Sweet, sweet, sweet.


毎日が問題無く過ぎていく。いや、問題が無いわけではなく、あたるのガールハントもそれに対するラムの電撃制裁も、面堂が刀を振り回すのも、しのぶが机をぶん投げて「男なんてーーーっ!」と怒りをぶちまけるのも、彼らにとっては、“何事も無い”平凡な日常の一場面なのだ。

常人の感覚からすると“尋常ならざる日常”であっても“平凡な日常”として落ち着いてしまっている。そして彼らはそれを当たり前の日々として過ごしていた。“因果律”の崩壊、あるいは消失…という事象が起きるかもしれない、などという懸念は一切念頭に置かないままに。

昼休み、あたるがいつものように姿をくらましたので、ラムは彼を探して校内を飛び回っていた。サクラがいる保健室にも行ってみたがいない。
サクラはちょうど昼食を終えたばかりらしく、日本茶をすすりながら窓の外を眺めていた。そしてラムが入ってきたのに気が付き、声をかけてきた。

「何じゃ、また諸星は行方不明か?おぬしも忙しいのぉ…昼休みくらい野放しにして、たまにはゆっくり過ごしたらどうじゃ?」

「だって放っておいたら、どこで何するかわからないっちゃよ。ウチがちゃんと見てないと心配だっちゃ」

「ふふっ…とか何とか言いながら、諸星の姿が見えないのが、つまらないだけではないのか?」

そして食後の饅頭を頬張りながら話を続けるサクラ。

「ま…年がら年中、監視やら束縛やらしておるより…昼間くらいは自由にさせてやらんと…んぐっ…」

饅頭を飲み込むために一旦話を切って日本茶をすする。

「…ラムが心配する気持ちもわからんでは無いが…あれはあれで一種のレクリエーション、みたいなものではないか。適度にエネルギーを発散させてやった方が…あやつの事じゃ、エネルギーが有り余り過ぎると…あ、いや、これ以上は余計な事じゃな」

「ダーリンには浮気して欲しく無いから、いつも口酸っぱくして言ってるのにっ。サクラまでそんな事言うなんて、あんまりだっちゃ」

「しかし何故そこまであの諸星にこだわるのか…常に視界にいないと不安か?ま、もっともあやつを信用しろ、というのも無理があるがな…しかしラムのこだわりようも、私には少々理解しがたい、とは思っておったが」

「サクラは心配じゃないのけ?つばめが今どこで何してるのかなー、とか」

「…ま、その辺はラムがもう少し大人になれば、わかる事じゃ。諸星が変わるかどうかはともかく…。いや、そんな事よりもう少し他の事にも目を向けてみたらどうじゃ?しまいには諸星に振り回され過ぎて、おぬしが疲れるだけじゃぞ」

サクラはサクラなりの見解でラムにあれこれ説き聞かせたが、どうもラムにはそれが気に入らなかったらしい。ぷいっ、と頬を膨らませると、黙って保健室のドアから出て行ってしまった。

「私もすっかり慣れてしまっておったが…ラムはどうしてあそこまで諸星にこだわるのか…。若い者の考え、こと、ラムの場合は宇宙人という理由もあろうが…理解しがたいものがあるのぉ…」

しばらくして午後の始業の鐘が鳴った。ラムが教室に戻ってみると、涼しい顔をして自席に座るあたるがいた。そして始業の鐘が鳴って間も無く、担当教師の急用でこの時間は自習に変更になったと伝達されてきた。

「ダーリンッ!一体どこで何してたっちゃ?ウチ、ずーっと探してたのにっ」

「どこで何してよーが、オレの自由だろーがっ…わっ!」

「この暑い中を校内隈なく奔走していたラムさんに対する答えがそれかっ!?貴様というやつは…。ラムさん、諸星なんぞいい加減見限った方が貴女のためです。このままでは…諸星に振り回されて、ラムさんがお疲れになるだけですよ」

愛刀をあたるに振り下ろし彼が真剣白刃取りで歯を食いしばっている間に、ラムに顔を向けた面堂は言葉の最後にサクラと同じ事を付け加えた。

「ウチはちっとも疲れてないっちゃ!余計なお世話だっちゃ。それに皆してどうして同じ事ばっかり言うっちゃ?」

「それは貴女を思えばこそ…何も諸星ひとりに固執せずとも、貴女を大事にする男性が、目の前にもひとりいるではないですか」

「ホントに余計なお世話だっちゃ!終太郎、今すぐダーリンから離れるっちゃ!そうでないと〜…」

腕を組んで威嚇の放電を始めるラム。その姿にたじろいだ面堂は、やむなく刀を鞘に収めた。

「ほれ、やっぱりラムの電撃が怖いんだろーが、面堂も。…オ、オレはなぁ〜、ちょーっと女の子の住所と電話番号を知りたいな〜と思っただけで、年がら年中じゃっ!人の身にもなってみろっ」

「しかしそれは因果応報、というやつではないのか?貴様が女性にちょっかいさえ出さなければ、ラムさんだって余計なエネルギーを使わずに済んでいるはずだ。つまり“因果法則”の大元は全て貴様にあるっ!違うか?諸星」

「ラムが勝手にオレを縛りたがってるだけじゃっ。だったらオレも勝手にしていいはずだろーがっ。違うか?え、面堂」

男同士の火花が散るような対峙。その緊張感を崩すように、ラムが面堂に聞いてきた。

「何だっちゃ、その“いんがほうそく”って」

その一言で場の空気が一気に緩んだ。

「“因果法則”または“因果律”とも言いますが、何らかの結果は全て、何らかの原因があって起きうるもの、という考え方の事です」

「ふーん…それじゃあ、ウチの電撃は全部ダーリンの浮気が原因だから…浮気さえ無くなれば、ウチの電撃っていう結果も無くなるっちゃ。そういう事け?」

「そうですね、ラムさんのおっしゃる通りです」

「ね、ダーリン。ウチの電撃が嫌だったら、浮気やめるのが一番手っ取り早いっちゃよ?」

「…ラ、ラムの電撃が怖くて〜〜…ガールハントが出来るかーーーっ!!」

「まだそんな事言うのけーーーっ!!」

そして…いつも通りの超特大電撃があたるに加えられ、教室の照明を破裂させ、窓を吹き飛ばし、教室内は惨憺たる有様に。結局午後の授業の全てはそれで潰れたのであった。


「昼くらいはオレの好きにしたっていいだろーが。昼休みの腹ごなしに、とか。それに放課後の楽しみを根こそぎ奪われてしまったんじゃ、この若い肉体に有り余っとるエネルギーの行き場が無くなるではないかっ」

「ダーリンのエネルギーの全部、ウチに注いでくれれば…いいのに」

夏の夜は窓を開けて夜風を入れていても、空気自体が熱と湿気を帯びているので、蒸し暑い。まだ早い時間なので街の家々の窓からは数え切れないほどの明かりが見え、夜の闇をほんのり明るくしている。そのせいもあって、都会の空は星がよく見えない。

ラムは時々ベランダに出て夜空を仰ぎ見る。地球から遥か離れた故郷の星がもしかしたらどこかに見えるのでは…などと思ってかどうかはわからないが、とにかく晴れている夜は、ベランダに出て空を見上げていた。

あたるはそんなラムの後ろから静かに近付いて、彼女が気付かないうちに、何食わぬ顔をして隣に立つ事がしばしばだった。

そして今夜も、ベランダに並んで立ち、会話をする。

「そうもいくかっ…」

「何でだっちゃ?」

「…今くらいで十分だろ?」

「…う、ん…そうだけどぉ…もしダーリンのエネルギー全部使ったらどうなるのか、ダーリンはわかってるのけ?もしかして」

「いや、わからんっ。ただ、昼間のガールハントをせんと、アレだ…前にラムが自分の電撃に当てられて弱ったみたいに…」

「何だかダーリンに都合のいいようにしか聞こえないけど?ウチが自分の電撃に当てられたのと、何か関係あるのけ?」

「うーむ…上手い事説明出来んが…何かこう…あまりいい結果にはならんような…そんな気がするのだが。つまりエネルギーのセーブじゃ、セーブ」

「セーブする必要があるほど…もしかして、ダーリン…」

夜とはいえ、外は薄明るい。が、ラムは誰はばかる事無く、あたるにぴったり身を寄せると、肩に手を乗せて、こそっと言った。

「そんなに…すごい…のけ?」

「…何を思いっ切り、恥ずかしい事を言うとるんじゃっ、アホがっ」

「それじゃあ浮気、やめる気無いのけ?」

「だから好きにさせんか、日中くらいは。別にどこかに消えるわけでもあるまいし」

「だってぇ…ダーリンが見えないと、ウチ、つまらんちゃ。いつでもウチから見える所にいて欲しいのに」

甘えた声で言いながら、ラムはあたるの耳たぶを極軽くかじった。その途端にあたるの全身を、こそばゆいような痺れ…ぞくぞくした感覚が走った。

「今夜は暑いから…ウチのUFOに、行くけ?」

「ん…ああ、そうだな…」

ラムがあたるを背中から抱きかかえて飛び上がり、少しの飛行の後、UFOに到着した。そしてラムは中に入り空調を入れた。涼しくなり過ぎないよう温度と湿度を調節する。適度に汗をかく程度の室温に。
ラムが先にシャワーを浴びてビキニを身に着けブーツを履く。そしてあたるがシャワールームにいる間に、ラムはちょっとした企みを実行した。

「確かこれ、地球人でも大丈夫なはずだっちゃ。…次の惑星の方はテスト済み、○○星系・○○星、…太陽系・地球。…なお、全ての方に適しているわけではありません…ってあるけど、きっと大丈夫だっちゃ。で、これを…」

ラムは直径5ミリ程度の白い錠剤をひとつ、発泡する液体を注いだグラスに入れてかき混ぜ、溶かした。

「これでエネルギー、フル・チャージだっちゃ♪」

にっこり笑って氷を浮かべ、シャワールームから出てきたあたるに、それを勧めた。

「はいダーリン。のど渇いたでしょ?お風呂上りに冷たーい飲み物、美味しいっちゃよ♪」

「…毎度毎度聞いておるが。これはお前の星の飲み物か?」

「違うっちゃ」

「それじゃあ他の星の?」

「安心するっちゃ、それは地球で買った普通の炭酸水だっちゃよ。氷も地球のお水、使ってるっちゃ」

「…ふーん…そんなら安心…か」

あたるはのどが渇いていたので、グラスの中身を一気に飲み干した。が、少しするとラムが入れたものの効果に気付いたのか、彼女を軽くねめつけて、言った。

「…ラム、お前また…うっかり飲んでしまったがっ!やっぱり何か入れただろっ!?」

「あ…あははははっ…ちょ、ちょっとだけ…だっちゃ…1日に使った身体エネルギーが復活するのを…ちょっとだけ…」

「あれだけいつも言っとるのに、どーしてお前とゆーやつはっ!」

腰にバスタオルを巻いただけのあたるは眉を吊り上げて、ラムににじり寄った。その剣幕に気おされて、冷や汗を垂らしつつ、後ずさりするラム。

「だ、だから〜、ちょっとした、出来心、だっちゃ…ダーリンのエネルギーをフルにしたらどーなのかぁ、と思って…だっちゃ」

ラムは怒っているあたるをどうにか落ち着かせようと、焦り笑顔であたるに手のひらを向け、「まぁまぁ」というポーズをとってみたり、言い訳がましい説明をしてみた。が、あたるの怒りは一向収まる様子も無く、ラムににじり寄り続けた。そして途中でパタリと歩みを止めると、下を向いてじっと立ち尽くしてしまった。

「…ダーリン?ダーリン?どうしたっちゃ?…具合でも…悪くなったのけ?」

ラムがじっと見ていると、あたるのカラダがふるふると震えてきた。そして突然“くわっ!”と顔を上げた。その顔は全体真っ赤で、それが怒りの興奮のためなのか、それ以外の興奮でそうなっているのか、ラムには判断しかねたが、驚いて一瞬“びくっ”と体を強張らせると、改めてあたるをまじまじと見つめた。

「だ…大丈夫、け?…ダーリン?」

「だ…だ…大丈夫…な、わけ…あるかーーーっっ!!!どーしてお前は、いつもいつもいつもっっ!!」

「ちゃっ!!」

あたるの怒鳴り声にラムがひるんだ隙に、あたるはラムを抱きかかえて、ベッドに横たわらせ、ビキニの上下を…剥ぎ取った。ブーツも手早く抜き取ると、いつもより乱暴なキスをしてきた。
ラムはあたるのいつもより乱暴なキスに、息が止まりそうになった。眉をしかめてあたるの肩に手を当て、思わず押し戻そうとした。が、あたるのカラダの重みと押さえ込みがラムの自由を奪った。それから少しして、息を荒げながら、あたるがラムから顔を離した。

「だ、だから…言っただろーが…力をセーブせんと、ロクな事にならん、と…」

「ウ、ウチは…こんなつもりじゃ…」

「オレは、煩悩エネルギーの塊…みたいなもんだから、それを適当に…発散させとかんと…どうにも、コントロールが…効かんように、なるんじゃっ…それは、さっきも言っといただろーがっ…し、しかしっ…だから、と言って…ラ、ラムを…こ、こーゆー風には…し、したく、無い…んじゃっ…くそっ…」

途切れ途切れに、うめくように、ラムにそう語るあたる。それを聞き終わると、ラムの表情がやわらかくなった。

「…いいっちゃよ、別に…ウチがイタズラのつもりで、した事だし…ダーリンのエネルギーが、有り余ってしょうがないなら…いくらでも…ダーリンの好きなように、して、いいっちゃ…どんなダーリンでも…ウチは、大好き…だから…」

そうしてラムは、静かに、目を閉じた。


「ラムッ!ラムッ!」

「ああっ!す、すごいっ…ちゃっ…ちゃあぁっ!…あ、ああっ!」

四つん這いになったラムが、長い髪を振り乱して悲鳴を上げ続ける。後背位から激しく突いてくるあたるの勢いに、我を忘れて、ラムは乱れに乱れた。

「ちゃああっ!ああーっ!こっ、壊れるっ…ちゃーっ!ダッ、ダーリンッ!!…す…好きっ…ああっ…!!」

“どくんっ”

「ちゃあぁっ!!」

あたるの白濁した体液は、ラムのナカに何度も何度も、注がれた。そして勢いよく注ぎ込まれる度に、ラムの裸体は狂ったように爆(は)ぜて仰け反り、気が遠くなるほどのオーガズムが訪れるごとに全身をひくつかせた。そしてラムは恍惚を通り越して、失神寸前の体(てい)で、あたるに抱かれ続けた。

「…好…き…ダー…リン…あ、あぁ…ウ、チ…壊れて、も…いい、っちゃ…ダァ…リン、が…大…好、き…だ、から…」

朦朧とした表情で…ラムは半分意識を失いかけていた。寝言のように、途切れ途切れの言葉を、あたるに向かって呟きながら。

仰向けに横たわり、眠っているのか意識を失っているのかわからないラムを…次第に普段の様子に戻ってきたあたるが抱き締めている。ラムを抱き締めながら…シーツに顔をうずめて全身を震わせている。声も上げずに…ただ、カラダを震わせて、ラムをしっかり抱き締め続けた…。

=================================

「ダーリン、ダーリーーンッ!」

ラムはあたるを探して飛び回っていた。

天と地が引っくり返ったような不思議な光景。サルバトーレ・ダリの作品のような、歪んだ校舎、歪んだ時計台の時計。文字盤が裏返って、ぐにゃりと曲がった長針と短針が、頭に直接響くような不快音を立てて、逆方向に回っている。
針の位置など関係無く、突然鳴り響く鐘の音。ラムは時計台を見上げて、一時だけ恐れの表情を浮かべたが、気を取り直して宙に浮くと、校舎周りや校内を飛び回り、あたるの姿を探し続けた。

“諸星が常に視界にいないと不安か?つまらんのか?”

突然、エコーのかかったサクラの声が、上空から聞こえてきた。

「当たり前だっちゃ!不安だし…楽しくないっちゃ…」

“何故、そうまでして…諸星にこだわるのかのぉ…私だけではなく、他の者も理解しがたく思っておるぞ?”

「何でって…ウチにもよくわからないけど…」

“他の者では、代わりにはならんのか?”

「なるわけないっちゃ!ダーリンはひとりだけなんだから…」

“もし諸星がいなくなったら、おぬし、どうするつもりじゃ?”

「それも…わからんちゃ…でも」

“でも…何じゃ?”

「ダーリンがいなかったら、ウチが今のウチじゃなくなるみたいで…そんな気がするっちゃ」

ラムは上空から聞こえるサクラの問いかけに受け答えしながら、辺りに目を配り、あたるの姿を探し続けた。

“そうか…こだわる、というよりも…自分自身が、半分、もしくは…無、になる…と…”

そこでサクラの声は聞こえなくなった。

「ダーリーーンッ!どこにいるっちゃーっ!?」

ラムは今まで対話していたサクラの言葉を、すぐさま忘れて、ただひたすらあたるの姿だけを闇雲に探し回った。

「すぐそこに、いるはずなのに…どこにいるっちゃ、ダーリン…」

やがて、ダリの絵画のような空間を抜け出て、ふと気が付けば、自分のUFOの中にいた。UFOの中なのだが…あたるの部屋が一部混ざっている。真夏の蒸し暑い夜、畳の床に敷いた布団の上で寝苦しそうにしているあたるの姿が、下方に見えた。

「やっと見つけたっちゃ…ダーリン」

布団の上にふわりと降り立ち、寝汗をかきつつうなっているあたるに添い寝をすると、直にラムも、眠りという心地良い闇の中へと吸い込まれていった…。

=================================

現実のUFOの中。ラムが目を覚ますと、薄い上掛けがかけられており、すぐ隣に背を向けたあたるが軽いいびきをかいて、眠っていた。

「ダーリン…ダーリン?」

ラムがあたるの肩に手を当てて、そっと揺すってみると、すぐさま彼のカラダがぴくり、と動いた。どうやら本当には眠っていなかったらしい。

「もしかして、起きてたっちゃ?ダーリン」

「…今、起きたとこじゃ…」

あたるはラムに背を向けたまま、そう答えた。

「ダーリン、何、気にしてるっちゃ。ウチなら大丈夫だっちゃ」

「…そ、そうか…」

「いつまでもそっち向いてたら、ダーリンの顔が見えないっちゃよ。それとも〜もしかして〜…」

「アホッ!誰が泣くかっ、誰がっ!」

「ふふっ♪やっぱり…。ダーリン、優しいっちゃ♪」

「…うっ…(しまった…余計な事を言ってしまったではないかっ)」

「ちゃんと顔こっちに見せるっちゃ、ダーリンッ!」

(バチッ!)

「いてっ!何するんじゃっ、いきなりっ!」

「だからウチなら大丈夫だって、さっきも言ったのに。それより…やっぱり」

「な…何じゃ…」

「適当にエネルギー発散してもらわないと…ダーリン、すご過ぎだっちゃ…」

「だから言っただろーが…それじゃラム公認という事で、思う存分ガールハントが…」

「そうは言って無いっちゃ!浮気はダメだし〜姿見えないとつまんないし〜…」

「だったら、どないせぇ、っちゅーんじゃ」

「ダーリンが逃げて、それをウチが追いかけるだけでもいい運動になるっちゃよ?」

「…それではオレがガールハントして逃げて、ラムが怒って追いかけてくるのと大差無いではないか。とゆー事は、いつもと同じでいい、っちゅー事だな。それに運動の手順なんぞ、イチイチ考えていられるかっ。例えばこっちの運動も…手順なんぞ…有って無いような…もんだろ?」

「…だっちゃ…」

上掛けのシーツをのけて、一糸まとわぬ姿のラムに肌を合わせるあたる。ラムがやさしくあたるの髪をかき上げ、頬を撫でる。細い指先を彼の肌に這わせながら…極々弱い電気を発する。
“ピリッ、ピリリッ…”本当に微細で弱い電流なので、痺れるというほどでもない。微かにこそばゆく感じられるだけだが、ラムの微弱電流の愛撫や彼女の匂いが、あたるの血流量や興奮物質を増やした。

「う、ん…あ、あ…ダーリン…」

手順など有って無いようなもの…と言いつつ、あたるはいつも以上に丹念に丁寧に、ラムを愛撫した。そして今夜のラムも、あたるの前戯の最中、いつも以上に艶かしい悶え声や小さい悲鳴を引っ切り無しに漏らし、あたるの指先がラムのスリットを割り開いてたっぷり濡らしている最中に…軽く一度、達してしまった。

「だって…今日の…ダーリンと、する…エッチ…すごく、気持ち…いいっちゃ…う…ん…」

そしてラムは軽い放電をしたり、止めたり、を繰り返しながら、あたるにパルスを送る。あたるの汗や肌に帯電した電気が、静電気のような音を立てて残っている間に、あたるはラムに肌をぴったりくっつけ抱き合う。すると、ラムが発する微弱な電流とあたるの肌に残る電気が合流して、痺れや刺激が増幅した。

ラムの手のひらが、あたるのモノに伸びる。指先から振動を発しながら、軽く触れてやる。触れつつあたるの弱い部分をくすぐり、彼がどこまで我慢出来るかを、イタズラっぽく笑いながら、試してみる。

「ちょっ…ラムぅ…う…くっ…」

「うん、もう…あとちょっと、我慢するっちゃ…ほら…」

今にも噴き出しそうなところに、カラダを起こして前屈みになったラムの唇が被さってきた。ラムの牙の側面が、あたるの側面をかすって適度な圧力をかけてくる。ラムは牙の先端を引っかけないように気を付けながら、あたる自身を口内で丹念に愛撫する。あたるもラムのウィーク・ポイントは大方わかっていたが、ラムもなかなかのもので、特技の放電を上手くコントロールしながら、口内で愛撫している部分以外も、同時にピンポイントで刺激してくる。

「あ…うぅ…ラムぅ…くぅ…」

少々情け無さそうな声を出しながら、ラムの口内に白い体液を発射したあたる。いつもの事だが、ラムはちょっとむせてから、それをのどを鳴らして飲み込んだ。

「ダーリンのは、すぐ…復活する、けど…あ、ん…」

ラムはあたるに愛撫をねだって胸を突き出した。そしてふたりして絡んでいるうちに、下になったラムがベッドからずり落ちそうになったが、ふわりと浮いて体勢を立て直した。上半身を起こして後ろに手を着き、膝を立てて座る格好になり、下肢を広げて鮮紅色のスリット…ぬめった粘膜を自ら開いてみせた。ぬらり…と鈍い光を放つ、ラムの肉花弁。

“くちゅ…”あたるの指がひだをかき分けて、女体の蜜腺の窪みを突付く。とろりとした蜜を指にまとわりつかせながら、ラムの赤く充血して光る雌蕊を、ころころと転がし可愛がってやる。するとたちまちラムは、とろけそうな表情に、甘い悶え声を発しながら、腰を揺すって、あたる自身を求めてきた。

(パリパリ…パチッ…チリッ、チリッ…パチンッ!)

スリットの粘膜から局部放電をし続けるラム。あたるのモノが痺れる入り口を押し開いて、ラムと一体になる。

ラムの電流が、あたるの脳天までを貫く。同時にラムの脳天までも、あたるのモノから伝わる痺れが駆け抜ける。何度一体になっても…痺れがクセになってすっかり慣れてしまったように感じても。
そして気のせいかどうかわからないが、繋がってからオーガズムに達して果てるまでの間、ふたりの“匂い”は、ほんのり甘く香る。まるで蜜のように。

どこかの国では、蜂蜜が媚薬なのだという。甘い香り、味、糸を引く粘り、うっすらとした光り加減…。

本当に、気のせいかもしれないが…ラムを愛している時、あたるにはラムの肌の香りや汗の味が、ほんのり甘く感じるような気がする。そしてラムも同じ事を感じていた。

やがて、これ以上無いほどのオーガズムに達し、あたるはラムに生命の源を注ぎ、ラムはそれをしっかり受け止めて、ふたりはほぼ同時に、果てた…。


「そういえば、さっき、夢見たっちゃ。ウチがダーリンを探してる夢」

「ふーん…で、見つかったのか?」

「もちろん、ちゃんと見つかったっちゃ♪でも、変な夢だったっちゃ。サクラの声が話しかけてきて…何か言ってたと思ったんだけど」

「何でラムの夢に出てきて、オレの夢には出てこんのじゃ〜サクラさんのアホ〜」

「何バカな事言ってるっちゃ!それに声だけで姿は無かったっちゃ。…ダーリンがいないとつまらないか?とか、いなくなったらどうするんだ?とか、おかしな質問してばっかりだったっちゃ」

「で、ラムは何て答えたんだよ?」

「うーん…よく憶えてないっちゃ。あ、でも…ダーリンがいないとウチがウチじゃなくなる…みたいな事は、言ってたような…気がするっちゃ」

「…ようわからん事を。何のこっちゃ…」

「ウチもほとんど憶えてないけど…そのうち思い出したら、ちゃんと話すっちゃ♪」

「オレがいないと…つまらんのか?」

「だっちゃ。何だか…半分コになったみたいで、つまんない、っていうか…変な感じがするっちゃ。何か足りないみたいな、無くなったみたいな、そんな感じ」

「…余計にワケわからんわ…」

「ところでダーリン」

「何じゃ?」

「また明日も…ガールハントで〜、エネルギー発散するのけっ!?他の方法は無いっちゃ!?」

「ラムの電撃が怖くて〜、ガールハントが出来るかーーーーっ!!」

そして翌日からも、ラムの電撃に懲りる事無く、あたるのガールハント三昧は続いた。それから数日後の夜。

「ダーリンッ!ダーリーーンッ!!」

数日前にラムが見た夢と同じように、あたるを探すラムの姿が、友引町上空にあった。

「おかしいっちゃねぇ…さっきまでベランダでいつもみたいに話してたのに…」

ラムは自身の持つ能力を駆使して、あたるの居所を突き止めようとした。が、結局その夜、彼が見つかる事は無かった。

その翌日も、そのまた翌日も。そしてそれから…1ヶ月ほどが経った。残暑はあったが次第に涼しい風が吹く季節になった。2年4組、諸星あたるがいたクラス。ラムはあれからもあたるを探し続けていたし、ラムを思う面堂や親衛隊の面々、その他の男子生徒たちもあたるを探す事に協力した。
ラムは学校や家、街、そして亜空間を探したり、母星に連絡を取って捜索に乗り出してもらったり…と、あらゆる手を尽くしてみた。が、一向に手がかりすら掴めないままだった。

「一体どこ行ったっちゃ…ダーリン…」

ラムは笑う事が無くなり、電撃を加える相手もいないので、すっかり無気力になっていた。今までの快活で明るかった性格も、静かでおとなしいものとなり、また、以前と違った憂えた表情が、彼女の新しい魅力となって、諸星あたるがいなくなった事も合わせて、他の男子生徒たちは、あわよくば…などと思っていた。

が、ラムは未だに諦めたわけでは無かった。自分が地球にい続ける理由になっていた…諸星あたるが、今ここにいないとしても、きっとどこかにいるはずだと。
“因果律”の、どちらが原因でどちらが結果なのかは、誰にもわからない。あたるがいたからラムが地球にい続けるのか、ラムが地球に来たからあたるの運命が変わったのか。
いや、そんな事は“卵が先か鶏が先か”のようなもので、実際本人同士にとってはどうでもいい事だったのかもしれない。どちらが原因で、どちらが結果であろうが、ふたりの関係が変わる事は、ほとんど無いのだろうから。

さて、それからまた更に数週間が経過した。ラムは物憂げな表情で空からあたるを探していた。諦めてはいなかったが、毎日あたるの部屋で待ち、階段を上る足音がする度に“もしかして”と思い飛び出す。そんな毎日を過ごすうちに、次第に疲れが見え始めてきた。

「ダーリン、本当に…どこ行ったっちゃ。このままじゃ、ウチ…地球にいる意味が…」

半分泣き顔になりながら、空中から街を見下ろすラム。このところ食欲もわかないので、気力、体力ともに限界に近くなっていたのだが、本人はそんな事など気に留めていなかった。
が、ラムが気付かずとも、身体そのものが限界信号を出し始めていた。空中から校舎周りを飛んでいた時、突然の眩暈(めまい)がラムを襲った。ぐらりと揺れて、体勢をどうにか持ち直し、目を開けてみると…以前夢で見たような、歪んだ校舎や時計台の時計が目に入った。

「あの夢と、同じ…だっちゃ。どういう事?」

歪んだ風景の中を飛び回り、校舎内に入ってみた。あちこちの教室をのぞいて見るが、平日のはずなのに誰もいない。そしてまた外に出てみる。すると夢の中のように…上空からエコーのかかったサクラの声が聞こえてきた。

“やはり諸星に振り回されて…疲れてしまったのであろう?”

「疲れてなんか…無いっちゃ…ダーリンを見つけるまでは…」

“すっかり面やつれしておるではないか。それでも諦めぬと?”

「…だっちゃ、まだまだ…諦めないっちゃ…でも、どうして…こんな事になったっちゃ?」

“それは私にも、よくはわからん。が、以前見た夢を思い出せば…諸星がどこにおるかはわかるであろう?”

「UFOも、部屋も、探してみたっちゃ…空間のひずみに落っこちたんじゃないか、とか思って…サクラ?」

ヒントらしき言葉を残して、声はやんだ。

「確かウチのUFOとダーリンの部屋がごっちゃになってて…夏の夜だったけど…もう、秋だし…」

そしてまた歪んだ光景の中を飛ぶ。やがてそこを抜け出ると…どういうわけか蒸し暑い夜の街に出た。

「あれ?おかしいっちゃねぇ…まだ昼間だったはずなのに。それに、こんなに暑くなかったし…それじゃあもしかして…」

ラムはUFOに飛んで行った。中に入ると空間が妙に広い。天井も高くなっていた。そして下を見下ろすと…あたるの部屋がごっちゃになった光景が。そしてそこには、寝苦しそうにしているあたるが、いた。

「ダーリンッ!やっと見つけたっちゃ!」

あたるの脇に降り立ち、静かに添い寝をする。蒸し暑さでうめくあたるに身を寄せるラム。暑くて眠りにくいはずなのに…ラムは安心したのと、今までの疲れもあって、直に眠りという心地良い闇に、吸い込まれていった…。


「…ラム…おい、ラム。こんなとこでウトウトしとらんで、横になれよ」

「…あ、れ…?…ダーリン…?」

「しかしお前も器用な寝方するな。ベランダの手すりに寄っかかって立ったまんまで」

蒸し暑い空気、若干涼しい夜風。季節は夏のようだ。

「それじゃあ、ウチが今まで見てたのは…ぜーんぶ、夢?」

「寝ぼけてんのか?眠いんなら、はよ横になった方がいいぞ」

「ぜーんぜんっ。もうすっかり眠気は覚めたっちゃ♪ね、ダーリン…暑いから、UFOに行く?」

「ん…ああ、そうだな…」

「今度は変な事しないから、安心するっちゃ♪」

「変な事?何のこっちゃ」

「あれ?憶えて無いのけ?ダーリンこの間、ウチのUFOでシャワーの後にジュース飲んで、それから…」

「んな事あったか?」

「あ、ああ…あはは〜、何でも無いっちゃ〜、ウチの夢の話だっちゃ、夢のっ」

「さっきからおかしな事ばかり言っとるが…暑さでどーかしたのか?」

「あはは…ど、どうもしてないっちゃっ。それよりダーリン、昼間のガールハントで今日もエネルギー発散出来たっちゃ?」

「…えっ…まぁ、それなりには、な…」

「発散してなかったら…きっと…」

そしてラム、あたるの耳元に唇を寄せて一言。

「ダーリン、きっと…ものすごいっちゃね…ふふっ♪」

「…何を思いっ切り、恥ずかしい事を言うとるんじゃっ、アホがっ」

そしてラムのUFOへ移動し…シャワーを浴びて…しかし今回、ラムは何の企みも実行する事無く、全裸になってベッドに乗り…。

「それじゃあ、ダーリン…。あ、そうだっちゃ、こういうのも…正しい手順、ってあるのけ?…ウチはあんまり考えた事、無かったけど…」

「何を言っとるんじゃ…手順なんぞ…有って無いような…もんだろ?」

「…だっちゃ…」

あたるが丹念に丁寧に、ラムを愛撫する。やがてしっとり汗ばむふたり。ラムの肌や口内、鮮紅色のスリットの窪みから湧き出す濃厚な蜜。そしてあたるの体液や汗。そのどれもが、気のせいかもしれないが…ふたりにとっては、ほんのり甘い香りと味がする。

絡み合ってラムからあたるに電流を与え、あたるからラムにそれが返される。絡み合って互いに愛撫を与え合い、繋がってオーガズムに達するまでの間…本当に気のせいかもしれないが…互いのカラダがほのかに甘く感じられる。

蜂蜜の蜜は…蜜月の蜜。甘い味と香りと…光沢と濃度を持った、甘い媚薬。

--- E N D ---

あとがき


[ MENUに戻る ]