例えばこんな日々9 〜ふたりはふうふ(後編)〜


恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす
口に出すものよりも出さないものの方がかえって心中の想いが切である(広辞苑)

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「お、そうじゃ…」

第二ラウンドになだれ込む時になって、あたるは何かを思い出し、タンスの引き出し奥をごそごそと探り出した。そして何かを取り出すと、ラムに背中を向けたまま、何やらこそこそと妙な動きをしている。

「何してるっちゃ?もしかして…アレ、着けてるのけ?今まで着けた事無かったのに」

ラムはどうやら、あたるが“コンドーさん”を装着しているものとばかり思っていた。
少しすると、あたるは後ろ向きに歩いてきて、横すわりをして待っているラムの直前でクルリと向きを変え、ゆっくり彼女の上に倒れ込んだ。
後ろ手で上半身を支えつつ、あたるの重みでゆったりと仰向けになっていくラム。

先の行為の余韻が、まだカラダの外や内側に残っている。なので前戯もそこそこに、ラムは膝を立てて足を開き、乾ききっていない秘所を開放した。
先よりたやすくラムのナカに入ったあたる、彼女の内部と密着してこすれ合う感触をゆっくり味わうようにして、ラムの奥に自身を押し込んだ。
根元近くまでぬっぽり挿入すると、あたるは更に腰をぐいっ、と前に押しやった。ラムのやわらかなひだに、あたるの剛毛が絡み付く。

と、突然ラムが小さく悲鳴を上げた。

「…ちゃあぁっ!な、何っ!?ダーリンッ…な、何、した、っちゃっ…ああんっ!」

微妙な振動が、ラムの陰核の裏筋から先端にかけて伝わってきたのだ。

「ちゃっ!ちゃぁぁっ!あああぁぁああっ!」

たちまちラムの膣前庭から、たっぷりの粘液が分泌された。
両腕を頭の上に投げ出して身をよじり、感じている声を思い切り上げるラム。脇を開いても決して横に流れる事の無い見事な乳房が、タテヨコ斜めに大きくゆさゆさと揺れまくった。その動きに合わせて胸の頂点もプリプリと小さく跳ねる。

ラムの弱点を知り尽くしているあたる、たまには悪戯を仕掛けてやろうと思い、ある所からあるものを、ラムに内緒で購入していたのだ。

今まさにラムを攻めているのは、あたるのイチモツ根元に装着したペニスリングの、ちょうど女性器の陰核に当たる部分にセッティングされた、小型ローターだったのだ。
肌に押し当てると動き出すそれは、細かな振動で、ラムの弱点のひとつである陰核を思い切り刺激した。あたるのクンニとは違った刺激と振動の攻めに、ラムの腰が浮き、尻肉がトスン、トスン、と布団の上で跳ね回った。

「あ、あ、あ!そ、そんなとこっ、したらっ…!いやぁっ…!」

ラムの陰部からは、パリパリと小さな音を立てて、電気が漏れ出ている。あたるのイチモツにそれが絡み付くと…その刺激で、彼のモノは更に充血した。そしてリングには他に仕掛けが施してあり、それがラムを更なる快楽の深みへと、誘う事となった。

内と外からの同時攻撃による“超”快感が、ラムの頭とカラダを熱くしていく。

今日のあたるのカラダは、いつもより帯電時間が長かった。ラムの全身から放たれた電気があたるにまとわり着く。いつもならそれほどカラダに留まらず、外へ流れ出てしまうのに、今夜のあたるの全身からは、パシッ、パチパチッ、と音を立てて、小さなスパークが飛び散っていた。手指も、パリリッ、パリッ…と、まるでラムのような放電現象を起こしている。

それがリングのもうひとつの仕掛けだった。摩擦の静電気やその他の方法で充電させるとローターの動力源になるのはもちろん、リング内部に組み込まれたマイクロチップ・センサーが、装着した人間の体質や相手の反応に応じて、蓄えていたエネルギーをさまざまなパターンで放出するのだ。

その名も【エターナル・エレキテルリング・鬼なかせ】。もちろん鬼星製である。

あたるはラムと繋がったまま腰をひねって、軽いグラインドで彼女の内部をかき回した。ローターの振動が伝わる部位が変わると、ラムの両脚がしなやかな動きで、更に大きく、開かれた。

「あっ、あっ、あっ、あっ!」

理性などすっかり吹き飛んでしまったのか、乱れに乱れ、あたるに痴態を曝し続けるラム。そんな彼女に更なる追い込みをかけようとする、あたる。

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もちろんラムの事は一番に愛していたから、普段はノーマルな営みがほとんどだったが、長年共にいて、若い時分から秘密に戯れる夜を送っていれば、時にはこんな風に彼女をよがらせ、激しく乱れさせたくなる事もある。

特にラムに対する“本音”を心の奥底に秘めたままだったから、その思いが本能や欲情に加算されて、時として彼女が驚くような行動を示す事があった。
喩えるならば…熱くたぎるマグマの如き思い。それがラムとの行為で一気に噴き出し、無尽蔵のそれは涸れる事なく溢れ続け、あたるの行為に拍車をかけた。

彼は全身全霊を込めて、ラムの全てを愛した。言葉の代わりに行動で示した。そして、切なるその思いを…彼女のナカに注ぎ続けるのだ。今までも、そしてこれからも。

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あたるは股間の交合を続けながら、チリチリとスパークを飛散させている両手で、大きく揺れているラムの乳房をそっと掴んだ。彼のスパークが、彼女のふたつの膨らみのカチカチに尖った頂点に向かって集まり、乳輪と乳頭のくびれ部分を巻き取った。

巻き取った勢いのままスパイラルを描いて、先端へと駆け上がる。駆け上がる時の求心力で、ラムの複数ある乳腺からも極細の電気が引き出され、中心に集められた。寄り集まったらせん状のスパークが、回転しつつラムの乳首を軽くねじってこすり上げ、上空へ抜け出ると“バチッ!”と音を立てて一瞬の間に消失した。

それは本当に短い間の出来事だったが、あたるのスパークの愛撫で乳房の頂点を引き上げられると、ラムは近所迷惑お構いなしの声量で叫んだ。

「ちゃああぁぁぁーーっ!」

ラムの陰部からの放電量が増え、それがあたるのイチモツのリングに充電されると、ローターの振動に微弱な電気刺激が加わった。そして…。

「ちゃあぁぁーーーっ!イッ、イッちゃうぅぅぅぅっ!!」

ラムの陰部からは電気を含んだ愛液が零れ、彼女は両足をカクカクカク…と震わせて、絶頂した。


「ダーリーーンッ!だめぇーーーっ!」

少しのインターバルの後、再び一戦交え出したふたりだが、確実にあたるが優勢だった。
ラムの放電で充電されたリングからあたるのイチモツ先端に向かって、電気が放たれた。もちろん挿入したままだったから、ラムのナカへと流れ込み、彼女の弱点を、存分に痺れさせた。

「あはぁっ!そこっ…そこはっ…!!」

ラムが腰をひねると、接合部が“ぐちゅっ…”と音を立てた。今の刺激で確実に愛液の量が増えたようだ。それと同時に、尖った乳頭を帯電した指先で軽く摘んでしごいてやるあたる。そして乳房全体をやんわりと揉み込む。

“パチパチパチッ、チリリッ…”

揉み込むと、先と同じようにラムの乳先から、らせん状の電気が駆け上がっていく。

“ぬちゅっ、ぬちゅっ…ぐちっ、ぐちっ…ぐちゅっ、ぐちゅっ…”

段階的に交合音の濃度が増していく。淫らな音を寝室に響かせて、ラムと繋がり、自身を送り込むあたる。弱い電気がラムの内部に流れ込み、陰核や陰唇がローターの振動と弱い電流で休む事無く攻められ続ける。

ラムは激しく悶え続けた。そして恍惚感ともうろうとした様子がない交ぜになったような表情で、あたるの愛し方を享受していた。
カラダの内部から湧き上がる強烈な快感が、次第にラムの思考を停止させていく。

弱い電気を帯電させほとばしらせているあたるの腕の中で、両足を腰に回して彼にしっかりしがみ付き、あたるの突き上げで揺すられ続けるラム。
そして先から何度も、あたるのリングからラムのナカへと電気が流れ込んで、彼女のウィーク・ポイントを容赦無く痺れさせていた。
彼女の頭の中が、フェードアウトとフェードインを繰り返す。

「ちゃっ…ちゃっ…ちゃあぁぁぁーーーっ!」

あたるの胸の下で、電気をまとったラムのカラダがしなやかに反り返った。
それと同時にラムの子宮からも弱い電気が放出され、彼女のナカにある電気をまとったあたるのイチモツに引き寄せられると、それを包み込んだ。 そして電気を橋渡しにして、ラムの内部で生殖器同士が合流すると、あたるは思わずラムの名を大声で叫んだ。

「ラッ、ラムーーーーッッ!!」

“びゅくびゅくっ…びゅるるるっ…”

電気と熱を帯びたあたるの精が、ラムの中心に向かって、勢いよく放出された。

「ダーリンッ!大好きっ!!」

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ふたり分の汗を吸い込んで、じっとり重くなった布団。そして若干アブノーマルで濃密な営みが、延々と続いた。
汗やさまざまな体液が混ざり合った性交の匂いに包まれ、夜が更けるほどにヒートアップしていくふたり。感じ合うままに、ラムはあたるのイチモツをたっぷり愛し、あたるもラムの陰部をたっぷり可愛がってから、アクロバティックな体位で何度も繋がり合った。

座位での交合を終えた後、布団の上で向き合うふたり。ラムの乳先から、余韻のスパークがほとばしっている。あたるが乳房をぐいっと寄せると、左右の乳先のスパークが、もう一方の頂点へと引き寄せられた。まるでプラス極とマイナス極を繋ぐように、ラムの乳房の上に“放電のアーチ”が出来上がった。

両極同士が磁石のように引き付け合い、その影響で引っ張り上げられるラムの乳頭。パリパリと音を立てている“放電のアーチ”に、あたるは今抜いたばかりのイチモツを通した。ラムが乳房の両脇に手を添えて、あたるのモノを挟んでやる。
互いに汗や体液でカラダ中濡れていたので、すぐさまパイズリを始めたラム。自身の2極を繋ぐ放電で乳先を引っ張り上げられる感覚が、彼女の行為に拍車をかける…。

そんなシチュエーションが、興奮を通り越して、ふたりの理性を欠片ほども残さない。

若い時分から時々、狂ったように互いを求め、貪り合うような行為に耽っていたあたるとラム。そして今現在に至っても、それは変わらない。

言葉の代わりに行動で熱い思いをラムに注ぎ込むあたる。一方のラムは、たくさんの“好き”や“愛してる”を一生分言い切ったとしても、まだ伝えきれないものがあるような気がして、彼女もやはり行動で示すのだ。

“言葉では伝わらない思い”が見事に合致すると、時が経つのも忘れて行為に耽るふたり。気が付けば空が白み始めている事も、少なくなかった。

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「愛してるっちゃ…宇宙で一番、ダーリンの事…」

ラムがあたるをイカせようと奮闘する。先まであたるが装着していたリングを外すと、ローター部分を彼の先端に押し付け、巧みな指遣いで睾丸から裏筋にかけてをくすぐり、充血して硬くなったイチモツの先から、白いものを噴き出させる。

ラムがそれを口を使ってきれいに舐め取り、清めてやる。するとたちまち元気を取り戻す、あたるのイチモツ。

「ウチら夫婦だから…うんとエッチな事しても、誰にも遠慮する事ないっちゃ…昔からも…これからも、ずーっと…」

布団の上に座って向き合い、あたるはラムのカラダをきつく抱き締める。

「そうだよな…オレたち………だから、誰に遠慮せんでも…。ラム、オレな………あ、いや…」

すっかりあたるの扱いに慣れた様子のラム、あたるの頬や頭を優しく撫で回しながら、軽いキスを数回繰り返した。

「無理する事無いっちゃよ…ねぇ、憶えてる?2度目の鬼ごっこが終わった後の事…」

大きなキノコが片付いた後も、床や屋根は大きな穴が開いたままだった。晴れた夜には、星がよく見えた。

「あの夜、星を見ながら…こんな事してたのが、昨日の事みたいに思えるっちゃ…そう思わないけ?ダーリン」

汗とホコリまみれのカラダのまま、暗い部屋で声を押し殺して交わったあの夜を、ラムは思い出していた。

「もうそろそろ…眠るっちゃ?」

「いや、何だか目が冴えて、眠れそうも無いんだが…」

「でもダーリンやっぱり、スケベだっちゃ。最初はいつも通りに、なんて言ってたくせに。あんなもの使うんだもん」

「まぁいいではないか。前にオレが作ったブラとパンティーも、ちゃんと作り直しといてやったからな」

「ところで…あんなもの、どこで買ったっちゃ?地球のものじゃなさそうだったけど…」

「ああ、あれね…お前がなかなかカタログ取り寄せんから、自分で頼んでみたんじゃ」

「え…もしかして…ウチの名前、使ってないっちゃよねぇ?でもダーリンの名前でも、ちょっとマズいかも…」

「偽名じゃ、偽名。気が付かんかったか?郵便受けに“株式会社L&A”と貼っておいたのだ。…で、思い付いたのだが」

あたる、再び例のリングをラムに見せると、ローター部分を彼女の乳首に押し当てた。

「ちゃあぁっ!…ダーリンたら、いきなり何するっちゃ…やんっ…」

「うひひひ…と、まぁ、こんな使い方も出来る、っちゅー代物じゃ。商売になると思わんか?」

「…つまり…もしかしてウチは…実験台に、されたのけ!?…ダーリンッッ!!」

「ラムだって、結構良かったんじゃないのか?…あんなに乱れて…すごかったぞ、おい…」

そう言うと、あたる、再び手にしたリングのローター部分をラムの肌に押し当てた。乳房を下方から撫で上げつつ、悪さをするように、ラムの乳首の根元に押し付けた。

「ちゃっ!だめぇっ…またっ…その気に、なっちゃうぅ…」

と言いつつ、湿った布団にゆっくり崩れていくふたり。あたるの手が…リング片手にラムの秘所に伸び、そして…。

「ああぁぁぁあああああぁあーっ!!しっ、痺れるっちゃぁ!そ、そんなにっ、押し付け無いで〜〜っ!」

あたるに、嫌よ嫌よと言いながらも、ラムはしっかり足を広げて、彼を待っていた。
そして再び、リングを装着する、あたる。

「いやぁっ…!そんなにっ、そんなっ、とこ、まで…したらっ…ウ、ウチッ…お、おかしく、なるっ…ちゃあぁーーっっ!」

再び弾けるラムの裸体。あたるの腕の中で、安心しきって思う存分、乱れる。そしてあたるもラムのナカで、思う存分、暴れ回るのであった…。


翌日、ヘロヘロになりながら出勤していったあたる。ラムも腰砕けのていで、その日はぼんやりしたまま過ごしていた。
夕方になり、晩ご飯のおかずを買いに出かけたラム。近所のスーパーで、今夜は何にしようかと考えながら、材料をカゴに入れていく。

そして帰り際、本屋の前を通り、何気に中へ入って雑誌コーナーを回っていた。するとある雑誌の表紙から、次のような文言が目に飛び込んできた。思わず知らず、それに見入るラム。

【ふうふ愛の四十八手・究極のテクニック集】

(…こんなとこで立ち止まってたら、変に思われそうだっちゃ…)

そしてラム、女性雑誌のコーナーで、適当な数冊を手にすると、さっきの表紙の雑誌を間に挟んで、レジに持っていった。

「…あ〜恥ずかしかったっちゃ…でもウチだって立派な人妻なんだし、このくらい買っても変な事、無いっちゃよね…うんっ」

帰って買った本を出してみると…適当に取った数冊の中に、【はじめての赤ちゃん】と大きく書かれた1冊が混ざっていた。

「やっぱりそろそろ…避妊するの、やめとこうかなぁ…もうすぐ危険日のはずだし…うふっ♪」

ただしこればかりは“授かりもの”だし、地球人と鬼族の夫婦という前例も無いので、すぐに上手くいくのか、はたまたもうしばらく“ふたりだけ”の日々が続くのかは…いわゆる“神のみぞ知る”といったところか。

そしてその日は早めに帰宅したあたる。風呂を済ませた後、ラムが今日買ってきた本の話をして、最初に目に付いた例の雑誌を持って来た。

「…まだ中見て無いけど、これだっちゃ」

「何を買っとるんじゃ、何を…みっともないだろーが。オレが買うならともかく…」

「だってぇ〜…」

「今になって何を照れとるんじゃ。もうこんなの買うなよ、こっちが恥ずかしいわ…どれ、見してみ」

ページをめくるあたるの隣にぴったり寄り添って、一緒に中を見てみるラム。ひと通り見終わって、ふたり揃って一言。

「特に目新しいもんも…」  「…無いっちゃねぇ…」

そして互いに顔を見合わせて、軽く笑った。

「やっぱラムの放電刺激の方が…」

「やっぱりダーリンの秘密兵器の方が…」

「すごいな…」  「すごいっちゃ…」

そこでまた、ふたり揃ってひと笑い。

「さてと…」

雑誌を閉じて立ち上がったあたる、冷蔵庫を開け、中をのぞきながらラムに言った。

「おいラム、缶ビールは?」

「あ、買い置きもう無いけ?買ってくるの忘れてたっちゃ。今からコンビニ行って来るっちゃ」

「いや、まだ寝巻きじゃないから、オレ買ってくるわ」

そしてあたるは近所のコンビニへ出かけて行った。彼が出て間も無く、玄関のチャイムが鳴った。

「あれ?ダーリンお財布でも忘れて行ったのかな?」

カギを外してドアを開けると。そこにいたのは、メガネだった。

「メガネさん、どうしたっちゃ?こんな時間に。ダーリンなら今いないけど」

「いえ、ラムさんにお話があって…お邪魔してもいいですか?」

「うん…メガネさんなら別にいいけど…どうぞ、だっちゃ」

キッチンに通されたメガネがテーブルに目をやると、あの雑誌が置いてあった。

「ウチに話って、何だっちゃ?メガネさん」

「あたるとの事は…聞いてます。しかし…あたるなんかでいいんですか?」

「え…何を言ってるっちゃ?」

「今更ですが、俺じゃダメですかっ!?…い、一度でいいから、お、俺の思いをっ!ラムさんっ!」

「ちゃっ!」

メガネはずいっ、とラムに寄ると彼女の両肩をガシッ、と掴んで、ふたりの寝室の方へ強引に押して行った。

「ちょ、ちょっと、メガネさんっ!どうしたっちゃ!?それにそっちは…」

「…ラムさんも、あの手の雑誌を見るんですね…お、俺と手合わせ、し、して…いや、とにかくっ!一言で言えば、貴女を抱きたいっ!!ラムさんっ!!」

「離すっちゃ!離してっ!」

そして戸を開けたままにしていた寝室にラムを押し込んだメガネ、敷いてあった布団に彼女を押し倒した。

「いやぁっ!やめるっちゃ!メガネさんっ!」

「俺の思いを一度でいいっ!受け取って下さいっ!!ラムさんっ!!」

「…んもーーーっ!!夜にいきなり訪ねて来て、ウチとダーリンの部屋に入るなんてっ!許せないっちゃーーーっ!!」


“バリバリバリバリッ!ドバババババーーーーッッ!!”


久々に、超強力な電撃を放ったラム。メガネはしこたま感電させられ、天井灯は破裂し、部屋の戸や窓が吹っ飛んだ。それから間も無くして帰って来たあたる、部屋の惨状と黒コゲになって倒れているメガネを見て唖然とし、次いでラムに電撃の理由を…大体の原因はわかったが…聞いた。

そして翌日、遂に大家から“最初の約束通り立ち退くように”との、引導を渡されてしまった。

「せっかく貯めておいた結婚式の資金が…全部パァになったっちゃ…」

「仕方無かろーが。最初にここに入る時の約束だったんだからな…アパートの一角が半壊したんじゃ、仕方あるまい…」

「でも、せっかくウチがコツコツ貯めてきたのに…それに、これからどーするっちゃ?」

「とりあえずオレの実家に戻るか…そうガッカリするなって、な?ラム」

しかし、あたるの両親は冷たいもので、“まだまだ家の修理に使ったローンが残っているし、一度出た以上は自分たちでどうにかしなさい”と、けんもほろろに拒否されてしまった。
仕方が無いのでラムのUFOを新しい住居にする事にしたのだが、ランのUFOのように置いておける適当な土地も無かったので、あたるにとっては少し不便だった。
そこであたるは両親に無理矢理頼み込んで、実家の上空すぐの所にUFOを停泊させてもらい、屋根から出入りさせてもらう事にした。いわゆる二世帯住宅…のようなものである。

(そりゃ、ラムから面堂に頼んでもらえば、ふたつ返事で家やUFOの事は解決するだろーが…缶ジュースの金を借りるのとはワケが違うし…そんなでっかい借りを作ってしまったら、後で何を言われる事か…)

面堂がいくらかおとなしくなったとはいえ、やはり完全に安心して相談を持ちかけるには、不安があった。昔“運命の扉”の中で見た未来には、面堂とラムが夫婦になっていたものもあったからだ。

(今更心配する事では無いのかもしれんが…しかしなぁ…)

そしてUFO内にはふたりが当面生活するための、最低限の家財道具を揃えた。いずれは普通の住居を探すつもりだったからだ。
引越し当日の夜、疲れていたので早めに眠りに就いたふたり。

そしてあたるは、こんな夢を見た。

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「ダーリン、ウチの事、好き?」

ラムがいつもの言葉をあたるに投げかけてくる。

「ああ、もちろん…ずっと言わんかったが…」

そしてあたるは自分にとって“禁句”とも言える言葉を、繰り返し何度も、ラムに囁いた。

「うふふっ…やっと言ってくれたっちゃね、ダーリン。その言葉だけをずっと聞きたかったから、ウチはもう満足だっちゃ…これでウチも、安心して…」

目の前のラムが、すーっと遠のいていく。自分から離れてどんどん小さくなっていく。そして突如現れた面堂の元へ行ってしまうと、ふたりは寄り添って腕を組み、更に遠のいていく。

「ちょっ…ラムッ!待てよ、待ってくれっ!何で面堂んとこに行くんだ!?ラムーーッ!!」

遠くにいるふたりの声だけが近くから聞こえてきた。

「ラムさんはもらっていくぞ、諸星。さ、行こうか、ラム」

「あの言葉が聞けたから、これでウチも安心して、終太郎と結婚できるっちゃ。…ダーリン、バイバイ…」

「ラムーーーーッッ!!!」

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「…はっ!…ゆ、夢だったか…しかし何ちゅー嫌な夢じゃ…ったく」

今の夢で飛び起きたあたる、隣ですーすーと寝息を立てているラムの顔を見、彼女を起こさないようにベッドから抜け出た。そして冷蔵庫から缶ビールを出して開けると、一気に飲み干した。

「いくら夢とはいえ、何で面堂が出てくるんじゃっ。…やっぱ変に気にし過ぎたのが、良くなかったんだろーか…」

手近にあったイスに腰かけ、しばしぼんやりするあたる。

「…そう言えば、どっかでこんな歌のようなもんを聴いたような、気がするな…節は忘れたが…。“恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす”…か…オレ、ちょっと酔ってんだな…さて、もう一眠りすっか…」

そしてあくびをしつつ、ひとりごちる。

「やはり最期の最期まで言えんよなぁ…第一、何であんなにオレの口から聞きたがるのかが、実際よくわからんわ…ラムの考えてる事は、ようわからん…」

口にしなくてもわかっているものとばかり、昔から思っていた。最近は以前ほど、その“質問”を浴びせられる事は無くなっていたが、時々思い出したように聞かれる事があった。

「しかし…聞かれる回数が減ったという事は、オレへの気持ちが冷めてきたんじゃ…いや、んなアホな…それとも清水の舞台から飛び降りるつもりでオレから言ってしまった方がいいのだろーか…うーーむ…」

ぶつぶつ言いながらベッドに戻ると、ラムは目を開けて横になっていた。

「何だ、起こしちまったか?」

「ううん、そうじゃないけど。ダーリン、何心配してるっちゃ?」

「…何の事だ?」

ベッドに入りながらとぼけてみせるあたる。ラムが上半身を起こしてあたるの方を向いた。

「全部は聞こえなかったけど、あれだけぶつぶつ言ってたら大体はわかるっちゃ。ウチが前ほど“ウチの事、好き?”って聞かないから、自分から言ってしまおうか、とか何とか…」

「そんな事は…言っとらんぞ」

「それに、終太郎がどうとか、ウチの名前寝言で呼んだりとか、してたけど」

「もしかして、起きてたのか!?ずっと?」

「あれだけ大きな寝言言ってたら、誰でも目、覚ますっちゃよ。…何にも心配する事なんか無いのに」

「だから…何を?」

「ダーリンが“いまわの際に”って言ったから、ウチとダーリンの“3回目の鬼ごっこ”はちょっとだけペース落とす事にしたっちゃ。先はうんと長いんだし。でも、昔の2回ともダーリンが勝ってるから、今度こそっ!ウチが勝ってみせるっちゃ!」

「そういう事か…でも今度もオレが絶対に勝つからな、絶対じゃ!」

「…何でそんなにムキになるっちゃ?変なダーリン」

「“ゴール”を決めるのは、最終日ギリギリの方が、白熱して興奮するだろーが。2回ともそうだったんだし」

「確かにそうだけど、今度くらいはウチが勝ちたいっちゃ!」

「ラムが勝負に勝って過去の雪辱を晴らしたい!という気持ちもわからんでは無いが…早くにゴールしてしまったら後の人生、ちっとも白熱も興奮もせんぞ?きっと。それでもいいのか?はっきり言ってオレは嫌じゃっ!!最終日ギリギリまで焦らし焦らされる、あの張り詰めた緊迫感、背水の陣で後が無い崖っぷち状態の危機感っ!!どれもこれも考えただけで〜〜…」

「白熱して興奮するって…ダーリン、もしかしてっ」

「背筋がぞくぞくしてきて〜〜…もうっ、辛抱たまらんっ!!」

「ちょっ…ダーリンたらっ…やんっ…」


【・・・落雷により映像が乱れております。しばらくお待ち下さい・・・】


「…あ、そうじゃ。思い出した」

「…はぁ、はぁ…な、何を…だっちゃ?」

「あのリングを商売にするという話じゃ。一緒にラム用に作ったブラとパンティーも売ってみようかと思っておるんだが」

「…ウチはもう、実験台になんか、ならないっちゃよ…あ、でも、やっぱり…いいっちゃよ、ウチで試してみても。他で実験されるくらいなら、いくらでも協力するっちゃ」

「実はもう、次の候補の商品を買ってあるのだが…ほれ。今からどうじゃ?」

「んもうっ!今何時だと思ってるっちゃ!ダーリンのバカッ!…でも、商売として上手くいきそうけ?」

「やってみなけりゃわからんさ。とりあえず副業でやってみて、引越し資金と、それから…衣装はレンタルでも…いいか?」

「うんっ、もちろんっ♪…あ、そうそう、ウチも忘れてたっちゃ」

「何じゃ一体?」

防音効果バッチリのUFO内で、ニコニコしながらラムが叫んだ。

「土曜の夜は、子供を作るっちゃーーーっ!!」

「…さいですか、はいはい。オレもしっかり協力しますよ…」

ラムの気合いの入りように思わず圧倒されるあたるであった。

“白熱と興奮”の3本勝負、最後の一戦で勝利をおさめるのは、果たしてどちらであろうか。
本当に、長い長〜い、勝負になりそうである。そしてこの勝負、100人の観客がいれば100通りの結果が用意されている…はずである。

--- E N D ---
あとがき


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