(番外編) 何も無い日々。


「そういや、ラム。お前オレの制服の匂いでどうとか…言ってたよな?」

「だっちゃ…もうその話は恥ずかしいからやめるっちゃ、ダーリン」

「確かに…匂いが、こう、引き金になって…ってのはよくある。昔も今もよくある事だが…」

「だからその話は、もういいっちゃよ…」

「まるで…犬みたいではないか…」

「でもわかるのはダーリンの匂いだけだっちゃ。ダーリンもウチの匂い、好きでしょ?」

「えっ…」

「だって、ウチが脱いだ後、自分の制服の匂い嗅いでたっちゃ。何で?」

「えっ…そ、そんな事、あったか〜?」

「あったっちゃ。夜中にこっそり起きて、制服の匂い嗅いでたっちゃよ」

「見てたのかっ!?」

「だーって、押入れで寝てたんだもん、見えるっちゃよ」

「いや、あれは…」

「ウチの残り香でもしてたのけ?」

「うっ…」

「図星け?」

「…いや、まぁ…何ちゅーか、あれだ、あれ…」

「あれって何だっちゃ?」

「…ラムが着たおかげで…(ぼそっ)」

「ウチが着たせいで?」

「…クリーニングせねばいかんよーに、なってしまったんじゃ…(ぼそり)」

「何で?」

「かーーーっ!お前にはまだわからんのかっ!?ラムの匂い付きのままで、あの制服着て学校に行けるかっ!」

「そうだったのけ?」

「そうっ」

「ふーーーーん…って事は…ダーリン、ウチの匂いが付いた制服の匂い嗅いで…ムラムラしてたのけ?」

「…人を変態みたいにゆーなっ」

「ちょっと変態っぽいっちゃ」

「そういうラムこそ…先にオレの制服で…ナニをしようとしてたではないかっ」

「あ、ああ、あはははは〜〜…そ、それは〜たまたま、たまたま、だっちゃ」

「…なーにが“たまたま”じゃっ。下品な言葉使いおってからにっ」

「下品も何も…ダーリンがそう言うと、恥ずかしくなるっちゃ…」

「ま、制服の話はいいとして…夕べの妙な感じは一体何だったんじゃ?」

「よくわからないけど…ウチ、最近…ちょっと体の調子変だなぁ〜と思って」

「そんならまた星の女医さんとこ行けばいいだろ?」

「うん。ちょっと気になるから、星に帰ってくるけど…」

「ああ、行って来い」

「あっさり言うっちゃねぇ〜…もしその間に浮気なんかしてたらーーーっ!!」

「オレをイチイチ監視しとらんと気が済まんのかーーーーっ!!」

そして後日。

「先生の話だと、子供が出来たから、体調が不安定になっててそれでこの間みたいな変な感覚になったんじゃないか、って」

「…そっか」

「安定するまでは…当分、無しになるけど…それで浮気なんかしたらーーーーー!!」

「お前はイチイチ言う事が同じなんじゃ!何とかのひとつ憶えかっ!?」

「失礼だっちゃねぇ〜〜あ、そうだ」

ラムは何か思い付いたらしく、パン、と手を鳴らして、先日アパートに持ち帰ったあたるの制服と、自分の制服の上を持ってきた。

「ダーリン、また着てみて♪ウチもこれ着てみるっちゃ」

「前に着た時、寸足らずでピチピチだったろうが」

「とにかく着るっちゃ、ダーリン」

「うーむ、やっぱ寸足らずでピチピチではないかっ。で、これをどうするんじゃ?」

「で、脱いだらこれを〜交換するっちゃ♪」

「…で、どうするんじゃ?」

「ダーリン、もし寂しくなったら…ウチの制服の匂いで…うふっ♪ウチもダーリンの制服の匂いで〜♪」

「…それでガマンせい、っちゅー事か?」

「だっちゃ♪」

「…うーーーーむ…学生時代からの…くんずほぐれつの歴史も思い出しつつ…制服の匂いで…独りさびしく…か、おいっ!?」

「ダメなのけ?立たないとか?」

「だからそういう言い方すんなっ!!」

「他の女で浮気したら〜〜!!!ずーーーっと、エッチは無しだっちゃ!!それでもいいのけっ!?」

「…ラムを怒らせるわけにもいかん…か…ふぅ〜〜…」

あたるはこれから先の事を考えて、少々気が重くなった。

「電撃もダメ、辛いものもダメ、って言うなら、ダーリンだって浮気したらダメなくらい当たり前だっちゃ!」

「うーーーーーむ…」

「何真剣な顔して悩んでるっちゃ。悩むほどの事けっ!?」

「浮気もダメ、ラムとのアレもダメ…っちゅー事になったら…オレ、どーすりゃいいんだ?」

「そんな事自分で考えるっちゃ」

「うーーーーーーーーーむ…」

「何だかものすごーく重たい悩みにぶつかったみたいな悩み方だっちゃ」

「これが悩まいでおられるかっ!オレにとったら人生の重大局面にぶち当たったようなもんじゃ」

「もうすぐパパになるんだから、それくらいガマンするっちゃよ」

「うーーーーーーーむ…」

「いい加減悩むのやめるっちゃよ。ウチまで気が重たくなってきそう…」

「(そりゃマズイ…)あ、いやーもうどうでもよくなったぞ、ラム♪」

「どうしたっちゃ?」

「(お腹の子に悪影響が出たら…マズイだろ…)いやーーーま、何とかなるだろ、な?ラム〜♪」

「ころっと変わって、おかしなダーリン…」

そしてふたりしてくんずほぐれつするのも、ラムの電撃や辛いものも、あたるの浮気も、「ダメ」な時期がしばらく続き…。

「ありがとう、ダーリン」

「いや…」

「ウチをいっぱい…愛して…くれて…」

「あ、ああ…」

「ダーリン…大好き」

「………」

あたるは病棟の廊下の隅っこで、声を殺して泣いていた。

新しい家族が増え、そのために頑張ったラムのために。

「ダーリン、ほら、ダーリンにそっくりだっちゃ…ふふっ…」

--- E N D ---
あとがき


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