(例えば・15) それから…。


「何恥ずかしがってるっちゃ、ダーリン!」

「アホ、べたべたくっつくな」

あたるがラムを見ると、彼女は本当に幸せそうに泣いていた。微笑みながら、涙を浮かべている。

式の最中は…というと。旧知の知人友人、その他大勢が、チャペルでのふたりの式を、特に男性たちは歯軋りし、目を血走らせながら見ていた…らしい。

しばらくは黙っておとなしくしていた彼らも、誓いの言葉に体を硬くさせ、どもりながら答えたあたるを見ているうちに、ざわついてきて、遂には罵声を飛ばす者が出てきた。そうなるともう、歯止めが効かなくなり、あちこちから嫉妬の声が上がった。

「本っ当に後悔しないんですかーっ!?」だの「諸星のアホーッ!」だの「ラムさーんっ、早まっちゃいけませーん!」だの「今ならまだ間に合うぞーっ!」だの、めでたい結婚式どころではない、騒然とした空気が神聖な場所に広がっていった。

いくら図太い神経でスチャラカなあたるも、この雰囲気には緊張した。指輪の交換は手が震えていたし、誓いのキスなんぞは、すっかり固まってしまって、ラムの肩を掴んだまま、直立不動になってしまっていた。

「ダーリン、ダーリン?ほら、誓いのキスするっちゃ」

ラムは幸せ一杯のせいなのか、周りの様子など気に留めていないようだ。至極落ち着いたものである。大勢の手前、あたるとしては(こんな恥ずかしいところを見せられるかっ!)とでも思ったのか、ラムのおでこにさっと唇を触れさせただけで、すぐさま正面に向き直ってしまった。

…と、まぁ、周囲の喧騒に気おされて、どうにも落ち着かないあたるであったが、教会から出てラムの涙を見た瞬間、ようやく一区切りついた気がして、大いに安堵した。

(ラムのやつ…幸せそうに…泣いてやんの…)

そしてその後、ふたりは、新婚旅行に出発したのであった。予算の都合で、手頃な温泉宿をとった。そして予算以外のあたるの理由はこうである。

「やっぱ新婚…初夜といえばっ!…温泉、だろ?畳に布団、だろっ!?」

「それがダーリンの…初夜のこだわりけ?」

「で、浴衣に半纏っ!ちょっとだけフンパツしてだなぁ…部屋の外に露天風呂がある宿じゃっ!」

「何だか純和風だっちゃね」

「お前は洋風がいいというのかっ!?洋室にダブルベッドにガウン派かっ!?そんでブランデーグラスなんぞをくゆらせながら、オレにキザなセリフのひとつも吐けとっ!?オレは違うぞっ、日本人だからなっ!やっぱアレだ…しょ、初夜…といえば…浴衣で、畳の部屋に布団がふたつ並んどって…」

「そんな妄想してるうちに、宿に着いたっちゃよ。あんまり大きな声でそんな事言ったりしたら…ウチ、恥ずかしいっちゃ…」

「そうか?…ほれ、あそこにいかにも初々しそうなカップルがいるではないかっ」

「だから、何だっちゃ?」

「ラムももうちっと…こう、初々しい感じで…三歩下がってオレの後から着いてくる、みたいな…」

「何で三歩下がらなくちゃいけないっちゃ?」

「日本の古いしきたりじゃ。三歩下がって二歩進むっ!そんでまた一歩下がるっ!そんくらい慎ましやかなのが、和風の良さ、っちゅーか…」

「要はダーリン、威張りたいだけなのけ?ウチは手を繋いで、並んで歩きたいっちゃ」

「ラム、お前は日本の…古来からの和風の良さを、ちっともっ!理解しとらんっ!ほれ、昔っから言うだろ?芸のためなら女房も泣かす、だの、着てはもらえぬセーターを寒さ堪えて編んでます、だの。それをお前は何かというと、すぐに“手を繋いで歩きたいっちゃ”だの、“ダーリン、キスして〜”だの、言ってばっかりじゃっ。ここは日本じゃ。ハグもチッスも挨拶にしとるような国ではないのだっ!」

「何長々と、勝手な事ばっかり言ってるっちゃ。和風の良さを力説してどーしたいっちゃ。芸のためなら…って、お笑い芸人にでもなるつもりけ?」

「そんな事よりラム。ホントーに初夜を体験出来る“何か”を用意してきたんだろーなぁ?」

「もちろんだっちゃ♪ついでにウチも…ダーリンと初めて…って事にしてみたっちゃ」

「ぶっ!!…ラ、ラム…お前、そこまで…よ、よくぞ気付いてくれたっ!!しょっ、初夜で〜っ!しっ、しかもじゃっ!ラムが…は、初、体験…という事かっ!?オ、オレとっ!?」

「その代わり、ダーリンも今夜が初体験、って事にしてみるっちゃ。それでどうけ?」

「…つまり、ふたりとも初めて…という事か?…まさか全く知識が無くなる、っちゅーわけじゃなかろーなぁ?」

「とにかく、先に温泉入ってきて、食事にして、夜になってからの…お楽しみ、だっちゃ♪うふっ♪」

そしてふたりは部屋に荷物を置き、一休みすると、ラムからこう言ってきた。

「ダーリンは部屋のお風呂でゆっくりしてるっちゃ。ウチは外の温泉に行ってくるから」

「…何で?一緒に入ればいいものを」

「それじゃあ新婚で初体験の初々しさが無くなるっちゃよ。そうそう、早速これ、使ってみるっちゃ♪」

ラムはニコニコしながら、旅行カバンの隅から取り出した小さめの四角いケースを開けて中身を取り出した。

「ウチはツノに被せるタイプのだっちゃ。ダーリンのはね…」

“ペタッ”

「お前、オレの首に…何か貼ったか?」

「だからダーリンが楽しみにしてる“初夜”用の、記憶操作シートを、首の後ろに貼ったっちゃ。逆行性記憶喪失タイプで、過去の記憶が部分的に抜けるようになってるっちゃ。ウチとダーリンが…お互いとエッチした部分だけ、記憶から抜けるように…プログラムしといたっちゃ」

「…もう貼られてから聞くのも何だが…ま、まさか…今までの、めくるめくような…体験の数々が、ずーーーっと!抜け落ちたまんま、っちゅー事は…無いよなぁ?」

「大丈夫だっちゃ♪一時的に記憶を吸収するだけで、後で元に戻せるようになってるっちゃ」

「そんなら、いいが…。ホントにホントだな?」

「そろそろ作動して、記憶がちょっとずつ吸収されていくっちゃ。で、寝るくらいの時間には…すっかり…」

「は、初体験…気分、というわけかぁ…そうかそうか…うひっ、うっひひひひ…」

「そ〜んなに、楽しみけ?その笑い方…いつも以上に…スケベ度がアップしてるっちゃ…。せっかくの初夜なんだから、ムードくらい考えて欲しいけどぉ…どーも、無理みたいだっちゃねぇ…」

「まぁまぁ、その場になってみなければ、わからんではないかっ♪…うひょひょひょっ、くっ、くくくくっ…」

「…何だかダーリンのペースに乗せられてるだけのよーな気がしてきたっちゃ…」

そしてふたりは別々に風呂に入り、その後部屋で夕食を摂り、テレビを観たり、他愛の無いおしゃべりをしたりして、いよいよ…。

宿の仲居さんが「お布団敷きに参りました」とやってきて、2組の布団を手際よく並べて敷き終わると、部屋の出入り口に端座し手を着いて軽く会釈し、静かにその場を後にした。しかし時計を見ると、寝るにはまだ少し早いくらいの時間だ。

「まだ少し早いし、お土産屋さん開いてるかもしれないから、見に行ってこよ、ダーリン」

浴衣に半纏を羽織ったふたりは、宿の土産物売り場にやってきた。幸いまだ開いていたので、ラムは早速あれこれと見始めた。

「あ、辛子漬けや唐辛子もあるっちゃ。それにわさび漬けもっ。あとこれとこれも可愛いっちゃ♪お母様たちには〜これがいいかなぁ」

「…ホントならば、これ食ってスタミナつけたいところだが…」

「何でスタミナつけるつもりけ?」

「これじゃ、これっ!」

「ニンニクなんか食べたらっ!絶ーーーっ対にっ!ダメッ!!キスするのも近寄るのもダメだっちゃ!!」

「冗談に決まっとろーが。こんなもん食ったらどーなるかくらい、わかっとるわ」

ラムは1日目だというのにあれこれ買って、あたるに荷物を持たせ、部屋に戻った。

「自分で買っといて…持つのはオレかっ!?」

「妻をいたわるのが、夫の務めだっちゃ♪」

そしていよいよ…。

「そ、そんじゃあ、そろそろ…。ところで首に貼ったこれは、このまんまがいいのか?それとも外した方がいいのか?」

「別にどっちでも大丈夫だっちゃよ。ある程度まで記憶吸収したら停止するようになってるから。ウチも着けたまんまにしとくっちゃ」

「しかし、何かこう…気分的に変わったような気が、せんのだが…」

「そうけ?」

「本当にこれは、効いてるのか?…あ…」

「効いてるはずだっちゃよ…あっ…」

「…な、何か、こう…気分が…妙〜な、感じ、に…」

「ウ、ウチも…段々、恥ずかしいみたいな…気分に…」

「こ、このオレが…こっ、こうも…ドキドキ…するとは…い、いくら気分が初体験状態になったからといって…ラム相手に、こーもドキドキするとはっ…」

「ウチが相手で、ドキドキするのは…イヤなのけっ!?」

「い、いや…確か、色々と、あったはずなんだが…色々と…。だから今更こうもドキドキするのが不自然…っちゅーか…」

「ウチも、何だか…すっごく、ドキドキ…してきてるっちゃ…ダーリン…」

「…あー…そ、それじゃあ、ア、アレだ…。そっ、そろそろっ、でっ、電気…消す、か?」

「う、うん…」


ふたりは掛け布団をめくり上げ、敷布団の上に座った状態で、向き合っていた。

「ね、ねぇ、ダーリン…」

「な、何じゃ…」

「な、何だか…薄暗い中で息の音だけ、聞こえてくると…本当に、ドキドキして…心臓が、飛び出しそう…」

「うーむ…こっ、この手がっ…この手のひらがっ、指がっ!こーも“ワキワキッ”としとるとゆーのにっ!…こっから先を、どーすればいいのか…」

「…何も、してくれないのけ?ダーリン」

「な、何かをするもしないもっ!この手が何かをしたがっているのは確かなんじゃっ!こっ、こう、指先までが、そわそわして落ち着かん、というのにっ!…とっ、とりあえず〜…キ、キス…して、みるか?」

「う、うん…ダーリンがそうしたい、って言うなら…ウチ…」

「オ、オレが、そーしたい、って言うなら?」

「ウチ…ダーリンに、何されても…いいっちゃ…」

「うっ、い、いかんっ…あまりの言葉に、こっ、興奮…してしまったではないかっ…」

「…興奮すると、どうなるのけ?」

「…興奮すると?そーゆーラムは…ど、どーなるんじゃ?…」

「…ウ、ウチはぁ…あんっ、そんな恥ずかしい事…言えないっちゃ…ダーリンの、バカッ…」

「うっ…こ、これは、いかんっ…“新婚初夜”モードにスイッチが入った途端…“何してもいい”だのっ“ダーリンのバカ”だのとっ…い、言われただけで…くっ…」

「真っ暗じゃないから、ちょっと見えるんだけど…もしかしてダーリン、鼻血、出してるのけ?」

「…こんな状態で、キスやら…その先をしたら…どうなると思う?」

「…さぁ…?」

「鼻血で失血、という話は聞いた事が無いがっ…オレは自信あるぞっ!絶対っ、オレは…失神するっ!!120%恐らくそうじゃっ!!」

「ウ、ウチも…心臓飛び出しそうなくらい、ドキドキしてるから…どーなるか、わからんちゃ…。もしかして〜ダーリンと一緒に…失神…する、かも…」

「しかし、やってみん事には…先はわからんからなぁ…。とっ、とりあえずっ!キ、キス…してみるか…な?」

そしてあたる、緊張したコチコチの状態でラムの肩を“わしっ”と掴み、力んだまんま、ラムの唇に、唇を…触れ合わせた。

「んっ…」

ラムが小さな溜息を漏らした。

(いっ、いかんっ、あまりに緊張し過ぎて〜!)

“カチッ、ガチンッ!”

「…ちゃっ!」

「…あ、悪い…」

あたるは思い切ってラムを自分側に“ぐっ”と引き寄せ、力一杯キスしようとした。その途端、互いの歯が当たってしまったのであった。

「いくら何でも、まさか歯が当たるとは…ガキの初キッスじゃあるまいし…」

「それだけ初々しいって事だっちゃよ。それじゃあ、もう1回…」

今度はラムがあたるの首に腕を回し、唇を重ねてきた。唇を軽くねぶるだけの、軽いキスを少しの間だけすると、あたるに回していた腕をするりと外して、ラムからキスを解いた。その後、ラムは少しうつむいて、恥ずかしそうにもじもじしている。

横座りをしているラムは、敷布団のシーツに指先で“のの字”を書きながら、あたるを見たりうつむいたり、を繰り返した。

(こ、これじゃあ〜〜っ、こっ、この照れ加減、初々しさ、これがオレの期待しとった、しょ、初夜の…シチュエーションなんじゃーーーっ!!)

後はもう、成り行き任せである。ワキワキする手をラムの肩にかけたあたる、彼女の浴衣の襟足を左右にゆっくり広げていって、肩口を露出させた。ラムは本当に恥ずかしそうに、うつむいたままだ。

(とっ、とにかく、これをひん剥かない事にはっ!何も始まらんっ!!…し、しかし…ラムのやつ、何ちゅー初々しい…というか…何というか…)

“ごくり”とのどを鳴らしながら、するするとラムの浴衣を下ろしていくあたる。が、胸の谷間が見えてきたところで、帯を解いていなかった事に気が付いた。

「お、帯、解いてなかったな…そーいえば…」

帯を解き始めたあたる。その間に、ラムの乱れた浴衣が更に乱れていった。裾がはだけて、きれいな足が、太もものあたりまで見える。

「…ウチ、下着…着けてないんだっちゃ…」

「…ぶっ!(い、いかん…今のでますます興奮度が増してきたではないかっ…)」

薄暗いとはいえ、豆電球が点灯している室内、あたるを見上げたラムの目が潤んでいるらしいのが、わかった。

「…ねぇ、ダーリン…」

帯を解ききって、後は浴衣をするりと脱がせばいいだけのところにきて、潤んだ瞳のラムが、浴衣の前を軽く押さえながら、あたるに言った。

「ウチと結婚して…良かった、って思ってるっちゃ?…ウチは、うーんと、幸せだけど…」

「それ…言わなくちゃならんのか?」

少し泣きそうな顔に見えるラムが、あたるの胸にしなだれかかってきた。頭を彼の肩に預け、腕を背に回して軽く抱き着いてきた。

「だって…ずーっと、何も言ってくれなかったから…ウチは、ずーっと、待ってたから、今すっごく、幸せ…だけど…。ダーリン、は…?」

「言っただろ?オレは和風の良さが好きな古風な人間だからな…んな事軽々しく口にしないんじゃっ。“あの言葉”も最期まで言わんと決めとるし。…お前、ちっともわかってなかっただろ?“いまわの際に言ってやる”って、オレが言った言葉の意味」

「だから、最期の時に、ウチに言ってくれるんでしょ?“好き”だって…。最期まで言わない、って事は…ずーっと一緒にいてくれる、って事、で……。あ…もしかして…そうだったのけ?」

「やっと、わかったか?」

「“いまわの際”まで、ずーーっと一緒にいて欲しい、って事だったのけ?そういう事?」

「相変わらず鈍い、っちゅーか…ようやっと、わかったのか…。だから今更言う必要無いだろ、と思っておったわけじゃ」

「ウチも“一生かけて”とは思ってたけど…。うふふっ、嬉しい…。ねぇ、ダーリン…もう1回、キス、して…」

そしてあたるはラムに、熱くて深いキスを与えた。キスをしながら、ふたりは布団の上に、ゆっくり雪崩れ込んでいった…。

仰向けに横たわったラムは、あたるに浴衣を広げられ、彼の目にその美しい裸体を惜しみなく披露した。そしてあたるは逸(はや)る気持ちで自分の浴衣を脱いでいった。

一時的に“初体験”状態のラムは、両足を閉じ、一時露にした胸元を腕で隠して、あたるの前でその身を硬くしていた。あたるはそんなラムを何とも言えない気持ちで見ていた。

“ごくり”と、のどが何度も鳴り、緊張と興奮で汗も掻いている。のども渇いてきた。が、カラダは正直なもので、肝心な部分も次第に充血し、硬くなって、頭をもたげてきた。心臓の鼓動が早まる。全身を巡る血が、カラダを一定のリズムで揺らしている。…頭が少しクラクラしてきた。

そんな状態のあたるだったが、横たわるラムに覆い被さると、再びキスをして、柔らかで滑らかな肌に吸い付いた。素肌に何度も何度も、キスをする。(本当の初めての時も、こんな感じ…だったかな…そういや…)などと頭の片隅で思いながら、カラダを硬くしているラムを、軽いタッチのキスの愛撫で、徐々にリラックスさせていった。

「ダーリン…ウチと、ダーリンと…初めて、じゃないけど…本当の、初めてみたいな、感じで…ウチ、ドキドキし過ぎて…どうかなっちゃいそう…だっちゃ…あ…あんっ…」

あたるはラムの乳首をペロリ、と舐めた。ころりと転がり、ぷりんっ、と弾けるラムの乳房の頂点。

「あっ…いやんっ…」

ほんのちょっとした事で、ラムは敏感に反応した。ラムのカラダのどこに触れてみても…ぴくぴくっ、ぶるぶるっ、と過敏過ぎるくらいに、カラダを小さく震わせるのだ。艶っぽい声を漏らしながら。

「あっ、んっ…ダーリン…ダーリン…」

“パリパリパリッ!”

ラムがカラダの各所から放電を始めた。

“パリパリッ、パシッ、パシッ”

擬似初体験のラムが放電の加減をコントロール出来ないせいなのか、あたるのカラダに強めの電流が伝わってくる。

「あちっ…いてっ…」

「…ごめん、ちゃ…ダーリン…上手く、調節、出来ないみたい…だっちゃ、ウチ…」

「い、いや…いいぞ、気にせんでも…」

そして…。

「…はぁんっ!」

“ビクビクッ…”

濡れた襞の狭間にあたるの指が埋もれると、ラムはあたるの胸の下で、カラダを震わせ、軽く悶えた。それから間も無くして、あたるの逸物が…ラムの締まったつぼみをこじ開け、頭からゆっくり入っていった。

(うっ…熱くて…よく、締まっとる…)

「ウ、ウチ…あっ、あぁっ…」

「う…」

「…あぁあっ!いっ、痛っ…痛いっ…っちゃ、あっ、あぁっ!…ダ、ダーリンッ…!いっ…痛いっ…」

“カリッ…”

あたるは痛がるラムに挿入しながら、彼女の乳首を軽く噛んだ。腰を使って彼女のナカへと入っていくのと同時に、ラムの肩に噛り付いたりしながら…そう、恐らく昔、本当に初めてだった時もこうしたように。処女膜が裂け、その痛みに顔を歪めているラムの気を少しでもそこから逸らすため、あたるはラムの肩に、ほんのり赤い歯型を残した。

「うんっ、うんっ、はんっ、はんっ!あっ、あんまり…」

「ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ…!」

「…あんまりっ…強く、しない、でっ…ダーリン…あっ、あぁ、ぁ…」

擬似とはいえ、ふたりとも“初体験”による“新婚初夜”である。ラムは薄っすら涙を零していた。それは破瓜の痛みによるものなのか、あたるに抱かれている悦びからなのか…。

「…うっ…」

あたるが小さくうめいた。ラムはその熱い流れに驚いたのだろうか。先から上手くコントロール出来ていなかった放電を、その瞬間、思いっきりしてしまった。

“パリパリパリパリ…バチバチバチッ、バリバリバリーーーッ!!”

「ぐっ、ぐわっ!!」

ふたりはまだ繋がったままだから堪らない。ラムの放電が、逸物からあたるの体内に流れ込み、首の後ろに貼った“記憶操作シート”が感電してしまったのだ。あたるのカラダからラムの胎内や体表面にも思いっきり電気が伝わり、彼女のツノに装着した、同様の記憶操作の装置が、これまた感電してしまった。

「ちゃあぁぁぁーーーーーっ!!」

「ぐわわーーーーっ!!」

“ビリビリビリビリ…バチバチッ…バチバチッ!!”

そして遂に、ふたりの“記憶操作装置”は、感電したせいでなのか、制御が効かなくなったらしい。なぜならば。

「うおぉーーーっ!なっ、何じゃこりゃっ!?一気に…今までの…ラムとの、アレがっ…頭に流れ込んできてるではないかっ!?」

「ちゃあぁぁっ!!ダーリンのっ、ダーリンのがっ!!全部っ、いっぺんにっ…ウチの頭にっ…流れてきて…あっ、あぁあーーーっ!!」

「すっ、すご過ぎじゃーーーっ!!うっ、うおおーーーっ!!」

「いやぁんっ!!ダーリンとした…エッチな…事、ぜ、全部…一気にっ…ああんっ!!だめぇーーーっっ!!」

「ラ、ラムッ!お、お前っ…ちゃんとっ、これっ、絶縁処理とかっ、しといたのかっ!?かっ、感電せんように、とかっ!…でっ、こっ、これはっ、大丈夫…なのかっ!?…いや…い、今の感じ、だとっ…だ、大丈夫なわけ…あるかーーーーっ!!!」

「ウ、ウチもーーっ!大丈夫じゃっ、無い…っちゃーーっ!あぁんっ!!はぁんっ!…ダーリンにっ、いっぱい…さ、されてるっ、みたい、でっ…いやぁあぁぁーーーっ!!だめぇーーーっ!!…あっ、いっ…い、いっ…イッ…イッちゃうぅぅぅーーーっっ!!!」

「うおぉおぉーーーっ!!こうなりゃイクとこまでイクしかないっ!!」

「しょ、初夜…っぽく、なくなって…はぁっ、はぁっ…いっ、いいのけっ…!?」

「とっ、とりあえずっ…最初のとこだけ、はっ!それっぽかった…からっ、もうっ、十分っ、満足じゃっ!!」

「ダッ…ダーリンの…バカッ…じ、自分勝手、なんだからっ…あんっ、あんっ、あんっ!」

「一気に記憶が戻ったからにはっ!とにかく、イクとこまでいっちゃるわーーーっ!!かっ、覚悟せいっ、ラムッ!!」

「あぁんっ!そっ、そんなに、揺すった、らぁっ!あっ、頭がっ、とっ、飛んじゃう、う、う…う、うぅっ…!!」

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ…!」

「ま、またっ…イッ…イッ…イッちゃうぅぅっ!!…とっ、飛んじゃううぅぅぅっ!!」

「うっ、おっ…!」

今まで数年にわたり蓄積されてきた、ふたりの“くんずほぐれつ”の“すっごい”経験の数々が、脳内に一気に逆流してきたから、ふたりにとっては本当に堪ったものではない。あまりにも“すっごい”官能の感覚が一度にまとまって、脳内から全身を駆け巡ったため…。

「もっ、もう…あかん…ダメじゃ…」

「ウ、ウチ、も…、もう、ダメェ…」

あたるが最初に言った“失神するかもしれない”は、理由こそ最初と違ってしまったが、結果、確かにふたりは…怒涛の如き“すっごい”感覚で、本当に…失神してしまったのであった…。


「確かに、最初のうちは、初夜っぽかったかもしれんが…後が悪かった」

「ダーリンが変なリクエストしてくるからだっちゃ。ウチはそれに応えようとしただけなんだからっ!」

「まさか、あーなって、本当に、失神するとは…な」

「でも早めに目が覚めて良かったっちゃよ。そうじゃなかったら旅館の人に、あの姿…見られてたかもしれないっちゃ…」

「ところで…アレはどーやったんだ?」

「アレって何?」

「ほれ…ラムがホントに処女喪失状態だった…事じゃ…」

そう、翌朝目覚めてみたら、“破瓜の血”がシーツを汚していたのだ。

「ただ単に…アレを再生しただけだっちゃ。だからあの血も…ダーリンと初めてした時と同じだっちゃ」

「それじゃあホントに…痛かったのか?」

「…だっちゃ…」

「…そこまでせんでも、いいものを…」

「だって、せっかくだから、そこまでした方が、ダーリン喜ぶかなぁ…と思って」

「…あんなに痛がっておったら、喜ぶも何も…とにかく、もうやめとけ」

「…まだ…ヒリヒリするっちゃ…」

「…という事は…少しの間…アレか?…セックス出来ん、というワケかっ!?」

「すぐに治せるから、別に心配しなくても大丈夫だっちゃよ。でもダーリン、すぐにそっちばっかり心配するんだっちゃねぇ。ウチの心配より、そっちが出来るか出来ないかの方が…心配なのけ?…バカッ…」

「いや、ラムが元気であればこそっ!そうでなければ出来んだろーがっ。そうそう、元気が一番じゃっ。という事で、一応心配はしてやってんだからな」

「くすっ…ホントにスケベで偉そうで、どーしようもないっちゃねぇ、ダーリンはっ。でもぉ…そんなとこも含めて、ぜーんぶ、大好きだっちゃ♪」

「2泊3日だから、あと2日…。とりあえずオレの希望の“初夜”もクリア出来たわけだし…後はいつも通り、という事で…部屋の風呂、入るか?」

「まだ明るい時間から、何言ってるっちゃ!これから観光して、お土産買ったりして、美味しいものも食べて〜♪…で、夜になったら、ゆっくりと…だっちゃ♪もしかしたら…ハネムーン・ベビーなんて事も…あったりするかも…うふっ♪」

「そうか…そういう可能性も無きにしも非ず、か…」

「嫌なのけ?赤ちゃん出来るの」

「…まぁ、なるようになるだろ」

…そしてそれから何ヶ月かの時が過ぎ…。

「タバスコ飲めなくてイライラしてるっちゃーっ!好きなもの食べたいっちゃーっ!」

「わーーーっ!やめっ!頼むからっ!電撃だけはっ!わかったっ!」

「わかってくれたのけ?で、タバスコストレート一気飲みしてもいいのけ?」

「…電撃出されるくらいなら…わかった!だが今日だけだぞ?」

…というような日々を迎えるのであるが、しばらくは“新婚さん”気分を旅行先で、そして新しく引っ越したアパートで、満喫するふたりなのであった…。

「いや、しかし“新婚さん”気分たってなぁ…?しかも、満喫?…今までと特に変わったところもないというのにか?」

「何言ってるっちゃ、ダーリン。しばらくは“新婚さん”なんだもん、ダーリンだってそれなりに…満喫してるでしょ?ウチに色々リクエストしてくるし…」

「なっ、何をっ!?」

「前よりスケベ度がアップしたっちゃ。例えば…帰ったら裸エプロンがいいなぁ、とか。夜はウチに…むぐっ」

「それ以上余計な事を言うなっ、っちゅーんじゃっ!ボンテージがいいだの、たまにはコスプレしたいだの…とっ…あっ…」

“ドババババーッ!”

「いきなり口ふさいで、何するっちゃ!だってホントの事なんだし、今、自分で言ったくせにっ」

「ふっ…コスプレ、裸エプロン…そう、それは男の浪漫じゃ…。新婚初夜もそうだったが…。結婚した以上は、こう、何ちゅーか…日々のマンネリ感をいかに払拭し、いかに長〜く、和気アイアイと楽しくチチクリ合えるかがっ!そうっ!一番のこれからの課題じゃっ!…だろ?なぁ?」

「男の浪漫ばっかり強調して、ウチの浪漫はどうなってるっちゃ!?もうちょっと、こう、ムード満点な新婚生活がいいのに〜。ダーリンの趣味にばっかり付き合ってたら…ウチまで変態だと思われるっちゃ」

「…しっかり“裸エプロン、今日はこれにしてみたっちゃ♪どうけ?”と、嬉々として見せびらかしとるくせに…」

「そっ、それは〜〜、あははっ、あははは〜…、ダ、ダーリン喜ぶかなぁ、と思って、だっちゃ…うん、そうだっちゃ」

「…よく言うわ…」



    病める時も、健やかなる時も、長の時を共に歩もう。

    茨の道も、なだらかな道も、共に手を取り合って、寄り添って歩もう。

    これから先も、様々な出来事が、ふたりの間にあったとしても。

    長の時の、最後の最後まで。



--- E N D ---

あとがき


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