(番外編) 或る女子高生の会話


友引高校2年×組。クラスの後ろの席で、ある女子が友人としている会話。

「アンタのとこの両親って面白いわよね〜」

「どこが?」

「お父さんあんな感じなのに、お母さんちっとも愛想尽かさないっていうかさ」

「単なる趣味の問題でしょ」

「それにしても、羨ましいかなぁ。この間遊びに行った時だって、すっごい仲良さそうだったじゃない」

「え〜っ?んなことないって。ちっとも。ケンカしてばっかだし」

「そうなの?」

「そうっ!○子は知らないだろうけど、ケンカなんかしょっちゅうよ。ま、すぐに仲直りしてるみたいだけど…」

「ふ〜ん。でさ、お母さんの方がベタ惚れ、って話だけど…お父さんの方もまんざらでもない、っていうかさ」

「…はっきり言っとくけど、見てるこっちが恥ずかしいんだってば。うちのパパとママ見てると」

「恥ずかしいって、何が?うちなんかもう冷え切っちゃってさぁ…だからアンタのとこが羨ましいわけ」

「親が仲いいのは、まぁ…結構な事だけどさ。ちょっとねぇ…アタシだって一応、思春期のオンナノコ、なわけだし」

「どういう事?」

「部屋が離れてるからいいようなもんだけど、いい歳して、恥ずかしげも無く、っていうか…もうっ、いい加減にして〜〜っ!って言いたい時だってあるわよ、そりゃ」

「えっ、なになに?どういう事?」

「…ご想像にお任せしますっ」

「もしかして…歳の離れた弟妹(きょうだい)がデキちゃったりして…」

○子、口に手を当てて、意味深な笑いをこらえている様子。会話の主の彼女、頬を膨らませて○子を睨み付ける。

「なに変な事言ってんのよっ!んな事あるわけないでしょー!」

「…くくっ…まぁ、冗談はおいといてさ…お母さんめちゃくちゃ美人だし、あの歳でスタイルもいいからねぇ。両親の仲がいいってのもわかる気がするわ」

「せめてもうちょっと、あの軽薄な態度やめてくれればいいんだけど、うちのパパ」

「そう言えばさ、隣のクラスの面堂クン、アンタにコクったってホント?」

「あーその話?もうやめてよ。大体うちのパパ、隣のクラスに面堂財閥の息子がいる、って言っただけで、目くじら立てちゃってさぁ。コクられた、ってママに話してるの聞かれちゃったら、それだけで“そいつだけはいかーんっ!”って」

「へぇ〜なんで?上手くいけば玉の輿じゃん」

「どーもアイツのお父さんとは、なんか深〜い因縁があるとか無いとか、で」

「つまり、ロミオとジュリエット、みたいな?」

「そんなロマンチックなワケ無いでしょ、あの面堂よ、面堂」

「確かに顔もいいし、お金持ちだし、玉の輿間違い無し、だけどね。ま、アンタのタイプとはちょっと違うか」

「アタシのタイプ?言った事あったっけ?」

「どーもアンタって…ファザコンの気があるのよねぇ。お父さんの話ばっかじゃん、お母さんの事より」

「誰がいつ、そんな事言ったのよっ」

「話してればわかるって。アンタ、お母さんにそっくりだし〜、性格もちょっと似てるじゃない?つまりオトコの好みも、似てるんじゃないかなぁ、と思って」

「そんな事、どーでもいいでしょっ。アタシのタイプはそんなんじゃ無いんだからっ」

「羨ましいって言えば…アンタってすごくモテるくせに、その中に“付き合ってみようかな〜”って思うようなオトコいないの?いないんなら、私が分けて欲しいくらいだけどね」

「どのオトコもちっとも面白く無いんだもん。ちょっとくらい軽薄でもいいから…あっ」

「やっぱりねぇ〜ファザコンだ〜…くくくっ…」

「そんな事、他の誰かに言ったりしたら〜…」

「はいはい、わかりました〜。怒らせて感電させられちゃ、たまんないし〜。ところでさ」

「まだなによっ!?」

「あの、アンタのお父さんにそっくりのお兄さんは元気なの?今、大学生だっけ?確か。…ああ、そっか、ファザコンもだけど、ブラコンでもあるわけだ、もしかして〜」

「だ〜か〜ら〜!あのアホのアニキの事はどーでもいいでしょーがっ!今頃ちゃんと学校行ってるかも、怪しいもんだわ」

「実家に来ないの?」

「もう、全然っ。学校入ったら、それきり音沙汰無しよ。ママも呆れちゃっててさぁ。パパに似てるから、色々心配らしいけど」

「ふ〜ん…アンタんとこも色々気苦労が絶えないわけだ。…あ、チャイム鳴ったね。次の授業、なんだっけ?」

「温泉マークの、英語」

「あははっ、温泉の英語かぁ〜。あの先生も長いよね、この学校」

「たまにアタシに“両親は元気か?色々大変じゃないか?”なーんて聞いてくるけどね。懐かしいんだか心配なんだか知らないけど〜」

「それじゃあ私、席に戻るわ。また帰りね」

「うん、じゃあまた後でね」

もしかして。そう遠くない未来に、友引高校のとあるクラスで。ある女子高校生同士の、こんな会話が展開されているかもしれない。

--- E N D ---
あとがき


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