月下香 (例えばこんな日々・実家編4)


「ちょっとこの花、匂い強くないか?」

「確かにそうだっちゃね…他の場所に置いてくるっちゃ」

UFO内の隅にしつらえられたベッド、その脇のサイドテーブルにラムがたまたま飾っていた、鉢植えの乳白色の花。夜になると香りが強まるその花の名前を、ラムは忘れていた。
ラムは全裸のまま鉢を持って離れた場所に置くと、再びあたるのいるベッドに戻ってきた。

「あの花の名前…何だったかなぁ…きれいな感じの名前だったと思ったんだけど」

「花の名前なんぞ、どーでもいいだろうが…」

あたるはそう言いながら、自分の横で腹ばいになっているラムの腰に当てていた手を、背中の窪んだセンターラインから肩甲骨の辺りに向けて、くすぐるような軽いタッチで滑らせていく。

「…う、ん…あんっ…くすぐったいっちゃ、ダーリン…ちゃっ…脇の下、までっ…やんっ…もうっ…」

カラダ各所の感じる部分をあたるの手指がタッチし、さする度に、ラムは眉をしかめて笑いながら身をよじった。

「…ちょっと、待つっちゃ…ダーリン、ダーリンったら…」

ラムはカラダをくねらせ、くすくす笑いながら、あたるの手を取った。そして両手の指の1本1本を濡れた唇にくわえ…軽く吸っては離す事を10回繰り返した。

「爪ならちゃんと切っとるぞ?それにささくれだって…」

「ダーリンは昔っから変なとこばっかり、マメだったっちゃ。どーせ他の女を口説こうとして…で、爪もきれいにしてたんでしょ?違うのけ?」

ラムの質問は、いつもわざとなのか、無意識にしてくるのか、あたるにはよくわからなかった。質問してくる時の笑顔も、含みのあるような気もするし、普段通りの悪気の無いもののようにも思えた。

「何を根拠に、んな事を…そんな事よりお前じゃ、ラムッ。お洒落だか駄洒落だか知らんが“せっかく伸ばしてるから切るの嫌だっちゃ〜”とか何とかぬかしおって。お陰でたま〜に…」

「ダーリンの背中、最近はあんまり引っ掻いてないっちゃよ?」

「オレが我慢しとるだけじゃっ」

「そうなの?」  「そうっ!」

「ふーん…それじゃあ、もうちょっと気を付けるっちゃ」

「それより、どーだったんだ?…オレの指は」

「ぜ〜んぶ、オッケーだっちゃ…昔っから変なとこばっかり、マメなんだから…ふふっ」

そんな他愛の無い会話の後。

「それじゃ、ダーリンにも…さっきのお返し、だっちゃ…」

くすり、と悪巧みを思い付いたような、それでいて“大人の女の色香”を含んだような淫靡な笑みを浮かべると、ラムはあたるを仰向けにして首筋や耳裏を猫のようにペロペロ舐めだした。時々、弱いスパークを舌先から散らしながら。

「くすぐったいだろ…ラム…」

ラムは白魚のような指先をあたるの脇腹に滑らせ、腰辺りまでくすぐると、また元来た方向に滑らかな手のひらを優しく擦り付けていく。もちろん、ピリピリした刺激を与える事も忘れない。
そしてあたるの脇を軽く刺激しながら、首筋を舐めていた舌を、胸元に移動させてきた。

(ぺちょ…ぺちょ…)

「ちょっ…おい…ラ、ラム…やめろ、って…」

(ちゅぱっ……ちゅっ…ちゅっ……ピリリッ)

ラムはあたるの厚い胸板の…一番敏感だろう部分に幾度かキスをし、唇から軽い電気を送った。口での愛撫を続けながら、全身からも規則正しいリズムで弱い放電を続けている。まるで脈動のようなリズムの、ラムの弱い放電。

(パリリッ…パリッ…パリリッ…パリッ…)

上掛けの下に隠れているあたるの股間に、スパークを散らすラムの手が伸びていく。そしてラムは上掛けをバサリ、とのけて、先から変わらぬ淫靡な笑みのまま、彼の一物裏側に、そっと手を添えた。

「…おい、ラム…」

「いっつもダーリンがリードしてばっかりだから…たまにはウチから…っていうのも、いいでしょ?…気持ちいいっちゃ?ダーリン…」

「…ラ、ラム…」

「…だけど、出すのは…ちょっと我慢するっちゃよ…いっぱい我慢した方が…」

そこまで言うと、ラムは一物の裏筋をかすめて陰嚢に手をやり、絶妙な力加減で、それを優しく転がしだした。転がしながら…もう片手でサオをそっと握り、弱めの放電であたるの一物を痺れさせた。

痺れさせながら…上半身を起こし後ろ手を着いたあたるのそそり立った一物に、前屈みになって顔を近づけたラム。あたるの先端やカリ首を、弱めのスパークを散らす舌先で、上下左右にチロチロと擦っていく。そして目の前のそれにパクリ、と食らい付くと、早速口内愛撫を始めた。

「ラ…ラムぅ…」

あたるの一物先端からカウパー氏腺液が零れ、自分の意志とは無関係に、その部分に血液が集中する。

(じゅぷ…ちゅぶぶっ…ぬちゅっ、ぬちゅ…ちゅうぅぅ…)

ラムのフェラチオの動きと共にあたるの両足付け根や下腹部周辺に、彼女の長い房状の髪がふわふわ、さわさわ、と触れる。

「…うっ…」

やがてラムの口内に発射される、あたるの精液。充血で硬くなっていた一物が引き締まると、瞬時に押し出される乳白色の体液は、ラムにフェラチオをしてもらった時、必ずといっていいほど彼女の口内を勢い良く直撃した。
それに慣れていなかった頃のラムは、その勢いでむせる事があったが、今はタイミングと位置を見計らって上手く処理出来るようになっていた。口内に溜まったそれを…いつもラムはのどを鳴らして、飲み込む。

そしてラムからの行為が終わり、あたるが顔を上げた彼女を見ると。
ラムは口内愛撫の最中に口角から零れた唾液を手の甲で拭いつつ、うっとりした表情を浮かべていた。
美しくも愛らしい顔立ちのラムは、あたるとの営みの最中、ふとした瞬間に、妖花のような艶かしさを匂わす事が、時々あった。

そんな彼女の“昼と夜”のギャップが、いつもあたるをぞくぞくさせた。

(オレが初めてで…ずっとオレの傍にいる…ラムみたいな女、そう滅多に…いるもんじゃないよな…多分…)

「…どうしたっちゃ?ダーリン。もう疲れたのけ?…まだまだ…なのに…」

「あ、ああ…そうだな…」

「その前に…ちょっと暑くなったから…何か持ってくるっちゃ」

ラムは何も身にまとわず、つま先を床からわずかに浮かせた状態の立ち姿で、冷蔵庫のある場所まで移動した。そこまで行ってから何か思い出したのか、大型モニターの前に来てスイッチのひとつをパチンと切り替えた。するとモニター一面に、大きな満月が映った。

「今夜はちょうどお天気もいいし、満月がきれいだっちゃね、ダーリン。ちょっとした夜の照明にもなるし…」

「だが満月を見ると男は狼になるんだぞ?知らんのか、ラム」

「何言ってるっちゃ。満月じゃなくても…」

そこまで言いかけて、ラムは冷蔵庫の中を物色しだした。

「ウチのタバスコジュースと…ダーリン用の普通の飲み物と…えっと、それから〜…」

そしてグラスに注いだ飲み物を両手に持ちながら、先の続きを話しだした。

「ダーリンなら満月じゃなくても、じゅ〜ぶんっ、スケベな狼だっちゃ。はい、こっちがダーリンのだっちゃ」

モニターの月明かりがラムの肌に照り映えて、いつもより透き通るような白さに見える気がしたあたる。

「どうしたっちゃ?ダーリン。やっぱり疲れたのけ?いつもより静かだっちゃね」

「いや、何ちゅーか…満月の明かりってのは、やっぱ妙〜な感じがするな…三日月や半月と違って」

「そうけ?ウチはきれいだと思うけど。あ、そうだっちゃ…ウチ、タバスコジュース飲んだから…」

「よーーく、うがいしとけよ。じゃないと…」

「キスも、出来ないっちゃね…ちょっと待ってて、ダーリン…」

モニターの満月に照らされたラムの肢体が、白く見える。きれいな曲線を描いたプロポーションの肢体が…放電の余熱もあってなのか、ほのかに青いような白色に見える。月に照らされていない影の部分とのコントラストで際立つ、ラムの白い肌。

艶のある豊かな長い髪、白魚のような手指、張りのある豊かなバストとその頂点、薄闇と月明かりで白っぽい艶を含んだ黒色に見える、ラムの恥丘を覆う豊かな繁み。そのどれもが、月明かりのせいなのか、妖しい美しさを振りまいているように、見える。

ふわりと低空飛行をしながら、移動するラム。まるで足のある人魚のように、空間を泳いでいく。少しすると、再び泳ぐようにして、ラムが戻ってきた。

仰向けになって組んだ腕を枕にしているあたるの上に浮かんだラム。膝を曲げて床にペタリと座ったような格好になり、そのまま垂直に降りてきた。下からの空気抵抗で髪の毛が持ち上がり、ふわふわと浮いている。

あたるの腹にちょこん、と乗り、顔を寄せるラム。あたるは彼女の背に手を回して軽く引き寄せた。そのラムを遮蔽物にして、彼女の背後にあるモニター内の満月の光が、ラムの輪郭をはっきり浮かび上がらせた。あたるは一瞬、立体感のあるシルエットを抱いているような…錯覚を起こした。

「…ラム…?ラムだろ?…」

影になっているラムの前面。それに向かってあたるが問いかけた。

「どうしたっちゃ?ダーリン。すぐ目の前にいるのに…見えないのけ?ウチが…」

「いや…ただ、あのモニターん中の満月の光とか、あの花の匂いで、感覚が…妙な感じになってきとるんだが…」

「ウチならずっとここにいるっちゃよ?ダーリンに黙ってどっかに行ったりしないっちゃ…」

「…そんならいいが…それよりこの場所だが…」

「場所がどうかしたのけ?」

「どーせならあの満月に近い場所の方が…良く見えるんだが…ラムが…」

「確かに…ウチの影になって、ダーリンの顔も良く見えないっちゃ。それじゃあ…ベッド動かすっちゃ」

そしてラムは、満月が映った大型モニターの前にベッドを移動させた。

「…でもちょっと明る過ぎないけ?ダーリン…」

「…このくらい見えるのが…ちょうどいいんじゃ…」

「…ウチの恥ずかしいとこ…あんまり見たら…イヤだっちゃ…」

満月の光は何故か…恋人たちをより一層、大胆に、熱くさせる。それは、あたるとラムだけに限らなかった。

…友引町全体が、不思議な空気に満たされていく。

ふたりの高校時代の友人知人の中でパートナーのいる者たちは、いつもと違う夏の夜の空気を吐息交じりの声で震わせながら…熱い抱擁の行為に、身を投じていた。

町のどこかで、そして亜空間や異次元で…。


満月の光、そして夏の夜に甘さのあるエキゾチックな香りを振りまく、乳白色の花。それらのせいなのか、ラムの蜜腺からはいつも以上にたっぷりした量の愛液が溢れた。あたるが濡れ具合を確かめようと、ラムの柔らかくて熱いスリットに指を挿入した。すると。

(ちゅぷっ…)

「ちゃっ…!」

(パリリッ…パリッ…パリリッ…パリッ…)

脈動のリズムにも似た、ラムの局部放電があたるの手を痺れさせた。月明かりで見てみると、ラムのスリットの窪みから引き抜いた指には、いつも以上に濃厚でたっぷりした愛液が絡み付いていた。
スパーク混じりの半透明の粘液が、ラムの赤くて柔らかい秘唇の狭間と、あたるの指先とを繋ぎ、間も無くそれは“タラリ…ポタッ…”と、糸を引きながら白いシーツの上に落ちた。

(…すごい濡れ方だな…どうしたんだ?)

そう思いながらも、あたるは充血し切って脈打つ一物を、仰向けに横たわっているラムに宛がった。“ぐちゅっ…”先端が愛液の沼に一歩踏み入れると、ぬかるんで粘り気のある水音が連続して聞こえてきた。

「は、あ、あ…」

いつも以上のぬるつきが、あたるの挿入を容易にしてくれた。ゆっくり道を押し広げていくと、そのナカまでもがいつも以上の量の、酸性の愛液で溢れかえっているようだった。
浅めに入れてから少し腰を引く。そしてまた浅めに挿入して、奥まで行かずに腰を引く。

「あ…う…んっ…はあぁ…あぁっ…ダー…リン…ッ」

入り口の摩擦だけでも十分感じているのか、ラムは震える声で、あたるを呼んだ。

(にちゅ…ぬちゅ…ねちょ…)

今夜のラムの濡れ方は半端ではなかった。まるで胎内に“潤滑剤”の貯蔵庫でも仕込んでいるかのように、とめどなく、大量に、溢れ出てくる。
あたるの抜き挿しに合わせ、どんどん深くなる、交合の水音。

(じゅぶっ…ぐちゅっ…)

男女の肉同士がたっぷりした粘る体液を潤滑剤にして、擦れ合っている。ラムのナカの浅めの部分にある、彼女の膣壁の敏感なスポット。あたるの先端やくびれがそこを引っかけたり圧力を加えたりして擦る度に、ラムはカラダを小刻みに震わせ、頭を反らした。

「う…う、んっ…はぁ…はぁ…あ…あ…だ、めぇ…そこ、が、あ…!」

ラムの悶えの声が時々裏返る。そしてトーンを上げた声色で、途切れ途切れの言葉を発する。

「ダァ…リンッ…あ…あぁ…ウチ…そこ、が…感じて…いいっ…ちゃっ…ああっ…!」

そしてあたるはラムの声を聞きながら、数回浅目の挿入を繰り返した後、思い切り腰を前進させた。

(じゅぶっ…!)

「ああっ!ちゃあぁぁーーっ!!」

どうやらあたるが一度奥を突いただけで、ラムは軽く達してしまったらしい。

「あ…あ…」

ラムの、ひくつく肢体が、月明かりに照らされている。

「…ダー、リン…ダーリン……」

あたるを呼びながら、はぁ、はぁ…と熱い息を吐き、細い指先を彼のカラダに這わせるラム。あたるは再び腰を引いて、ラムの奥まで届いていたモノを途中まで抜いた。

「んっ…ダーリン…」

(ぐぷっ…)

いつもより多い量の愛液が、あたるの一物に引きずられるように、外へと溢れだした。

(…ポトッ…)

気付かない程度の微音を立てて、シーツに滴るラムの…愛液。

(パリリッ…パリッ…パリリッ…パリッ…)

まだ繋がったまま、ラムはあたるにしがみ付いてきた。脈動のようなラムの放電が、あたるの胸から全身に伝わってくる。それが一物の根元まで届くと…あたるは堪らなくなって、再びラムのナカへと…今度は先よりピッチを上げて、突進していった。

ラムの体内の道が、収縮し、弛緩する。それによって適度に締め付けられるあたるの一物。汗を滴らせながら、ラムに締められ、ラムのナカで己をしごき上げる、あたる。

ピッチが早まると、あたるはしきりにラムの子宮口のポイントを突付いた。そこにあたるの先端から、微弱な電流が伝わると、ラムは激しくのたうつように身悶えした。目を閉じ、まるであたるの突きに我を忘れかけているような嬌声を上げ続けるラム。

「ダーリンッ、ダーリンッ!ダーリンッ!」

(パリッ、パリッ、パリッ、パリッ、バチバチッ!)

ラムの放電の脈拍が一気に速まり、彼女はあたるの名を連呼した。

「ダーリンッ!ダーリーーンッ!!」

「…ラッ…うっ…く…」

ラムはフェードアウトしかかった意識の中で、あたるの熱いほとばしりをカラダで感じつつ、快楽の高みに昇り詰めた。そして、そこから落ちるようにして…果てた。


あたるとの長年の営みで、ラムのポイントは開花していった。最初は固いつぼみだったラムの各所にある性感帯は、全身全霊を込めて彼女と繋がり、イカせようとするあたるの行為によって、ひとつひとつ、花開いていった。

今ではすっかり、互いのポイントを知り尽くしたかのようなふたり。もちろんラムもあたるの悦ぶ愛撫を自らリードしてする事があったが、どうもラム自身にその自覚はあまり無いようだった。

「ラム、お前さっき、いつもオレがリードしとるような事、言ったよなぁ?」

「ウチ、そんな事言ったけ?だってそうだっちゃよ。…エッチするのは〜いっつもダーリンから〜仕かけてくるくせにっ。その後だって…すごいっちゃよ…」

「そんな事無いだろ。お前だって結構…色々と、してくるだろ」

「もしかして放電の事け?だってあれはウチの能力なんだから…しょうがないっちゃよ」

「いや、そうじゃなくて…ラムが結構積極的、っちゅー事もあるだろーが。さっきみたいに。まぁ放電は放電で…あれはあれで、いいわけだが…」

「その放電の仕方をウチに教えたのは、ダーリンだっちゃ。忘れたのけ?学生の時に…」

「そんな事も…あったかもしれんなぁ…」

「何とぼけてるっちゃ。昔っから学校とかでも…エッチな事はぜーんぶ、ダーリンから仕かけてきたくせにっ」

「…今更だが…嫌だったのか?もしかして…」

「そんな事、全然無いっちゃよ…ダーリンがすっごくエッチだったから…昔もだけど、今でもいっぱい…気持ちいいっちゃよ…。ね、ダーリンは?」

「んな事…言わんでも、わかるだろーが…」

「気持ちいいのけ?良くないのけ?はっきり言ってくれないと、ウチにはわからんちゃ」

「……良くなかったら、……なんか、するかっ」

「相変わらず、肝心な事ははっきり言わないっちゃね。何言ったのかウチには全然聞こえなかったっちゃ」

「聞こえんで十分結構じゃっ」

「…やっぱり花の匂い、強過ぎるっちゃね。ダーリンの匂いがあんまりしないっちゃ」

「だからオレがさっきそう言ったろーが」

「真っ暗でも、ダーリンの声と匂いがすれば、ウチは十分なんだけど…今夜は何だか、変な感じがするっちゃ。…ほら、ウチのここが…」

そう言いながら上半身を起こしたラムは、腰まで覆った上掛けの中に手を入れ、間も無くしてそこから出すと、あたるに手のひらから指先までを近付けて見せた。

「ほら、まだこんなに…濡れてるっちゃ…」

「そういう事なら…」

「ちゃっ…やっぱりダーリンから…いつだって、仕かけてくるくせにっ…もうっ…ダーリンの、エッチ…」

「だから言っただろ。満月を見ると男は狼になって…食っちまうんだぞ?」

抱き合って対面側位になるふたり。キスをする前に素肌に鼻先を押し付けて、匂いを感じ合う。先まで強い花の香りが邪魔していたが、汗ばみ熱を持った素肌に鼻先を押し付けると、お互いのフェロモンを含んだ匂いが直接鼻腔に入り、それが嗅覚を司る部分に届くと、ふたりの頭とカラダを軽く痺れさせた。

「ダーリンのお腹がいっぱいになるまで、いくらでも…いいっちゃよ…。いっぱい、愛してるっちゃ…ダーリン…」

そんな言葉を恥ずかしげも無く、いつでもストレートに投げてくるラム。それに対してあたるはただ黙ったまま、柔らかな笑みを浮かべて受け取る。そして受け取った後の返球はいつも、ラムのカラダに直接渡す。

「…そういえば、ダーリン…」

「…何だ?ラム」

「昔は…明るい時間だと、ウチから逃げてばっかりで…それで他の女追いかけてばっかりで…そんな事してて、しんどくなかったのけ?」

「今夜は昔の話ばっかするな…ラムは。昔も言ったろ、エネルギー発散のためだと。それに1日中べったり、っちゅーのはオレの性に合わんし…」

「女ならウチじゃなくても、誰でも良かったんじゃないのけ?…こうして、エッチする相手が、誰でも…。でもウチは、ダーリンじゃないと絶対イヤだけど…」

またしてもラムからの、わざとなのか無意識になのかわからない質問が、あたるに浴びせられた。

「あのなぁ〜…お前もしかしてわざと言っとるのか?…そんなクソ意地の悪い事を…」

ラムはそう言われて、抱き合ったまま、きょとんとした顔をした。あたるが少しむっとしたようだったからだ。

「わざと、って何がだっちゃ?そう思ったから聞いてみただけなのに」

「だからお前はストレート過ぎる、っちゅーんじゃっ。ラムの、アホ…」

そう言いながらあたるはラムの唇に吸い付いた。唇を離す度に、「ラムの、アホ…」と言いながら。

「ダーリンの…バカ…ウチの事…そんなに…アホアホ、って…言わなくたって…ん…もう…」

ふたりは互いのカラダの隅々に手指を滑らせていく。下肢を絡ませ合いながら、あたるは大腿部をラムのスリットに押し付けて、前後に動かした。“ぬちゅ…ぬちゅ…”ラムのたっぷりした愛液が、すぐさまあたるの足を濡らした。

ラムはカラダの右側を下にして横になっていたので、左足をあたるの右足に擦り付けていた。するとあたるがラムの左ももに手をかけ、ゆっくり持ち上げた。ラムは持ち上げられた左足の膝を曲げて、自身の赤い花をあたるのために開放する。
ラムの内ももは愛液ですっかり濡れており、あたるの鼻に“すんっ”としたラムの匂いが入り込んできた。

「ダーリン…早く…」

ラムはあたるに持ち上げられた左足の膝裏に自身の手をかけ、開放状態を保持して、あたるが入ってくるのを待っている言葉を発した。
あたるは息を弾ませながらカラダを起こし、側位のラムの左足首を掴むと、ガチガチになった屹立に手を添え、股間を交差させて、先端をラムの愛液の沼地に踏み入れさせた。

ぬるりとして生温かいラムのそこに宛がった自身の屹立。あたるはそれを手と腰を使ってゆっくり入れていく。そして、女体の沼の深みへと、自ら足を踏み入れ…より深い場所へと、沈んでいった。

側位のラムが腰をひねって、悶えている。美しくも愛らしいその顔を…官能の悦びで歪ませながら、悶え続けている。
悶えながら、先の脈動のような放電を始めたラム。

(パリリッ、パリッ、パリリッ、パリッ…)

それが不思議にも、あたるの脈動と同期をとっているのだ。あたるの脈拍が速くなると、ラムの放電の脈も速まった。

「は…あっ…う…あ、あ…あぁっ…ダー…リンッ…ダーリンッ、ダーリンッ!」

温かい…というよりも、熱い…ラムの、深い深い…沼地。ラムをイカせて、自身も彼女のナカで果てたい…。あたるは頭の片隅で薄っすらそう思いながら、ラムの深い部分へと、どんどん踏み込んでいく。

(パリッ、パリッ、パリッ、パリッ…)

あたるの脈拍が速くなる。ラムの放電のリズムも速まる。

「ああっ…はぁっ!あ、あ、あぁっ!…ダーリンッ、ダーリンッ、ダーリンッ!」

悲鳴に近い声で、あたるを呼び続けるラム。彼女の声がUFO内に反響し、あたるの頭の中にも響く。そして体温で発散された互いの匂いが混ざり合い、ふたりの嗅覚を刺激した。

そこに差す満月の光。そして薄っすら漂ってくる、あの花の、甘い香り。それらがふたりの感覚を…快楽の感覚を、少しずつ、ずらしていく。
時計の針が誤差を生じさせるように、気付かないほどの微妙なずれが、ふたりの快楽の感覚を…いつもと違うものにしていっている。
しかしあたるとラムは…それに気付かないままでいた。

「ダーリンッ、ダーリンッ!ダーリーーンッ!!」

嬌態を曝して、あたるの突きに激しく乱れるラム。あたるも先より激しくラムを突いた。熱を持ったラムの奥が先端に当たる。収縮と弛緩を繰り返すラムの深い深い、愛液の沼。
あたるの意識はテンポの速いフェードアウトとフェードインを繰り返しながら、カラダだけが本能のままに動いていた。
ラムも同様にテンポの速い意識の明滅を繰り返しながら、カラダだけが…あたるの行為で仰け反り、弾け続けた。

「ダーリーーンッ!!」

ひときわ甲高いラムの叫びがUFO内に反響した。それに反応するように、あたるの一物先端から、乳白色の種がラムの熱い中心に向けて、勢い良く放たれた。


モニターのスイッチをそのままにして眠りに就いたふたり。朝になるとモニターから眩しい陽光が差し込んできた。
その眩しさで目を覚ましたラム。しばらくしてあたるも目を覚ました。

「何だか夕べは…変な夜だったっちゃ。ダーリンもそう思わないけ?」

「満月とか、あの花の匂いのせいじゃないのか?」

「とにかく…何だか…すごかったっちゃ…ダーリン…」

「ラムこそ…すごかったろーが…」

「何言ってるっちゃ。ダーリンの方がっ!」

「いや、ラムの方こそっ!」

お互いに変なところでムキになり、数回「ダーリンがっ!」「ラムがっ!」と意味のあるような無いような応酬を続けていたが、途中で恥ずかしくなったふたりは、しばし沈黙した。そして少しの静けさの後、ラムが先に口を開いた。

「…もう、どっちでも、いいっちゃ…」

「…だな…」

あの花の匂いは、朝の光の中ではすっかり薄まって、ほとんど香らなくなっていた。そして休日のその日、ラムとあたるはデートに出かけた。

「ところでダーリンは〜ウチと1日中べったり、っていうのは性に合わないんじゃなかったのけ?どういう風の吹き回しだっちゃ、ダーリンからデートに誘ってくるなんて。ものすごーく、珍しいっちゃ。夏なのに雪でも降るんじゃないのけ?」

「オレから誘っちゃ、おかしいか?」

「だっちゃ。今までそんな事、全然無かったのに」

「珍しかろーが雪が降ろーが、どうでもよかろーが。たまにはこういう日もあるんじゃ。…嫌ならもう帰ってもいいんだぞ?」

「せっかく出てきたんだから、今日はたくさん色んな所に行くっちゃ!ダーリンッ!それにウチが嫌がるワケないのにっ」

あたるは夕べのラムの質問を思い出していた。“エッチをする相手は誰でも良かったんじゃないか”という、例の質問を。
ラムにしてみたら“そう思ったから聞いてみただけ”のつもりらしいが…。あたるにしたら(何ちゅークソ意地の悪い質問をしてくるんじゃ…ラムのアホが…)と、こうしてデートをしている間も、時たま思っていた。

そして帰り際、ふたりは【フラワーショップ ぼけや】の前を通りかかった。天然だが明るく優しい花屋のお姉さんは、今もこの店で働いていた。

「あ、そういえば…あの花買ったの、この店だっちゃ、ダーリン」

店の表で花の世話をしていたお姉さんは、ふたりに気付き、声をかけてきた。

「あら、こんにちは。どうでした?あのお花。すっごくいい香りがしたでしょう?芳香の花で有名なんですよ。南国の花の首飾りや香水の原料にも使われているお花だし」

「へぇ〜、そうなのけ。だからあんなに香りが強かったんだっちゃね」

「“チューベローズ”と言って、メキシコ原産の球根から育てるお花で、夏から秋が咲き頃なんですよ。日本での名前は“月下香”、中国では“晩香玉”って呼ばれていて、夜に咲いて甘く香るんですよ。特に月が出る夜は香りが一層強くなるから、夕べはすごく香ったんじゃありません?」

「あ、だから夕べあんなに…。うん、ものすごーく甘い匂いがしたっちゃ」

「で、花言葉がちょっと変わってて、“危険な快楽”って言う意味があるんですって。変わってて面白いですよねー」

花屋のお姉さんは相変わらずの“天然の明るさ”を振りまきながら、長々と花の説明をしてくれ、花言葉まで教えてくれた。それを聞いたあたるとラムは。

「危険な…」

「快楽…け?」

そしてふたりは思ってもみなかった花の持つ意味に“ぎょっ”として、思わず顔を見合わせた。そして満月の光と花の香りが引き出した、妙な感覚の理由がわかったような、気がした。

「ところで昔、ボクがここでクチナシの花を買ったの憶えてます〜?」

「あら、そう言えば。随分立派に育ててくれましたよねー。あの時の坊やは元気かしら?」

「えーそりゃもう。いや、それより昔聞き損ねた住所と電話番号を…」

「いやだわ、お客さんてばっ。だからお花は電話かけませんってばっ」

“ばちーーんっ”とお姉さんに頭をはたかれたあたる。それを見ていたラムは。

「もうっ、ウチ先に帰るっちゃ!ダーリンのバカッ!」

あたるの態度にヘソを曲げたラムは、ふわりと浮くと、あっという間に空高く飛んで行ってしまった。そしてそれを目で追いかけていたあたるには、ラムが怒った理由が“自分の目の前で他の女に声をかけた態度”以外にある事もわかっていたのだが。

「いつもの事だろーが…何ヘソ曲げとるんじゃ…」

そう呟くと、改めて花屋のお姉さんに話しかけた。

「いや〜そうですか〜さすがお姉さん、花の事は何でも知ってるんですねぇ〜。で、今度お茶でもしません?」

「いやだわ、お客さんてばっ。お花はお茶なんか飲みませんよっ」

「あははは〜そうですよね〜。あー、ところで、ですね。折り入ってひとつ相談が…」

「何かしら?お花の事だったら何でも相談に乗りますけど」

「いや〜それは助かります〜。で、今日はちょっと花を、と思いまして…。で、買って帰ったら今度デートしません?」

「あら、お花とデートですか?お客さんって面白い人なんですねー」

「いや〜よくそう言われるんですよ、あはははは〜〜(やはりこのボケ方は昔とちっとも変わっとらんな…)」

そしてあたるは店内で真っ先に目についた、観賞用の小さなヒマワリの切花を数本、買って帰る事にした。

「はい、ありがとうございます。もしかしてさっきの彼女にあげるのかしら?」

「いや〜違いますよ〜。ボカァ、花が好きだから、家に飾るだけですって〜」

「あら、そうなんですか。私はてっきりそうだと思ったんだけど。あの人にヒマワリってぴったりだし、お客さんが彼女にヒマワリをプレゼントするなら、よっぽど…あら、ごめんなさい、他にお客さんが来たみたい。それじゃあ、また来て下さいねー」

ヒマワリの花を持って家路についたあたる。しかしラムはUFOに戻ったのか、部屋にはいなかった。

「まだ怒っとるのか?ったく、いつもいつも同じ事で…」

そしてヒマワリを水に浸けて置いておいた。それからしばらくして、あたるの部屋にラムが入ってきた。

「ダーリン、帰ってるけ?」

「何じゃ、さっきは怒って先に帰ったくせに」

「結局ダーリン、女なら誰でもいいっちゃ!昔っからウチの前でも平気でガールハントしてたしっ。もしかしてウチが目に入ってなかったのけ?無視してた、ってゆーより…」

「おい、何をひとりで怒っとるんじゃ…」

「無視してたってゆーよりっ!見えてなかった、って言う方が合ってるんじゃないのけ?」

「だからオレはそんな事はひとつも言っとらんだろーがっ!さっきから変だぞ?ひとりで勝手に怒りおって」

「だってダーリン…もしも、エッチの相手が…ウチじゃなくてもっ!きっといいんだっちゃ!」

「だーかーらーっ!そんな事はひと言も言っとらんだろーがっ!いい加減にしろっ!」

「これ以上話してもしょうがないから、ウチもう、UFOに戻るっちゃ!」

「おいっ、待たんかいっ!」

あたるはひとりでプリプリ怒っているラムの腕を“はっし”と掴んで、引き止めた。あたるも今のやり取りで、いつもの“ケンカ・モード”に入りかけていたのだが、とりあえずラムをその場に留まらせる方を優先した。

「ちょっと下に行ってくるから、その間にUFOに戻るなよっ!絶対にっ!いいなっ!?」

(ったく、UFOに怒って行ったら、今度いつこっちに戻ってくるかわからんからな。その間に…)

「…その間に枯れたら、意味が無かろーが…」

そして2階に戻ってきたあたる。ラムは相変わらず腕を組んで怒っていたが、ちゃんとそこにいた。

「…ほれ、こっちなら匂いがせんから…」

「…え?」

あたるはぶっきらぼうな態度でヒマワリの束をラムに投げて寄越した。そして突然の事に驚いたラムは慌てて花束をキャッチした。

「UFOの花、そろそろ終わりだろ?もうてっぺんまで咲いてたからな。花屋のお姉さんに聞いたら、下のつぼみから順に咲いていくんだと」

「そ、そうけ…」

「後は…勝手にしろっ…」

あたるはぶすっとした態度で、ラムから顔を背けて、床にごろりと転がった。

「…ダーリン?」

「…何じゃ…」

「ウチも怒って、悪かったっちゃ…それにこのヒマワリ、すっごく嬉しいっちゃ。ありがと、ダーリン…」

「…ふんっ…」

「それじゃあ、早速UFOに飾ってくるっちゃ。それじゃ、また後でね、ダーリン…」

ラムがUFOに戻ると、確かに“月下香”の花はてっぺんまで咲ききっていて、匂いもすっかり薄まっていた。

「球根だっていうから、どうやって育てたらいいのか、今度花屋で聞いてこようっと」

そしてあたるからもらったヒマワリを、ちょうどいい花瓶を探してきて挿し、サイドテーブルに飾ってみた。

「うんっ、明るい色で、きれいだっちゃ。…あ、そうだ…」

ラムはコンピューターである事を調べ始めた。そして結果を見て、零れんばかりの満面の笑みを浮かべた。

「ふふっ…ダーリンやっぱり、優しいっちゃ♪だーい好きっ♪」

あたるはヒマワリの花言葉を知らずに買ったのだが、何故だか見た瞬間、(ラムにはこれが、一番合いそうだな…)と思って選んだのだった。

そしてその夜、ラムのUFOにて。

「ダーリンからもらったヒマワリ、すっごくきれいだっちゃ…だーい好き、ダーリン…」

「…花の事なんぞ、ようわからんわ…」

「ね、今度ウチからも、ダーリンにヒマワリ、プレゼントするっちゃ♪」

「何で同じ花なんじゃ?」

「ふふっ、それはねぇ…」

太陽を向いて咲く、ヒマワリの花。陽光を浴びている昼間のラムに似合いそうだ…と思って、あたるが選んだ花の、その意味は。

「光輝」、「熱愛」、そして「あなただけを見つめている」。

--- E N D ---

あとがき


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