次の日


“ダ、ダーリンッ…ちゃっ…ああっ!…あんっ…!”

「…はっ…!?」

あたるは教室の机で居眠りをしていて、突然飛び起きた。

「…参ったなぁ…」

頭を掻きながら、ぽそりと言う。隣の机にはラムがいる。頬杖を付いて、ぼんやり授業を聞いている風だが、どこかしら上の空っぽい。
ラムをちらりと見ると、彼女も気が付いたのか、一瞬こちらを向いたが、顔を赤くしてすぐに下を向いてしまった。
そんなラムの素振りに同調するかのようにして、あたるもとぼけた様子で顔をあさっての方に向けた。

どう見ても不自然な様子のふたりだったが、その時点で気が付いているクラスメートがいたかどうかはわからない。

休み時間の喧騒の中、あたるは教室から出て行った。ラムは席に残って次の授業の準備をしていた。そんなふたりを、しのぶだけが何かに勘付いた風な表情で、ながめていた。

一番異性に興味を持つ時期だけに、学校の生徒達はあたるとラムの不思議で妙な関係に興味津々だった。
男子達の何割かは、ラムの事を妄想していたし、或いはふたりが既にデキているんじゃないかと勘ぐってみたり、ただ遠目にながめては自分も“ダーリン”と呼ばれてみたい…とか何とか、その思いはさまざまだった。

女子達の何割かも、実は諸星あたるはラムを避けてばっかりいるが、とっくに関係をもっているんじゃないかとか、あんな男のどこが良くてベッタリなのかとか、同じ屋根の下にいて何も無い方がおかしいとか…。
とにかく人それぞれ、ふたりをネタに色んな想像を巡らせては、ヒマ潰しのおしゃべりの中に、時々その話題を持ち出していた。


とある男子達、休み時間にこんな会話をしていた。

「もしあのふたりがデキてたら…あたるのヤロー、ぶっ殺すっ!」

「でも年がら年中、夜まで一緒なんだぜ。あたるの部屋で何も無い方が変だろ。俺なら即…だな」

「でもよぉ、実際のところどーなんだろーな。…ラムちゃんまだ…バージンなんかなぁ…」

「んなわけ無いだろ…レイっていう婚約者までいたんだぜ」

「レイはともかく、あたるがラムちゃんに手ぇ出して無いかどーかの方が…俺は知りたいね。あの究極の女好きの諸星あたるがだぜ」

「いっつも電撃浴びる事しかしてないんだから、何も無いんじゃないか?」

「その考えは甘いっ!とっくにデキてるからこそ、電撃リンチ受けるような事、平気でやってんじゃないのか?」

「そんなもんかねぇ…」

「あの親衛隊の4人はどう考えてんのかね。まぁ特にメガネのヤローは“デキてるかどうか”以前の問題だけどな。ま、面堂も似たようなもんだけどな」

「ところでさっき女子が喋ってんの聞いちまったんだけどさ…その中にあの、しのぶも交じってたんだけどよ」

「何て言ってたんだ?」

「今日のふたりは、様子が…変だ、ってさ。女ってのはそういうとこには妙に勘が働くからなぁ…あながち…」

「だーーーっ!様子が…変!?どう“変”だって言うんだよっ」

「だから詳しい事は知らねーよ。そんなに知りたきゃ女子に直接聞いて来いよ」

「しのぶがそういう話題出すくらいだからなぁ…あの、しのぶが、だぜ」

「しのぶはもう吹っ切れたんかね。しかし彼氏はとられるわ、面堂もラムちゃんにぞっこんだわで、実際のとこ何考えてんのか、よくわかんねーよな」

「あの“怪力机投げ”の異名付けられたり“お手机”技が身に付いたのも、ラムちゃんと面堂が現れてからだろ?」

「そうそう、女ってのは怖いねぇ…俺としてはしのぶも好みだったんだけどな、楚々として女らしい雰囲気とかがさ」

女三人寄ればかしましい、というが、男が集まっても似たようなものである。


昼休み、校舎の隅で。腕を頭の後ろに組み、ぼんやり空を見上げているあたる。

(学校で何を思い出しとるんだ、オレは…しかも居眠りであんな夢を見るとは…)

遂に、というか、ようやく、というか。あたるは昨晩、初めてラムと…ひとつになった。

その時のラムの声が耳に残って、先の居眠りの中に出てきたのだった。もちろん、その時の彼女の姿や表情も、何気ない瞬間にフラッシュバックする。
学校でこれはまずかろう…と思い、頭から振り払おうと思うのだが、声や表情以外の“肌で実感した感触”が、生々しく残ってしまっている。

両手で掴んだ細い肩、撫でさすってみた滑らかな肌、柔らかくて揉み心地のいい乳房。そして、初めて入ってみた、ラムの女の部分。

(い、いかん…昼間っから何を考えとるんじゃ…)

ラムの声質を特に意識した事は無かったが、普段の声を思い出してみると、確かに“甘い感じの可愛らしさ”がある声色だな、とは思った。
それが昨晩は…あたるの行為ひとつひとつに対してそれに応えるように、甘い声と吐息が混ざったものが、ラムののどから漏れ出て、あたるの聴覚を刺激した。

“ダ、ダーリン…ダメだっちゃ…ウチのそこっ…あっ、ああっ!ダメェッ…”

またフラッシュバック。ちょうど女の部分を指先で愛撫している最中だったと思う。腰をひねって仰け反るラムの姿と声が閃いて、あたるは背筋がぞくぞくした。

“いっ、痛いっちゃ…ダーリン…ああっ…”

ラムがバージンを喪失した瞬間の言葉。後で敷き布団を見たら、確かに“破瓜の血”が白いシーツを汚していた。

“ちゃあぁっ!あっ、あっ、あっ!ウチッ、ウチッ!…イッ…イッちゃう…!!”

あたるにしがみつき、ラムは彼とほぼ同時に果てた。そして汗ばんだ肌を密着させて、濃厚なキスを繰り返した。

「はぁ…何を考えておるんだ…オレは…」

夕べの余韻が五感に残って、どうにも落ち着かない。
するとそこへラムが、上空からフワリと降りてきた。

「ダーリン…こんなとこで何してるっちゃ?」

(人の気も知らんと、のん気な事を…)「誰に声をかけようか、考えとった所じゃっ」

思わずラムに目が行くと、制服を着ているとはいえ、ついつい昨晩の姿をダブらせてしまう。
すぐ隣に立ったラムの長い髪が、風になびいてあたるの鼻先をくすぐった。髪の匂いで再びフラッシュバック。

(くそっ、もう…たまらんっ…どうする、オレ…)

「ダーリンたら、今日はずっと黙ったまんまだっちゃ。どうしたのけ?」

「あのなぁ…お前だって…赤くなったりしとるじゃないか…」

「だって…」

そこまで言うと、その先はあたるの耳元に顔を近づけ、ひそひそ話すラム。
と、あたるの顔が赤くなった。下を向いて、わざとらしく咳払いをする。

「なんちゅー恥ずかしい事を…明るいうちから言っとるんじゃっ」

「だってウチ、すっごく、嬉しかったんだもん…」

相変わらずラムは人目があろうがお構いなしに、あたるに絡み付いてくる。髪や頬に鼻先を近づけて、匂いを嗅ぐラム。

「ダーリン、夕べの匂いと同じだっちゃ…」

「や、やめんかっ!人が見とるだろーがっ!」

「ね、ダーリン、こっち…」

ラムはあたるの腕を引っ張って、時計台の裏へと連れてきた。

「ダーリンッ♪」

「な、何だよ…」

「まだ昼休み、少しあるから…」

「アホッ!何をお前は…」

しかしあたるは先からのフラッシュバックのせいで、たまらなくなっていた。ラムの腰に腕を回し、ラムもあたるの肩に腕を回した。
顔を近づけて、唇を重ねる。“ぬちっ…”湿っぽい音が、口の端から漏れた。
向き合わせる顔の角度を時々変えながら、まるで性器を交合させるように、深く挿入して絡み合う、舌と舌。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

互いに顔を離したわずかな瞬間、熱い息を吐く。あたるは今にもラムを抱きたくてたまらなくなり、ラムも股間を火照らせていた。
あたるは時折ラムの頬や首筋に吸い付いた。ラムもあたるの頬や耳に軽く食らい付く。

激しく熱いベーゼの最中。突然、大時計が午後を告げる鐘の音を鳴らした。その大音響に心臓が飛び出すほど驚いたあたるとラム。

せっかくの興奮が鐘の音で若干萎えてしまったようだ。仕方が無いのでそそくさとそこから出て、ふたりは教室に戻った。


午後の授業が始まってから教室に入ったふたりに、衆目が注がれる。何食わぬ顔をして席に着くあたるとラム。
が、しかし…ラムのスカーフや髪の毛、あたるの髪や制服の前が少し乱れており、ほんのり上気し薄っすら汗ばんで、心なし息遣いも若干早くなっていた。

ひそひそとどこからともなくお喋りが聞こえてくる。

「こらそこっ!静かにしろっ!」 担任の怒声が飛んだ。

そして学校での1日がどうにか無事に…終わったようだ。

「ダーリン、一緒に帰るっちゃ♪」

「ん、ああ…ちょっと待ってろ」

「うんっ♪」

満面笑みのご機嫌そうなラム。教室を出る間際にあたるに何か耳打ちしつつ、ふたりは帰って行った。

「ね、しのぶ。どう思った?今日のふたり…」

友人の言葉に、しのぶはちょっとだけ笑みを浮かべて、静かに言った。

「やっぱりね…そうだと思った…」

「…何が?」

「ううん、何でも…。ま、いつもと同じなんじゃないかしら?普段からあんな感じよ、あたる君も、ラムも」

「ふーん…しのぶが言うなら、そうなのかしらねぇ…」

その後も他のクラスメート達は「ふたりはデキてるか?デキてないか?」の話題を時々持ち出しては、ヒマ潰しの恰好のネタにしていた。

「まったく今時の若い者は、何を考えておるのじゃ…しかしのう、諸星とラムが、か…」

保健室にやって来た数人の女生徒が、例の話題でキャピキャピとさざめきあっているのを聞いて、サクラはそう呟いた。

そしてまた、夜がやって来た。


あたるは昼間のフラッシュバックをラムにダブらせながら、しかし昨晩とは違う行為で彼女を愛撫した。
昨日とは違う、新しいラムの一面を垣間見るあたる。そんな彼女の“知らない姿”をもっと見たい、とあたるは思った。今まで聞いた事の無い声をもっと聞いてみたい、と思った。

ラムの厚みのある花びらを、あたるの指が割り開いて開花させる。その奥にねっとりした蜜を湛えたつぼみがある。

“くちゅ…”

「…あはぁっ!…」

まだ二度目だというのに、あたるもラムも何故か、互いのカラダの事はわかりきっているような気がしていた。
そして、あたるのギチギチに硬くなった陰茎が、ラムを貫く。

「んあっ!ダーリンッ!」

プルプルと震える胸先。あたるを受け入れて一層身悶えするカラダ、そして快楽に歪む顔、甘く弾き出される、声。

「ラ…ラムッ…くぅっ…!」

ラムの温かな内側で、懸命に自身をしごくあたる。

“ぐちっ、ぐちっ、ぐちっ、ぐちっ…”

激しい交合の音がする。

生で擦れ合う、男と女。あたるはラムのナカに白濁の体液を注入すると、一度自身のモノをラムから抜くために腰を引いた。
逆行する際にも、ラムの膣壁があたるの弱い部分を舐める。ぽってりした陰唇からあたるのモノが抜かれると、濃厚な粘液がたっぷりの糸を引いて、ラムの内股とシーツを濡らした。

「ダーリンのを…もっとウチに…ちょうだい…」

うっとりした表情で、ラムが言う。そして昼間以上の濃厚なベーゼをしながら、あたるは再度、ラムのナカにインサートする。

「もっとたくさん…ウチのナカに…ダーリンが欲しいっちゃ…」

「ん…ああ…ラム…」

そして再びの交合の後に、ラムのナカに己を注入したあたる。その度にラムの表情が変わる。声色も変わる。
こんな時にだけ見られる、ラムの“女”の姿。ビキニ姿では決して感じる事の無い、“女”のラムと、今肌を合わせている。

「ウ、ウチッ…!もうっ、もうっ、ダメェッ!イッ…イッちゃうぅっ!!」

「ラムッ…!!」

激しい交合の末、果てたふたり。そしてその夜も、ふたり枕を並べて、眠りに就いた。

次の日も学校で、あたるは時々フラッシュバックを起こした。が、数日も経つと慣れてしまったのか、そういう事は起こらなくなった。

つまり…若いエネルギーも手伝ってか、あたるとラムは今夜も…。

--- E N D ---

あとがき


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