Inner Love.


あたるが枕元に置いた小型のラジオから、J-POPが流れている。

=================================

(吐息)

気の無い素振りばかりで
本当はどう思って
カラダで愛を求めて
それでどう感じて
もつれあっているの?
吐息の数だけ増えるばかりで
でも本当のことは何も言わない人


=================================

夜も更けた時間に合わせて、少しエロティックな恋やら愛の歌ばかり。
歌を聞きながら、まだ衣服を身に着けたまま、布団の上であたるとラムは向かい合って座っていた。

部屋は暗いが、カーテンを通して宵闇を照らす白んだ光りが、空気に溶ける様に、四角い空間にわずかな光りを送り込む。
その空間の隅々までは濃紺に染まってよく見えないが、対面するふたりの姿はその全身の輪郭や表情が、濃淡のコントラストで際立って見えた。

ラムが言う。

「昼間はいっつもウチから逃げ回ってばかりなのに…夜になると、どうしてだっちゃ?ダーリン」

そう問いかけるラムに対して、昼とは打って変わって寡黙になるあたる。
彼女を見つめながら、何か言いたげな目をしてみせ、口元がもごもごと動く。が、言葉は出て来ない。
ようやく口を開けば、「ラム…オレさ…」と言いかけたまま、また黙り込む。

しばしの沈黙。時間が止まったような中、あたるがゆっくりとラムに手を伸ばしてきた。
ラムの頬に手を当てて、その滑らかな柔肌をそっと撫でながら、その手を首に回して、静かに引き寄せる。

そして、静かなラムの呼吸を聞きながら、そっと布団に横たわらせた。

「どうしてだっちゃ?ダーリン…」

ラムの問いかけが繰り返される。

「ウチの事、一度も好き、って言った事もないくせに…ダーリン、何だかズルいっちゃ」

ラムがひとりで喋っている間に、あたるは衣服を脱ぎ、いつものようにラムのビキニの上下とブーツを外してやった。

「ねぇ、ダーリン。ホントはどう思ってるっちゃ?ウチの事、好き?」

床の中であたると重なりながら、独り言のように言葉を繰り返すラム。
その言葉をさえぎるように、唇を重ねてくるあたる。
そして彼から注がれる唾液と舌の感触で、ラムは自分が言った事など、どうでもいいような気持ちになっていった。

そして絡み合う。

途中、目を合わせると、あたるは何かを言いたげな素振りをふと見せるが、それでも何も言わない。

「ウチはいつも…ダーリンの事好き、って言ってるのに…やっぱりズルいっちゃ…」

そう言いながら、静かで細かったラムの吐息が、次第に熱く早くなってゆく。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…ダーリン…」

あたるはラムのカラダの隅々にまで愛撫をする。長い前戯でラムの吐息が一層早まる。

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ…はあっ!ああっ!」

時々のどの奥から弾き出される小さな叫びは、ラムの頭のてっぺんから抜け出て、澄み切った夜の空気の中に溶けていった。

これまで幾度もの夜を重ねるうちに、あたるの指遣いは巧みになり、ラムの感じる部分を余さず刺激した。
柔らかなラムの白い肌に吸い付くあたる。ただ黙々と、行為に没頭している。

再び顔を見合わせるふたり。

「ん…ラム…」

ラムを感じさせながら、またあたるは何か言いたげな表情をする。そういう時が、ときたまある。
しかしやはり、何も言わない。

「んっ…んあっ!ダーリンッ…はぁっはぁっはぁっはぁっ…!」

ラムの体内から一定の間隔で吐き出される吐息。それを顔に受けながら、あたるは再び唇を重ねた。
まるでラムの吐息を体内に取り込もうとしているかのように。

(ぺちょぺちょ、くちゅ、くちゅ…)

口中で互いに舌を蠢かせ絡ませる。やがてあたるが顔を上げると、開かれた口の間でふたりの舌がもつれあったまま少しの間戯れ、やがて名残惜しそうに離れた。濃い目の唾液があたるの舌先から、ラムの舌の上に零れた。

「ダーリンのキス…いつもだけど、とっても気持ちいいっちゃ…」

ラムが再び、はぁはぁ、と短い間隔の呼吸をする。呼吸と共に、胸元が小さく上下に動く。

早く来て、と腕を広げるラム。

そしてカラダの芯まで熱く疼いているラムの開かれた秘部は、既に、あたるを求めてたっぷりの蜜を湛えていた。

そのラムに合わせてなのか、偶然、こんな歌が流れてきた。

=================================

(蜜の味)

あふれだして
そして止まらない
その蜜の味に
たがいに溺れあい
深く沈んでも
まだ求めあう
永遠が瞬く間に過ぎて
一瞬は永遠にかわる
ふたりして溺れたまま
あふれて、止まらない


=================================

(くちっ…)

ラムの秘部があたるを受け入れる。ふやけてぽってりした秘唇が、あたるの先端を舐めるように包む。
力を抜いたラムの入り口が、あたるによってゆっくりと開かれていく。

(ぬ、ぬぬぬ…ぬ…)

「んっ…ダーリン…ああっ…」

ラムのうねった産道を押し進むあたる。膣壁のヒダがあたるにぴたりと吸い付き、時たま引っ掛かって彼のモノを刺激する。

「うっ…んっ…ラムッ…」

(ぬちっ、ぬちっ、ぬちっ…)

ラムも弱い部位をかすめられると、腰をひねって胸を突き出す。その度に彼女のニップルが、ぴくんぴくんと震えた。
相変わらずリズミカルな吐息と喘ぎ声を漏らしているラム。あたるがラムの内部にはまりきると、ラムはたまらなくなったのか、上半身を起こして、自分から腰を動かしてきた。

「んっ、んっ、んっ、んっ…!ダーリン、ウチのここ…」

後ろ手を着いて足を広げた格好で、あたると繋がっているラムは、陰毛に隠れた陰核を指差して、そう言った。

あたるも身を起こして座り、ラムの腰を掴んで下半身を合わせた。

(ぐちっ、ぐちっ、ぐちっ…)

粘膜が密着しては離れ、ラムの愛液を絡めたあたるのモノが前後に動くたびに、粘り気のある交合の音がする。
ラムの望むままに、陰核に触れるあたる。そこもぬるぬるとぬめっており、ラムの膣口の隙間から溢れ出てくる愛液が更に増えたようだ。
それによって、交合の音も水っぽさが増した。

(ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ…)

ラムの腰が前後に動いて、あたるを出し入れする。ラムにしごかれるあたる、したたる愛液と膣壁による極上の快楽によって、熱くたぎっていた根元の体液が、勢い良くラムの中に注入された。

「ちゃあぁぁっ!!」

あたるは放出した瞬間頭が真っ白になりかけ、注入されたラムもまた、胎内を震わせた。

(くぷっ…くぷぷっ…)

ラムの大量の愛液と、あたるの体液が混ざり合い、ラムの膣口から、半ば噴き出すようにして漏れ出た。
あたるはラムから抜かないまま、体位転換した。腹ばいに布団に押し付けられたラムの背後から、あたるが突く。

「んはぁっ!!ダーリンッ!!」

烈火の如く腰を動かすあたるに涙ぐむラム。やがて2度目のラムの胎内への放出。
ひくひくひく…と、カラダを痙攣のように震わせて、ラムも果てた。

(ぐちぐちぐちぐち…)

ラムの内股を濡らす淫らな体液。ぽってりと膨らんでひくついている陰唇。それでもまだ、あたるを求めている風で、あたるも再度、ラムに送り込みを開始した。

蜜が飛沫となって飛ぶ。互いに蜜で濡れるのも構わずに、快楽の深みにはまってゆく。

「ダーリンが…もっと欲しいっちゃ…ウチが…壊れるくらい…もっと…ウチの事…!!」

ラムは泣いていたのだろうか。背後から夢中で突くばかりで声しか聞いていなかったあたるには、ラムの言葉が涙声のように聞こえた気がした。
それはあまりの激しさから出た声だったのだろうか…。

そしてふたりは、幾度も幾度も交わり続けた。互いの蜜と汗で全身べとべとになりながら、それでも飽く事無く交わり続けた。
あたるはラムの秘部を舐め、ラムはあたるの陰茎を舐めた。それが互いの媚薬となって、ふたりはただただ、夢中で互いを貪りあった。

深みにはまってもなお、あたるは肝心の言葉を言わないままであったが。

そして流しっぱなしのラジオからは、こんな歌が聞こえてきた。

=================================

(Inner Love.)

何度でも何度でも
何度でも何度でも
フェード・アウトして
フェード・インして
ディープな愛撫をして
媚薬がまた
深いところに
そそがれる


=================================

歌に合わせてなのか。また、媚薬が注がれた。ラムの胎内に、あたるの口中に。その度に記憶が飛ぶような感覚に襲われた。

ふたりして、記憶が一瞬薄らぐようなフェード・アウトを体験し、そしてまた、目の前にいる相手に気が付く。
今までもそういう事はあったが、今夜はまた格別だった。歌の歌詞のせいもあったのかもしれない。

あたるの媚薬を、ラムの胎内が吸収する。

外からは見えないカラダのナカで、あたるとラムの“生物”としての部位までもが、互いを求め合っているかのようだ。
内部で繰り広げられる、一番エロティックで一番感じる愛撫を、ふたりは繰り返す。

「うぐっ…ラ、ラムッ…!」

「ダーリン…ああっ…ダーリンのが…ウチからあふれちゃうっ…!」

そして内部の激しい愛撫で幾度か果てたふたりは、疲れているはずなのに、深夜の床の中で眠れぬままにいた。

「ダーリン…ウチの事…愛してるっちゃ?ねぇ、ダーリン…」

「ラム…」

「ウチの事抱いてくれるのは…やっぱり好きだからでしょ?ねぇ、ダーリン…」

そんな言葉をラムは何回か囁いた。それでもあたるは黙って聞いているだけだ。

「何で黙ってるっちゃ?こんなにたくさん、ウチのナカにくれるのは…好きだからでしょ?ダーリン…」

ラムの問いかけに答えはしなかったが、あたるはラムの頬を撫でながら、静かなキスを与えた。

しばらくしてキスを終えたあたる。ラムの髪を撫でながら、頭をそっと抱きかかえて、耳元で囁いた。

「…あんまりしつこいと、もうキスもしてやらんぞ…」

「だって…一度だってウチの事、好きって言ってくれた事無いんだもん…ダーリンのバカ…」

「こんなにたくさん…てやってるのに、どーしてお前は…んのだ…」

「何?今なんて言ったっちゃ?」

「…二度と同じ事は言わんっ。しっかり聞いとけ、ラムのアホッ…」

ラムはあたるの本音を聞きたい。けれどもあたるは決して明言しない。

(変なとこには勘が働くくせに…まったく…)

「何言ったか教えて欲しいっちゃ、ダーリン!ねぇ、何て言ったっちゃ?ねぇったらねぇっ!」

「…だーかーらっ!二度と言わん、と言っただろーがっ!…男は黙って何とやら、じゃ」

「もうっ、ダーリンのケチッ。言ったって減るもんじゃないのにっ!」

ラムは少し膨れてみせてから、あたるの胸をそっと撫でた。

「この中の事、ぜーんぶわかったらいいのに。そしたらウチだって、何回も聞いたりしないっちゃ」

「何を考えとるんじゃ…アホが…」

「やっと普段のダーリンらしくなったっちゃね。あんまり静か過ぎると、何だか変だっちゃ」

「だってお前なぁ…アノ時に喋ってばかりというのも変だろーが」

「喋っててついうっかり、って事も有り得るっちゃ。ダーリンもたまに失神しそうになってるし。そんな時ならもしかして…」

「有り得んっ!ぜーーったいに、有り得んっ!!」

「それじゃあ、賭けてみるっちゃ?」

「何を?」

「ウチが先に言わせたら…してもらうっちゃ」

「オレが勝ったら?」

「そんなのダメだっちゃ!ダーリンいなくなっちゃうんだもん…いまわの際だったら…」

「じゃあこの賭けは不成立、っちゅー事だな」

「じゃあ、ずーーっと今のまんま?」

「さぁ、どうだろうなぁ…オレには先の事など、なーんも分からんしな」

「やっぱりダーリン、ズルいっちゃ」

そんな他愛も無い会話を続けるふたり。あたるもラムも気が付いていないのかもしれないが、外見や生活がどんなに変化しようとも、見えない所の繋がりは、これ以上無いほどに快く、そして強いはずだ。カラダも心も。

そうしてふたりの賭けは不成立のまま、一生痴話ゲンカを続けてゆくのだろう…きっと。

--- E N D ---
あとがき


[ MENUに戻る ]