ぬくもり(前編)


「…ダーリン、ダーリンッ…やっ…だっちゃぁ…そんなの、使うの、ウチ…」

「…たまには…いいだろ…こういうのも…」

「で、もぉ…ひっ…あくぅっ…うっ、くっ……あっ、う、んっ…やっ…いやぁ…」

ラムの姿を見ながら、ごくり、と喉を鳴らしたあたるだったが…ラムの喘ぎが次第に泣き声に変わっていく。

「…ひぐぅ…やぁ…ダーリ、ンッ…やっぱり、だめ…だめ…いや…だっちゃ…ぐすっ…」

ラムがポロリ、と涙を零した。それを見たあたるは逸(はや)る気持ちとは裏腹に、目に戸惑いの色を見せ始めた。

「…やっぱ、いや、か…?」

「…そんなの、使って…ダーリンの…バカァ…うっ…うぅっ…ぐすんっ…」

「…あ…」

「そんなモノ使って…ダーリンの…バカ…」

あたるは興味本位でラムに挿入していたバイヴを、彼女からそっと抜き取った。

「…ダーリンの方がうんといいのに…バカ、バカ…」

「ん…あ、ああ…」

ふわりと身を起こしたラムはあたるにそっと抱き着いて、「バカ、バカ…」と何度か呟き続けた。

胸と胸を合わせて、重なり合うふたり。ラムの陰唇を割り開いて、今度は生のあたる自身が彼女の熱くぬるついたヴァギナの中へと入っていった。

「あっ、あっ、あっ…ダァ、リンのっ…いっ、いいっ…」

熱い抱擁、悶えるラムの声。噴き出すほどたっぷりの彼女の愛液にまみれて、あたるの逸物が抜き差しを繰り返す。

「…ラ…ム…」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…!ダーリンッ!!」

仰け反る白い女体。今にも浮き上がりそうなそのカラダをしっかと抱き締めて、あたるが踏ん張る。そして、ラムの声が…悲鳴に近くなる。

ぐずぐずの愛液…あたるにぴったりフィットするラム。時々収縮しては彼を締め付け、あたるのカラダをどんどん熱くする。

これ以上無いほどの快楽に身を委ねて、ふたりはセックスに興じた。熱くて濃厚な時間が過ぎていく。

ラムはあたるに何度もイカされ、あたるもラムで何度もイッた。互いに、心もカラダも最高の相性。そして空気が深々(しんしん)とする夜更けまで、ふたりは熱い性の交わりを繰り返し、眠りに就いた。


「ダーリン、たまにヘンタイみたいな事したがるんだもんっ。ウチがイヤだって言ってるのに…」

「…たまにはあーゆー事もしてみたくなるんじゃ…」

「だけど途中でやめてくれると思ったのに…」

「やめただろ?途中で」

「でも…しっかり…ウチのナカに…だっちゃ」

「でも途中で抜いただろ?」

「んもうっ、やっぱりダーリンのバカッ…ダーリンの方が、ウチ…ずっといいのに…」

「…若いんだから、色々やってみたかろーが…」

「全然反省してないっちゃ!」

「じゃあどーすればいいのだっ!?」

「いつも通りで…いいっちゃよ?ダーリン♪」

部屋であぐらをかき、漫画を読んでいるあたるの間近に、ラムがふわりと飛んできて端座した。そしてあたるの耳近くに“チュッ”と軽くキスをした。そうされたあたるはラムをちらりと見やった。

「いつもと一緒…っちゅーてもなぁ…」

「イヤなのけ?」

そう言われてあたるは再び漫画の方に目をやり、ラムとの会話を続けた。

「…若いからな…あれこれと…ほれ、この漫画みたいに、とか…」

青年漫画雑誌を読んでいたあたる、激しい性描写が描かれている作品をちらっとだけ見せて、ラムにそう言った。

「ぶーっ」

そう言われたラムは頬を膨らませてふて腐れたような態度になった。

「ダーリンがやりたいようにばっかり、ウチに…色々リクエストしてきて、ずるいっちゃ」

「…オレは男だからな…ラムにはわからん…欲求…っちゅうか…あるわけよ…。お前にはわからんだろうなぁ…」

「わかるわけないっちゃ!もうっ」

「じゃあ、どうしたいんじゃ?」

「もうちょっとこう…ムードを大事にして欲しいし、もっと優しくしてくれたっていいのにっ」

「…オレが優しくない、っちゅーのか?」

「だっちゃ」

「…だったら優しい男のところにでも…どこでも…」

あたるはそこまで言って、言葉を切った。

「ウチが浮気してもいい、って言うのけ?」

「…そうは言っとらんだろうが…」

「そういう風にしか聞こえなかったっちゃ。ダーリンがそう言うんなら〜…」

「ア、アホッ、真に受けるやつがあるかっ」

「んふっ、うそっ♪」

“チュッ”

そして今度は、焦ってラムを見たあたるの唇に、彼女は軽いキスをした。

「ウチが浮気なんてするわけないでしょ?そのくらいわかってるくせに」

「…優しく、ねぇ…」

「たまにはムードくらい出して欲しいっちゃ」

「ムードだかメイドだか知らんが…」

「恥ずかしいのけ?」

「…う…」

「たまにはウチの事、ほめてくれたっていいのに。それで十分ムード出るっちゃ」

「んな恥ずかしい事が言えるか…」

「やっぱり恥ずかしいのけ」

「…そういう事っ…あーもーイチイチうるさいねぇ、ラムも」

漫画雑誌をぽいっ、と投げ捨て、あたるは押入れを開けた。そして布団を出して素早く敷いた。

「…もう、なのけ?それに何だっちゃ、ちょっと怒ったみたいなその態度は…」

「別に怒ってなんぞおらんわっ。ラムがあんまうるさいからな、今日はひとりで寝る」

「むぅっ…たまにはウチのリクエストに応えてくれたって!ダーリンったらホントに勝手だっちゃ」

「とにかく今夜は別々っ」

「ダーリンは〜、それで、いいのけ?ひとりで眠れるのけ?」

「ふんっ、子供じゃあるまいし」

そっぽを向いてパジャマに着替えながら、あたるはそう言った。

「それじゃあウチはUFOで寝るっちゃ!ダーリンのバカッ!!」

そしてラムは窓を開けると、冬の夜空へと飛び立っていった。

その姿をちらっと見送りながら、あたるはぼそっと呟いた。

「…窓くらい閉めろ、っちゅーんじゃ…。ったく、ムードがどうとか、優しくしろとか……しかし、オレ…やっぱ…ラムに対して…うーむ…」

布団に潜り込みながら、あたるは思っていた。

(優しくしろ、と言われてもなぁ…それに、ムード〜?…女の考える事はようわからんわ…しかし、もうちょっと…やっぱ…。いや、ラムに優しくしようもんなら、アイツの事だから付け上がるだけだろうしなぁ…しかし、やっぱり…うーーーーむ…)

そしてまんじりともせず、あたるはしばらく布団の中で同じような事をぐるぐると考え続けた。


翌日ふたりは、別々に登校した。そして顔を合わせても、何と無くぎくしゃくした空気に包まれているあたるとラム。すぐにぷいっ、と互いに顔を逸らすのだ。別に大したケンカをしたわけでもなければ、仲直りするほどの事でもない。が、互いに何と無く気まずい感じがして、目を合わすのをつい避けていた。

「おいメガネ、あたるとラムちゃん、ケンカしたみたいだぜ」

「それがどうした、パーマ」

「あれ?お前らしくねーな。いつもならあたる呼び出すとか…」

「イチイチあのふたりのケンカに付き合っていられるかっ」

「どういう心境の変化だよ?」

「俺のラムさんへの思いは変わらん。変わらんがっ!…きっと直に元の鞘に収まっとるのがオチだ…」

「まぁ、確かにそうだけどな…」

「逐一行動を起こすより、俺はこうやって、ラムさんを静かに見守り…やがて心を痛めたラムさんにそっと言葉をかけ…」

「…で?」

「“メガネさんってやっぱり優しいっちゃ!ウチ、もうダーリンには見切りつけて…”そして…俺とラムさんは…俺とっ!ラムさんはっ!」

メガネの妄想が暴走し始めたところで、パーマは呆れたような溜息を吐(つ)きつつ、静かに彼のそばから離れていった。

帰りもふたりは別々で、ラムはひとり、街の映画館に行った。特に観たい映画があったわけではないが、諸星家にもUFOにも帰る気になれなかったからだ。

ラムはふと目についた恋愛ものの上映館に入った。中はカップルで一杯だった。作中、恋人同士が愛の言葉を囁き合い、ベッドシーンになだれ込む展開があった。それを観ていたラムは、(ダーリンもああだったらなぁ…)などと、思っていた。

上映が終了し、映画館を出たラム。しかしまだ帰る気になれず、カバンを抱えて街をぶらぶら歩いていた。すると、聞きなれない声でふいに呼び止められた。

「ね、君ひとり?よかったらお茶でもどう?」

見るとラムと同世代っぽい男が、にこにこしながら彼女に言い寄ってきたのだ。

「お断りだっちゃ」

「さっきからひとりみたいだけど、お茶くらい飲む時間あるだろ?君みたいな可愛い子がずっとひとりで歩いてるなんて、もったいないよ。そっちから声かけてくれたら、誰でも喜んでご馳走するはずだよ」

「余計なお世話だっちゃ!それにさっきからウチの事見てたのけ?失礼だっちゃ!」

「ごめんごめん。君があんまり可愛くて…きれいだし、さびしそうだったからさ、つい、ね。で、お茶くらいご馳走させてよ。それ以上は何も…無いからさ」

「自分から名乗りもしないやつと、お茶なんか飲まないっちゃ!」

「それもそうだね。俺、飛翔の翔って書いてショウって言うんだ。俺が名乗ったんだから、君の名前も教えて欲しいなぁ」

「誰も教えてくれ、なんて言ってないっちゃ!」

「教えたんだから、お茶はOKだろ?それに名前聞きたいなぁ〜」

「もー、しつこいっちゃ!名前は言わないし、お茶も飲まないっちゃ!」

「君って怒った顔もいいね。美人はどんな顔しても絵になるからいいなぁ。見てて飽きないよ」

「何、歯の浮くような事言ってるっちゃ!」

「全部ホントの事だって。だって君を見てると…」

その後も男は喋り続け、ラムは遂に根負けした。軽く溜息を吐くと、“しょうがない”というような顔をして、自分の名前を告げた。

「いい名前だね。君にぴったりだよ」

ラムは彼の言葉にまんざらでもない気分になりつつあった。とにかく、ショウと名乗ったその男は、ほめ上手なのだ。本音か建前かはわからないが、とにかくよく喋る。歯の浮くような言葉を次から次へとラムに浴びせる。

ラムが悪い気がしなかったのは、彼が見た目、さっきの映画に出てきたアイドル男優みたいなルックスだったからだ。爽やかな声に愛くるしい笑顔、女性をその気にさせるような巧みな話術。すれ違う女性たちがショウを目で追うくらい、彼の容姿は街中で際立っていた。

そして遂にラムはお茶を飲む事を承諾した。

「ちょっとだけだっちゃ。お茶飲んだらすぐ帰るっちゃ!」

そしてふたりは喫茶店へと入っていった。


ショウとお茶を飲んでいる間も彼はのべつまくなし喋り続けた。それも歯の浮くような甘いセリフを立て続けに。しかしラムは始終不機嫌そうな顔で、それを聞き流していた。

「ラムみたいな子と付き合えたら…俺、他には何もいらないのになぁ…」

「ウチにはもうダーリンがいるっちゃ!さっきからよく喋るっちゃねぇ〜」

「…彼氏、いるの?…そりゃそうだよねぇ…いない方がおかしい、って言うか…ふぅ〜、そっか、もういるんだ…」

そこまで言うと、ショウは急に黙ってしまった。寂しそうな笑みを浮かべて、静かにコーヒーをすすっている。

「さっきまでうるさいくらいだったのに、どうしたっちゃ、急に黙って」

彼はカップを持ったまま頬杖をついて、憂えた瞳でラムをじっと見た。

「だってさ…そうかもしれない、って思ってて本当に彼氏がいる、って聞いたら…ちょっとショックだな〜…」

「もう暗くなってきたし、ウチそろそろ帰るっちゃ。ご馳走さまっ」

「まだいいだろう?小さい子供じゃあるまいし。それにまだそれほど遅くないよ。ほら」

腕時計の時間を見せながら、ショウがそう言った。

「もう少しだけ、こうして君の顔を見ていたいんだけどなぁ…」

ラムは(ダーリンもそんな風に言ってくれたらいいのになぁ…)と、その時思った。

「やっぱりもう帰るっちゃ」

「どうしても?」

「だっちゃ」

「それじゃあ、途中まで送るよ。無理矢理誘った御礼」

「ここのお茶おごってくれるだけで十分だっちゃ」

「でも少しでも長くラムといたいから、さ…」

それを聞いたラムは(たまにはダーリンを心配させよっかなぁ…)という気になりつつあった。

「それじゃあもうちょっとだけお茶飲んで、送ってくれるのも途中までだっちゃよ」

「やった♪」

ショウの表情がぱっと輝いた。それを見たラムは(ダーリンもこんな顔してくれたらいいのに…)と、ふと思った。

「しょうがないっちゃねぇ…」

その言葉がショウに対してなのか、自分自身に対してなのか、ラムはつい口をついて出た言葉に、複雑な思いを抱いた。

それから少しして、ラムとショウは喫茶店を出た。空は既に暗く、冬の月が上空高く輝いている。

「あれ?月があんな位置に…もしかして…」

ラムは街中にあった時計を見て驚いた。もう10時に近い時間になっていたからだ。

「ショウ!さっきはあんまり遅くない、って時計見せて…ウチを騙したのけっ!?」

「あれ?おっかしいなぁ…ごめんごめん、時計が壊れてたみたいだよ。ずいぶん時間が遅れてた。気付かなかったよ」

「もうっ!ウチ早く帰らないとっ!」

「あっ、ラムッ!?」

ラムはひょいと飛び上がると、ショウの目の前からあっと言う間に飛び去ってしまった。

「ラムか…あの女…いいな、すごく…」

ラムに去られた後、ショウは“ニヤッ”と意味ありげな笑みを浮かべて、街中へと消えていった。その頃あたるの部屋では…。

「…ラムのやつ…遅いっ」

そこへラムが息を切らして入ってきた。

「ダーリン、ただ今っ」

「…何やってたんだ?」

「気になるのけ?」

「…別に〜…」

「ホントは気になるんでしょ?そうじゃないのけ?」

「だから気になんぞならんっ、と言うてるだろーがっ」

「くすっ…ウチ、お風呂入ってくるっちゃ」

「…こんな時間まで…」

「え?」

「何やってたんだよ?」

「何って…映画観てきたっちゃ」

「それだけでこんな遅くならんだろ?」

「…お茶、ご馳走になってきたっちゃ」

「…誰に!?」

「誰って…ダーリンの知らない人だっちゃ」

「…浮気、か?」

「浮気なんかじゃないっちゃよ」

「男か?」

「だから違うって言ってるっちゃ!」

「…ふんっ、どーだか…」

不機嫌になったあたるを尻目に、ラムは風呂に行った。そして上がってくると、あたるはとっとと布団を敷いて、その中に潜り込んでいた。

「ダーリン?」

「………」

「ウチ本当にお茶ご馳走になってただけだっちゃ」

「…何で?」

「あんまりしつこいから、ちょっとだけ…」

「しつこくされたから、ちょっとだけ…って、本当にお茶だけか?」

「ホントだっちゃ!」

「…どーだか…ふんっ…」

「とにかくダーリン…本当に、ウチ…」

ラムが布団の中のあたるの顔を見ようと、上掛け布団をそっとめくると、怒った顔のあたるがいた。

「だからホントだっちゃ」

「お茶だけでこんな遅くなるのかっ!?」

「何疑ってるっちゃ!ウチは何もやましい事なんかしてないっちゃ!」

「………」

「だから機嫌直して…ね?ダーリン…ウチも遅くなって悪かったっちゃ…」

「………」

「ダーリン、ウチの事信じてくれないのけ?ねぇ…ウチが好きで仕方無いのは、ダーリンだけだっちゃ…ダーリン…ウチ…」

そしてラムは怒った顔のままのあたるに顔を近づけ、頬に軽いキスをした。

「ダーリン…怒った顔してる割には…くすっ…いつもならそっぽ向くのに、どうしたっちゃ?こっち向いたまんまで」

「…オレがどれくらい怒ってるか…見せるためじゃ…」

「ホントはもう怒って無いんでしょ?ねぇ…ダーリン…」

「まだ怒っとるぞっ」

「ふふっ…意地っ張り…ダーリンらしいっちゃ…ダーリン…好き…」

そして再びラムからあたるにキスを与えた。重なった唇同士が深く…食い込んでいく。互いの欲情が…次第に高まっていく。着衣のままの濃厚なキスは、あたるとラムにとってカラダを合わせる前の入り口だ。体液の味、絡めあう舌の触感、唾液をすすり合う音、互いの匂い、時々合わせる目と目…。

五感のキスが、ふたりを熱くしていく。血流が早まり、あたるはラムと繋がる部分を硬くし、ラムはあたると繋がる部分を濡らしていった。

キスをしながら、互いの着衣を剥き合い、全身の肌を擦り合わせる。合わせた胸から、お互いの鼓動が相手に伝わっているような…ふたりはそんな気がして、更にカラダを密着させる。

「ダーリン…ダァリン…」

ラムは堪らなくなって、あたるの逸物に手を伸ばし、猫のように舌先で愛撫し始めた。自然とシックスナインの体位になるあたるとラム。あたるはラムの濡れたひだに唇をそっと押し当てた。

「あっ、んっ…あっ…ダァ…リンッ…」

艶っぽい声を漏らしながら、あたるを愛するラム。ラムの声を聞きながら彼女の陰部を愛するあたる。

いつもの濃密な…ふたりの夜は…今、始まったばかりだ…。

--- To be continued. ---

あとがき


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