(例えば・13) 別離(わかれ)(後編)


虎縞柄のタイトなドレスに、ゆったり編んだ長い髪。仰向けになったラムの両脇に腕を着いたあたるが彼女の顔を覗き込む。

太陽の光があたるに遮られ、ラムの上に影を落とす。

ふたりとも着衣はそのままに、しばし黙って互いの顔を見詰め合っていた。

やがてラムが、愛しい人の首や頬を撫でだした。あたるもラムの頬にそっと片手をやり、目を閉じたラムの髪にそっと顔を押し当てた。

彼女の髪の匂いを吸い込み、頬を撫でていた手で豊かな髪をかき上げ、今度はその手をうなじ側に回すと、ラムのそこを指でそっとくすぐった。

ラムが小さな声でくすくすと笑っている。笑いながら頭をゆっくり左右に振り、白いワイシャツの上から、あたるの胸に手を滑らせていった。

あたるが、ラムの前頭部の両極にある小さなツノに、そっとキスをした。鬼ごっこのゴールを決める、円錐形の硬いツノから、声にならないラムの何かが、伝わってくるような気が、あたるにはした。

“ダーリン…ダーリン…ダーリン…”

ラムのツノから、あたるの頭に直接…彼を呼ぶ声が…聞こえたような気がした。

ツノに与えていたキスを、今度は耳元に移す。そしてあたるはラムの耳に、彼女の名前を、そっと、吹き込んだ。

「ラム…ラム、ラム…ラム…」

「ダーリン、ダーリン…会ってなかった分だけ、たくさん…名前、呼んで…ウチの、名前…」

「ラム、ラム…ラム…」

「ダーリン、ダーリン…ウチからもいっぱい、いっぱい…ダーリンのこと、呼ぶから…」

互いに囁きながら名前の応酬を続ける。ラムの名前を呼びながら、あたるはたくさんのキスを、彼女の耳や額、頬、こめかみ、顎、首、うなじ…に、落としていく。

やがて、酔ったような表情になったふたりは、顔を近付け、唇を重ねた。ラムの唇に、自分の唇を、強く強く押し付けるあたる。

ラムの舌を吸い上げて絡め取ると、力強く激しく、吸って、しゃぶり、舐め回し、ラムの舌表面や裏側など、ありとあらゆる口内の感じる部分をねろねろと愛撫した。

あまりにも激しいキスで、ふたりは口角から唾液を零し、交互に相手の口内に舌を挿入しつつ、淫靡な水音を響かせた。

“ちゅぶちゅぶ…ぐちゅぬちゅ…ずちゅう…”

今にも窒息しそうなほど大量の唾液を溢れさせ、それを口内で交換し合う。

“ちゅば…ちゅぶ…ぬちゅ、ねちっ…ぬちゅう…ねちょ、ねちょ…じゅぷっ…”

時々“ごくり…”とのどを鳴らして、互いの唾液を飲み下すあたるとラム。そして、互いを貪るような激しいキスが…しばし続いた。

ラムの手があたるの胸元を滑っていき、襟を軽く掴んだ。そしてワイシャツのボタンをゆっくり外しだした。

全部外すと彼の肩口から、布のすれる音を立てながら、白いシャツをさらりと脱がしていった。その下のランニングシャツはあたる自らカラダを起こして脱ぎ捨てた。

彼の体臭、汗の匂いがラムの全身をほどよく痺れさせ、熱くし、心臓の鼓動を速まらせた。

あたるも心臓を熱くしながら…編み込んだラムの髪を解き、背に腕を回して、彼女の衣服の背にあるファスナーを下ろしていった。

リラックスした表情の、ラム。目を閉じているので、あたるはラムがうとうとしているのかと思った。

「ラム?…眠ったのか…?」

その呼びかけに、ラムが薄く目を開けた。

「ダーリンがどんな事してくれるのか…期待して待ってたっちゃ…」

そして再び、ラムは目を閉じた。

タイトなドレスはラムのカラダにぴったりフィットしているので、あたるは引き剥がすように、しかし優しくゆっくりと、脱がし始めた。

ラムの肩が露出する。そのままするすると下げていくと、お椀型に張り出したラムのバストの谷間が見え出したところで、あたるは一旦手を止めた。

寄せられた虎縞模様の布地が幾重かの襞になり、昔よりいくらか大きくなったラムのバストのところで軽く引っ掛かってしまったのだ。

見ればその下には、ストラップレスの小さなブラの淵がのぞいている。あたるはブラの端に指をかけると、ドレスと共に、引き下げた。

やがて、ブラとドレスの布地で覆われていたラムの乳房が、“ぷるんっ”と弾けて、露出した。僅かに揺れると再び椀型に形が整う、ラムのきれいな乳房。そしてその頂点にあるのは、上向きに小さく膨らんだ、桃紅色の乳首だ。

ラムの胸をすっかり露にすると、あたるは堪らなくなったのか、彼女の乳房の谷間に顔を押し付け、何度も頬擦りした。

ドレスを全部脱がされていないラムの両腕は…ノースリーブの袖で緩く拘束されたような状態になっている。

そんな状態のラムの腰をしっかり抱いたあたるは、彼女をひょいと抱き起こした。そして、目の前の乳房に…むしゃぶりついた。

ラムは…白いのど元をさらして、軽く仰け反り、あたるのためにそのカラダ、乳房を、せり出した。

「あっ、あっ…あんっ…あんっ…」

男が女の乳房を吸っている。

“ずちゅうぅぅ…”

あたるはラムの乳房のてっぺんを吸いながら、口内の舌表面で、彼女の乳首を潰すように愛撫した。

「あぁんっ…あんっ、あんっ…ダーリン…ダーリィン…あっ、はぁっ…」

そうしていたかと思うと、今度は唇で、彼女の乳首を軽く挟み、ちゅぱちゅぱ…と吸い上げた。…かと思えば、舌を巧みに使って、乳輪や乳首を、左右交互に何度も舐め回した。

…まるで飢えた獣のように、ラムの乳房や乳首を執拗に攻め立てる、あたる。

しかしそれも、彼なりの彼女への愛情表現…なのだ。

「ぁああっ!あぁあんっ!…ダァリィィン…ウチ…おっぱい、だけ、で…イ…イキ…そう…っちゃ…」

先からラムの乳先からは、微弱な電気が零れ出ていた。白く光るスパークが、爆ぜるような音を立てて、あたるの口内に流れ込んでいた。

ラムのカラダの各所からも、白くて細い光が飛び出し、空中に飛散していく。

柔らかな緑の大地。その果てしなく広いベッドの上で、男と女が激しく乱れながら愛し合っている。

ラムの放った電気が、地面を走っていった。すると、その部分が“パッ”と小さな炎を上げ、すぐさま燃え尽きて、黒い燃えかすだけが残った。そんな部分が、ふたりの周囲の所々に出来ていく。

ラムの弱めの放電が、あたるの思考を時々停止させていた。ただただ本能のままに、カラダが動くあたる。

ラムからの“放電の愛撫”が、あたるの肌を、体表面を、走っていく。そうされると更に強くラムのカラダを抱き締めて、それまで乳房周りを愛撫していたあたるは、頭を仰け反らせているラムの首や顎に軽く食らい付いた。

…白くて細い、ラムの首筋に、赤い跡が残されていく。肌の薄い部分に、あたるからのキスマークがいくつもいくつも、刷り込まれていった。

こうして、太陽の下の“青姦”の営みは、ねっとり、しっぽりと…続けられていったのであった…。


まだ挿入はしていないものの、しばし座位のような体勢で絡み合っていたふたり。ふと我に返ったあたるは、未だラムのドレスを脱がしきっていなかった事に気が付いた。

再びラムを草原に横たわらせると、先までの愛撫で多少息が上がっているラムの着衣を、最後まで脱がしきった。もちろん、下着も全て。

そしてあたる自身も、ズボンと下着を脱いだ。これでふたりは完全に一糸まとわぬ姿になった。

「ダーリン…早く…ウチの、ナカに…来て…」

ふたりはどれだけこの時を待ちわびただろうか。あたるの矛先が…ラムの花びらを散らしながら…女体のたっぷりした蜜壺の中へと沈んでいった。

あまりに待ちわびた時間が長かったせいだろうか、あたるは火が着いたように激しくラムを揺さぶった。あたるの抜き挿しがラムを突き動かしている。緑の草の上、太陽の下で。何も無い、誰もいない場所で。

長かったような短かったような時間を埋めるかのように、ふたりは長い時間、交合を続けた。

周囲に誰もいないので、ラムは思い切り感じるままに、声を上げた。時々淫らな言葉も交えて、あたるを更に興奮させた。

「ダーリン、のが…ダーリンの、が…ウチの、こと…うんと、いじめて…るっちゃ…ちゃっ!ちゃあぁぁっ!!あぁあっ!そんな、にっ、奥、突いた、らっ…ウ、チ…おかしく…なっちゃうぅぅぅっ!!」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…ラムッ、ラムッ!ラムッ!!」

“ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ…”

「はあぁぁあんっ!!…ダー、リン、のでっ…ウチ、の、アソコがっ…ぐちゅぐちゅ…音、させてっ…るっ…うっ、んっ…ひっ、あぁっ!だめぇぇぇっ!!」

「ふっ、ふっ、ふっ、くっ…ラムゥッ!」

“ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ…ずっ、ずっ、ずっ、ずっ!”

「あぁあぁぁあぁあぁーーっ!!あぁあぁあっ、はぁんっ!!…ダーリン、がっ、いっぱい…ウチにっ、意地、悪っ…する、からっ…!すっごく…すっごく…すっごく…!!…ウ、ウ…ウ、チッ…ダァ、リン、に…いっ、ぱ、い…攻め、られ、てっ…うん、と、奥、までっ…ダー…リンが、来てる、っちゃ…ちゃっ!ちゃっ!…ウチ…気が…遠く、なり、そう…あぁ…」

「もっ…もっ、と…攻め、ちゃる…から、なっ…覚悟っ、しろっ、よっ…!」

「…あっ、はぁっ!そんなっ、にっ、突いてっ、ナカ、圧迫…したらっ…!!あ、あ、あぁっ!だっ、だめぇぇぇっ!もうっ、もうっ!ガマン出来ないっちゃーーーっっ!!!」

春の陽気とはいえ、しばし野外で絡み合えば、生理現象も起きてくる。あたるの逸物がラムの膣道を、角度を変えながら引っ切り無しに往復する圧迫感で…ラムは悲鳴を上げて、膀胱の口から…たっぷりの“黄金水”を、放出してしまった。

「ああっ!でっ、出ちゃうぅぅぅっ!!と、止まらない…っちゃあぁぁーっっ!!」

熱いほとばしりが、ふたりの下半身をびしょびしょに濡らした。そうこうしている間も、あたるのピストン運動は休む事無く続けられた。


あたるとラムの愛の営みは、今だ続いていた。先のラムの“放出”で濡れたふたりのカラダは、太陽の暖かさで自然に乾いていた。

やがて疲れたふたりは喘ぐように、全身から弾き出すように、速い呼吸をする。

あたるがラムから逸物をずるり…と抜いた。ラムの蜜壺をかき回し続けていた彼のモノは、ねっとりした汁でまんべんなく濡れていた。

ラムの花びらの奥からは、卵の白身様の蜜とあたるの白い体液が混ざったものが、彼のモノに引きずり出され、たっぷりの糸を引いて、零れた。

しばらくしてようやくカラダが落ち着くと、ふたりはまた、カラダを合わせたい欲求に駆られてきた。

するとあたる、起き上がって、脱いだズボンのポケットをごそごそと探りだした。

「お、あったあった〜これじゃ、これこれ♪」

嬉々とした表情で、取り出した物をラムに見せるあたる。

「…何だっちゃ、その輪っかみたいなものは…あーっ!もしかして、またウチに…うんと悪さするつもり…けっ!?」

「弁天様がお雪さんから預かってきたんだと。何でも、“ラムちゃんとねっとりしっぽり楽しんでちょうだい”、という事らしいぞ♪」

「昔も何回かお雪ちゃんから…その手の物、もらったけど…」

海王星に常駐の鬼族のエンジニアが試作したラヴ・グッズをふたりは何度か試していたが、エンジニアの考え方が独特なのか、今ひとつ…満足いくものに出会えた事が無かった。

ある時は“超特急並み”のスピードで達してしまったり、ある時はラムの放電のコントロールが効かずあたるを黒コゲにしたり、ある時はふたり揃って失神したり、ある時は…と、まぁ、“満足のいく結果”になったためしが無かったのだ。

あたるが昔、お雪にリクエストしていたものは、すっかり忘れられたのか、はたまたエンジニア独特の解釈で既に今まで使ったものの中にあったのかは、わからない。(*)

それらのせいでラムは正直、あまり乗り気では無かったが、あたるはいつも期待に胸膨らませ、今回も既にヤル気マンマンであった。

「これをオレのココに、こう装着するだろ?で、スイッチを入れてから…3分間待つわけじゃっ♪」

多少伸縮する素材で出来ているそれを、あたるが逸物に通していく。根元まで通すと、それはきゅっと締まって、あたるのモノを軽く絞った。

…そして3分ほど経過した頃。

あたるが装着した物は融けるように薄い膜状に変化して、逸物全体に広がった。そして“すーーっ…”と浸透して消えた。無色透明なのと逸物に違和感を感じないので、あたるには元の状態と何ら変わらないように思えた。

「何か変わったようには思えんのだが…」

「確かにそうだっちゃね…」

そう言ってラムはあたるのモノに触ってみた。確かに何の違和感も感じない。

「何も変わったところ、無いっちゃねぇ…そろそろ戻るけ?とりあえずウチのUFOに」

とっ、その時っ。

“ブンブンブンブンッ!…ブルルルルルッ…ブンッ!ブンッ!ブルルイッ!!”

「どわっ!何じゃこれはっ!?」

「ちゃっ!!ダーリンッ、どーしたっちゃっ、それっ!?」

「くっ、くっ…いっ、いかんっ…」

「えっ、な、何がっ!?」

「だ、段々とっ、こうっ、何ちゅーかっ…」

「だから何がどーなったっちゃ!?」

「オレのコレがっ!まるで車のエンジンがかかったよーになって…勝手に動くんじゃーっ!!」

確かにあたるのそれは…アイドリングする車かバイクの排気口並みに振動し、エンジンのような音まで立てていた。

あたるも驚いたが、ラムはもっと驚いていた。口に手を当て呆気に取られている。

そう…今までのドラマチックな展開から一転、ふたりの間には言葉では表現しがたい…妙〜な空気が、少しの間、流れた。

先に我に返ったのは、あたるだった。しかもこのような理由で。

「こっ、これをこのままに…しておけるかーっ!!」

振動し続ける自身のモノを、むんずっ!と掴んだあたるは、戸惑うラムに抱き着きカラダの向きをくるりと反転させ、ふたり重なって腹ばいになった。そして彼は自身で握った逸物を、ラムのバックから勢いよくっ…。

“ずぬんっ!!!”

「ちゃあぁぁーーーっっ!!」

地面に腕を突っ張らせたラムは、あたるの勢いに思い切り背を仰け反らせて悲鳴を上げた。

「ぬおおおおーーーーっっ!!」

「いっ、今までのっ…ムード、がっ…台、無し…だっちゃーーっ!!あーーっ!ナカでっ、ダーリンのがっ!あっ、暴れてっ、るっっちゃーーーっ!!いやあぁぁぁーーーっ!!…ダ、ダーリンのぉぉ…バッ、バカーーーーッ!!」

「こっ、こんなっ、状態っ、でっ!ムードもっ、へったくれもっ、あるかーーっ!!」

“ブルルイッ!ブルルイッ!ブルンブルンブルンッッ!!”

あたるの“暴れん坊将軍”によるバイブレーションが、ラムのナカを思い切り振動させている。振動させながらの抜き挿しが、ラムのあらゆるポイントを刺激し、彼女は甲高い声を上げて悶えに悶えた。

「とっ、止まる、までっ、どっ、どのくらい…あっ!ひぃっ!!そこっ、そんな、にっ…され、たらーっ!ああぁんっっ!…ダァッ、リンッ!!…あっ…あっ…あっ…あぁあぁーーっ!!」

「うおおおおおおーーーーっ!!…ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ!…ふんっ…ふんっ…あ?」

“ちゅぽんっ…”

「…?…はぁっ、はぁっ…どうしたっちゃ…?ダーリン…途中で、抜くなんて…ウチも、まだ…」

「いや、何か…妙〜〜なのだ…。途中でエンスト…起こしたみたいに、な…コッチは止まるし…オレも、理由はわからんが…一気に気が抜けた、というか…だからとりあえず…」

「ダーリンッ、自分が萎えたからって…勝手に抜いたのけっ!?んもーーっ!勝手なんだからーーーっ!!バカーーーーッ!!」

「何だよ、さっきから、バカ、バカってな…いきなりやったら“バカ”で、途中で止めても“バカ”か!?だったらどっちがいいんじゃっ!!」

「止まったんなら、元気にするまでだっちゃっ!!」

そしてラムはあたるを仰向けにすると、気持ちは萎えたがしっかり立っているあたるの逸物を跨いで、対面騎乗位でナカに入れた。

「うんっ、うんっ、うんっ!…変だっちゃ…ウチも、あんまり…感じなくなってるっちゃ…うんっ、うんっ、うんっ、うんっ!」

「もしかして…これがいわゆる“ねっとり、しっぽり”…っちゅーやつか?」

「そっ、そんなの…ウチが、知るわけ…無いっちゃ…うん、うん、うんっ…」

あたるの上で、乳房をぶるんぶるん揺らしながら、カラダを揺するラム。悩ましい表情と跳ね回る乳房を見て、あたるは“ごくり”と数回のどを鳴らしていたが、イマイチ達しそうな気がしない。

ラムも達する事だけに集中しているのか、先より言葉少なになっている。

そしてラムがカラダを揺すりだしてから…数分後。

「うおっ!!きゅっ、急に…きたーーーっ!!!」

「ああんっ!!ウチもっ!!ウチもーーーっ!!!」

達しないまま乾くかと思っていたラムの蜜が…一気に増えた。あたるの耳には、逸物が蜜壺をかき回す音が聞こえてきた。

“じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぼっ…”

「いっぱい、出てっ…きっ、気持ち…いいっ…っちゃ…あ、あ、あ…あっ…あっ、あっ、あっ、あっ!」

「オ、オレもっ…もう、ちっとでっ…くっ…くっ…くっ…」

「あっ、うっ、んっ!はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…あっ、あっ、あっ、あっ、あっ…」

ふたりとも全身が気持ちよく痺れて、あと少し…というところまできていた。


ところが…である。意識がフェードアウトする寸前まできていながら。あとちょっとというところまできていながら。

またしても、“快感のビッグウェーブ”が、すーっと引いていってしまったのだ。

「また、か…?」

「また…だっちゃ…」

ふたりとも達し損ねてばかりいたせいで、すっかり疲れたようだ。そしてラムはその疲れなどの理由で、次第にイラ立ってきていた。

「ダーリンッ!だから変な物ばっかり使うのは、もうやめるっちゃーーっ!!」

「それよりお前の星の人間は、一体ナニを、何だと思っとるんじゃっ!一体何を考えとるんじゃーっ!!」

「そんなのウチのせいじゃ無いっちゃ!そのエンジニアの考え方や趣味の問題だっちゃ!大体、今までマトモな物があったためしあったけっ!?それ知ってて、また懲りずに使うなんてっ!信じられないっちゃ!ダーリンの〜〜っ、バカーーーッッ!!!」

“ドバババッ!バリバリバリバリーーーーッ!!”

ラムは騎乗位であたるのモノをハメたまま、ヒステリックに怒鳴って、放電した。

「ぐわーーーっ!!やめんかーーーーっ!!!この状態でっ!!放電するヤツがあるかーーーっ!!!」

四方八方に飛び散ったラムの電気が周囲の草を発火させた。まさに“草燃ゆる”である。

「あちっ、あちっ、あちーーーっ!!ラムのアホーーーッ!!何やっとるんじゃ!オレを焼くつもりかーーーっ!?」

しかし背丈の短い緑ばかりだったので、炎はすぐに消えた。消えた後は…ふたりの周囲数メートル四方が、黒く焼け焦げた状態になっていた。

「せっかくのいいムードだったんだから、あのまま続けてれば良かったのにっ!」

「お雪さんの好意を無駄にするつもりかっ!せっかく用意してくれたんじゃっ、使わなきゃ悪いだろーがっ!!」

「ウチとお雪ちゃんと〜〜っ!どっちが大事なのけーーーっ!?」

そして再び。ラムは怒りの電撃を…あたるにかました。

「ぎゃあーーーーっ!!!だーかーらーっ!こーーんなっ状態でっ!放電すなーーーっ!!!………うっ…」

「ウチを怒らせるよーな事ばっかりしたり、言ったりするダーリンが、悪いっちゃーーっ!!………あっ…」

「…ま、またっ…時間、経った…のか?」

「…あ、あ…わからない、けどっ…あっ、あっ!あっ!あぁっ!あぁんっ!!…さっき、よりっ…すっごく…いいっ…っちゃ…!あっ!あぁあんっ!!」

「うっ、くっ…オ、オレ、もっ…さっき、よりっ…」

「はっ、早くっ…しない、とっ…またっ…元にっ…戻っちゃ、う、う、う…」

しかし今度は数分が経過しても、快感の波が引く事は無かった。それどころか、絶頂に達する極手前の状態が…続いたのだ。

あたるは今にも噴火しそうなところまできていたし、ラムもまた、絶頂する僅か手前まできていた。

…が、今度は、カラダの芯までこれ以上無いほど気持ち良く痺れて、今にもイッてしまいそうなのに、ふたりともイクところまで行き着けずにいた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…ウチ…飛んでる、みたい、に…気持ち、いい、のに…まだ…飛べない…っちゃ、あぁ…あ…」

「…そ…そんなら…ちょっと…」

あたるは息を切らしてむっくり起き上がると、騎乗位のラムをハメたままの状態で、ゆっくり倒していった。

地面に腕を着いたあたるは、今までの疲れも何のその、まさに烈火の如く、腰を前後に動かしだした。

「ふっ、ふっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ!!」

「はっ…早く…イカ、せ、てっ…ダァ、リンッ…!!はぁんっ!あんっ!あんっ!あんっ!あんっ!…」

「ふんっ、ふんっ、ふんっ!…こっ、今度、こそっ…イカせちゃるっ…」

「あぁんっ!!ダーリンッ、ダーリンッ!ダーリンッ!!」

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ!オレ、もっ、今度っ、こそっ…ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!」

「…いいっ…だめっ…だめっ…いいっ…いっ、いいっ…あっ、んっ!…そこっ…がっ!…だめっ…で…いいっ…あっ、あっ…い、い…い…いいっ…ダァッ、リンッ…もっと…いいっ…ああっ!だめぇっ!…あんっ、あんっ!そこっ…がっ…いいっ…い…い…」

「…だめっ、なのかっ、いいっ、のかっ…どっち…じゃっ…ふんぬっ…!ラムッ、がっ…」

「…ダーリンッ!好きっ、好きっ、好きっ!大好きっ!!」

「…ラムがっ、うっ、動い、てっ…るぞっ…はぁっはぁっはぁっはぁっ…ふっふっふっふっふんっ!」

「あ、あ…あ…熱、い…っちゃ…奥、までっ…!熱く、てっ…とっ、溶け、そうっ…!はうんっ!はぁんっ!…いっ…いっ…いいっ…!!」

「…オレ、もっ…溶け、そう…じゃっ…!!うっ…お、お…」

「はぁんっ!大好きっ!ダーリンッッ!!ウチ…と、と…飛んじゃううぅぅぅぅーーーーーっっっ!!!ちゃああぁあぁぁああーーーーっっっ!!!」

「お、おっ………うおっ…!」

そしてふたりは、ようやく…達する事が出来たのであった…。


その後ふたりは、ラムのUFOで地球に戻った。が、それから3日もの間…。

「…ダーリン…まだ、アレの…副作用が…あっ、あっ!…ウチの、アソコ、がっ…ひくひく、してっ…もう、だめぇ…ガマン、出来ない…っちゃ…!」

「オレのもっ…また、エンジンがっ、かかって…もっ、もうーーーっ!辛抱たまらんっ!!」

そう、あたるが装着したアレの副作用なのか、ふたりは3日もの間、ムラムラと、催していた。その度に…で、ある。

「今日で…3日目…。お雪ちゃんから、聞いた話、だと…あ、うんっ!…3日はっ…はっ、あんっ!…収まらない、って…」

「あ、朝っぱら、からっ…こーんな、状態ではっ…会社にも…行けんっ…っちゅー事でっ!!もうっ、こーなったらーーっ!イクとこまでイッっちゃるわーーーっ!!」

ラムはシンクの淵を掴み、後立位のバックから、あたるに突かれていた。くんずほぐれつ、乱れるままに、様々に体位を変化させて交わる、あたるとラム。

そして4日目の朝、ようやくいつもの状態に戻ったのであった…。

その日ラムは直接海王星のお雪の所へ行き、それとなく、アレの事を話してみた。

「お雪ちゃん、だから、あのね…ダーリンが、使ってみたら…ちょーっと、具合が…悪かった、ってゆーか…。で、それから3日間も…」

「大体の事情はわかったわ。技術屋さんの話だと、彼、バイオテクノロジーの方も研究しているものだから、今回はそれを応用してみたんですって。旦那様の身体と一体化して、数分毎に波が来たり引いたりするようになっていて、それで長い時間楽しめるように、っていう事らしいわ」

「(相変わらず、顔色変えないで、恥ずかしい事言うっちゃねぇ…お雪ちゃん…)で、でもぉ、その後のは、どーゆー事だっちゃ?」

「1ヶ月以上、ふたりは会っていなかったのでしょう?だから身体から出ている信号…って言うのかしら、それがある程度収まるまで、身体機能が自動的に反応するようになっていたらしいわね。つまり…ラムと旦那様は、毎日だったのかしら?だったら3日間くらいが時間としては妥当かしらねぇ」

「まっ、毎日、って…ウチとダーリンは、そっ、そんなにはっ…」

「恥ずかしがらなくてもいいのよ、ラム。約10日分を1日に短縮して、約3日間。ちょうど計算が合うわ。それより眠る時間はあったのかしら?そちらの方が、心配だったのよ」

ラムはお雪の言葉で、顔を真っ赤にした。

「ね、眠る時間くらいっ!ちゃーんとあったっちゃっ!ごっ、ご心配無く、だっちゃ(お雪ちゃんには何にも隠せないっちゃ…んもうっ…恥ずかしいっちゃ…それもこれも…ダーリンが昔っから、すっごく、エッチだったから…なのにっ)」

「もし必要だったら、同じものがまだあるそうだから、用意させましょうか?それとも今開発中の試作品があるそうだから…そちらはどうかしら?」

「お、お雪ちゃんの気持ちは嬉しいけどっ、ま、また今度にするっちゃっ(試作品なんて持ち帰ったら…またダーリン使うつもりだっちゃ、きっと…)」

「あらそう、残念ねぇ…。昔、旦那様が注文した機能を、シミュレーションで十分検証して開発したそうだから…かなりの効果が期待出来るはずだ、って技術屋さん、言っていたわ」

「…シミュレーションで検証?鬼族の女性相手に、って事け?」

「さぁ。私も彼がどんな方法で、開発したものを試験しているかまでは知らないのよ。きっと見てもさっぱりでしょうから。時々研究所を視察させてもらってはいるけれど」

「(他人と余計な事で関わらない、ってとこが、お雪ちゃんらしいと言えば、らしいっちゃねぇ…)ふーん、そうなのけ…」

「ラムは理数系方面に興味があったわよね?見学でもしていったらどうかしら?」

「(変な物開発してばっかりいるみたいだけど…ちょっと、見るくらいなら…)そうだっちゃねぇ…ちょっとだけ覗いて見ても、いいけ?」

「遠慮無くどうぞ。何なら試作品も見せてもらったらどうかしら?」

「えっ、そ、それは〜…遠慮しとくっちゃっ、また今度っ」

そしてラムとお雪は、エンジニアのいるフロアにやってきた。鬼族出身の例のエンジニアの他は、他の星出身の研究者や技術者が何人かいて、全員女性ばかりであった。

「ウチてっきり…もっと静かで薄暗い感じの…そのぉ〜…変な、物…ばっかり、研究とか実験とか…してるのかと思ってたっちゃ」

「私の星も色んな星相手の商いで、台所を支えているんですもの。そんなにおかしな物ばかり作ってはいないわよ。例えば、あの風鈴樹の実を卸したり、他にも手広くやらせてもらっているのよ」

「(お雪ちゃんの商魂のたくましさは筋金入りだっちゃ…昔っからお金に関してはシビアなとこ、あったけど…)そ、そういえば、そうだったっちゃね、あはは、あははははっ」

「鬼族出身の彼だけが、大人向け玩具の開発に携わっているから、特別に個室なのよ。色々やっているようだから、鬼族出身の彼だけは、“特別”に、ね」

「(何でその“鬼族だけ特別”ってとこ、強調するっちゃ〜…)そ、そうなのけ〜、ふーーん…」

ふたりは広いフロアの隅にある【特設研究室】とだけ小さく書かれたプレートが掲げてある一室の前にやってきた。ドアには【無断立入厳禁】ともある。ドアの取っ手に手をかけると、中からカギがかかっているのか、開かない。見ればドアの上にある丸いランプが赤く点灯していた。

「あの赤いランプが点いている間は“立入厳禁”なのよ。中で何をしているのかしらねぇ」

外には何の音も聞こえてこないが、ラムは興味半分でドアに耳を当ててみた。すると…中から微かに、女の声が…普通ではない、女の声が、聞こえてきた。

「お雪ちゃん…中に女がいるみたいだっちゃ」

「おかしいわねぇ…この中は彼ひとりのはずよ?ちょっと待っててちょうだい」

お雪は着物の袖から小さな機械を取り出すと、ドアのロックを強制解除した。

“ガチャ…ギィ〜〜…”

「…あふんっ、あんっ、あはんっ…もっと…もっとだっちゃぁ…あんっ、あんっ、もっと揺すってぇ…」

お雪は顔色ひとつ変えずにいたが、ラムは…その光景を見た途端、愕然とした。

「…ウ、ウチッ!?…ウチが何でっ…」

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……うわっ!!」

室内は思ったよりずっと広く作られていた。その中央辺りにベッドが置いてあり…ラムそっくりの女が、鬼族の男相手に、今正にセックスの真っ最中であった。

驚いたのはエンジニアの彼である。飛び上がってベッドから落ち、床に尻モチを着くと、焦りと困惑がない交ぜになったような笑いと冷や汗を浮かべ、しばしその場に固まった。

「一体どーゆー事だっちゃーっ!このウチそっくりの女は、一体何なのけっ!?」

見た目どころか声までラムそっくりのその女は、ベッドからゆっくり起き上がると、お雪とラムを見て、ぼそりと言った。

「…せっかくいいとこだったのにぃ…」

「しょうがないわねぇ…。ちょっと技術屋さん、お話があるから、すぐに着替えてこちらに来てちょうだい。ラム、あとの話は私の方で聞いておくわ。しばらく外でも見学して、待っていてちょうだい」

明らかにお雪の周囲の気温が下がってきているのが、ラムにはわかった。つまり、顔色ひとつ変えないで、お雪が怒りだしたのだ。

ラムは自分にそっくりの女が気になりながらも、その部屋から出た。そして他の施設を見学して数十分後。お雪がひとりでラムのところに戻ってきた。

「あのラムにそっくりな人は、ラムのコピーだそうよ。クローンではなくて。彼、昔からラムに好意を持っていたそうだけれど、ラムには既に旦那様がいたでしょう?だからコピーを作って、それで試作品の試験をしていたそうよ。体質も反応もラムそっくりだそうだから、実益も兼ねて…というところかしらね」

「じっ、実益、って…ウチのコピーなんか勝手に作って、勝手に何やってるっちゃ!んもうっ!ウチからも何か仕返ししないと、気が済まないっちゃ!!」

「実はラムが地球で見た旦那様そっくりの人も、コピーだそうよ。わざと地球に送り込んで浮気させて、それでふたりを別れさせようとしたんですって。まったく困った人ねぇ…」

「“困った人ねぇ”、で済むわけ無いっちゃーっ!おかげでダーリン疑ってケンカして、別れる寸前までいったんだからっ!」

「あとは見合いの席に自分が紛れ込んで、上手くアピールするつもりだったそうよ。…本当に、困った人よねぇ…」

「で、あの男はどーしたのけっ!?」

「ラムの星の人ですもの、それほど厳しく叱らなかったけれど、しばらくは海王星の衛星軌道に乗ってもらおうと思って、先ほど打ち上げたところよ。凍らせてコールド・スリープ状態にしておいたから、死ぬ事は無いわ。だから安心してちょうだい。ラムのお父様にも後できちんと事情は説明しておきますから、こちらも安心してちょうだいな」

「…え、衛星軌道に、コールド・スリープさせて、飛ばした、って…事は…」

「そうねぇ…こちらで操作して衛星を落とさない限りは、ずっとこの星の衛星軌道上を周っている事になるんじゃないかしら」

お雪はそこまでを、本当に顔色も変えずに“サラリ”と話し終えた。

(い、いくら死なないからって…やっぱりお雪ちゃん怒らせたら…大変だっちゃ〜〜)

「それから、あのラムと旦那様のコピーの事だけれど。あ、そうそう、ラムのコピーはあの室内で、何不自由無く快適に生活していたそうよ。この星では、外に出ても何も無いし、普通の人間には極寒の地ですものね。でも私もうかつだったわ。あの中まで視察した事なんて無かったから、全然知らなかったのよ。…あ、そういえば…」

「何かあったのけ?」

「時々見かけた事の無い人が、帽子とサングラスで顔を隠して、宮殿内をうろうろしていたわね。私はてっきり、研究所関係の男の人だとばかり思っていたけど、今思うと体つきが女性っぽかったわ。それに海王星にいる男性は、あの鬼族出身の技術屋さんしかいなかったのよ。私もうっかりしていたわ」

そんな自分の“監督不行き届き”があっても、お雪は決して、ラムに“ごめんなさいね”とは言わなかった。あくまで、シビアである。人情があるのか無いのか、今更ながら、ラムはお雪の性格が本当にわからなくなりそうだった。…というよりも。

(とっ、とにかくっ、お雪ちゃんが謝らないとかどーとかは二の次にしといて、これ以上ウチから余計な事は言わない方が…無難だっちゃ…。でもウチとダーリンのコピーを…どうするつもりなのかなぁ…?)

コピー人間とはいえ、ラムの“コピー銃”で作ったコピーとはワケが違って、生身の人間と何ら変わらない。そこでお雪は、地球にいるあたるのコピーを海王星に連れてきて、コピーのラムと引き合わせた。ふたりのコピーだからなのかどうかは定かではないが、直にふたりは、“いい仲”になっていった。

そしてそれから数週間後。ラムはUFOの大型通信機のモニターを通して、お雪と話していた。

「あれからしばらくコピーのふたりには海王星で暮らしてもらっていたけれど、私も紛らわしくなってくるから、海王星でも鬼星でもない他の惑星に移住してもらったのよ。地球に良く似た環境の星に。それから当面の生活に必要なものは全て用意させてもらったわ。後で請求書、お父様に送っておくわね」

「あっ、ちょっ、ちょっと!お雪ちゃんっ!その請求書はっ、ウチがもらっておくっちゃ!」

「あらそう?そう安くない金額よ?大丈夫かしら?もし何なら分割でも構わないけれど」

「うんっ、とにかく金額見てから考えるっちゃっ。それじゃあ、色々面倒かけたっちゃね。ありがと、お雪ちゃんっ」

そしてお雪との通信をOFFにしたラムは…。

「…ふぅ〜〜…これだけごちゃごちゃすると、ランちゃんの相手するより…正直、疲れるっちゃぁ〜〜…」


“コピー”の一件があってから、ラムはあたるに超小型の携帯用通信機を持たせる事にした。現在でいうところの携帯電話みたいなものである。

そしてある日の夕方頃、あたるの元にラムから通信が入った。

『もしもし、ダーリン?』

「何だよ、今仕事中だろーが。勝手に通信してくるなっ、つーの」

あたるは通信機を隠して、ひそひそ声で答えながら、屋上に上がった。

『この間話した、コピーのウチとダーリンの事が一件落着したから…今夜どうけ?外で食事でも。今日は遅くなりそう?』

「いや、大丈夫だが…あんま会社に連絡してくるな、っちゅーんじゃっ」

『会社の電話にかけるより、いいでしょ?』

「そりゃまぁ、そうだが…」

と、そこへ隣のデスクの、あの彼がやってきて、あたるを呼んだ。

「おーい、諸星ー、係長が呼んでるぞーー!」

「おい、聞こえたか?係長が呼んでるんだと。通信切るぞ?」

そう言いながら、あたるは自分のデスクに戻ってきた。そこにはあたるの上司が立って待っていた。

「諸星君、君、あの面堂財閥の若社長と友達だったろう?ちょっと頼みたい事があるんだがね…」

「まぁ、同じクラスでしたけど…友達…ねぇ…。で、何を頼むんです?」

「ちょーっと今期の業績がだね…今ひとつなんだよね…。そこでだっ!諸星君っ!君の力をだね…まぁ、借りたい、と」

「いや、それは、ちょっと…(面堂に頼み事なんぞ、したいわけ無かろーがっ)」

「そうかね…。まぁここじゃ何だから、ちょっと後で、じっくりその辺の話をだね…させてもらえんかね?」

「…そうすか?今からちょっとだけなら、お聞きしますけど…」

「そうか、それじゃあ、私は先に会議室で待ってるよ」

「何でオレが、そんな頼まれ事されにゃあならんのじゃ…」

ぶつぶつ言いながら、あたるは通信機をポケットに入れようとした。が、スイッチをOFFにしておくのを忘れていた。そして入れた拍子に外部スピーカーのスイッチが入ってしまい…。

『…ダーリン、ダーリン?聞こえてるのけ?それじゃあ仕事終わったら、また連絡入れてね、うふっ♪…ダーリン、愛してるっちゃ♪』

そしてダメ押しに“チュッ”というキスの音がスピーカーから漏れ出た。

「うわっ!まだスイッチ入ったままだったんか…しまった…。くっそ〜、ラムのやつ〜…恥ずかしい真似を〜……」

そしてあたるは、慌ててスイッチを切った。大勢の耳に入ったその音声で、顔を赤くし、ぼやくあたる。するとさっきあたるを呼びにきた彼が、あたるにこそっと耳打ちした。

「いや〜〜お熱いねぇ〜♪お前“昼の仕事”は、さぼってばっかだけど、“夜の仕事”は…随分頑張ってるみたいだなぁ。もしかして…そっちが“本業”か?…くっ、くくくっ…わははっ…わははははっ!」

「…何、恥ずかしい事言っとるんじゃっ、アホかっ…」

あたるは会議室で上司から散々、面堂に何とか話をつけてくれ、と口説かれた。まったく乗り気では無かったあたるだが、上司がこんな話を持ち出してきて、彼の気持ちも“ぐらり”と揺らいだ。

「今期の業績が上がれば、もちろん君の評価も上がるんだぞ?そうすれば私にもそれなりの考えはあるからね、よーっく、考えておいてくれよ?な?…ま、ふたりで生活してるとなると…そのうち子供も出来るだろう?今回の話が上手くいったら、君も経済的に少しは楽になると、思うんだがねぇ…」

「はぁ、そうすか…。んじゃ、給料は今までの3割増…いや、4割増でどーです?んで、ボーナスは3ヶ月分アップ、っちゅー事でっ。あ、あと特別手当、っちゅーのもあると、助かるんですがぁ♪名目なんてどーにでもなるでしょ?部署に貢献するわけだし…上手くいけば、係長から課長に昇進、って事も…どーです?これくらいで」

あたるはちゃっかり電卓を取り出すと、手際よく数字を打ち込んで、係長に見せた。

「…私の裁量だけでは決められんが…上にそう掛け合ってみるよ…」

「そんじゃま、そういう事で、よろしく〜♪係長っ♪」

あたるもそれなりの要求を出して、どうにか話はまとまった…ようだ。

(しかしなぁ…面堂に頼み事、ねぇ…。もうラムに未練があるとは思えんが…まさか何の見返りも無しで、という事は有り得んだろーしなぁ…うーむ…)

あたるはその夜の外食の最中も、ずっとその事で悩んでいた。悩むというより、“面堂が一体何を要求してくるか”が、心配だったのだ。

「どーしたのけ?ダーリン。さっきからあんまり食事進んで無いっちゃよ?何か困った事でもあったのけ?」

「いや、別に…気にするほどの事じゃないぞ…」

「会社で何か言われたのけ?仕事の事で…今仕事無くなったら、ウチ、困るけど…」

「いや、その心配は無いぞっ。むしろその逆じゃ、逆。しかしなぁ…面堂に……あっ…」

「終太郎がどうかしたっちゃ?…もしかして会社から何か頼まれたとか?」

「う、うん、まぁ…。業績がどーとかで、面堂に…何か頼んで欲しいんだと…。しかしなぁ…」

「だったら素直に頼んだらいいのに。友達なんだし」

「オレから頭下げろ、ってのか?面堂にっ!?…それにだな、何を見返りに要求されるか、を考えるとだな…そう軽々しく頼み事、というわけにも、な…。な?わかるだろ?」

「ウチにはちっともわからんちゃ。学生の時から色々あったんだし、いざとなったらウチからちゃんとお礼しとくっちゃ」

「だっ、だから〜、お前は何を言っとるんじゃっ!ラムからお礼っ!?一体今度は何をどうお礼するつもりじゃっ!!」

「別にウチからの直接のお礼じゃなくても…電気エネルギー換金してくれるところもあるから、それでどーにかなるっちゃ」

「…そーいえば昔、電気エネルギーで宇宙タクシーの代金払った事あったよな?今までもそーしてれば、ラムもちっとは経済的に楽になったのと違うのか?」

「うーん、でもぉ、あんまり換金ばっかりしてると、レートが急落するっちゃ。宇宙のバランス考えて、いざって時にだけ、そうする事にしてるっちゃよ」

「…ふーん、何だかようわからんが…つまり、豊作になり過ぎると作物の値段が下がるとか…そーゆー事か?」

「ま、似たようなもんだっちゃ。ダーリンにしては上出来だっちゃ♪」

「あのなぁラム…お前、オレの事、バカだと思っとるだろ?」

「そんな事無いっちゃよ♪でも、そんな事でムキになるダーリン、可愛いっちゃ♪」

「男にカワイイ、とか言うなっ、ちゅーんじゃっ…アホッ…」


そして毎度の事であるが、その夜もまた…。

「ねぇ、ダーリン…ウチが見合いする、って思ってた時、“他の男に指1本触らせない”って言ってくれたでしょ?またあの言葉、聞きたいなぁ〜♪ねぇ、ダーリン…」

「あーゆー事は…1回だけ言うのが肝心なんじゃっ…。何回も言ったら価値が無くなるだろーがっ」

「だからウチにも“いまわの際”の時だけ、“好き”って言ってくれる…つもりなのけ?」

「…うっ…(どーしてオレは、こうもいらん事ばっかり、うっかり言ってしまうんじゃっ…)」

「他の男になんか…指1本だって、触らせないっちゃ…。こうやって、ダーリンが、たくさん、たくさん…ウチの事、触ってくれるから…うふっ♪」

「当分は妙〜なモンは使わんつもりだが…。たま〜にだったら、いいだろ?な?な?」

「…もしかしてダーリン…変態プレイとか…好き、なのけ?」

「変態では無いわっ!男の欲求、男の浪漫じゃーっ!…っちゅー事で…たま〜になら、な?」

「もう当分はいいけど…たま〜〜にだったら…いいっちゃよ?本当に、たま〜〜に、だったら、ね?」

「…もしかして、オレが妙〜なモン使うたんびに…嫌になっとるのか?…オレとセックスする事自体…」

「そうじゃなくって…普通のダーリン…何の仕掛けも無いダーリンで、ウチ、十分なんだっちゃ…。十分満足出来て、うーーんと、幸せ感じてるっちゃ♪だから…たま〜〜に…刺激が欲しいなぁ、って時くらいで…いいっちゃよ」

「そ、そうか…普通のオレで…十分、満足?十分、幸せ感じとる、と?そーかそーか、うんうん♪だったら今夜も…うーーーーーんとっ!その“幸せ”と“満足”を〜〜〜っ!感じさせちゃるわーーーっ!!」

「…ダッ、ダーリンッ…今日、会社で、他に…何か…言われたんじゃ、無い、のけ?…さっきちょっとぶつぶつ…言ってたから…“仕事”がどーとか…“本業”が、どーとか…」

「隣のデスクのやつに言われてしまったんじゃ…。“昼の仕事”より“夜の仕事”が“本業”じゃないのか?ってな。…そう…そうなんじゃっ!“夜の仕事”、“夜の本業”がオレにはあったんじゃーーっ!!頑張り甲斐がありっ!尚且つ、日々の活力と励みになっとる“夜の仕事”がっ!!…そんじゃ、まっ、ぼちぼちと…」

「ううんっ…ダーリンッ…好き…いっぱい、好き…」

「…ラムのカラダは…すべすべしとって…ぬくくて、気持ちいいな…。こーやって抱いとるだけでも…気持ち、いいぞ…」

「…ダーリンのカラダだって…あったかくって…ウチのこと全部包んでくれて…抱かれてるだけで、うーんと…気持ち、いいっちゃ…」

「…そういや、コピーのオレたち…上手くやっとるんかなぁ…」

「…きっと、大丈夫だっちゃ…。ケンカばっかり、かも、しれないけど…きっと、地球にいるウチとダーリンみたいに…上手くやってるっちゃ…」

「しかし…そのコピーにうっかり遭遇だけは…したくないな…生身の自分たちそのものだろ?好き好んで見たいもんじゃないな…」

「ウチも…。ここにいるダーリンを…見ていられれば…それで、十分だっちゃ…ふふっ♪…ねぇ、空いてた時間分だけ…たくさん、たくさん、ウチに触って…たくさんウチに、キスして…。そして、たくさん…ウチの名前…呼んで…ダーリン…」

「ん…そうだな…。ラムもオレの事、たくさん、呼んでくれよな…。たくさん、たくさん…な…」

しょっちゅうケンカをしても、ラムが家出をしても、今回のように別れる寸前までいき、心が彷徨ったとしても。最終的には、互いを求めて止まない何かが惹き付けあって…元の鞘に収まる、ふたりなのであった。

そう、これから先のふたりの長い時間に、様々な事があったとしても…。

“仲よき事は美しき哉”(武者小路実篤)…。

--- E N D ---

(*)・・・「学生時代編」の「If・・・」最後のくだりを参照。

あとがき


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