(例えば・21)Sweet beans.(修正版)


この物語はあたるとラムが結婚してから1年近く経った、節分少し前のある日の出来事である。

「今年は節分無しけ?弁天」

「そっ。ラムも子供が出来て色々忙しいだろうしな、アタイの都合ってのもあるんだよ」

「弁天の都合って何だっちゃ?毎年欠かさずふたりでやってたのに」

「妊婦に節分なんかやらせられるかよ。それにアタイの都合はアタイの都合だってーの」

「水臭いっちゃ、弁天。ウチら友達じゃなかったのけ?」

「…アタイにも懐具合、ってもんがあんだよっ」

「貧乏なのけ?弁天」

ラムがケロッとしてそう言うと、弁天はムキになってこう突っかかってきた。

「かーーーっ、言うに事欠いて人の事貧乏とかっ!もうちょっとこう、言い方ってもんがあんだろっ!」

「ごめんちゃ、弁天。でも懐具合が、って言うからウチてっきりそうだと思って」

「福の神捕まえて“貧乏”って事はねーだろ、貧乏って事はっ」

「じゃあ節分出来ない理由教えて欲しいっちゃ」

「あーもー、説明はさっき言った通りだってーの。ラム、お前妊婦って自覚無いんじゃねーのか?それに今度おユキから連絡来ると思うからそん時聞いてみなっ。そんじゃアタイはこれで帰るぜ、じゃあな」

「あ、弁天っ!」

ラムとあたるが結婚後、新居にしているアパートに遊びに来ていた弁天は、キッチンの窓から出ると、真っ赤なエアバイクにまたがって、あっと言う間に飛び去っていった。

「おユキちゃんから連絡?何の事だっちゃ」

今日は平日、あたるは仕事だ。ラムは節分の話題を適当に濁して帰っていった弁天の言葉が気になりつつも、夕食の準備のため、買い物に出かけた。

「これとこれと…あ、あとあれも買わなくちゃ、だっちゃ」

ラムはあたるのために買い物をしている、という感覚が嬉しくてたまらない。

「ダーリンお腹空かして帰ってくるだろうなぁ。今夜はちょっとフンパツして…うん、これにするっちゃ」

そして買い物をした荷物を手に提げ、フワフワ飛びながらアパートに戻ってきた。

「ウチのお弁当ちゃーんと食べてくれたかなぁ、ダーリン」

そんな独り言を呟きながら、台所に立つラム。夕食の準備も出来てしばらくすると、あたるが帰ってきた。

「ただいま〜」

「あ、ダーリン、おかえりなさい、だっちゃ♪」

「あー腹減った。あれ、誰かお客でも来てたのか?」

「何でわかったっちゃ?」

「だってほれ、客用のティーカップが出てんだろ」

「ああ、弁天が遊びに来てたっちゃ」

「何っ、弁天様がっ!?くっそー今日は休みにするんだった〜随分会ってないからな〜弁天様〜」

「むぅっ、弁天はウチに会いに来ただけだっちゃ。それにそんな理由で仕事休めるわけないっちゃ」

「ウソも方便、って言葉があるだろ?」

「ウチはちょっと意味が違うと思うっちゃ」

「あー弁天様に会いたかったな〜。ところで〜まだ独りなのか?弁天様」

「まだみたいだっちゃ。何もそれらしい話聞いて無いし」

「ふーん」

「何でそんなに弁天の事気にするっちゃ」

「いや、オレはいつもと同じだぞ?」

「そうけ?やけに気にしてるみたいに見えたけど〜」

「そんな事より、飯、飯、っと」

あたるはラムの言葉に対し、すっとぼけた風な態度で、食卓に就いた。

「なーんか変だっちゃ、ダーリンも弁天も。ウチに何か隠してるんじゃないのけ?」

「んな事ないぞ、うん、全然」

「それならいいけど〜〜もし弁天と浮気なんかしてたら〜〜!」

「ちょっ、何でそっちに話が飛ぶんじゃっ、だから何も無い、って言っとろーがっ」

「ホントにホントけ?」

「お前も疑い深いねぇ、ラム」

「だってダーリンがいっつも浮気ばっかりしてるからっ」

「弁天様とは会っても無いんじゃ、何かあるわけ無いだろ?」

「うーん、ダーリンがそこまで言うなら…わかったっちゃ」

しかしラムは何かが気になって仕方無い。弁天の態度もあたるの態度も、何と無くだが、いつもと違うように思えたからだ。しかしあたるが何度も否定するので、ラムもそこで話をおしまいにした。


そして翌日の午後、アパートの一室にある小型通信機から呼び出し音が鳴った。

「ラム、お久しぶり。元気にしてたかしら?」

「あれ、おユキちゃん!久しぶりだっちゃね〜、おユキちゃんこそ元気だったけ?」

「ええ。ところでラム、弁天がそちらに行ったかしら?」

「昨日遊びに来たっちゃ」

「それで何か言ってたかしら?」

「節分、今年は無しだって…。おユキちゃんから連絡が来るとも言ってたっちゃ」

「あらそう。それじゃあまだ弁天からは何も聞いて無いのね。旦那様からも?」

「…やーっぱり弁天とダーリン、ウチに何か隠し事してたのけっ!?」

「何というほどの事じゃ無いのよ。ただラムに…あらいけない、商談の時間だわ。それじゃあ私はこれで」

「あっ、ちょっとおユキちゃんっ、ウチに何だっちゃ!?ダーリンと弁天がどうかしたのけ!?おユキちゃん!」

おユキはあっさりと自分側から通信を切った。その様子でラムの疑心暗鬼がますます強くなっていったのは言うまでも無い。

「ダーリンと弁天とおユキちゃんで…何をどうするつもりだっちゃ…もうっ!」

そしてその夜、ラムはあたるに昨日より強く詰め寄った。

「やっぱり弁天やおユキちゃんと何か企んでるっちゃね!ダーリンッ!!」

「オレは知らんっ、なーんも知らんぞっ」

「だっておユキちゃんが意味ありげな事言ってたっちゃ!ウチに何隠してるっちゃ!正直に白状しないと〜〜!!」

「ちょっ、だからーっ!何もやましい事は無いっ、ちゅーとろーがっ」

「やましい事が無いんだったら、ウチに本当の事話してくれたっていいのにっ!」

「だから本当もウソも、何も無い、っちゅーんじゃっ」

「何も無いワケ無いっちゃ!…んも〜〜!ウチ今日はUFOで寝るっちゃ!ダーリンのバカッ」

それでもあたるは何も言わない。その態度に苛立ったラムは、キッチンの窓から出ると、黙って飛んでいってしまった。

「…何だよラムのやつ…」

ぶすっとして窓から空を見上げ、ラムの姿が確認出来ないとわかると、あたるは窓を閉め、キッチンのテーブルの上をそのままにして風呂に入り、ごろりと寝てしまった。

翌日あたるがアパートに帰ってみると、ラムは戻ってきていた。しかしまだむすっとした顔のままだ。

「…夕飯は?」

「ウチは適当に済ませたっちゃ」

「だからオレの夕飯はっ?」

「弁天やおユキちゃんとどこかで食べてきたらいいっちゃ!」

「あんなぁ…いつまで怒ってるんじゃ…ラム。弁天様とおユキさんは別に何も…」

「だったらダーリンはウチに隠し事して無い、って言うのけっ!?」

「…あーもー面倒くせーなぁ…オレは弁天様とおユキさんからっ…節分の日にこれを渡してやってくれ、って言われただけじゃ」

「…節分の日、に?」

「…そっ。あと何日かあるけどな、面倒だからもう渡しちゃる」

あたるが上着の内ポケットから何やら出してきて、ラムに差し出した。

「ほれ」

「小さなカードみたいだっちゃ」

「言っとくが、中身は知らんぞっ」

あたるから手渡されたのは、少し厚みのある銀色のカードケース。名刺入れくらいの大きさだ。それのフタを開けてみると…中には1粒の豆と、紙切れが入っていた。

「何だっちゃ、これ…」

中の紙を広げて見ると、そこには。

【ラムへ。ご結婚おめでとう。お祝いがすっかり遅くなってしまったけれど、この豆は節分の夜に蒔くと、幸せになれる、という言い伝えがあるものです。末永くお幸せに。おユキ・弁天・ラン】

「ダーリン、これ…」

「だからオレは頼まれ事をするのが嫌だったんじゃ…面倒くさいからなっ」

「ダーリンの…ウソつきっ…」

「もうオレはウソなんぞ…あ、ラム…」

「ウチ…嬉しいっちゃ…皆から祝ってもらえて…本当に…」

あたるが見ると、ラムは零れる涙を指で拭っていた。

「これでオレの潔白が証明されただろーが。そうだろ?」

「で、これは…節分の日じゃないとダメなのけ?」

「さーなー。オレはそこまで聞いとらんかったからな〜」

「節分は今度の日曜だっちゃ。それじゃあその日に蒔いてみよ、ダーリン♪」

「少しは機嫌、直ったのか?」

「もう、全然だっちゃ。嬉しくて嬉しくてたまらないっちゃ♪これ何かの種なのかなぁ…」

「そんじゃもうUFOに行ったり…しないよな?」

「もっちろん♪」

あたるはラムの機嫌が直った事で、安堵の息を吐(つ)いた。

「ごめんちゃ、ダーリン…疑ったりして…」

「いや、別に…」

「でももっと早く言ってくれれば良かったのに」

「何で?」

「だってぇ…ウチ、UFOに行かなくても済んだのにぃ…」

「…ごほっ…まぁ、たまにはオレがいなくても…いや、いないと…どうなんだ?」

「ダーリンはウチがいないとどうなのけ?」

「…ど、どうって事は…な、無いぞ…別に〜」

「ダーリン素直じゃないっちゃ…ウチはさびしかったっちゃよ?」

ラムが食卓のイスから立ち上がると、あたるも立ち上がった。そしてラムの方からあたるに近付き…そっと抱き着いて、こう言った。

「UFOに家出するとね…やっぱりダーリンがいなくて…ウチ、さびしいっちゃ…」

「あ、ああ…そう…か」

「だから…ダーリン…ちゃっ!」

「だから…どうだっちゅーんじゃ」

あたるはいきなりラムをお姫様抱っこすると、食卓もそのままに、寝室の方へと歩いていった。

「ダーリン、優しいっちゃ♪」

「…アホか…」

そして敷いてあった布団の上にラムを下ろすと、あたるは自分でシャツのボタンを外して脱ぎ、横たわるラムの上に覆い被さった。

「ラム…」

「ダーリン…」

いつもの事だが、布団の上で抱き合い、キスから始めるふたり。口唇がたっぷり濡れるほどのキスを何度も繰り返して、気持ちを昂ぶらせていくのだ。

どちらからともなく舌を挿入し、絡めあう。ラムは舌先から微弱な電流をあたるの口内に送り込む。

「んっ、んっ…ダァ…リン…」

キスをする合間にラムの衣服を手際良く脱がしていくあたる。細い肩口を出し、胸を肌蹴させ、キスを解いて彼女の服をスルリと脱がしきった。そして自身のズボンも下ろし、ふたりは下着だけの姿になった。

ラムは下肢を左右に広げてあたるの腰を挟み込む格好になり、ふたりはまたキスをする。そこからあたるの口唇がラムの耳やうなじ、首筋へと滑っていき、胸元へと下りていく。

「あぁっ…ダーリン…」

何度抱いても、いつでもラムはあたるの愛撫に同じような悦び方で反応する。

「くすぐったい…ダーリンの…エッチ…あ、あぁ…」

そしてあたるはラムのまろやかな乳房を軽く掴み、やんわりと揉みながら、もう片方の乳房に吸い付く。桃紅色のその頂を…口に含み…吸い上げていくと…それはピンと飛び出し、少し硬くなった。

もう片方も指先で頂を摘み、転がしながら、硬くしていく。そうやってラムの感度を高めていくのだ。

「あ、あ…あ…あ、ぁ…ダーリン…ダー…リン…好き…」

胸への愛撫を続けながら、あたるはラムの下着の中に手を入れた。“ぬちゅり”と濡れている彼女の陰部。あたるの指に絡み付くラムの蜜。彼女から分泌されるラヴ・ローションを指先で伸ばしながら、あたるはラムの肉豆に何度も指を擦り付けた。

「あんっ、だめぇ…あんまり…いじったり…したら…ウチ…ウチ…」

「…ラムは…どうなるんだ?」

「あんっ…あはぁっ…あぁんっ…ダーリンの…エッチ…」

あたるは上半身を起こすと、ラムの陰部をまさぐりながら、するすると下着を下ろしていった。ラムは足を曲げ、あたるが下着を脱がしていくのを手伝いながら、悶え続けている。

「んんっ…あはぁ…あぁっ…いっぱい…気持ち…いいっ…ちゃぁ…ダーリン…」

粘り気のある液体を掻き回すような、“ぬちぬち”とした微音。しばしラムの肉豆を攻めたあたるは、すっと手を引くと、自身の下着を下ろした。そしてラムの両内股に手を掛けると、左右に広げて、彼女の敏感な部分に口唇を押し当てた。

「…あぁっ、あぁっ、あぁんっ…ダーリンッ…さっきより…いいっ…ちゃぁ…」

あたるの舌先がラムの肉豆の包皮を剥き、既に勃起し充血しているそれを何度も転がす。ラムはシーツを掴み上半身を左右によじりながら、あたるの攻めに身悶え続けている。

「ウチの…そこ、ばっかり…だめぇ…それだけ、で…イッ…イッちゃう、ぅ…」

ラムが腰を力ませ、ぶるぶると軽く震えた。あたるの肉豆への愛撫だけで…彼女は軽い絶頂に達したのだった。


「ダーリン…何で…今夜はそこばっかり…」

「オレを疑ってたから…その罰じゃ…」

「だってぇ…本当の事言ってくれなかったのは…ダーリンだっちゃ…」

「…不満か?」

「…そんな事…無いけど…」

「そんなら…いいだろ」

「でもぉ…ダーリン…早く…」

「もうすぐ…節分だろ?だから…」

「…だから?」

「鬼だけに豆が弱いかと思ってだな…」

「…ダーリンの…バカ…」

ラムは軽く笑って、あたるの頬に両手のひらを当てた。そしてまた軽いキス。間も無くキスを解くと、あたるも軽く笑っている。

「何かっちゅーと…“ダーリンのバカ”ばっかだな、ラムは…」

「ダーリンだって…ウチの事、すぐにアホ、って言うっちゃよ…くすっ」

「アホだからアホと言ってるまでじゃ。すぐ怒るし人を疑うしな…」

「ね、ダーリン…昔の2度目の鬼ごっこの原因…憶えてるけ?」

「ああ…偽者のラムがルパと結婚する、って言って…それから…」

「それから?」

「ラムを助けようとしたオレを、お前が思いっきり平手打ちしたのが…そもそもの…だな」

「だってダーリンがウチを信じてくれてなかったから…」

「ま、そんな事もうどーでもいいだろ。何だよ今頃…そんな話持ち出したりして」

「色々あったけど…鬼ごっこ2回するなんて、ウチの星じゃ滅多に無い事だっちゃよ」

「ラムが鬼ごっこを言い出したんだよな」

「もし鬼ごっこがああいう風に終わってなかったら…今こうして…一緒にいなかったかもしれないっちゃね…」

「いや、それは無いだろ」

「どうして?」

「過去がどうでも…今一緒にいるだろ?それでいいんじゃないか?」

「…だっちゃ…ダーリン…愛してる…」

それからふたりは深いキスを少しの間交わし…あたるはラムと…ひとつになった。

「ダーリン、ダーリンッ…好きっ…大好きっ…あぁっ、あぁっ、あぁっ…あぁっ!」

ラムを揺さぶるあたるの肉体。彼の全てがラムを悦ばせる。縦横無尽にスパークを飛ばしながら…ラムが激しく身悶える。

「あぁんっ!ダーリン、ダーリン、ダーリンッ!」

ラムの全てはあたるのためだけにある。そのカラダも心も…全て。愛情表現の放電も、あたるにしか浴びせない。

柔らかな電気糸があたるに絡み付く。彼の全身を隈なく痺れさせる…ラムからの極上の愛撫。そしてそれがあたるのカラダを通してラムに返されると…彼女はより一層激しく乱れるのだ。

「ダーリンからの…電気、でっ…痺れて…電気、がっ…ダーリンッ!!」

自身の電気に昔当てられた事があったが、あたるから伝わってくる放電は違うようだ。あたるの体温、彼の様々な匂いを含んで返ってくるスパークは、ラムにとっても極上の愛撫になり得るのだろう。

そうして乱れながらラムがあたるを呼ぶ。愛する人の名前を呼び続けて白いシーツの上で躍る。あたるもラムを抱きながら、高みに昇り詰めていく。そして、ふたりして高い所へと飛び上がり…時にゆっくり、時に勢いを付けて真っ逆さまに堕ちていく…。

その感覚を何度も味わいたくて…ふたりはこうして昔から抱き合い続けている。今までも、そしてこれからも…そうなのだろう。

「いっぱい、いっぱい…愛して…ダーリン…」

ラムが切なそうな声であたるに言う。彼女の声が彼の耳をくすぐる。カラダの芯から噴き出してくるような熱い汗でふたりは全身ぐずぐずになりながら、今夜も激しい抱擁を続ける。

全身戦慄(わなな)くようなエクスタシーに見舞われたふたりは…いつものように高みに昇り詰めて…今夜は一気に下降した。あたるはラムの上に着地し、ラムはあたるの腕に抱きかかえられて現実に戻ってくる。

脱力して一呼吸置くと、ふたりは掛け布団をすっぽり被り、中でじゃれ合いながら、やがて平穏な眠りに就いた。いつものように。


そして節分当日、ラムは先日の豆を小さな植木鉢に蒔いてみた。

「どんな芽が出てくるのかな〜楽しみだっちゃ♪」

適当に水と肥料をやるラム。

「このくらいかな〜」

すると夜には小さな芽が出てきた。

「わぁ、ダーリン、見て見て♪もう芽が出てきたっちゃ」

「うーむ、宇宙の植物だけの事はあるな〜」

「あれ…ダーリン、ほら、また伸びてきたっちゃ」

「…おい、もしかして…目の前で伸びてきとりゃせんか?」

「そうみたいだっちゃね」

「そうみたいだっちゃね、じゃなくて〜〜」

「何か変け?ダーリン」

「あのなぁっ!地球の植物では目の前でぐんぐん伸びてくもんなんて無いんじゃっ!仮にあったとしてもだっ、こんなに早く成長するかーーーっ!!」

豆から出てきた芽は、見る見るうちに、1メートルほどの大きさの、枝葉を広げた植物になった。

「すごい生命力だっちゃね、ダーリン」

「だからお前は何を聞いておったんじゃー!!」

「そんなに怒鳴らなくたって〜」

「…で、どういう風に幸せになれるんじゃ?この豆の植物で…」

「さぁ?」

「調べもせずに蒔いたのかっ!?」

「だっちゃ」

「だーーーーーっ!!ラム、お前なぁ〜〜〜」

1メートルでぴたっと成長が止まったその植物は、まるで生き物のようにぶるぶると枝葉を震わせだした。そして…。

「ダーリン、見るっちゃ。なんだか飴みたいなものがいっぱい付いたっちゃ」

「何だか…ジェリービーンズみたいな色形だな…どれ」

あたるは枝葉に鈴生りになった実のひとつを摘むと、匂いを嗅いだり、じーーーーっと眺めたりして、それからようやく口に放り込んだ。

「うーむ、見た目も味も、地球のジェリービーンズそっくりじゃ」

「ダーリンたら何でも口にするっちゃね〜ウチが昔作った料理は嫌がってたのに」

「ラムが持ってきた豆じゃないからな〜ま、大丈夫だろうと思って…ん?」

「失礼だっちゃね〜〜」

「ん…?」

「どうしたっちゃ、ダーリン?」

「うーむ、この濃厚でまったりした味は…実に奥深く…美味いっ」

するとあたるは片っ端から実を摘んで“ひょいぱく、ひょいぱく”と口に放り込んでいった。

「ちょっ、ダーリンッ、ウチにもっ!」

「ほまへもくひたいんか?」

「何口いっぱい頬張って喋ってるっちゃ」

そしてあたるは遂に、実を全部食べ尽くしてしまった。

「結局ダーリンひとりでぜーんぶ食べちゃって!」

「あー美味かった。あの実はまた生るのか?」

「ウチが知るわけないっちゃよ」

「また生らんかな〜実に美味かった!」

「結局どう幸せになるのか…わからなかったっちゃ」

それから数日後。弁天がまたやってきた。

「よっ、ラム。この間はすまなかったな。お前驚かそうと思ってよ…で、あの豆どうした?」

「蒔いてみたっちゃよ。そしたらたくさんきれいな実が生ったのに…」

「そうか〜〜上手く育ったか!よーしそれ持って行きたいとこがあんだ。…で、実はどうしたんだ?」

「あの植物、見てみるっちゃ。ダーリンがぜーんぶ、食べたっちゃ」

「くっ、食った!?食ったのか、あれをっ!?」

「うん、すっごく美味しそうにぜーんぶ食べたっちゃ」

「あ〜あ〜あ〜〜!あれは食いモンじゃなくて!あるとこに持ってくとよ、そこで鑑定してくれて、いいモンだったら結構な値が付くはずだったんだぜ!地球の金に替えても、それなりのもんになるはずだったのによ〜〜」

「鑑定?あれ食べ物じゃなかったのけ?」

「アタイはそのために今年の節分切り上げて、あの豆買ったのによ〜〜おユキとランもちょっとずつ出してくれたんだぜ」

「えっ、おユキちゃんとランちゃんも…そ、そうけ、そうだったのけ〜、あはっ、あはははは〜〜(あちゃ〜、どうするっちゃ〜…弁天はともかく、おユキちゃんとランちゃんにはどう謝ったらいいのかなぁ…)」

「まぁラムが食ったんじゃないからな〜仕方ないけどよ〜。それにしてもお前の亭主も亭主だろっ、地球人の味覚ってのはわかんね〜よな〜〜」

「そうだったのけ、そうとわかってたらダーリン止めたのに…」

「ま、無くなったもんは仕方無いとして、だ。おユキとランはあの豆の事はよく知らねぇから、アタイから上手く伝えとくぜ。ただの植物だと思ってるはずだからよ」

「悪いっちゃね〜弁天。ダーリンにも隠しといた方がいいみたいだっちゃ」

「そういう事だな〜」

それからしばらく他愛の無いおしゃべりをして、弁天は帰っていった。

「んも〜ダーリンたら…本当にしょうがないっちゃ」

そしてラムが、弁天から聞いた話をあたるにする事は無かった。そしてある晩の事。

「ダーリンは…お金がたくさんあったら幸せ?」

「ん?何だよ急に。そりゃ大金持ちになれたら…ま、面堂が幸せかどーかはわからんけどな〜」

「お金持ちじゃなくてもいいのけ?」

「そう言うラムはどーなんだよ?貧乏より金持ちの方が…とか、思った事無いんか?」

「そんな事思った事無いっちゃよ。ダーリンがいてくれたら…それでウチ、幸せだもん♪」

「そんじゃ、ま…」

「ダーリンは今幸せ?」

「んな恥ずかしい事が言えるかっ」

「それじゃあ思ってるのけ?」

「オレがどう思ってよーが、いいだろ、んな事。それより…っと」

「ちゃっ…んもう…くすぐったい…バカッ…ダーリンの…エッチ…」

「ラム…」

「なぁに?ダーリン…」

「いや、何でも…」

「もうすぐ…バレンタインでしょ?ダーリン」

「…ああ」

「何の日か憶えてるけ?」

「…さぁ、何かあったか?」

「ダーリンがぁ…ウチにプロポーズしてくれた日だっちゃ…」

「…そんな事も…あったっけか?」

「ふふ…ダーリン…大好き…」

こうしてバレンタインに向けて、またふたりのバカ甘い夜が更けていくのであった…。

--- E N D ---

あとがき


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