(番外編「Sweet and Hot pepper」その2) オヤジのうた


「なぁ、あたる。お前高校ん時からラムちゃんと一緒だったやろ。なのに子供産まれたんは大分してからやったなぁ。もしかして父親になるの嫌やったんか?」

「いや、オレだっていつかは親父になるだろうとは思っとったさ」

「そらラムちゃんとしょっちゅうイチャイチャしとったら…そうならん方がおかしいで。ワイの星のキレーな女医のねーちゃんもな…お前見て、笑っとったで」

「確かに美人じゃ。ちょっとキツそうな物言いをする性格も、プロポーションもなかなか…」

「ワイの星の先生やで、妙な気起こすなやっ!?」

「そんならラムとはどうだと言うんじゃ?」

「ワイが初めてお前見た時な…コレが同じ人間か、思うたわ。レイとえらい違いやったからなぁ。ラムちゃん一体どないしたんや、鬼ごっこの最中頭でも打ったんか!?…と、思ったわけや。ま、事故みたいなもんやな」

「あのなぁ…」

「ホンマになんも無かったんか?」

「あるわけなかろーがっ!!こっちの方がひどい目に遭ったわ…」

「あれから何年経つんやろなぁ…。ところでラムちゃん、どんなアンバイや?」

「上が幼稚園だから少しは落ち着くだろう、と思ったわけだが…これが思った以上に大変でな…」

「せやけどふたり目やし、実家に預けとるんやないのか?前みたいに」

「それが…かえってラムにベッタリになってな…。今までが一人っ子だったろ?で、周りの様子が変わってきたもんだから…今、川の字になって寝とるんじゃ…」

「なんも無いんか?」

「当たり前じゃ…」

「お前にとったら、そら大したストレスやな」

「喩えるならば…目の前にぶら下がっとる人参が食えん馬のような心境…とでも言えばわかるだろ?」

「なんやその、知性も教養も感じられん喩えは。もうちっと何かあるやろ…山の絶壁に咲く一輪の花、どーしても摘みたいけど手が届かんで、えらい焦れったい思いばかりが募るんや…とかな」

「ジャリテン、お前…浮気しとるだろ?」

「なっ、何ぬかしよる…いや、言うてはるんですか、あたる…はん。そんな滅相も無い事ボクがするわけナイやないでスカいややなぁ」

「お前、喋りの抑揚が一本調子になっとるぞ?ま、オレくらいの腕になれば…」

「しかしたったひとりだけ、どないにしても勝たれへん男がおるやないか…自分の息子や」

「そう…そうなんじゃ〜」

「男の子の初恋の相手は母親、っちゅーからなぁ。いっちょ前にお前にライバル心燃やしとるんと違うか?」

「そうは言うても…クソ生意気な時もあるにはある。あるけどなぁ…お前の時と違って、フライパンでスマッシュ打つなんぞ出来るわけなかろーがっ!」

「アホな子ほど可愛い、言うからなぁ…あっ」

「いいのか?そんな事言って」

「や、イヤー、ワイとした事があたるはんにえらい失礼な事ぬかし…いや、言うてしもうて、ホンマ…に…」

「ジャリテン、顔がひきつっとるぞ?…そーか、そーか、そんなにオレに詫び入れるのが嫌か。そーか、わかった」

「…何考えとるんや…」

「いや何、たまにはお前んとこの、お前にそっくりな息子を見に行くのもよかろーと思ってな。フライパン持参で」

「…人がちっと下手(したて)に出とれば…調子に乗りくさってからにっ!え…えぇ加減に…せぇやーーっ!!」

そう、テンの火炎放射は大人になって更に威力が増していた…。


「どーしたっちゃ、随分久々だっちゃね、こんなに黒コゲにされて」

「…アイツが浮気をしとるようだから…ちらっと忠告してやっただけじゃ」

「どーせまた、挑発するような事言ったんじゃないのけ?」

「何でもオレが悪いのかっ!?」

「最近はふたりとも仲良さそうだったし、テンちゃんも昔より火の勢いが強いからって控えてたのに。…それより火傷の手当しないと」

「ん、頼むわ。だが適当でいいぞ」

「そうもいかないっちゃよ、やっぱり昔よりひどいっちゃねぇ…」

とか何とか言ってはいるが、いつもたちどころに治っているので心配無用である。

「それにしてもだいぶ出てきたな」

「それに随分元気に動いてるっちゃ。先生も言ってたけど、ダーリンの声ももう聞こえるはずだって♪」

「そーかそーか、うんうん♪…そういや、こけるのやつ随分静かだな」

「それがね、珍しく自分から、ウチの父ちゃんの所に遊びに行きたいって言い出して…1週間幼稚園お休みさせたっちゃ」

「どういう風の吹き回しじゃ…家にいる間は何が何でもラムにベッタリだった、あいつが、ねぇ…」

「きっともうすぐお兄ちゃんになるから、自覚が出てきたんだっちゃよ」

「…うーむ…そうならいいが…何か、違う気が…」

「変な心配してないで、久しぶりにふたりっきりになれたんだから…」

「…おっ、動いとる動いとる。随分元気いいな。…しかしこんだけでかいのに、まだ出てこんのか?」

「ダーリン何でもせっかちなんだから。もうしばらくの辛抱なんだし、待つ方が楽しみも大きいっちゃよ?」

「しかし僅か数ヶ月だが…長いな、うんと」

「あの子の時は随分緊張してたっちゃね」

「緊張というか何というか…あの先生に立ち会いを勧められたが、さすがにちょっとな…」

「ウチはダーリンに手を握ってて欲しかったのに〜。今度はそうして欲しいっちゃ」

「…そうは言うけどなぁ…こっちの身にもなってみろ…」

「あ、そういえば」

「何じゃ出し抜けに」

「終太郎のところも、ついこの間産まれたばっかりでしょ?今度誕生パーティーするそうだっちゃ」

「いつ?」

「来週だっちゃ」

「お前はやめといた方がいいんじゃないか?」

「まだ全然大丈夫だっちゃよ。体だって少しは動かさないと。それに皆に会えるの、ウチ楽しみだし」

「だがあんまり無理するなよ?」

「…撫でてみて、どんな感じけ?ダーリン」

「…こん中に人ひとり入っているのか、と思うと…不思議な感じじゃ。前もそう思ったけどな。なんちゅーか…やっぱ、すごいもんだな…女っちゅーのは…」

「ウチひとりじゃ、こうはならないっちゃよ。ダーリンとウチの…愛の結晶、だっちゃ♪」

「まぁ…そういう事じゃな…」

「ね、ダーリン」

「何だ?」

「前にウチに言ってたでしょ?ウチと何も無かった時、ガールハントはいつもの3倍してたって。その割には帰るの早かったっちゃね?」

「ああ、あれね…あれはだな…仕事中に電話かけまくって、相手のひと声聞いたら、即、次の電話をかけとった…というだけで…」

「…仕事中に何やってるっちゃ…」

「テンにラムの事を頼んではいたが…毎日落ち着かんかったからなぁ…。そうでもせんと…緊張やら…不安…やらで、会社にいるのが、ちっと苦痛だったしな…。一応、生活もある事だし…」

「何だか、らしくないっちゃねぇ。まさかそんな事思ってたなんて、すっごく!意外だっちゃ」

「なぜその“すっごく”を強調するんじゃ…」

「だってホントに意外だったんだもん。まさかダーリンが…そーんな風に、ねぇ…」

ラムはあたるの“意外”な発言が心底おかしいとみえ、しばらくの間、くすくす笑っていた。

「今夜からしばらくふたりっきりだから…ダーリン♪ちょっとだけ…」

「極、軽〜いスキンシップ程度にしておけ…と、この間お前に着いていった時、先生に言われてしまったわ…」

「それじゃあ、その…極、軽〜いスキンシップ…するっちゃ、ダーリン…。いっぱい抱っこしてね…」

という事で…“極、軽〜いスキンシップ”で、ふたりは互いの肌の温かさを感じ合った。あたるはラムの胎動を実感しながら、彼女の中で息づく新しい命に向かって、顔を綻ばせながら、囁いた。

「居心地いいだろうが…早く出てこいよ…」


そしてある日のあたるの実家にて。

「いや〜、それにしても随分立派になったもんだねぇ、ラムちゃん。私たちも嬉しいよ、うんうん」

「今度は女の子なんでしょう?どんな子が産まれてくるのか、本当に楽しみね〜。ね、あなた。…じゃなかったわね、おじいちゃん」

「女の子かぁ〜…もちろんラムちゃんに似た可愛い子なんだろうねぇ、母さん」

「そりゃもう…ラムちゃんに似てもらわないと…。あたるもそうなんでしょ?」

「そういえば…昔を思い出すねぇ、母さん」

「あら、何をですか?」

「ほら、母さん本当は女の子が欲しかったと言ってたじゃないか」

「そういうあなただって」

「しかし今考えてみたら…女の子はいずれ、嫁に行ってしまうだろ?ラムちゃんのご両親もさぞかし…特にお父さんが寂しがってるんじゃないかね?」

「そんな事ないっちゃ。父ちゃん色々忙しいし、反対にウチに見合い勧めてばっかりだったっちゃ。…あれ?どーしたのけ?ダーリン。急に深刻そうな顔して」

「…そうか、そうだよなぁ…考えたら女の子は、いつか嫁に行ってしまうんだよなぁ…それに風呂だって…いつまで一緒に入ってくれるのか…」

「ダーリン、産まれる前から何おかしな心配ばっかりしてるっちゃ」

「だってなぁ〜、いつかは年頃になるだろ?しかしっ!オレはラムの親と違って見合いなんか勧めたりせんぞっ!あまつさえっ!高校ん時にあっちこっちにゴロゴロしとった“許婚”なんぞ、オレは認めんしっ!どんなに金を積まれようとも〜…嫁にだけは出したりしないからなっ!」

「そんなに嫌なのけ?まだどこの誰と恋するとか、全然わからないのに?」

「…いや、オレはな…何か嫌〜〜な…背筋に悪寒が走るような予感が…するんじゃ…」

「何の事だか、さっぱり、だっちゃ」

「母さん、今になるとかえって男の子で良かったんじゃないか?ラムちゃんのようなお嬢さんがお嫁に来てくれた事だし、孫もふたり目か〜。楽しみだねぇ、母さん」

「あたるには過ぎたお嬢さんだったというのに…随分長く待たせたものね、ラムちゃんも、私たちも。で、最近はケンカなんかしてないでしょうね?前に住んでた所は追い出されたっていうし。どうせまた…あたるのせいなんでしょ?ラムちゃん」

「それは違うぞっ!断固として違うっ!…かといって、ラムだけのせい、というわけでもないのだが…」(*1)

「あ、あははっ…ダーリンッ、その話はそれくらいにして〜そろそろ失礼するっちゃ。帰りに買い物したいし」

「何買うんだ?」

「そろそろ、お洋服とか…色々準備しなくちゃ、だっちゃ」

「色々と…物入りじゃな…」


そして後日。

「どうもラムさん。今日は大変なところを、わざわざお越しいただいて、大変恐縮です」

「まだ予定までしばらくあるから大丈夫だっちゃ」

「ラムがこんな状態の時にわざわざ呼びつけおって。お前なら知っとったはずだろ?悪趣味な情報網とやらで」

「諸星、貴様ラムさんを、きちんといたわってやっているのか?…それにしても…」

「何だよ?」

「いやなに、あの子は本当にお前にそっくり、というより瓜二つだな。縮小コピー版といっても…あ、これはラムさんの前で失礼しました」

「気にする事無いっちゃ。だってホントにダーリンにそっくりなんだもん。寝相から食べ方から、女の子にちょっかい出すとこまでそっくりだっちゃよ」

「それは何かと大変でしょう。どうですか、こちらからメイドのひとりも伺わせましょうか?」

「いらん、いらんわっ!…貴様そうやってオレとラムに変な貸し作る気じゃあるまいな?」

「失敬な事を言うなっ!僕はただ純粋にラムさんだけをっ!心配して言っただけだっ!」

「終太郎の気持ちは嬉しいけど、ダーリンとふたりでやってく方がいいっちゃ。いざとなったらお父様やお母様、それにウチの両親もいるし」

「しかし面堂…」

「まだ何かあるのか、諸星」

「この間産まれた、っちゅー事は…オレんとこと同い年という事じゃ。しかも男の子だったな?」

「それがどうした?」

「もちろん…金持ちの学校にやるんだろ?そうしろ、絶対そうしろっ!なっ!?」

「何をそんなにムキに…ははぁ、お前、心配…なんだな?確かふたり目は女の子だそうだな?諸星」

「…どっちでも、よかろーがっ…誰が何を心配しとると言うんじゃ…」

「この僕も庶民の学び舎を知っておくため、友引高校に転校したわけだが…。そうかそうか、幼い時分から庶民の暮らしに触れさせてやるというのも、いいかも知れんな」

という次第で、この瞬間から、オヤジ同士の血で血を洗う…もとい、あたると面堂の子供を巡る、“オヤジ大戦”が、静かに勃発したのであった。
長年にわたる因縁の対決に終止符を打つのは、果たしてどちらになるのであろーか。それはまた別の物語…に、なるかも、しれない…。


そして更に時は流れて数年後。

「ダーリン、子供たちのお風呂お願いするっちゃ」

「ふたりともー、風呂入るぞー」

「パパー、今日幼稚園でねー、めんどーくんがアタシにけっこんしてください、だってー。ねー、けっこんしてください、ってなーに?」

「お前なんか嫌いじゃー、という事じゃ。そんなやつ、ほっとくんだぞ?」

「ふーん、でもおっきくなったらパパのお嫁さんになるからいいもーん」

「そーかそーか、うんうん♪」

「でもそれってジュウコンになるんだぞー」

「こける、誰がそんなロクでもない言葉を教えたんだっ!?」

「テンおじちゃん」

「ジャリテンのやつ、子供に何を教えとるんじゃ…。そんな事は知らんでいいからっ!ところでお前、クラスにイイ子はおらんのか?」

「同じ歳はミリョクに欠けるからだめなんだー。今年入ったばっかりの新しい先生はねー、可愛い顔でぐらまーでねー。ボクたちがふざけて言う事聞かないと、すぐ泣いちゃうとこが、またいいんだよー」

「…それもテンから教わったのか?」

「うん。でもママに言ったら…ものすごく怒られちゃった…」

「…あんの、クソがきゃ〜」

「やっぱりボク、パパよりママとお風呂入りた〜い」

「わがまま言わんと。ほれ、頭洗うぞ」

「パパが頭とか背中洗ってくれるより、ママの方がやさしく洗ってくれるからいいんだよー。それにさ、パパ見たってオ○ン○ンついてるだけで、ママのおっきなおっぱいと違って、ちっともおもしろくないよ」

「…こける、まさかお前…ママのおっぱいを…」

「うん、こうやってさ、さわると、すっごくやわらかいよ?」

「…何じゃ、そのヤラシー手つきは…」

「ボク、大きくなったら、絶対ママと結婚するんだっ!」

「…ジャリテンが言ってただろ?それってジュウコンになるんだぞ?」

「その前にパパがリコンすればいいんだよ」

「…一体ジャリテンのやつ…オレの子供に何を教えとるんじゃ…」

「それじゃアタシがパパのお嫁さんになるまえに、ママとリコンするの?」

「…もういいから…そーゆー事は、もっと大きくなってからわかればいいんじゃ…」

子供は無邪気である…が、さすがのあたるも、自分の子供の無邪気な喋りに、少々閉口気味なのであった。

(くっそー、ジャリテンのやつ〜…今度ふたりに妙な事吹き込みおったら、ただで済むと思うなよ〜…)


「な、なんや、あたる…その手製の鎧みたいなんは…」

「ふっふっふ…今のお前の火炎放射はフライパンでは防げんからなっ!1週間、徹夜も含めて作ったんじゃ」

「…で、ワイに何の用や?その様子からすると…茶ぁ飲んで、世間話する、っちゅー雰囲気やないな…」

「オレんとこの、年端もいかん子供に、何を吹き込んどるんじゃーーっ!!」

「ああ、その事かいな。それやったら、こける、自分から聞きに来よるで。たまにな。“テンおじちゃんの話面白いから、もっと聞かして”、っちゅーてな。さすがお前の息子だけの事は…あるなぁ」

「…いいのか?そんな事言って」

「…もしかして、大分前の話かいな?…あれやったら…もう、終わったで」

「別れたのか?浮気相手と?…それとも…」

「…ワイの嫁の性格、ちっとは知っとるやろ?…あのまんまや。幼稚園の時の、あのまんま…変わってへんで」

「とゆー事は…」

「そう…バレよってから、ちょっとの間だけもめたけどな…火ぃ噴くわけにもいかんやろ?で、結局…」

「浮気相手と別れた…というわけか?」

「そういう事や…。なぁ、あたる。男って…悲しいなぁ…ホンマ、悲しい生きモンやなぁ…」

「何じゃ…オレを見て。言っとくけどなぁ、オレんとこはそんな事無いぞっ」

「何言うてるんや…“元祖浮気男”のくせしおってからに…。誰のお陰でワイがこうなったと…」

「お前のは先天的なモンだろーが。しかも…女の前と男の前とでは、ころっと態度変わるしな。相変わらず」

「とりあえず、今は…落ち着いとる。落ち着いてるけどなぁ…最近、仕事から帰っても、テーブルの上に…レンジでチンするだけのモンしか置いてないんや…。な?悲しいやろ?所詮、嫁にとったらなぁ…子供がうんと優先度高いんや。よく言うやろ?亭主元気で留守がいい、とかな…。つまり、世間でよく言うところの、粗大ゴミ扱いや…。せやけど…年限経つとなぁ…そんな嫁にでも、一応…情が湧いてくるんやな…」

「今日の話は…やけに真実味があるというか…切実、っちゅーか…人事として聞いてていいものかどーか…」

「そんなんやから…最近まったく、なんも無しや…。で、将来突然、熟年なんとか、ゆー事になったら…ワイ、星に帰って、隠居するわ…」

「うーむ…オレとしても、何と言葉をかけていいものやら…」

「お前んとこは…相変わらずやろ?ラムちゃん、どんなに怒っても、結局お前許しとるしな……何でラムちゃん、お前みたいなんを許すんかなぁ……そうなんや…宇宙イチの煩悩男、元祖浮気男のくせしおって、何でや?それ考えてたらなぁ……なんや段々…むなくそ悪うなってきたで…。おい、あたるっ!せっかく重装備して来たんやから、一発火ぃ噴かせろやーーーっ!!」

「あちっ!あちっ!!あちーーーっ!!!」

そう、いくら重装備とはいっても…金属は熱伝導体だったのだ…。

「はぁーーーっ、ちっとはすっきりしたでっ。…おい、あたる、大丈夫か?おーい……あ、アカン…白目むいとる…」

いくらゴキブリ並みの復活力でも…あまりの火の勢いに、あたるはしばらく入院する事になってしまった。

「いくらテンちゃんだからって!ダーリンにこんなひどい事するなんて、あんまりだっちゃ!!ちゃーんと謝ったのけ!?」

「せやからラムちゃんになら、ぎょーさん謝っとるやないか…そもそも、こいつが妙な因縁つけてきよったせいなんやから…」

「だけど結果はこうだっちゃ!!ウチのダーリンにこれ以上何かあったら、いくらテンちゃんでもっ!許さないっちゃよ!?しかも子供たちに変な事教えてたっていうし…どういう事だっちゃ!?」

(アカン…これ以上ラムちゃん怒らしたら、ホンマにマズいで…)

「いてっ…いてぇ〜…いつつ…」

「ダーリン、大丈夫〜?」

(あ〜、羨ましいなぁ…)

「いや…オレは大丈夫だから…。それより、ちっとのど渇いたから…何か買ってきてくれるか?」

「うん、わかったっちゃ。ついでに着替えとか取ってくるっちゃ」

そしてラムは病室を後にした。

「ジャリテン、家が上手くいってなくてもなぁ…」

「あたるはええよなぁ。ラムちゃんずっと変わらんしなぁ…お前も変わってへんけどな」

「ラムだって最初は無理矢理押しかけてきたんだぞ?あの頃はオレもまだ、しのぶと付き合ってたしな。どーにかラムの目を盗んで…とか、考えてばっかだったな」

「ラムちゃん、お前が浮気性なのはごっつ怒っとったけど、何かというとお前の話ばっかりしとったで。そんなええ男なんか?と思って地球に来てみれば…」

「そんな事言ってたのか?」

「ラムちゃん、えらい厄介なのに惚れてもうて、この先大丈夫かいな…ってな事をな…ワイは心配しとったわけや」

「だけどなぁ…お前も情が移ったとか言ってただろ?一緒にいるのが…当たり前だと思ってんだろ?」

「お前も…そうやったんか?」

「最初のうちは星に帰れだの、面堂と…だの、思ってたけどな…。アイツが黙ってパスポートの書き換えに帰った時は…さすがに、参ったかな」

「随分昔の話やな。そんなに堪えたんか?」

「ラムがオレを振るなんぞ考えてもなかったからな」

「えらい自信やな」

「ま、それなりのスキンシップも大事だが」

「あたるは何かとゆーと、そればっかりやな…ラムちゃん昔ぼやいとったで?お前が一度も好きや、言うてくれへんて。…まだ言ってないんか?」

「そーゆーお前はどうなんじゃ」

「今更そない恥ずかしい事、言えるかいなっ」

「そうだよなぁ…」

「お前、下手したら死んでも言わんつもりやろ?」

「…人の事はどーでもよかろーがっ。それはともかくとして、だ。親父というのも楽じゃないが…一緒に笑ったり怒ったり泣いたり出来るしな。それに、守れるもんがあるとゆーのも…結構、いいもんだぞ?」

「…おい、あたる…お前やっぱりケガが相当堪えたらしいなぁ…」

「…うるさいわっ…」

「諸星さーん、体温と血圧測りますね〜」

「あの〜昨日までの…若い看護婦さんは?」

「あー、あの子なら昨日で辞めていきましたよ〜。結婚するんですって〜。私にもそーゆー時があったんですよー、こう見えても。それが今じゃあ亭主は食っちゃ寝、だし、子供はここ何日も帰ってこないしで」

「…えらい恰幅いいおばちゃん…いや、看護婦さんやな…。あたる、これでも…守りたいなぁ、思うか?」

「あっはははっ!今は可愛い奥さんだって、いつかは私みたいになっちゃいますよ〜」

「…だ、そうや…」

「そ…そんなワケ…あるかーーーっ!!」


毎度の事ながら、また更に年月が経って。

「あー、あの頃が一番…可愛かったなぁ…」

「何しみじみ思い出に浸ってるっちゃ」

「ある日突然だったからな…パパとお風呂入るのなんかイヤッ!パパのスケベーッ!…ときたもんだ。所詮娘なんぞ…」

「仕方無いっちゃよ、女の子なんだから。近所の話だと、洗濯物も別々、ほとんど顔合わせる事も無いって聞くっちゃ。ダーリンなんかまだマシな方だっちゃよ」

「そうか?…ところで、ふたりは?」

「今夜はそれぞれの友達のとこに、泊まりで遊びに行ってるっちゃ。もちろんどんな友達かは、ウチがちゃーんと聞いてるし。ふたりとも同性の友達だから、心配いらないっちゃ」

「そーか、今夜は…ふたりともおらんのか…」

「だっちゃ♪ねぇ、ダーリン…もし、もうひとり出来たら…どうするけ?」

「いや…当分いいぞ…」

「当分いい、って事は、もうひとりくらい欲しいって事け?」

「男と女、両方いるからなぁ…。あ、そうじゃ。ラムに似た男の子…っちゅーのは…どーなんだ?」

「ダーリンに似た女の子は欲しくないのけ?」

「…それは、ちょっと…。あっちこっちで男に声かけまくるような女の子では…オレの気が休まらんわっ」

「ふふっ♪相変わらず変な事で心配ばっかりして。それじゃあ、とりあえず…その話はおしまいだっちゃね…」

「こけるが産まれる前まで、ラムのUFOで生活していたが、それなりに部屋数がある一軒家が見つかって一安心じゃ。ただしかなりの中古だけどな」

「部屋も完全防音に改造したし…ウチが強い電撃出しても壊れないようにしたし…」

「…おかげでケンカになるといつも引っ張り込まれるが…」


そんなこんなで、今夜もふたりは、ふたりだけの部屋でしっぽり…というわけで。

ラムのカラダは、そのしなやかさも肌の質感も、柔らかな肉感も、ほとんど変わっていなかった。

「変わったところといえば…胸が前よりでかくなったくらいか?」

「ふたりにおっぱい飲ませてたんだもん…でも、やっと…ウチのカラダ、ダーリンだけのものに…なったっちゃ…あっ、はっ…はぁっ…!」

「…オレのために、カラダのケアをしている、と言ってたが…一体どこをどう、ケアしとったんだ?…ふたりも産んだ割には…相変わらず…」

今でも若々しさを保ちつつも、成熟しきったラムのカラダを抱きながら、あたるは激しくラムの全身にキスをする。そして彼女のふくよかな胸に吸い付きつつ、秘唇の狭間を慣れきった指使いで掻き回すと、ラムのよく締まったすぼまりが、あっという間に潤ってきた。

「二児の母親のくせに…昔とちっとも、変わらんな…」

パリパリと放出する電気も昔と変わらない。ラムが手指から幾筋ものスパークを飛ばしながら、カラダをよじって、あたるの股間にその手を伸ばした。

「この間…使ってみたアレ…すごく、いい…でしょ?…ダーリン…」

「今夜も塗ってみたが…」

「匂い…も、いい…し…ウチ、段々…頭が、痺れ…て…あ、あ、あ、ぁ…っ!」

「…オレ、も…段々、頭が…痺れて、きた…ぞ…。ラ、ム…き…気持ち…いい、ぞっ…」

「ウチ、もっ…気、持ち…い…い…いいっ…あ…は、ぁ…」

互いのフェロモンがより強く発散される、ラブ・ローションを…ふたりはカラダに塗っていた。何かを考えるよりも先に、カラダが反応してしまうのだ。そして、ラムとあたるの汗や体液の量も増え、摩擦抵抗を減らし帯電する効果も手伝って、あたるのカラダに伝わったラムのスパークは、いつもより長い時間、その体表に留まっていた。

そして…ぬるつくカラダを合わせると。

「ラッ、ムッ…」

「ダッ…リ、ン…はぁあぁあっ…熱く、て…硬い、ダーリン、のがっ…あっ、あっ、あっ!」

あたるの帯電した逸物の先が、ラムの秘唇の狭間にある陰核を少しの間嬲り、それから間も無くして、あたるの赤黒く勃起したそれが、たっぷりの愛液を零すラムのすぼまりに…埋もれていった。

「ナッ、ナカがっ…ダーリンのでっ!ああぁっ!」

あたるの帯電した逸物が、ラムの膣壁に、不規則なリズムのバイブレーションを送る。あたるが腹に力を入れると…フェイントをかけるようにして、ラムのスポットを強弱をつけたバイブレーションが襲った。

「いいっ!いいっちゃーっ!ああっ!ダーリンッ!!ダーリンッ!!」

粘る水音が、ふたりの陰部から聞こえてくる。しかも大量の愛液があたるの抜き差しに合わせて、ラムの隙間から零れ噴き出してくるのだ。

「はっ、はっ、はっ…いっ、いいぞっ…ラムッ…す、すごくっ…」

愛液を噴きながら、ラムが少しだけいきむと、あたるの逸物が埋もれている入り口や道が、きゅむっきゅむっ…と幾度か弛緩した。それに絞られながら、ピッチを上げるあたる。

「あ…あ…あぁっ…!つっ…突いて、るっ…ダーリ、ンッ…のがっ…ちゃっ…ちゃあぁっ!だめっ、だめぇーーーっ!!」

ラムは下肢を大きく広げて、狂ったようにあたるにしがみ付いた。共に腰を弾ませながら…ふたりは、若い時分そのままに、ひとつになってもつれ合った。

「イッ…ちゃうぅーーっ!!ダーリーーンッ!!」

防音を施した部屋の中で、ラムは思い切り嬌声を上げて、あたるをくわえたまま…がくんがくんっ、とカラダを弾けさせ…大きく飛翔した。避妊をしているラムのナカには…あたるの体内に貯蔵されていた生命の種が、たっぷり注ぎ込まれた…。



「やっぱり…これ、使うと…前より、すごいっちゃ…」

「確かに…すごかった…」

「でも、あんまり使い過ぎると…無い時困るっちゃ。たまには普通に…しとかないと…」

「そうだな…しかもこの歳で、一気に突っ走るから…正直、一気に疲れるぞ…」

「ダーリン。もし、今のでまた…出来ちゃったら…どうするけ?」

「えっ…お前まさか…」

「うそっ。ちゃーんと、避妊薬、飲んでるっちゃよ。でもダーリンがまたその気になったら…まだしばらくは、大丈夫だっちゃ」

「…しかし…ふたりとも、もう、それなりには…わかってるだろ?どうやったら赤ん坊が産まれるか、くらいは」

「…別に恥ずかしがる事じゃないのに…。小さい弟か妹が出来たら、きっと喜ぶっちゃよ」

「…そうかぁ?…で、もしも、出来たら…」

「もしも出来たら?」

「それはそれで…恥ずかしいだろーがっ。いくらラムの声が聞こえんからといって…段々お腹が出てきたら…“パパのスケベッ!”だけでは済まない気がするのだが…」

「そんな事…あの子だってそのうちお嫁に行くだろうし、夫婦はこーゆーものだ、って、きっとわかってくれるっちゃよ。で、ダーリンは…男の子と女の子、次はどっちがいいのけ?」

「いや、だから…当分は…」

「当分…って、そんな事言ってたら、しわしわのおじいちゃんとおばあちゃんになるっちゃよ?」

「それなら、まぁ…そのうち…」

と、言っていた事は…近い将来、しっかり現実になったのであった…。

「今度も女の子か?」

「今度はどっちかわからないっちゃ」

「何で?性別、決められるんだろ?」

「わざとわからないようにしといたっちゃ。だってダーリン、また女の子だってわかったりしたら…」

「何じゃ…わからんのか…。で、女の子だったら、オレがどーだと言うんじゃ?」

「今度は絶対にっ!お嫁に行かせないつもりでしょ?男の子に決めとけばよかったけ?」

「うーむ…どちらでも…悩む…」

「だから産まれてからの、お楽しみ、だっちゃ♪」

「また風呂入れたり、おしめ換えたりするわけか…それはそれで、楽しみかもしれんな。ふたりが赤ん坊だった頃を思い出すしな」

「またパパに逆戻り、だっちゃね♪でも今度はベテランのパパだっちゃ♪」

「いや、子供を持つのに、ベテランとか素人とかあるのか?それにな…何度体験しても、ベテランにはなれん、と思うぞ?」

「どーして?」

「ふたりとして同じ子供はいないからじゃ」

「ああ、そういう事け。だったらウチもまた、新米のママだっちゃね♪」

「そういう事じゃ」

こうして再び、あたるは親父として奮闘する事になるのであった。


「で、また父親になった、っちゅーわけか。お前もよう頑張るなぁ。ワイには到底、真似出来んわ」

「特に珍しい事でもなかろーが」

「いや、その歳で3人目作る、っちゅー事がや」

「子供たちも独立したからなぁ…娘は今頃…どーしてるんだかなぁ…」

「つまり、寂しさ紛らすために、子作りに励んどったわけかいな」

「…人聞きの悪い事ゆーな、っちゅーんじゃっ。ラムもその気だったから、意見の一致という事じゃ」

「で、まだ聞いてなかったなぁ。男なんか?女なんか?」

「…ま、いずれわかるだろ」

「なんや、もったいつけよって。ワイはどっちか、聞いとるだけやないか。男か女か、ふたつにひとつしかないやろ?」

「だから直にわかるって」

「もしかして、あたるにそっくりの女の子でも産まれたんか?」

「…そんなわけなかろーがっ」

「せやから、はよ、教えろや…いや、教えて〜な」

しかし結局、あたるはなかなか本当の事を教えなかった、という。しかもテンがふたりの家に遊びに行っても、しばらく中に入れてもらえなかったという。

「アイツと遊ばせたら…ロクな事、憶えんだろうからなぁ…」

「でもテンちゃん、この子たち見たら、きっと驚くっちゃよ♪」

--- E N D ---

(*1)・・・「ふたりはふうふ(後編)」参照。
※(補足)・・・この話とその前の68.で「看護婦さん」「保母さん」と書いている。正しくは「看護師」「幼稚園教諭」という事になるのだが、話の便宜上(?)そのように表記させていただいた。「保育士」は「めぞん一刻」の五代君が取得した国家資格。なお世間では「保育園の先生」と呼ぶ事もあるが、学校教育法に定めるところの教師(教員)ではなく、先生はあくまで通称。管轄も幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省と分かれている。
(※参考:Wikipedia)

あとがき


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