(例えば・19)Darling, Darling.


「…ダーリン、ダーリン…ダーリン、ダーリン…ダーーーリーーーーーンッ!!」

乱れた白いシーツ、キシキシと軋むベッドの音。そして…感極まったラムの声。

「…ダーリン、ダーリン…」

ラムは両腕を万歳の格好で投げ出し、あたるの愛撫に身悶えし続けている。自分の愛撫で乱れるラムをもっとたくさん見たい欲求が、あたるの愛撫を更に激しいものにする。

無防備なラムの脇から脇腹にかけて、たくさんのキスを浴びせるあたる。ラムが感じる部分を口唇で吸い上げ、同時にお椀型に張り出した乳房に手を伸ばす。ラムの乳首を指先で摘んで軽くひねると、彼女のカラダがより一層びくっ、びくっ、と弾けるのだ。

「あ、あぁ…ダーリン、の…意地、悪…早、く…ウチの……あふんっ!い、やぁ…あん、まり…焦らした、ら…ウチ…ウチ…」

あたるはラムの全身を隈なく愛撫していく。口唇で、舌で、手指で。ラムの全身からは微弱なスパークが飛び散り、あたるのカラダに絡んでくる。そのピリピリした刺激が、あたるにとっては、またたまらなくいいのだ。

「…ラム…ラム…」

時々ラムの名を呼びながらの、長い長い前戯。あたるの逸物はギチギチにそそり立って先走りの体液を零していたが、それでもまだ、彼は彼女のナカに入らずにいた。

「…くすぐったい、っちゃ…あ、いやぁ…ウチの、アソコ、が…もう…熱く、なって…ダーリン…ダーリン、早く…」

あたるに求めるラムの声。それに構う事無く、あたるの愛撫は続く。

「ダーリン…ダーリン…ダァ…リン…あぁ、あ…あ…は…ぅ、んっ…!」

やがてあたるがラムの柔らかで熱い陰唇に指先を滑り込ませると…そこはこれ以上無いと思うほどに、濡れていた。ラムの陰部を…淫水の音を立てて掻き回すあたるは、手はそのままにカラダを上方に滑らせて、ラムと顔を向き合わせた。

「…随分、濡れてるぞ…ラムの…ここが…」

「あ、あ…だめぇ…」

「…だめ…なのか?…」

「気持ち…い、い…っちゃ……あはぁっ!」

あたるの指先に、ラムの陰核が当たった。触れてこねると、それは膨らみ硬くなり…ラムの悶えがより一層激しくなった。ラムの全身から、青白い火花が不規則に飛び散る。両足を広げ、あたるを挟み込み、潤んだ瞳で彼を見詰めるラム。その吐息は熱く荒い。

「…ダーリン…はぁ、はぁ…ダーリン…ダーリン…」

泣きそうな表情のラムの唇に、唇を押し当てるあたる。そして舌を挿入すると、ラムの全身から零れている電流があたるの舌を伝って、彼女の口内に広がった。

「…んふぅ…んっ、んんっ…んっ…」

目を閉じ、あたるにしがみ付くラム。もっと電流混じりのあたるの唾液が欲しいのか、彼の舌をねぶりながら、のどをこくりと鳴らして、ラムはその体液を飲み下した。

ディープキスをしながら、あたるは自身の逸物先端を、ラムの陰唇の狭間に宛がった。ラムの入り口はゆるやかになっており、あたるはそこから滑り込むようにして、彼女のナカへと…入っていった。

あたるに吸い付くようにフィットするラムの膣壁。彼女の蜜壺の奥へ奥へと腰を使って入り込むあたる。…浅く、深く、そしてまた浅く、繰り返しラムのナカを往復するあたる。そして昂ぶった自身の芯をラムでしごき上げると、瞬間、意識が白くなるような感覚に襲われた。

ラムとのキスを解いて、往復運動に専念するあたる。汗を滴らせ、荒い息を吐きながら、彼女を激しく揺さぶる。そして互いの全身から噴き出す汗によって、ラムの電流がふたりの全身に拡がっていった。総毛立つような電流の刺激は、ふたりを同時に痺れさせ、微細なパルスがより一層あたるとラムを熱くさせた。

あたるもラムも、全身が痺れる激しく濃厚なセックスに興じ続ける。ラムの脳天を快楽が突き抜ける。すると全身がぶるぶると震える。あたるも同じく、脳天を快楽が突き抜け、ふたりは意識のフェードインとフェードアウトを繰り返しながら、夢か現(うつつ)かわからなくなってくるほどに、ベッドの上で…愛し合った。

「はっ、はっ、はっ…あ、あ…あぁっっ!ダーリンッ、ダーリンッ!ダーーーリーーーーーーンッッ!!」

やがて弓なりに仰け反り、絶頂したらしいラムの声が引き金となり、あたるの芯からも、熱いものがほとばしり出て…ラムの中心に、命の種を、ばら撒いた…。


UFO内のベッドの上で、しばしまどろむラムとあたる。横たわり呼気を整えつつ、ラムはあたるにそっと寄り添った。

「ダーリン…ダーリン…好き…大好き…」

いつものラムのセリフ。それを聞きながら、あたるがむっくり起き上がった。

「…どうしたっちゃ、ダーリン?」

そう言ってラムも身を起こした。

「前々から聞こうと思って…忘れておったのだが…」

「何?」

「何でラムはオレを“ダーリン”と呼ぶようになったんだ?」

「今更何で聞いてくるっちゃ?…うーん、何でだったか、ウチも忘れたっちゃ」

「ラムが同居したい、ってうちに来た時から、既に“ダーリン”だったわけだが…」

「もしかして嫌だったのけ?」

「…最初はな…」

「でも今から“あたるくん”とか“あたる”なんて呼べないっちゃよ」

「オレもそれはいいっ。何かこう…今更だしな。…違和感ある、っちゅーか…」

「今から“あたる”って呼んでみるけ?」

「だから今からじゃあ、いいって言っておるだろーがっ」

「そんな昔の事、先に言ったのはダーリンだっちゃ。変なの〜」

「もし地球が負けておったら、“ダーリン”どころではなかったけどな…」

「ダーリンが2回とも勝ってくれたから、ウチ今すっごく幸せなのに〜」

「確かに地球的には、“ダーリン”という呼び方は間違ってはおらんっ。おらんのだが…」

「間違ってないけど?何だっちゃ?」

「でもやっぱ、何で“ダーリン”なんじゃ?」

「だから忘れた、って言ってるのにっ」

「お前、肝心な事は忘れるんだな…色々と」

「ダーリンだってそうだっちゃ」

「ま、そんな事はどーでもいいか。…で、そろそろ落ち着いてきたとこで、だ…」

「ちょっと待って、ダーリン」

「何じゃ?」

ラムはベッドの上からふわりと飛んで、UFOのコンソールパネル前に降り立った。そしていくつかのボタンを操作した。すると。

「わっ、何じゃこれはっ、オレが浮き上がったぞっ」

「UFO内を無重力状態にしてみたっちゃ。たまにはこういうのも…面白くっていいでしょ?」

「わわわっ、ちょっ、待て、ラムッ!これでは思うように動きにくいではないかっ!」

「慣れたらどーって事無いっちゃよ?それにいっつも、ダーリンたら自分勝手なんだもん。たまにはウチに有利にしてみたいっちゃ」

「この状態でどないせーっちゅーんじゃっ!」

「ダーリン♪ウチを上手く捕まえられたら…いいっちゃよ♪」

「鬼ごっこじゃあるまいし…それともアレか?ラムのツノに触ったら元に戻るのか?」

「ウチはそう簡単に捕まらないっちゃよ♪」

ラムは自由自在に無重力空間の中を泳ぐように飛んでいる。ベッドから浮いたあたるはしばらくの間じたばたしていたが、間も無く空間を泳ぐコツをつかんだ。

「さすがはダーリンだっちゃ。コツをつかむの早いっちゃ♪」

「しかしラムの方がどー見ても有利ではないかっ!こっちは犬掻き移動しか出来んのだぞっ!」

すいすいと空間を泳ぐラムに比べて、あたるの移動速度はゆっくりだ。どうにかラムに近付いたと思ったら、すいっ、とすり抜けられてしまう。

「これでは、ホントに鬼ごっこと変わらんではないかっ!」

「このままじゃ、朝になるっちゃよ〜♪早く、こっちだっちゃ、ダーリン♪」

「くっそー、このまま朝にしてたまるかっ!」

そしてあたるは何を思ったか、一旦天井に張り付くと、そこで少しの間じっとしていた。そしてすいすい泳ぐラムの動きを、じーーーっと見ていた。

そしてひと声「そりゃっ!」と叫んで天井を蹴ると、ラム目掛けて飛んでいき…ようやく彼女を捕まえる事が出来た。

「何じゃ、ツノに触っても、何も変わらんではないか」

「無重力の中で…っていうのはどうけ?ダーリン」

「ま、そういうのも…たまには…いいかもな…」

そして無重力の中で…ふたりは抱き合い…キスをして…絡み合った。

「ああ…ふわふわ…して…気持ち…いいっちゃぁ…ダーリン…ダーリン…」

あたるに腰を抱かれ、うっとりした表情で後に反り返るラム。無重力の中、ラムはゆっくりカラダを回転させ、彼女の背にあたるが圧し掛かる格好になった。ラムの髪が空間に広がる。そして彼女のうなじや背中のセンターラインにあたるがゆっくり口唇を這わせていく。

「ダーリン…ダーリン…」

あたるはラムの両ももに手を掛け左右に緩く広げると、滑らせてきた口唇を、愛液滴る陰部に押し当てた。

「あんっ!ダーリン!!」

あたるのクンニリングスで、カラダをよじり、感じるままに声を上げるラム。そして屈伸運動のような格好になると、ちょうどあたるの逸物がラムの眼前にきた。立ち上がったあたるの逸物の裏側を、ペロリと舐めるラム。ふたりは空中でシックスナインの体位になり、ラムはあたるの逸物を口唇に挟んで…そして、ゆっくり飲み込んでいった。

無重力空間の中を、輪のようなラーゲでくるくると舞うふたり。まるで輪舞のように、互いの性器を愛し、互いのカラダを愛し、互いの全てを余す所無く愛し合う、あたるとラム。

しばしのオーラルセックスで互いを昂ぶらせた後、あたるはラムに対面位で挿入した。ラムがあたるの腰に足を回してしがみ付き、互いの性器の匂いが残る口唇を組み重ねて、貪るようにキスを奪い合い、与え合った。

「…んっ、んふぅっ…ダァリン…好、き…ダーリン…大好き…好き…」

口づけの合間合間にあたるを呼ぶラム。それを何度も繰り返しながら、腰を揺すって高みに上り詰めようとする。

「…もっと、もっと…揺すってぇ…ダーリン…ダーリン…ダー…リン…」

ラムが腰をひねり、股間に力を込めて、あたるを絞る。そしてあたるは絞られながら、ラムのナカを、粘ってくぐもった水音を立てて、往復する。

「は、あっ…あぁあっっ!ダーリンッ!」

キスを解いたラムが、また仰け反った。するときれいに張り出した椀型の乳房が、ぷるんと揺れて、あたるの眼前に突き出された。

「い…い…い、い……あ、ぁ、ぁっ…ダァ…リ、ンッ…」

やがてあたるのピッチが早まると、ラムのタテ揺れのリズムも早くなり、彼女は彼にしっかと抱き着いた。

「ダーリン、ダーリン、ダーリン!ダーリン!ダーリンッ!!」

あたるの名を連呼しながら、揺すられ続けるラム。そして彼女は下半身を更に力ませ、それがあたるを更に引き絞った。無重力の中、飛び散った汗は丸い水滴となり、ふたりの周りにふわふわと浮いている。

「あぁっ!!ダーリン!ダーリン!ダーリン!!」

泣きそうな声でラムがあたるを呼ぶ。そしてふたりは快楽の頂点を目指し、夢中で抱き合い続けた。

「あ、あぁ…ウチ…ウチ…ダーリン、ので…ダーリンで…いっ…」

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ…ラ…ム…」

「ダー、リン…でっ…ダーリンで…」

ラムの全身からほとばしるスパークが、あたるの体表面を走っていく。すると一番濡れている接合部分にスパークが集まり、あたるの芯からラムのナカへと、それが流れ込んでいった。

「ああんっ!痺れちゃうぅぅっ!ダーリン、ダーリン!ダーリーーーンッ!!」

やがて電気を含んだあたるの熱いほとばしりが、ラムの胎内に流れ込むと…。

「ダーリン!ダーリンッ!ウチ、ウチ…ダーリンで…イッちゃうぅぅーーーーーっっ!!」

その途端、ふたりのカラダががくん、と傾いた。

「うわっ!」

「ちゃあっ!」

間一髪、ラムの浮力でふたり揃って床に落下する事は免れた。どうやらラムが絶頂の声を上げたのと同時に、重力が元に戻ったらしい。そしてゆっくり床に着地すると、ふたりは接合を解いた。

「ラムがそうなって、重力が元に戻るなら戻ると、何で言っておかんのじゃっ!」

「ごめんちゃ〜…言うの忘れてたっちゃ」

「お前ねぇ、床に直撃せんかったから良かったものの、下手したらオレが下になって落ちてたとこだぞっ!」

「だからウチが浮いて、落下しないようにしたでしょ?」

「そういう問題かっ」

「じゃあ、無重力でするのはもうやめにしとくっちゃ」

「…まぁ、アレはアレで…悪くは無かったが…終わった後の締めがいかん」

「締め?」

「つまりイッた後、急に重力が戻った事が、じゃ」

「ずっと浮いてた方が良かったけ?」

「落ちるなら落ちるで…ちゃーんとベッドの上に落ちるようにしとくとか…」

「じゃあ、今度はそうするっちゃ」

「しかし…無重力でのセックス体験っちゅーのも、普通はなかなか出来んよな」

「悪くは無かったんでしょ?ダーリン」

「まぁ、な…しかし足掛かりが無いと、ちとやりにくい部分も無きにしもあらず、だな」

「そうけ?」

「やっぱベッドの上の方が落ち着く、っちゅーか…」

「ウチはどっちでもいいけど…」

「っちゅー事で…もっかいベッドの上で…どっちが良かったか検証してみるか?」

「もう遅いんだから、検証するのはまた今度だっちゃ!寝坊しても知らないっちゃよ?」

「そっか…それじゃあオレはビールでも一杯…」

「ウチはシャワー浴びてくるっちゃ」

そしてラムが出てくると、あたるは高いびきをかいて、眠っていた。それを見たラムはにっこり笑って。

「ダーリン、大好きっ♪…おやすみ、だっちゃ…」

そしてラムはあたるの隣に潜り込むと、彼に寄り添い、眠りに就いた…。


「ダーリン、行ってらっしゃい、だっちゃ♪」

朝、いつもの笑顔であたるを送り出すラム。あたるは素っ気無く「ん、、、」と軽く返事をして出掛ける。

ところであたるは、昨晩ラムに聞いた「ダーリンと呼ぶようになった理由」が、まだ少し気になっていた。

「ほんっとに今更だが…何でラムはオレを“ダーリン”と呼ぶようになったんだ?」

もう長年の事だし、それで慣れてしまっていたから、どうでもいいといえば、どうでもいい事だったのだが。

「そりゃあラムさんが宇宙人だから、俺にも何とも言えないけどなー。同居始めた頃からだろ?故郷の星で“地球では最愛の人をダーリンと呼ぶ”とでも教わってきたんじゃねーの?」

と、隣席の同僚が言った。

「しかしラムさんは諸星を“ダーリン”って呼ぶし、お前もラムさんを名前で読んでるだろ?そういううちが華なんだって。そのうち“おい”とか、名前で呼ばなくなるケースもよくあるからなー。子供が産まれたりしたら“パパー”とかって呼ばれるようになるかもな、ははははっ」

「そーゆーもんかねぇ…」

「実際お前んとこの両親だってそうなんじゃねーの?」

「まぁ、“お父さん”とか“母さん”って呼び合ってるな、確かに。母さんはたまに“あなた”って呼んでる事もあるけどなー」

「だろ?年月経ったり子供が出来ると、そーゆーもんなんだって。そのうち“お父さん”“母さん”ってなっちまうかもよ、お前らも」

「…ラムに限っては…どーなんだろーなぁ…」

「学生時代から“ダーリン”だったら、この先もその可能性はあり、だな」

「ん、まぁな…」

「しかし…」

「何だ?」

「ラムさんはお前のどこが良くって、“ダーリン”なんだかなぁ…くっ、くくっ…わはははははっ」

「なーにがそんなにおかしいんじゃっ!」

「どー見たって“ダーリン”って感じじゃないもんな、諸星は。相手がラムさんで、ほんっとに良かったなぁ、ははははっ」

「オレがそう呼ばれて、何がおかしいんじゃっ、さっきからっ」

「いや、いつまで経っても、うらやましいって事だよ。…そう呼ばれるとよ、夜も…結構なかなか…だろ?」

「うるさいわっ、余計なお世話じゃっ」

「いーよなぁ、ラムさんみたいな嫁さんだったら、俺なら浮気しないけどなー。お前もそろそろ潮時なんじゃねーの?」

「ラムが怖くて浮気が出来るかっ」

「あー俺もラムさんみたいな女に“ダーリン”って呼ばれてみてーよなー、一回くらいは」

「嫁さんと何かあったのか?」

「いや、別に〜いっつも通りだよ、いつも通り。ただうちのやつも、たまには“ダーリン”なんて言ってくれると…な」

「慣れたらどーって事ないぞ?言っとくが」

「まぁ、確かにそーかもしれんけどなぁ。しかしつくづく、お前のどこが良くて“ダーリン”なんだかねぇ、ラムさんは」

「んな事オレが知るかっ」

そしてあたるは今日もロクな仕事もしないまま、終業時刻を迎えた。終業時刻の少し前にラムから連絡があり、夕食を外で食べよう、と言ってきた。

「急に予定入れてくるな、っちゅーんじゃ」

「だって明日お休みだし、たまには外でビール飲みたいでしょ?」

「どっかいい店あるのか?」

「もう予約しといたっちゃ♪」

「高いとこじゃないだろーなぁ?」

「ウチがそんなとこ選ぶわけ無いっちゃよ。わかってるくせに」

「そんじゃまぁ、腹も減ったし…行くか」

「久々のデートで、ウチ、嬉しいっちゃ♪」

そして和風の手頃な店に入ったふたりは、他愛の無いおしゃべりと、食事をすると、家路に就いた。

「夜になると、少しいい風になるっちゃね〜♪ダーリン」

「なぁ、ラム。お前ほんっとに、オレを“ダーリン”と呼ぶようになったきっかけを憶えとらんのか?」

「何だっちゃ?昨日の事蒸し返して。だから憶えて無いって言ってるのに」

「あ、そ…」

「高校時代に英語の授業で“最愛の人”って習ったから、“ダーリン”でちょうどいいでしょ?」

「星で“ダーリン”の意味は習わんかったのか?」

「んも〜ダーリンもしつこいっちゃねぇ〜。星で習ったかどーかなんて、今更憶えてないっちゃよ」

「しかしなーんか腑に落ちんなぁ…」

「憶えてる事、って言ったら…そうだっちゃねぇ…。地球に来たら、絶対“ダーリン”て呼ぼう、とは思ってたっちゃ」

「何で?」

「何となーく、だっちゃ」

「何と無く、ねぇ…」

「ウチが“ダーリン”って呼ぶのは、一生にひとり、って気がしてたから…」

「で、オレがそうだったのか?」

「だっちゃ」

「ふーん…。ま、意味がまったくわからんが…そういうわけ、か…」

「この話はもういいでしょ?何回聞かれたって思い出せないんだもん」

「そうだな…ま、今更だしな…」

そしてふたりは、ラムのUFOに、戻っていった。


「あぁんっ!ダーリンッ、ダーリンッ!ダーリンッ!!」

その夜も、ふたりは汗を滴らせながら、抱き合っていた。

「ウチの…一番…大事、な…ダーリン…」

確かにあたるにしたら、ラムに“ダーリン”と呼ばれないと、自分ではないような気はしていた。今頃になって名前で呼ばれたら…ラムがラムでは無いような気もした。

一度だけ高校時代に、ラムに変装させてデートした時“あたるくん”と呼ばれたが…。名前で呼ばれたのはそれ一回きりだ。

「ラム…」

「ダーリン…好き…大切な…ダーリン…」

ラムがあたるを“ダーリン”と呼ぶようになった経緯がどうであろうと。彼女にとって諸星あたるはずっと“ダーリン”のままだろう。

(最愛の人だから、ダーリン…か…。ホントは星で習ってきたんじゃないのか?ラムは…)

そんな事をふと思いながら、あたるはラムを抱いた。

名は体を表す。そして、相手の存在を認め、親愛の情がどのくらいかを計る、呪文のようなものだ。

(ラムはこれからもずっと、オレを“ダーリン”と呼び続ける…だろうなぁ…多分…)

そんなラムを…愛しく思いながら…ラムの「ダーリン…ダーリン…」という声を、あたるは聞き続けるのだろう。これからも、ずっと。

そしてあたるも、これから先もずっと変わらず…ラムを“ラム”と呼び続けるに、違い無い。

--- E N D ---

あとがき


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