」

「ラムのココも…こんなになってるぞ…」

アパートの一室。ふたりだけの空間で、今夜も絡み合い繋がり合う、あたるとラム。
狭い部屋でも、慎ましやかな食事でも、既にお腹も心も一杯の、ふたりだった。


翌日の昼休み。同僚達と昼飯をとるあたる。

「諸星、お前あの、面堂財閥の御曹司と同級生だったんだって?」

「それがどうした?」

「ラムさんを取り合った仲だったとか、女達が騒いでたぞ」

「アホかっ。そんな事なんぞ一度も無いわっ」

「まぁあの面堂終太郎が相手じゃ、俺達には手も足も出ないけどな。お前が相手なら或いは…」

「なーにを言っとるんじゃっ。お前らがどう転んだところで、その可能性は全く無いっ!」

「やけに自信満々だな。あーあ、お前みたいなスチャラカ野郎のどこがいいんだかな、ラムさんは。…ところで」

隣席の同僚が興味津々に、顔をにやつかせて小声で聞いてきた。

「夜の方は…どうなんだ?」

「ぶっ!!」 思わず吹き出すあたる。

耳をでっかくした同僚達が、あたるを中心にして寄り集まってきた。

「おのれら〜〜人のプライバシーに首を突っ込むなっ!それに変な想像はするなっ!!」

顔を赤くしてがつがつと飯を掻き込み、そそくさと店を出て行くあたる。

そして午後。あたる宛に、会社に1本の電話が入った。

「諸星くーん、彼女から電話〜〜!」 女子社員が大声で呼び付ける。

「何だよ、仕事中に…え?今夜?…ああ、わかった。6時半な、ああ」

それだけ話して電話を切る。すると。

「6時半に何だって!?」
「俺が電話取るんだった〜」
「ラムさんの声が聞きたかった〜!」

(どうして面堂といいメガネ達といい、会社のこいつらといい…放っておいてくれんのだ…イチイチうるさいっちゃねぇなぁ…ったく)

理由は色々あるのだろうが、あたるもいい加減、周囲の“余計なお世話”的な、プライバシーの詮索やらお節介やらに、うんざりしてきていた。

そして6時半より少し早く、ビルのエントランス前に、お洒落をしたラムが到着した。

「ちょっと早く着いたっちゃね…」

エントランスから出てくる人の中にあたるがいないか、あちこちに視線を投げるラム。その頃、あたるのいるフロアでは。

「おっ、ラムさんだ」
「どれどれ」
「俺にも見せろっ」

(何だよ、もう来てるのか…) 黙ってそそくさと帰り支度をするあたる。こそこそと出て行こうとすると…。

「俺、今日は帰るわ」
「あ、俺も〜」
「そうそう、今そう思ってたところだ」

エントランスまで急ぐあたる。

「あ、ダーリン。お疲れ様、だっちゃ」

「のんきな顔しとらんで、さっさと行くぞっ!」

「どうしたっちゃ!?」

「お節介なバカどもが…勝手に着いてくるんじゃっ!うっとおしい事この上無いわっ!!」

そうしてラムの手を取ったあたるは、街の雑踏の中へと姿をくらました。


「ダーリンとデートしたかったから、電話しただけなのに」

「会社に電話してくるのだけは、もうやめとけ。…周りがうるさいから」

「何で?」

「お前、自分でわかって無いのか?…相変わらずそういう所は、鈍いと言うか…」

「失礼だっちゃねぇ、ウチの事、鈍いとか、警戒心が足りないとか。そんな事無いのに」

「オレとお前が一緒だと、周りがうるさいのだっ。面堂もメガネも、お前の事が心配だの何だのと言って、人んちのプライバシーを覗きたがるんじゃっ」

「ふーーん…よっぽどダーリン、信用されて無いっちゃ」

真顔でさらっと言ってのけるラム。そして先ほどから文句を言いつつ、ぶすっとした顔で食事をするあたる。

「高校時代から、もっと人前でベタベタしたら良かったのに。何も隠さないで」

「ラムのアホッ…そんな事恥ずかしくて、出来るかっ」

「何で〜?変なダーリン。人目が無い所なら、いくらだってキスとか…色々、してくれたのにっ」

「それとこれとは別じゃっ」

「ダーリンの考えてる事は、ホントによくわからんちゃ…“好き”もお預けのまんまだし…結婚だって…」

自分の左手薬指のリングを撫でながら、ラムは黙ってしまった。あたるも黙々と食事を続けるだけだ。

その晩は、珍しくラブ・ホテルに入ったふたり。シャワーを浴びてバスタオルを巻き付けただけのラムを、大きなベッドの上に押し倒すあたる。様々な体位で激しく交わる。

「ダーリンッ…ああっ!ダーリン、大好きっ!!…ちゃあぁっ!…好きっ…愛してるっちゃ!…ああっ!!」

その晩はやたらと“好き”と“愛してる”を連発しつつ、あたるに抱かれるラム。一方のあたるは、いつもより少し乱暴に、彼女を愛した。

「ラム…ラムッ…」

「ダーリン…ウチの事…好き?…ああっ…ダーリンッ…ダーリンッ!!」

あたるが渾身の力を込めて、ラムを突き上げ、時に突き倒す。

(口で言わなくちゃ…わからんのかっ、ラムッ…) 昔思った事を、今再び思うあたる。

胸を合わせて座したまま繋がり、互いを揺さぶる。あたるに抱き付きながら、ラムが言葉を漏らす。

「ウチ、一生ずっと…何回でも、ダーリンの事…好きって、言うけど…ああっ…!」

「…ラムッ…」

「今のままでもっ…いいっちゃ…でも…あっ、あっ…」

ベッドのスプリングでカラダが上下左右に跳ね、それでバランスを失ったふたりは、抱き合ったままラムを下にして倒れ込んだ。

「今際の際には…必ず…ダーリンから…言って…絶対っ…ああぁっ…!!」

「ああ…ラムッ…」

汗だくで息も上がってきたふたりは、最後に互いの匂いを吸い込みながら、深い深いくちづけを交わす。しばらくお互いの味を確かめ合って口を離すと、顔が上気して、ほんのり赤くなっていた。

「今のキスが…今夜は一番、気持ち良かったっちゃ…ダーリン…」

「…オレも…」

「今夜のダーリン、ちょっと乱暴だったんだもん…あんまり気持ち良くなかったっちゃ」

「そ、そうか…悪い…」

「そろそろ時間だから…帰ろ、ダーリン」

「ん…延長したら、ダメか?」

「今月はやり繰りがちょっと厳しいけど…でも、たまには…」

「そういう事なら…」

「もっと優しくしてね…ダーリン」

…という事で、再びベッドの上で一戦交えるあたるとラム。そして時間を忘れてカラダで愛を確かめ合った。ふと時計を見ると、もう朝の時間になっていた。

「もうそろそろ…今日も仕事でしょ?ダーリン…」

「んっ…今日は休みにするかな…」

「ダメッ。家計のやり繰り大変なんだから。あっ…まだ、ヤル気け?…でも、ちゃんと仕事…あんっ…行くっちゃ、ダーリンッ!」

ラムはトドメに、あたるの男根を“きゅっ”と握ると、しこしこ上下に擦りながら、軽く放電した。

「うっ…ラムッ…」

「今日はこれで…打ち止め、だっちゃ。また今夜ね、ダーリン…」


出社したあたる、ものすごく眠そうにしている。何せ夕べは一睡もしていないのだから。

「諸星君…」 上司が側にやって来て、肩を叩いた。

「そんなに眠たかったら、今日は早退してもいいよ」

「はぁ…?」

どうやら“面堂が元同級生”というのが効果があったらしい。しかも、ただの同級生では無い。“彼女を取り合った仲”で、諸星あたるが勝ったという事は…などの勝手な憶測で、上司の当たりが妙に良くなったのだ。

ぼーっとした頭で、社用電話を使うあたる。

「あーもしもし、ラム?うん、オレ…。今朝まで頑張り過ぎて、眠いのだ…で、今日は早退すっから…お前、迎えに来てくれないか?…下で待ってるから…」

半分無意識でしゃべっていたので、周囲の方が“ぎょっ”とした。

(朝まで何を頑張り過ぎて、眠い、と言うのだ…)
(もしかしてラムさんと…頑張ってナニを…だ!?)
(くっそ〜〜…羨ましい…)

「それじゃあ、お先〜〜」

まったく面堂様様である。

そしてその夜。

「はい、明日のお小遣い」

「何じゃ、たったこれだけか?」

「当たり前だっちゃ。余計な出費しちゃったんだもん。ダーリンも協力するっちゃ」

ラムの言葉で何かに思い当たったあたる。真顔になって彼女にある疑問を投げかけた。

「…そういえば、前々から思っておったのだが…」

「何だっちゃ?」

「どうしてお前は、その…妊娠せんのだ?…しょっちゅうなのに…」

するとラムの頬がぽっと赤らんだ。

「もう少しだけ、ふたりっきりがいいんだもん…だから、昔からだけど、いつもウチが避妊薬飲んでたっちゃ」

「そ、そうか…うん…」

思わずあたるも赤くなる。

「それともダーリンは、そろそろ…パパになりたい?」

「…いやその…オレもまだ、もうちょっとは今のまんまで…」

「ふふっ…もうちょっとだけ、今のままだっちゃね…」

「ああ…もうちょっとだけな…」

まだしばらくは、ふたりっきりの暮らしが続く。そのうちふたりの間に子供が産まれれば、きっと周りの“余計なお世話”や“詮索”も、少しは無くなる事だろう。
そうして今夜も“もう少しだけふたりっきり”の時間を、たっぷり楽しむ、あたるとラムなのであった…。

--- E N D ---

あとがき


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