(例えば・16) 空が落ちてくる(I FEEL THE EARTH MOVE)


「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ!…お、落ちそう…ウチ…お、落ち、ちゃうぅ、ぅ…」

「どっち、が、上か…下か…わ、わからん…オレ、も…落ちそう…じゃっ…」

「あ、あ…あぁぁっ!おっ、落ちるっ…落ちるっちゃぁ…どこか、に…ダーリン、と…一緒…に…」

「ふっ、ふっ、ふっ…うおっ…上と、下が…入れ替わった…ぞ…」

「あぁ〜んっ!…こっ、今度はっ…上、からっ…あぁっ…あぁっ…あはぁんっ!」

“パリパリパリパリパリパリ…”

ラムのスパークが縦横無尽に飛散している。そしてラム自身も放電の余熱で青白く光っている。あたるはそんなラムを見ながら…真っ暗闇の亜空間の中で、情事に耽っていた。

「ラ、ム…お前……き…」

「き…の、後…は?…何、言ってくれる…つもり、なのけ…?うっ、んっ…」

先までのラムは騎乗位で喘いでいた。カラダを上下左右ににゆっさゆっさと揺すりながら、あたるの上で…躍るように悶えていた。天地のわからない不思議な亜空間の中、くるりとカラダが回転して、今度はラムが下になり、まんぐり返しの体位であたると交わった。

「じ、地面、がっ…揺れて、るっ…空が…落ちて…きそう…大きく…揺れ、てっ…あぁっ…あぁっ…ダーリン…す…すっごく…いい…ウ、チ…感覚、が…変に…なり、そう…だっちゃ……あうんっ…!すっ…好きっ、好きっ、好き…大、好きっ…ダー、リンッ…!」

大きく揺らぐ、ふたりのカラダと感覚。しかしこうなる前に、ちょっとした出来事があった。


「ダーリン、おかえりなさ〜い♪だっちゃ」

「…ぶっ…何じゃその格好は…」

「何って、エプロンだっちゃ。ねぇ、可愛いでしょ?今日のエプロン」

新居のアパートの玄関で、あたるを出迎えたラムは、大きなフリルの付いたエプロンを身に着けていた。胸元から膝上までがピンクのフリフリした布地で覆われてはいるものの…。

「あ、あのなぁ…その格好でっ!誰か来たらどーするんじゃっ!その格好で出るのかっ!?」

「ダーリンが帰ってくる少し前に着替えるから、大丈夫だっちゃ。誰か来ても居留守使うし」

「この物騒な世の中っ!誰かが押し入ってきたらどーするつもりじゃっ!」

「ウチの心配してくれるのけ?嬉しいっ♪」

「いくら電撃があるからってなぁ…」

あたるはぶつぶつ言いながら、ラムの横をすり抜けて、部屋に入っていった。新居のアパートは前より少し広く、2LDKである。
ラムは部屋に入って、あたるが脱いだ背広とズボンをハンガーに掛けた。すると…。

「おっ、お前なぁっ!エプロン以外何も着けとらんじゃないかっ!」

「そうだっちゃよ?だってダーリン…たまにリクエストしてくるくせにっ。裸エプロンがいいなぁ、って」

「そりゃそうは言ったが…」

「最初は喜んでたくせに、どーしたっちゃ?最近」

そしてあたるは部屋着に着替えながら、ラムをちらちら見やり、こう言った。

「“今日はこのエプロンにしてみたっちゃ、どう?似合う〜?”と…お前、結構ノッてただろ?んで、何枚もエプロン買っただろ?」

「だから?」

「確かに…裸エプロンは…いいっ。いいが…ラムのビキニと一緒で、こうも毎日のように見せられてるとだなぁ…慣れというのは恐ろしいもんで…」

「ウチのこの格好に慣れたから、あんまり感じなくなった、って事け?」

「どーせなら…」

「どーせなら?」

「ラムより小さな胸のしのぶの裸エプロンとか…いつもフリフリのエプロンを着けてはいるものの1度あの洋服を脱いで欲しいランちゃんとかっ!大人の色香漂うサクラさんっ!…そしてっ!男っぽい立ち居振る舞いはしとるが意外と似合うかもしれん竜ちゃんとかっ!弁天様とかっ!お雪さんとかっ!了子ちゃん、飛鳥ちゃん、その他もろもろっ、ひっくるめてっ!!」

「…ダーリンの言いたい事はっ…それだけけ?…よーーーっくわかったっちゃ。つ〜ま〜り〜…ウチの裸エプロンを見慣れたから、他の女のが見てみたい、って事けっ!?」

ラムの表情が次第に好戦的になってきた。腕を組み、パリパリと軽く放電まで始めた。

「そうっ!!そうなんじゃっ!!“裸エプロンでハーレム”状態っ!!!こっ、これぞ、男の夢っ、憧れっ、浪漫じゃーーーっ!!!」

「…くっ…くぅぅぅーーーーっ!!!何が“裸エプロンでハーレム”だっちゃーーーーっ!!!」

「バッ、バカッ、電撃だけはっ!やめろ、っちゅーんじゃっ!また追い出されたりしたらっ!!」

“バチッ、バチッ、バリッ、バリッ”

「そのために、い〜場所、用意しといたっちゃっ!!とにかくっ、こっち来るっちゃ!!」

ラムはあたるの襟首を掴むと、刺すような刺激のある放電をしながら、あたるを部屋の押入れ前に引っ張っていった。
そして、スーッ、バンッ!と勢いよく襖を開けた。あたるが後ろを振り返ってみると、押入れの中は真っ暗である。

「何するつもりじゃっ!」

「放電専用の亜空間を押入れに作っておいたっちゃ!この中なら思う存分〜〜っ!!」

「いくら亜空間たってなぁっ!!お前が思いっきり放電したら、どーなるかくらい…お、おいっ、やめーーーっ!!!」

“スーッ、ピシャッ!”

そしてふたりは押入れの中へと入っていった。


真っ暗な押し入れ内の亜空間。右も左も上も下もわからない。しかもラムが放電して青白く光っていても、墨を流したように真っ暗闇のままなのだ。その中でラムは思いっきり、あたるに怒りの電撃を喰らわせた。

「ぐわわゎわゎーーーーーーーっっ!!!」

「この中なら大声出しても、存分に放電しても、大丈夫なようになってるっちゃ!!」

そしてこんがり焦げて、バッタリ倒れたあたる。久々にラムの“超ド級・怒りの雷撃”をかまされたあたるは、うめき声を漏らしながら、腹這い状態で頭を上げた。

「…お…お前…なぁ〜〜〜……」

「ダァ〜〜リンッ、ウチの前であーんな事言って、タダで済むとでも思ってたのけっ!?ウチがアパートじゃ放電しないからって、調子に乗って〜〜〜っ!!」

しかし、さすがは諸星あたるである。子供の頃から“スッポン小学生・諸星あたる”と言われてきた彼、散々女の子にしつこく喰い付くようにちょっかいをかけ続け、その度に平手その他もろもろを喰らっても懲りない“不屈の闘志”の持ち主だったから、高校時代から浴び続けてきたラムの強烈な電撃からの復活も早かった。
大人になってその復活力もパワーアップした彼は、今や“驚異のゾンビ男・諸星あたる”となっていたのである。…それはさておき。

「いい加減慣れてきたから、慣れてきたっ、と言っただけじゃっ!そしてオレは更なる刺激を求めて、他の女性の刺激的な姿をだなっ、見てみたい、と言っただけじゃっ!!こっ、こう、脳裏に思い浮かべただけで〜〜〜っ!!!」

「もしかしてぇ〜、それ想像して…勃たせてるんじゃないっちゃよねぇ!?」

「何をじゃっ!?」

「ウチの刺激じゃ物足りないからって、他の女想像して、勃起させてんじゃないのけっ!?もしそうならーーーっ!!」

「もしそうなら、どうする、っちゅーんじゃっ!?」

「くっ…悔しいーーーーっっ!!!ウチというものがありながらっ!他の女で勃たせてたなんてーーーっっ!!!」

「オレはそうは言っとらんぞっ!!」

「“裸エプロン・ハーレム”想像して、喜んでたくせにっ!!んも〜〜っ!当分、ウチUFOで寝るっ!!エッチなんかしないんだからっ!!ダーリンのぉぉぉーーーーっっ!!バカーーーーーーッッッ!!!」

真っ暗闇が真っ白い光で満たされるほどの強烈なラムの電撃が、またしてもあたるを黒焼きにした。

「ああっ、そうだともさっ!毎晩夢ん中には、竜ちゃんやランちゃん、しのぶやサクラさん、了子ちゃんに飛鳥ちゃん、弁天様にお雪さん、そしてオレが過去に電話番号や写真を蒐集しとった美少女たちの“裸エプロン”姿が出てきて…そりゃもうっ!ウハウハじゃーーーっっ!!」

「だったらホントーに裸エプロンの女でハーレムでも何でも作ったらいいっちゃっ!!」

ラムのエプロンは、数回にわたる電撃で、既にボロボロになっていた。燃えたエプロンの燃えかすや端切れがハラハラと落ちていき、その下に何も身に着けていなかったラムは、いつの間にか全裸に…なっていた。
それでも怒り心頭のラムは、仁王立ちのまま腕を組んで、青白く光り、パチパチパチッ、とあちこちから鋭いスパークを飛ばしていた。

「とにかくっ!ウチ、UFOに戻るっ!!」

「…その格好で、か?」

「ちゃんと着替えてからに決まってるっちゃ!!余計なお世話だっちゃ!!」

そして余熱で光り続けながら、ラムは襖を開けて、押入れの外に出た。あたるは起き上がっていたが、あぐらをかいて、むすっとしていた。
半分ほど開けてある襖の向こうで、ラムがバタバタ、ガタガタとせわしなく何かしている。きっと着替えているんだろう、と、あたるはむすっとしたまま、そう思っていた。

と、その時1本の電話がかかってきた。

「はい、諸星です、っちゃ」

あたるはしばらく押入れから出る気分ではなかった。むかむかしたまま、その場から動こうとしない。動く気になれなかったのだ。

「…え、今から?うん、わかったっちゃ。ウチもちょーど、気分転換したいとこだったから、ちょうどいいっちゃ。それじゃあ今からそっちに行くっちゃ」

ラムはどうやら電話の相手に会う約束をしているらしい。ラムの口調で見知った相手だとはわかったが、先方の名前をひと言も言わないので、一体どこの誰と話しているのか、あたるにはわからなかった。手短に電話を切ると、ラムはまたバタバタと動き回っているようだった。ガサツはガサツだが、今日はいつにも増して、ガサツ度が増しているようだ。怒っているせいもあるのだろう。

「…ウチ、ちょっと出てくるっちゃ」

「…イチイチこっちに断らんでも…ああ、はよ行けっ」

「…ダーリン…ウチ、今夜帰らないから」

「…UFOに行くんだろ?…ふんっ…好きにしろっ…」

押入れ内からあたるが半ばヤケのような口調でそう言った。そしてお互い顔を合わせないまま、ラムは出ていった。

「…裸エプロンの想像はするが…夢に出てきた事もあるが…確かにそれで勃つ事もあるぞっ、男の性(さが)だからなっ!だけど、だけどなぁ〜…ラムの…ラムの…アホッ…バカタレがっ…」

少しの間ふて腐れていたあたるだったが、腹が減ったので押入れから出てきた。そして冷蔵庫から出した缶ビールを飲み、ラムが夜食用に買い置きしているインスタントのラーメンを作って食べた。コンロにかかっている鍋をのぞくと、調理途中の料理が湯気を立てている。

「…何じゃ、料理途中で出ていくとは…。ま、食えん事もないだろ…」

そして独り侘しく摂る夕食は、調理途中で味付けも中途半端な料理と同じで、何と無く味気なかった。

「…まぁ、あいつにしちゃ、オレが食えるもん作れるようになったってのは…進歩、だよなぁ…味、わからんだろうに。…それにしても、どこの誰んとこに…行ったんじゃ?…どーせUFOに行くつもりなんだろーけどな…。ったく、オレの言う事は昔とそう変わっとらんだろーに。しかもっ、それをわかっていて…。やっぱ性格だけは変わらんなぁ…ラムも…オレも…」

缶ビールの空き缶やラーメンのカップや食器を流しに置くと、あたるは部屋に入ってごろりと横になった。

「…オレが喜ぶと思って…いっつも何考えとるんじゃ、ラムのやつは…。ま、オレが女の子にちょっかい出したりいい加減な事ばっかりしとると怒ってばっかだが…」

そしてふと、昔食べさせられた“月見団子”の件を思い出していた。

「狼だか犬だかに変身させられたが…オレに喜んで欲しくて…とか言ってたよなぁ…。よくセーターやらマフラーも編んでくれたしな…。オレが喜ぶ事ばっか…考えてたんだろな…。そういや…ラムが喜ぶ事、っつったら…オレがヤキモチ妬いたりすると…ホントに嬉しそうに…してたよなぁ…。しかしいつもと同じ事で、出てく事は無いだろ、ラムのアホ…。…そういやさっきの電話…一体誰からだったんだ?」

まだそれほど遅い時間ではないとはいえ、あたるはむっくり起き上がると、顎に手を当てて“さっきの電話の主”を推理し始めた。

「…ランちゃんのとこか?それともしのぶ…。いや、ランちゃんはレイと、しのぶは因幡といるわけだから、こんな時間に呼び出すわけ無いよなぁ、多分。弁天様やお雪さん…は、電話で連絡してこないしなぁ…。女の友達じゃないとすると…もしかして…お、男…?いや、まさか、そんな…なぁ?…わはっ、わはははっ…うーーーむ…しかし、見知った感じだったしなぁ…会社のやつ…じゃないよなぁ…。だとすると…高校ん時の…もしかして…め、面堂…いや、まさか、なぁ?…」

何と無く落ち着かなくなってきたあたるは、簡単に着替え上着を引っ掛けると、外に出ていった。


あたるの予想は当たっていた。ラムは面堂邸の彼の私邸の部屋に通されていた。

「ラムさん、こんな時間にお呼び立てして申し訳ありません。寒くありませんでしたか?」

「大丈夫だっちゃ。ところでウチに見せたいもの、って何?」

「僕ももうすぐ…結婚するわけですが…最後の思い出に、と思いましてね…ラムさんに是非お目にかけたいものがあるんですよ」

「ふーん…」

「それにしても、随分早かったですね。諸星はまだ帰ってないんですか?」

「…もう帰ってきてるっちゃ」

「そうですか。ところでこの部屋は僕専用のミニシアターになっているんですよ。ちょっと照明落としますね」

「映画でも見せてくれるのけ?」

「ええ、まぁ、そんなようなものです。僕の大事な思い出、とでも言いましょうか」

「終太郎の思い出の映画?」

「学生時代は僕が出資して、映画をよく作りましたよね。普通の高校に通っていなかったら、あんな楽しい思い出は無かったでしょう。それに何より…ラムさん、貴女がいた。毎日が素晴らしく輝いて楽しかったのは…貴女がいたからですよ」

「もうすぐ結婚するのに、ウチに告白け?」

「ははは…そういうつもりはありませんよ。貴女が諸星と…一生一緒にいる事くらいは…十分過ぎるほどわかっていますからね」

そして面堂がリモコンでビデオプロジェクターを操作すると、ミニシアターの銀幕にカウントダウンの数字が映し出された。

「わぁ、懐かしいっちゃねぇ、これ高校時代の映像け〜。ウチと…ダーリンや他の皆も映ってるっちゃ」

「これは普段の学校の様子を撮影したものです。友引高校での数年間を将来も思い出せるように、と思いまして」

「これは皆で映画撮影してた時のだっちゃね」

「あんなにイベントが多い所も珍しいですよ。当時の良家の友人に話すと、学校がつまらない、などとよく言ってましたから」

「確かに面白いイベントの多いとこだったっちゃ。おかげでウチも退屈しないで済んだけど。…あ、これ…」

「貴女と諸星の…結婚式の様子です。本当に美しかった…この隣にいるのが…諸星ではなく、僕であれば…何も言う事は…」

「もうすぐ結婚するくせに何言ってるっちゃ。…くすっ」

「飛鳥さんは確かに素晴らしい女性です。しかし…未だに“終太郎お兄様”ですからね。僕をひとりの男としては…見てくれていないんですよ」

「でもそうしないと結婚は無理じゃないのけ?“お兄様”と思わせておかないと」

「果たして…この先上手くやっていけるのか…僕は正直、不安なんですよ…。一生飛鳥さんにとって僕は“男”ではなく“お兄様”であり続けるのだろうか、と思うと…ちょっとやり切れない気分ですよ」

「そのうち慣れれば…どうにかなるっちゃよ」

「そうでしょうか…。ところでラムさん」

「何?」

「以前諸星から、会社の業績を上げたいからと、協力を頼まれまして…いえ、特に何かを見返りに求めたわけではありません。純粋に友人として、したまでの事ですから」

「あ、そう言えば…そんな事言ってたっちゃ」

「その後の暮らしは、いかがですか?」

「うーん、ダーリンのお給料も少し上がったみたいで、前より少しだけ余裕出来たっちゃよ。それが何か?」

「そうですか、それは良かった。そこで…これは僕個人からの質問ですが、以前より余裕が出来て、貴女は幸せですか?」

「えっ…うーん、そうだっちゃねぇ…ダーリンの性格も相変わらずだし…少しだけ広い所に引っ越せたけど…あんまり前と変わらないっちゃ」

「それでも少しは生活が楽になった、という実感は?」

「それはあるけど…。終太郎、一体何が言いたいのけ?」

「…おほんっ…回りくどい言い方はやめましょう。率直に申し上げます。貴女の意志で、決めて下さい。…今夜一晩、貴女を…お借りしたい」

「なっ、何言ってるっちゃ!ウチもう帰るっちゃ!」

「見返りは求めない、と申し上げましたが、以前おふたりに食事をご馳走させてもらった時、貴女は僕の頬に軽くキスを…お礼を、して下さいましたよね?…今回の事で、貴女からのお礼は…何も無いわけですか?僕としては内心期待していたんですよ、本当はね」

「おっ、お礼、ったって…ウチを借りたい…って、どーゆー事けっ!?」

「お言葉の通りにとっていただいて結構ですよ。つまり…今夜だけ、貴女を抱きたいんです、最後の思い出として…ラムさん…」

「ウチに指1本でも触れたらっ!超ド級の電撃お見舞いするっちゃよっ!?」

「諸星の会社と僕の会社での取引が、今後無くなったとしても?」

「そ、それって…ウチを…脅迫してるのけっ!?」

「違いますよ。あくまで…貴女のお気持ち次第です。貴女の気持ち次第では…諸星との生活も、少しは変わるのではありませんか?」

「それだけは…絶対にっ!イヤッ!イヤだっちゃ!!」

適度にクッションの効いたイスに座っていたラムに面堂が“ずいっ”と迫ってきた。息がかかるほど顔を近づけ、そして…。

「ちょっと待てーーーっ!!」

「…あれ?メガネ、さん…どーしたっちゃ?」

「待て待て待て待てぃっ!おいっ、面堂っ!脚本と違うだろーがっ!しかも自分ひとりだけいい思いしようとしやがって!!」

「あんな脚本で僕が満足するとでも思ったのかっ!?アドリブがあってもいいだろうっ!?」

「ラムさん、貴女に…こ、この言葉だけは言いたくなかったが…つまり、これはだっ!“ラムさんおめでとう、ついでに面堂君もおめでとう記念・裸エプロンボディスペシャル・結婚は地獄の一丁目”というタイトルで俺が脚本・監修をする事になってただろーがっ!!勝手なアドリブは許さんっ!!」

メガネの眼鏡がずり落ちかけ、肩で息をしながら、彼は部屋一杯に怒声を響かせた。

「大体何で僕が“ついで”なんだ!?しかもラムさんと映画を見た後、思い出を語り合い、結局そのまま朝になって…。それはあまりに不自然だろうっ!?何で思い出話だけで朝になるんだ?愛する人と朝を迎えると言えば、こういう展開しか無いだろうがっ!」

「これはあくまで“思い出を語り合い、これからも皆仲良くっ!”が趣旨だっ!かっ、勝手に…ポルノ映画にするな、っちゅーんじゃっ!!」

「どこがポルノだっ、どこがっ!!」

「それを俺が黙って撮影許可するとでも思ったのか?面堂、お前はバカかっ!?な、何十年か経って…そっ、そんな展開の映画が許されると思ってんのかーーーっ!?」

「で、この後諸星が…爽やかに登場し…思い出話に加わる、という筋書きだが、僕は諸星なんぞと親睦を深めつつ、和気アイアイと語り合うつもりなんか、全くっ!無いからなっ!」

メガネと面堂がそんなくだらない言い争いをしている最中。ラムはじーっと聞いていたが…明らかに顔色が変わってきていた。腕を組んで、冷ややかな目でふたりを見ていたかと思うと、全身から“パリパリパリパリ…”とスパークを飛ばし始めた。

「だからこれはあくまでっ!平和と愛のための映画だっ!エロスも何も挿入…インサート…いや、入れるつもりなんぞ無いからなっ!」

「それで最後に“皆の友情は永遠だっちゃ”というラムさんのセリフで締め、皆で和やかに笑い合ってエンド・クレジットが入るというのは…出資している僕としては、絶対っ!納得いかんっ!出資した以上は、少しくらいいい思いをしたってなぁ…」

「…おい、面堂、ちょ〜っと…待てっ…」

「何だ…?」

「…ラムさんを…見てみろ…」

「…はっ…い、いかん…」

「…ふたりして何勝手な事ばっかり言ってるっちゃーーーっ!!話が違うっちゃーーーっ!!バカーーーッッ!!」


“ドバババババーーーーーッッ!!!”


「…ラ…ラム、ひゃん…僕たち、に…い、いきなり…強烈な、電撃はっ…」

と、黒コゲになって倒れた面堂がうめいた。

「…そっ、そうですよ…いきなり、そんな…強い、電撃は…はっ、反則…」

そしてメガネも同じく、である。

「なーにが“結婚は地獄の一丁目”だっちゃ!ウチとダーリンは上手くやってるっちゃ!!それにそろそろダーリン来る頃じゃなかったのけっ!?それに“裸エプロンボディスペシャル”って何だっちゃ!?」

「…いや〜、それが…あたるには…実はこの話は…していなくて…映画の、話…」

メガネがしどろもどろになりながら、そう言った。ついでに“裸エプロン”の意味も説明したのだが…。

「な〜んでっ“結婚”イコール“裸エプロン”なのけっ!?」

「いや〜それは何とな〜く…俺の…趣味、というか何というか…1度くらいは…ラムさんの…そういうのを…見てみたいなぁ〜なんて事はっ!くっ、口が裂けても言えませんっ!!」

「つまりメガネさんの趣味で、あ〜んな変なタイトルなのけ!?まさか〜ウチに本当に…裸エプロンさせるつもりじゃなかったのけっ!?それにダーリンにも話してないし、他のクラスメートも来てないなんてっ!初めっからウチを騙すつもりでっ!!終太郎もメガネさんもーーっ!!バカーーーーーッッ!!!」

そしてまたしても、先に劣らない電撃がふたりの頭上に落ちてきた。

「ウチもう帰るっちゃ!!」

その場へ実に唐突ではあるが、了子が現れた。

「あら、もうお帰りですの?」

「…りょ、了、子…」

先の電撃ショックでまともに口を利けない面堂は、どもりながら妹の名を呼んだ。

「諸星様がお迎えに来てますわよ。ささ、あちらのお部屋にいらっしゃいますから」

「ダーリンが?どうして?」

「さぁ?何でも…ラム様がいらしてないか、と正門から入ってみえましたけど。わたくしがお会いしましたら…血相を変えてかなりお疲れのご様子でしたわよ。よほど心配なさって走っていらしたみたいですわ」

「ウチの事、心配して…ダーリンが…」

「ささ、後の事はわたくしが始末しておきますわ。どうぞ気を付けてお帰り下さいませ」

それを聞いて、ラムはバツが悪そうに微笑むと、あたると一緒に面堂邸を後にした。


「まったく、あのバカどもの考えそうな事じゃ。ラム、お前もお前だろ、こんな時間にひとりで面堂んとこ行くなんて…警戒心が無いにもほどがあるわっ」

「…で、ダーリンは了子の所で…何してたのけ?」

「…えっ…いや〜な〜んも…お茶ご馳走になって、ちょっと話を、な…」

「ま〜さ〜か〜、了子の裸エプロン姿を見てみたい、なんて言ったんじゃないのけっ!?」

「…アホかっ…思いっきり笑われて、黒子にでっかい木槌で殴られたわ…」

「や〜っぱり、そうだと思ったっちゃ…ふふっ…」

「だけどまぁ、あのふたりの事は…適当なとこで許してやれや、な?」

「それは別にいいけど…珍しいっちゃね、ダーリンからそんな事言うなんて」

「そりゃまぁ…高校時代からの…友達、だからな…。それに、オレばっか、昔っから…」

「ダーリンばっかり、昔っから?何?」

「…いい思い…してきただろ?…その、アレだ…ラムと…。で、結局今こうなったわけだからな…あいつらにしたら…」

「あのふたりにしたら?今度は何?」

「いや…それ以上言うと、どこで面堂が聞いとるかわからんからな…。さて、寒くなってきたし、早いとこ帰るか…」

「ウチとダーリンの…スイートホームに、でしょ?」

「お前イチイチ、よくそんな恥ずかしい事が言えるな…」

「ご飯はどうしたのけ?お風呂は?」

「飯は適当に食った。…お前、料理の途中だったろ?中途半端な味付けだったが、ちゃーんと食っといてやったからなっ。で、風呂は…まだ」

「ダーリンッ♪」

「何だよ、いきなり引っ付くな、っちゅーんじゃっ!」

「カイロ代わりになってあったかいでしょ?ウチを迎えに来てくれたお礼、だっちゃ♪」

「あ〜、明日もまた仕事…か。面倒じゃ〜〜…」

「ダーリンが終太郎に協力してもらったからって、ウチ、変な事…要求されたっちゃよ。まったくもうっ」

「…何〜〜っ!?…要求って…ラム、お前…まさか…」

「そういう時の電撃でしょ?何も無かったから安心していいっちゃよ♪それにウチ…ダーリンじゃないと…」

「そ、そうか…そんなら、まぁ…いいが…」

ラムはあたるの腕に絡み付いて、ぴったり寄り添っている。足は地面から少し浮かせているのでラムの靴音はしないが、彼女の温かさと規則正しい呼吸のリズムが、あたるに直に伝わってくる。そしてふたりは、ふたりだけの家に戻ってきた。

ラムが先に風呂に入り、あたるが続いて入った。そしてあたるが風呂から出てみると…。

「お前、懲りずにまたやってんのか…」

「ダーリンが見慣れても、ウチはいつだって、ダーリンが喜ぶ事したいんだもんっ♪」

「し、しかし、アレだな…そのエプロン…少し透けて見えるんだが…」

「ランちゃんに頼んで、バイトで作ってもらったっちゃ♪シースルーの透けるエプロンッ♪」

「こっ、これは…もしかして…今までに無いタイプ…か?」

「だっちゃ♪」

「すっ、透け透け…ではないかっ…胸も腹も…そしてその下まで…うーむ、これはしばらく観察…するか」

「透けてるエプロンの中を観察して、どーするっちゃ?…ねぇん、ダーリン…早くぅ…」

「こう、普通のエプロンで、ブラしとらんで、乳首がポチッ、というのもいいがっ…これはまた…格別…かも、しれんっ」

「これ見たら、他の女の裸エプロンなんて…どうでもよくなるでしょ?ねぇ…」

「うーむ…それは何とも答えにくい質問だが…。それよりラム、あの押入れの亜空間…電撃出しても大声出しても大丈夫…だったよな?」

「だっちゃ」

「…あん中で…ってのは…どうだ?真っ暗だが…案外…い、いいかも…しれんっ」

「ウチが電気で光るから…大丈夫だっちゃ…」

「…見られるのがイヤだったのと、違うのか?」

「…でもぉ…ちょっとくらいは…ウチの…カラダ…とか、顔とか…見て欲しいっちゃ…」

「そ、そっか…そんならまぁ、いつもの事で大した変化も無いかもしれんが…ぼちぼち…するか?」

「するか?って…もうちょっとムードのある言い方出来ないのけ?…ダーリンのバカ…」

「他にどう言えばいいと言うんじゃ。やるかやらんかのどっちかしか無いではないかっ!そんじゃ、ま、いざっ、亜空間へっ!…っつっても部屋の押入れん中だけどな…」

そしてふたり揃って、真の闇に満ちた“押入れの亜空間”へと入り、あたるが“スーッ、ピシャ…”と、静かに襖を閉めた。

「さっきはあんまり気にしなかったけど…この中って上も下も無いみたいな、変な感じだっちゃね…」

「無重力、というわけではないが…そういや妙な感じだな。足の下に床らしきものは感じるが…。ふかふか、ふわふわしとるというか…」

ラムが薄く発光しだした。軽く放電して、青白く光っている。そして床らしき場所に横たわると、あたるにマーキングするように、足を彼の足や腰に擦り付け、温かな肌同士の愛撫が始まった。

あたるの指先が、ラムの脇腹を軽いタッチでくすぐっていく。

「うふっ…うふんっ…くすぐったいっちゃ、ダーリン…んもうっ、そんなにくすぐったり…しないで…いやんっ…」

目を閉じたラムは軽く笑いながら、頭を左右にゆっくり振っている。振りながら、あたるの肩に両手を掛け、彼のカラダを引き寄せた。

“ちゅっ、ちゅぷっ…ちゅぱっ…”

“ねちっ…ねちっ…ぬちゅうぅぅ…くちゅ…”

“ちゅぶ…ちゅぷ…ぺちょ…くちょ…くちゅ…ぬちっ…ずずっ…ちゅうぅぅ…”

「…ダーリンの、キスの味…美味しいっちゃ…」

「…ラムのも…な…」

ラムのエプロンの、するするとした衣擦れの音…そして、唾液を零しつつ続けている、長い長いキスの音。それが亜空間内に、僅かにエコーがかかったように響いている。

「耳、に…音が、広がって…入ってくる…っちゃ」

「こういう場所、だから…な…。そんな感じも…するんだろ…」

あたるは透けるエプロンの下に手を潜り込ませ、薄っすら見えるラムの乳房を揉みだした。時々キスを解いたり、またしたりを繰り返しながら。

「ああっ…いい…ダーリンの…唇…舌…手…全、部…」

むにゅう…むにゅう…ぷりぷり…ぷりぷり…。

透けて見えるエプロンの下で、あたるの手が蠢いている。ラムのカラダが、しっとりと汗ばんできた。そしてラムからあたるへのマーキング行為は、まだ続いていた。

すりすり…すりすり…。

暑くもなく、寒くもない亜空間だが、あたるも次第に薄っすらと汗を掻いてきた。

「う、ううん…キス、と…おっぱい…だけ…でも、ウチ…」

“ちゅぶうぅぅぅ…ぬちゅ…ぬちゅ…ぬちゅ…”

ラムの肌の汗を舐め取るように、あたるはラムの頬やこめかみ、耳の後ろなどを、ペロペロと舐めていく。舌先でラムの耳たぶを弾き、外耳をくすぐり、耳の穴を突付く。と、ラムはあたるの愛撫の位置が微妙に変わる度に、愛らしい悶え声をのどの奥から弾き出した。艶かしくも甘く愛らしい、ラムの声。吐息混じりの甘い声。

「うぅんっ…あぁんっ…気持ち、良くって…くすぐったいっちゃ…あ、あ…あぁん…もっと…たくさん、して…」

その間ラムは、細くて小さい手のひら、指先で、あたるの背や首の後ろを撫で回し、時々ピリピリした電気刺激を指先から彼の肌に送った。互いに触れて無い場所など、ふたりには無いのだろう。ラムは背を撫でていた指先をあたるの脇腹に滑らせていき、そこから腰へと移動させ、所々で軽く放電した。

その度に…あたるのカラダが小刻みに“ぶるっ”と震えるのだ。カラダを合わせているから、あたるの股間の具合もラムにはわかる。電気を送る度に、あたるがカラダを震わせる度に、硬度を増すあたるの逸物。

あるいは…武者震い、というやつだろうか。ラムの微弱電流で充血する度に、ぞくぞくした感覚があたるの全身を駆け巡り、ほんの僅かの間だけ、ぶるぶるっ、とカラダを震わせる、あたる。そんな彼の様子を、ラムは満足気にうっとりした笑みを浮かべて、見つめる事もあった。

が、あたるを見つめている笑みが…眉根を寄せた悶えの表情に戻るには、そう時間はかからなかった。ラムに刺激されると、それのお返しとばかりに、あたるもラムのカラダの各所を優しくも絶妙な指使いで…感じさせるからだ。

エプロンの紐が解かれ、あたるは慣れた手付きでそれをするりと外した。ラムは瞳を潤ませ、乳首を硬く尖らせている。その先端から細い電気が糸状に放出されている。

“はむっ…”

弱い放電をしているラムの乳房を頬張り、スパークと共に彼女の匂いを飲み込むあたる。するとカラダが内側から、ますます熱くなっていくのが、あたるにはわかる。

「ふぅんっ…あ、あ、あ…あぁ…ダァリン…ダー、リン…ウチの…ここ…に、早く…来て…」

「…いつもの事だが…そんなに、いいか?…こんなに濡れてるぞ…ラム…」

「きっと…ダーリン、だから…いっぱい…いっぱい…なんだっちゃ…。あ…カ、カラダ…がっ…あふんっ…ふ…震え…ちゃうぅぅ…!」

“ぬちゅ、くちゅ…ぬちゅぬちゅ…ぬちっ、ぬちっ、ぬちぃ…”

ラムのラヴ・オイルが、あたるの指先にまとわり付く。すくい取って匂いを嗅ぐと、すんっ、とした女の香りがした。

「ダーリン…ダーリン…ダァ、リン…」

「…何だ?」

「…ダーリンの、一番…あはぁっ…喜ぶ、事…って…何…け?…あっ、あ、ぁ…」

「オレが…喜ぶ、事…か?…ラムは…そんな事…心配せんでも、いい、から…」

「だってぇ…はぁぁ、ぁ…ウチ…もっと、ダーリンを…喜ばせ、て…あげたく、て…」

「…これで…もう…腹、一杯…じゃ…」

「そう…なのけ?…ウチ、が…今より、色んな事、して…あげなくて、も…」

「…今のまんまで…いいから…」

「ダーリン…大、好き…愛、してる…う、うぅんっ…」

…あたるのピストンが、ラムを揺さぶる。揺さぶる運動量で、あたるの汗が飛沫となってラムの上に飛び散っている。

「あっ、ああぁっ!おっ…落ちちゃうぅぅ…下、に…落ちて…いく…みたい…あ、あ、あ、ぁあぁ…あぁんっ!」

「ゆ…揺れとるっ…ラムと、オレだけ、じゃなくて…こっ、この空間…自体がっ…」

「ゆっ…揺れてっ、るっ…あ…あ…あぁっ…!」

「…うっ…!」

あたるが見ると、ラムのカラダが大きく反り返っていた。まるでベッドの淵から上半身が落ちそうになっているように。

「あ…あ…お、落ち、ちゃう、う、ぅ…うぅんっ!!」

本当に上下左右が無い不思議な空間。重力はあるものの、横たわった状態から起き上がる事が特に苦にならないのだ。今度はラムがあたるの上に跨り、元気を取り戻した彼の逸物を自身の手でガイドし、ナカに挿入した。

騎乗位で揺れているラム。まるでトランス状態のように、目を閉じて、全身をぐらぐら揺らしている。

「…あぁ…はぁ、はぁ…はぁ…お…落ち、そう…。落ちちゃう…ダーリンと、一緒に…。深い、所…どこか、わからない…深い、所…に…」

「ラ、ム…お前……き…」

「き…の、後…は?…何、言ってくれる…つもり、なのけ…?うっ、んっ…」

「…忘れた…。…し、しかし…オレ、も…落ちそう…じゃ…。ラムと、一緒に…どっか、わからん所に…」

「…はぁんっ…は、あ、ぁ…ウチと、ふたりっきり、じゃ…イヤ…でしょ…?…ダー、リン…」

ラムは朦朧としつつも、あたるにそんな質問の言葉を投げてきた。

「…どこに…?」

「…深い、所、に…ウチと、落ちて…そこで…ずっと…ふたりっきり…だったら…はぁ、はぁ、はぁ、んっ…」

あたるは…正直答えに窮した。実際にそんな事があるわけはないだろうが、もし、もしも、ラムとふたりだけの空間に落ちたとしたら…。

「ダーリンと、一緒だったら、どこにいても…ウチは…いい、けど…。…でも、ウチも…こんな、所に…ダーリンと…ふたりだけで…閉じ込め、られたら…ものすごく…退屈、しそう…だっちゃ…。あっ、あふんっ…うんっ、うんっ、うんっ…!」

それがラムの本音なのか、或いはあたるに気を使ってそう言ったのか…。あたるは複雑な心持ちで…カラダを揺すっているラムを、ぼんやりと見つめていた。

「あぁ…お、落ちちゃいそう…このまま…ダーリンと…お…落ちちゃうっ、落ちちゃうぅぅっ!!」

「うおっ!…今度は、上と下が…入れ替わったぞっ…お、おいっ…ラム…」

先までのラムは騎乗位で喘いでいた。カラダを上下左右ににゆっさゆっさと揺すりながら、あたるの上で…躍るように悶えていた。天地のわからない不思議な亜空間の中、くるりとカラダが回転して、今度はラムが下になり、まんぐり返しの体位であたると交わった。

「じ、地面、がっ…揺れて、るっ…空が…落ちて…きそう…。大きく…揺れ、てっ…。あぁっ…あぁっ…ダーリン…す…すっごく…いい…ウ、チ…感覚、が…変に…なり、そう…だっちゃ……あうんっ…!すっ…好きっ、好きっ、好き…大、好きっ…ダー、リンッ…!!」

「…ラムッ…!」

青く白く光るラムと繋がっているあたる。無重力の宇宙船の中でもないというのに、ふたりは繋がったまま、亜空間の中でゆっくり回転を続けながら、激しい情交を続けた。

ラムが下になる。あたるが下になる。そしてラムが下になると、あたるは離れないようにラムの腰をしっかと抱いて、ラムの奥の奥に、自身を送り込んだ。

「ダーリンッ!ダーリンッ!ダーリーーーンッ!!ダーリンがっ、奥まで来て…ウ、チ…カラダ中、がっ…いっぱい、揺れ、てっ…いっぱい、感じてっ…お、おかしく…なり、そうっ…は、あ、あ、ぁ、ぁ、あぁあぁあーーーーっ!!」

ラムが光っている。その光りがあたるを照らしている。彼の汗の飛沫がスローモーションのように、丸い粒になって空間に浮かんでいる。それがラムのカラダに当たると…“ジュッ”という微音を立てて、蒸発した。

海老反り状態のラムを抱きながら…あたるの渾身のひと突きが、ラムにアクメの時を迎えさせた。

「お…落ちちゃうぅぅぅーーーーーっっ!!!ダーリーーーンッッ!!!」

“ズルッ…”

「ちゃあぁぁっ!!」

ふとした弾みでふたりの接合が解けた。すると本当に、ラムのカラダが、真っ暗闇の中に落ちそうになったのだ。

“はしっ!”

あたるは咄嗟にラムの腕を掴んだ。そして彼女を自分の元に引き上げると、しっかり抱き留めた。

「どういう事…だっちゃ…この亜空間…やっぱり変、だっちゃ…」

「もうちっとで本当に…下に落ちるとこだったんだぞ…。大丈夫か?」

「うん…。ダーリン…ダーリン…ダーリン…ぐすっ」

「もうこんな物騒な空間、閉じとけよ、な?」

「うん…わかったっちゃ…」

そして翌日。ラムは亜空間を閉じて、普通の押入れに戻した。


「しかし物騒な空間だったな…一体何だったんだ?あれは」

「よくわからないけど…宇宙の端っこと繋いでたから…あ、もしかして…」

「何かわかったのか?」

「もしかしたら…ブラックホール…みたいなもの…だったのかもしれないっちゃ…」

「あ、あのなぁ〜…お前っ!ブラックホールだとっ!?それが何だか知らんわけじゃなかろーがっ!?このオレすら知ってんだからなっ!!」

「まさか…ブラックホールになりかかってた星があったなんて、知らなかったっちゃ。だから電撃や声が吸収されて…外に漏れなかったんじゃないかなぁ…」

「…“ないかなぁ〜”ではないわっ!もしあのまんま、落ちてたらどーするんだよっ!ラムのアホッ、アンポンタンがっ!…とにかく、何も無くて…」

あたるは呆れ顔で、他人事のように話すラムを見ていたが…内心本当に“ほっ”としていた。もしあのまま、奈落の底のような闇に落ちていたとしたら…。そう思っただけで、ぞっとした。そしてぞっとしたのと、ほっとした気持ちがない交ぜになって、あたるは大きな息を吐(つ)いた。

「…はあぁ〜〜〜〜…ったく、そもそもお前はやる事なす事、ガサツ過ぎるんじゃっ!亜空間を作るにしたってなぁ、もうちっときちんと調べてからにするとか…。とにかくホントーに、何も無くて…」

「…ごめんだっちゃ、ダーリン…。で、これからケンカしたくなったら、前みたいにウチのUFOで電撃浴びるけ?」

「だーーーーっ!!お前はちっともっ!凝りとらんではないかっ!!もーーーーっ!いいっ!亜空間もいらんっ!裸エプロンも当分いらんわっ!…ケンカしたくなったら、まぁ、お前のUFOで…で、いいんじゃないか?」

「やけに素直だっちゃね、どうしたのけ?」

「いや、ラムのUFOなら…色々あるだろ?ほれ、コスプレ用に買ったとか言っとった…超ミニの制服の…色んな職種のバリエーションとか。エプロンも何枚もあったしな。…お前、ホンットに…好きだな、そーゆーの」

「何言ってるっちゃ!ダーリンが好きだと思って…喜んでくれるかと思って…揃えてみたのにっ!…で、今夜は〜たまにはウチが女王様…っていうのは、どうけ?うふっ♪」

「…それより“王様ゲーム”の方がずーーーっといいのだが…。せっかくだから、面堂の結婚式に集まったクラスメートを集めて…」

「どーせ女の子ばっかり集めて、“王様ゲーム”して、“裸エプロン”させるつもりだっちゃね!?…ウチの透け透けエプロンじゃまだ物足りない、って言うのけっ!?…でも夕べのは…ちょっと危なかったけどぉ、すっごく…良かったっちゃ…うふふっ♪」

「そ、そうかっ!?しかしラムが女王様…っちゅーのは、どうもなぁ…」

「ダーリン、昔っから“Mっ気”あるくせに、今更何言ってるっちゃ」

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…それからしばらくして、面堂の結婚式が執り行われた。

「ウチたちの時より豪勢だけど、あの時思い出すっちゃね、ついこの間だったのに。ねぇ、ダーリン。…ダーリン?どうしたっちゃ、渋い顔して」

「ラム、お前、面堂にご祝儀いくらやった?」

「ん〜とね、このくらいだっちゃ」

「クラスメートだぞ?それなのにそんなにかっ!?…確かに面堂からはもっともらったけどな…」

面堂にしては非常に楚々とした結婚式であった。その代わり披露宴は別日程で超豪勢に、各方面の著名人を呼んで開催するのだという。

「このふたりの様子、誰かがビデオに収めてるっちゃね、きっと。それで将来懐かしい気持ちで観るんだっちゃよ、きっと」

「…あんま面白いもんでもなかろーが」

「ダーリンと終太郎なら、どっちがどうだった、って言い争いしそうだっちゃね、きっと…くすっ」

「庶民とブルジョアとでは何をどう比べろと言うんじゃ。ケンカにもならんわ…」

「ねぇ、ダーリン。すっごくきれいな青い空だっちゃ…」

「まぁ、こういう日には、ちょうどいい天気だったな」

「…この間の…押入れの中で、ね…ウチ、最後は怖い目に遭ったけど…ダーリンと…落ちそうになったり…飛びそうになったりした時ね…」

「…こんな場所で何をいきなり…」

「地球が大きく揺れて…ウチも大きく揺れて…青い空がね、見えたんだっちゃ。今日みたいな、きれいな青い空が。で、それも大きく揺れてて…ウチ、その空が落ちてくるみたいな感じがして…。地球が揺れて、空が落ちてくる、って、どんな感じかわかる?ダーリン」

「お前の言っとる事はさっぱりじゃ。意味がようわからんっ」

するとラムは、あたるに寄り添って、こそっと耳打ちした。周りの誰にも聞こえないように。

「大地と空に挟まれて…大きく揺すられて…ダーリンに、うーんと抱かれてたから…すっごくね…気持ち良かったっちゃ…。地球が揺れて…空が落ちてくるくらいに…ウチ、ダーリンが、好きだっちゃ…」

「…まるで天変地異ではないか、それでは…」

「天変地異が起きるくらい、好きだって事。んもうっ、ダーリンにはこんな言い方しても、ちっとも通じないんだからっ」

「…誰が聞いてもわかるわけ無いと思うんだが…」

「ねぇ、ダーリン。帰りに王様ゲームするより、ウチと一緒に…新しいエプロンとか、衣装とか…買いに行くっちゃ♪」

「…ほんじゃ、今度は…メイドさんが…いい…」

「うふっ、わかったっちゃ♪うーんと可愛いメイドさんの衣装、一緒に買いに行くっちゃ♪」

「…何かオレより…お前の方が、ホントーに楽しそうに…ノッてきてるよな…。実は…“スキモノ”かっ!?」

「ダーリンが喜ぶと思って言ってるだけなんだからっ!イヤならいいっちゃよ、メイドさんやめるから」

「…ほんじゃついでに…今度メイドの格好した時にだな…オレが帰ってきたら“お帰りなさいませ、ご主人様〜♪”と言って欲しいんだが…」

「わかったっちゃ♪何なりと仰せ下さいませ、だっちゃ、ご主人様♪」

そしてラムとあたるのアパートは元より、ラムのUFOのクローゼットにも…いかにも怪しげな衣装が増えていったのは、言うまでもない。

--- E N D ---

あとがき


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