守ってあげたい


「そういえばそろそろホワイト・デーだけど…ダーリン何もくれた事無いっちゃねぇ」

UFOの虎縞柄の敷物の上で、ごろごろしながら、ラムはそうぼやいていた。

「1度くらいお返しくれたっていいのに。いっつもウチからばっかりなんだから…それにしても、退屈だっちゃ〜」

退屈解消のため、ラムは街へと出掛けた。普段ビキニ姿でいる事も多いが、地球に長い事いると、出掛ける時はそれなりの格好をする事もあった。
本屋に立ち寄ったラム。何が読みたいわけでもなかったが、店内をぶらついて、ある棚の前で立ち止まった。

「そういえばウチは“虎縞一角獣座”だけど…地球の暦で計算すると何座になるのかな〜?それとダーリンは牡羊座だったっちゃね、地球星座での相性はどうなのかなぁ〜」

やはりそこは女の子である。ラムは星占いの本を手に取ると、それを買った。あたるとの相性がやはり気になるからだ。UFOに戻っていつものビキニ姿になったラムは、色んな用途に使える大型モニター付きコンピューターの前に座った。

「前にも高校の教室で終太郎とダーリンのどっちがウチと合ってるか、って占ってみたけど…」

そう、“ふたりを天秤にかけたら同じレベルのアホだった”事が判明した、あの占いである。
そしてラムは故郷の星での出生年月日をコンピューターに入力し、地球での生年月日を算出した。

「…ふーん、ウチは…へぇ〜そうなのけ、で、ダーリンとの相性はどうなのかなぁ」

後は実にアナログな方法である。買ってきた本を広げて、該当するページを読み始めた。

「ふんふん…ダーリンとの相性は悪くないっちゃ♪それと…アッチの相性まで載ってるっちゃ…ウチは…情熱的で、ってのは合ってるっちゃねぇ。ダーリンも…積極的…ふーん…で、相性は…あはっ♪バッチリだって書いてあるっちゃ♪確かにダーリン…積極的っていうか…ウチよりすごいかも…だっちゃ。でも恋愛に関しては…古風でロマンチスト〜?マンネリになると他に刺激を求める…これは当たってるっちゃ…。パートナーは適度に突き放した方が、長続きする…。へぇ〜適度に突き放す方がいいのけ。そうすればパートナーの愛情は更に燃え上がるでしょう…」

ラムはそこまで読んで、本を閉じた。

「大体思ってた通りの事が書いてあったけど、適度に突き放す、ねぇ…つまりウチも浮気した方がいいって事なのかなぁ…。でもそれはちょっと無理だから…しばらく知らんぷりするとか…相手にしないとか…。うん、当分エッチはお預け、って冷たくした方が…きっとその後、ダーリン…うふふっ♪」

そしてラムはあたるの部屋へと飛んでいった。部屋に入ると、あたるはむすっとしてマンガを読んでいた。

「ダーリン、何むすっとしてるっちゃ?」

「…ふんっ…」

「あれ?顔腫らして…あぁ、ガールハントで女の子に殴られたのけ!?」

「ラムッ!お前はどーしてそうもストレートに言うんじゃっ!もうちっと遠まわしに言うとかっ!オレを気遣って見て見ぬフリを決め込むとか出来んのかっ!?」

「だってウチは正直者だっちゃ。見たまんましか口にしないっちゃよ」

「あーもー…その正直さ加減が、時と場合によっては、人のカンに触るくらい、わからんのかっ?」

「だったらどーしたらいいっちゃ?ウチにどうやって遠まわしに言えって言うのけ?」

「…お前、何においても、ストレート過ぎるぞ。周りの空気を読める敏感さは無いのか?お前は鈍感かっ!?」

「失礼だっちゃね〜。ウチのどこが鈍感だって言うっちゃ!」

「鈍感だから鈍感だと言うたまでじゃ」

「そういうダーリンは鈍感じゃないのけ?」

「オレは人一倍、デリケートなんじゃっ」

「…よく言うっちゃねぇ、嫌がってる女の子に声掛けて、殴られてるくせに」

「それはそれっ!これはこれじゃっ!…あーもーうるさいわっ」

「ウチにそんな事ばっかり言ってていいのけ?もうすぐホワイト・デーなのに、ダーリン一度も何かくれた事無いっちゃ」

「何で先に勝手にチョコをくれたラムに、何かせにゃならんのじゃ」

「受け取って食べたくせに、何言ってるっちゃ。…それに〜チョコと一緒に…ウチまで…のくせにっ。ダーリンのバカッ」

「…だからお礼を寄越せ、と?」

「嫌なら別に無理にとは言わないっちゃ。その代わり…」

「その代わり?」

「ダーリンを突き放す…じゃなくて、当分エッチは無しっ!だっちゃ。宿題も教えてあげないんだからっ」

「…お前、何かと言うと…それ持ち出すな…うーーーーむ…」

あたるの“脳内打算機”が作動した。“カチカチカチカチッ…チーーーーンッ”

「しょうがあるまい…。しかしお前なぁ…いくら有利な条件持っとるからって…それふたつも持ち出すのは…反則、だろ?」

「反則もロープも無いっちゃよ。ダーリンの方がいつだって悪いんだからっ」

「…で、お返しに何が欲しいんだ?」

「ウチのこと“好き”って言ってくれるだけでいいっちゃ♪」

「だめっ!それだけは、ぜーーーーったいにっ!!言わんっ!!」

「ガマンはカラダに毒だっちゃ」

「ガマンとかではなくっ!オレがこうだと言ったらぜーーーーーーったいにっ!!そうなのっ!!誰がその手に乗るかっ!!」

「それじゃあ、さっきの条件飲むのけ?」

「うっ…それも…。第一ラムだって…ガマンはカラダに毒だぞ?んで、ガマン出来んで…ひとりこっそり…と…」

「えっ…あ、ああ…そ、それは〜〜…」

ラムは“ひとりでこっそり”の行為を、数回あたるに見られていたのだ。あたるにそう言われて、ラムは顔を真っ赤にした。

「だ、だけど〜ダーリンだって…」

「…うっ…いや、だから、そ、それは〜〜…」

そう、あたるも同じく、であった。ふたりはほぼ同時に顔を赤くして、しばらく黙ってしまった。

「と、とにかく、考えておいて欲しいっちゃ。形のあるお返しは…いいから。それじゃあウチ、ちょっとUFOに……ちゃっ!」

ラムが窓を開けて外に出ようとした時、背後からあたるがラムを抱き締めてきた。

「なーんでそう、その言葉にばっかり…こだわるんじゃ…」

「だってぇ…1度でいいから…言ってもらいたいっちゃ…ダーリンのバカ…」

「外から見えるだろ?カーテン引いとけよ…」

「…まだ、明るいのに…ダーリンの、エッチ…」

「あんな条件、出すお前の方が悪いんじゃ…アレを言わんと、エッチも宿題もお預け、っちゅーのは…」

「あはぁっ!い、きなり、そこ、に…手…入れる、なんて…あっ、いやぁ…」

「こういうお返しじゃ…不満か?」

「あっ、あんっ…イッ、イヤじゃ無い、けどっ…でもっ…ひぁんっ!…んっ、ふっ…!」

「…押入れ、入る…か?…狭いけど…」

「ダ、ダーリンが…抱っこ…してって…くれ、たら…あ、あ…」

“ビッ、ビビビッ…”

「は…う、んっ…」

ラムは既に腰砕け状態で、あたるの腕に抱え上げられ、押入れに運ばれた。あたるはラムが寝ている上段にそっと彼女を横たわらせると、自分もひょいっ、と上がって、襖をすーっ、と閉めた。

中から…ごそごそ、ごそごそ…そして時々襖を内側から蹴るような音がする。ふたりの声、特にラムのくぐもった声が…襖の向こう側から、聞こえてくる。

“ビビビッ、パシッ、パシッ、パシィッ…”

細長い小枝のようなスパークが、時々襖を突き抜けてくる。ふたりは時々…押入れでこんな事をしていたので、あたるの部屋の襖には、所々、極小さな焦げ跡が残っていた。

「ダーリ、ン…ずるい…っちゃ…。ウチ、が…ダーリン、を…拒ん、だり…しない、から、って…ウチ、の、条件…何も、飲んで、くれ、ない…なんて…バカッ…」

「これだけで…十分だろ?それとも…これじゃあ、不満…か?」

「すぐ、そういう事…言う…んだからっ…つっ…突き…」

「ツキがどうしたって?」

「1度…突き放さ、ないとっ…ダー、リンばっかり、調子に…乗って…」

「…そんな事、出来んくせに…」

「そんな事、言うんなら…そんなっ、事、言う…ダーリン、なんかっ…」

あたるは少し調子に乗っていたのかもしれない。自分で無いとラムは満足しないし、浮気もしない…そう思っていたから、彼はすっかりラムに対して安心しきっていたのだろう。

ラムは力みながらカラダを捻り、口では先のような事を言いながらも、やはりあたるを拒みきれない。

「だ、め…ダァ、リン…の、バ、カ…ぁぁあぁああぁあぁっ!…あ、ふ…あふっ…あぁっ…!」

…そしていつもより小さな声で、ラムは脱力した。

「何だよ…もう、イッたのか?…」

「ダーリンの、バカ…ウチがイッたんだから…もう、おしまい…だっちゃ…」

「ちょっ…おいっ……どう、したんだよ…」

ラムはゆっくり起き上がった。襖の隙間から差し込んでくる光りに照らされた彼女の顔は…少し怒っているように見えた。

「ホントは怒るつもりじゃなかったけど…ダーリン、いっつも、こういう展開に持っていきたがるから…」

「お前だって嫌じゃないだろ?…それに、オレが…まだ、なんだが…」

「ほら、すぐそうやって…自分の事ばっかり。これで相性がいいなんて…ちょっと疑わしいっちゃ」

「何じゃ、その、相性ってのは…」

「ダーリンとウチの相性、バッチリだって書いてあったのに…」

「…違う、ってゆーのか?」

「…そうじゃないけど…そうは思いたくないけど…。…でもぉ、しょうがないっちゃねぇ、ダーリンは…。だけど…口で…いいけ?」

「…あ、ああ…まぁ…それでも、いいが…」

「…やっぱりダーリン…勝手なんだから…」

そう言うと、ラムは腹這いになり、薄っすら見えるあたるのカラダに頭を近づけ、彼の股間の逸物をそっと握った。手のひらと指で彼の濡れた逸物を軽く擦った後、髪をかき上げ、それを口に含んだ。

“ちゅぷ…”

「んっ…んふぅ…んっ、んっ、んっ…」

「…うっ、ラ、ム…ん…」

“ぬちゅ、くちゅくちゅ…じゅぷ…じゅっぷ、じゅっぷ、じゅっぷ…”

「…うっ…」

「んんっ…んっ…んっ…んぐっ…」

“ごくり…”

ラムは手の甲で口を拭うと、ビキニを身に着け、襖を開けて押入れから出ていった。ラムが出ていった側とは逆の襖を開けたあたるが部屋を見ると、ラムは窓を開けて外に飛んでいった後だった。

「…ラムのやつ、一体何が気に入らんかった、と言うんじゃ…ったく、アイツの考えとる事は…ようわからんわ…」


「ダーリンとウチの相性…ホントに、いいのかなぁ…エッチの…カラダの、相性がいいのは…わかってたけど…でも…何だか気持ちがすっきりしないっちゃ…。気持ちの相性が悪かったら…」

UFOに戻ったラムは、敷物に寝そべってころころ転がってそんな事を言っていた。

「…気持ちの相性が合わなくて…心がすれ違ってばっかりいたら…ウチとダーリン、ずーっと一緒になんて…。もうっ、ダーリンの…バ、カ…」

ラムは少しうとうとしかけていた。と、その時、誰かから通信が入った。眠い目を擦りながら、通信モニターの前に座ったラム。スイッチをONにすると。

「ラ〜ムちゃん♪うふっ」

「あ、ああ、ランちゃん」

「今お暇かしら〜?ちょうど美味しいケーキ焼いたから、ラムちゃんに声掛けようと思って連絡してみたの〜♪今からどうかしら?」

「う、うん、それじゃあ今から遊びに行くっちゃ。あ、ウチ特製のタバスコジュース、お土産に…」

「アホッ!誰がラムのごっつ辛いもんいる言うたんじゃっ!おんどれは手ぶらで上等じゃっ!…って事で、ケーキとお茶用意して待ってるわね〜♪」

“ブツッ…”

通信をOFFにすると、ラムは一気にげんなりした顔になった。

「ふぅ〜、ランちゃんに余計な事言うと、何言い返されるかわからんちゃ…これだけでもう、疲れてきたっちゃ〜。かと言って断ったりしたら…ずーーーっと、何十年経っても、“おんどりゃ、せっかくワシがケーキご馳走したったる言うたのに、何であん時来んかったんじゃ!?”って言われるに決まってるっちゃ…。さて、早速行ってこなくっちゃ…」

そしてラムがランのUFOへ行くと、ランは至極ご機嫌で、終始にこやかにお茶を振舞ってくれた。

(ランちゃんがこんなにご機嫌なんて、レイと何かあったのかなぁ…。でも気を付けないと、いつ何がきっかけで…って事もじゅ〜ぶんっ、有り得るっちゃ…)
「やっぱりランちゃん、上手だっちゃね〜、そのうちレイとお店でも開いたらいいのに」

「あら、そう〜?やっぱりそう思う〜?やっぱりラムちゃん友達ね〜♪レイさんと…だなんてっ♪ランちゃん嬉しいっ♪」

まるでセリフ全体が「♪」のオンパレード状態である。ランは特別に、ラムの口に合うような辛味の効いたクッキーも焼いて用意していてくれた。

「あれ、珍しいっちゃね、ウチの口に合うクッキー…もしかして、わざわざ?」

「そ〜よ〜。ラムちゃんのお口に合うように、と思って…味見するのは大変だったけどぉ、どうかしら?美味しいかしら?」

「うん、すっごく美味しいっちゃ♪」

「そう、良かった〜♪うふっ♪ランちゃん嬉しいっ♪」

「ところで今日はレイとデートの予定は無いのけ?いつもなら午後はレイとデートしてるのに」

「もちろんこれからデート…なの。その前にいっぱいケーキ作っちゃったから、ラムちゃん呼んでみたわけ」

「これから…って、もう夜になるっちゃよ?」

「明日、お休みでしょ?で、夜から…って言ったら…わかるでしょ?」

「何が?」

「何が…って…ラム、おんどりゃ気付いてて、話逸らそう思とるんと違うんか?」

「そ、そんな事無いっちゃよっ(あちゃ〜、やっぱり…。ランちゃんのカンに触るような事、ウチ何か言ったんだっちゃ〜)」

「そうか、読めたで、ラム〜。ワシんとこノコノコ遊び来て、レイさんの様子聞こう思とるんやろ?そんでヨリ戻そうとか何とか…ワシの知らんとこで何するつもりか知らんけどなぁ、もしそんな事してみぃっ!ラムッ!おんどれとは一生絶交じゃっ!」

「えっ、だ、だから〜…あ、もしかして夜からデートで、明日お休み、って事は…そういう事なのけ?レイと?」

「…やっとわかったんかいっ。相変わらず鈍感やの〜、ラムはっ」

(ダーリンと同じ事言って、ウチってそんなに鈍感なのかなぁ…)
「ど、鈍感かどうかは置いといてっ。おめでとうっ!ランちゃん♪これでレイとの将来が決まったも同然だっちゃね(ふぅ〜…)」

「うふっ…でね、レイさんたら…きゃんっ♪ランちゃん恥ずかしいっ♪」

「…で、どこまで…なのけ?」

ふたりきりだというのに、ラムはランに顔を寄せて、こそっ、と聞いてみた。

「どこまで…って、やだぁ、ラムちゃんたらぁ〜♪…聞きたい?どーしても?」

「う、うん、まぁ、ね…」

という次第で…ラムはランの、“レイとの初体験”…今度は本当の初体験の話を、ランがもじもじしたり、照れたりして、なかなか進まないその話を、最後まで聞かされるハメになったのだった。

「…っていう感じで…ね…ランちゃん、本当に…嬉しくて…幸せ〜♪って思ったの…ぐすんっ」

「あ、ランちゃん、泣かないで…ね?」

「だって、ずーーーと、ラムちゃんばっかり追いかけてたのに、よ?このアタシを選んでくれて…本当に、嬉しかったんだもの…」

「本当に、おめでとう、ランちゃん…。あっ、もうこんな時間け!?」

「あら、いけないっ!レイさんとの約束に遅れちゃう!デートに持っていくケーキはもう用意してあるから、後は亜空間に行くだけだけど…そうそう、今日のポイント探さなくちゃ」

ランはモニター前に座ると、今夜亜空間に繋がっているポイントをいくつかチェックした。

「今夜はここと、ここと…ここ、の3箇所ね。…って、おい、ラム…この場所、もしかして…」

「ああ、そこダーリンのとこだっちゃね。拡大してみたら?」

「誰がおんどれのいるとこに行く、っちゅーたんじゃっ。他を当たってみるわいっ」

「…だけどあとの2箇所って、道路のど真ん中と、大きなビルが建ってる場所じゃないのけ?ウチのとこ使ったらいいっちゃよ、今日はいっぱいご馳走になったんだし」

「…あんま気は進まんけどな…しゃーないな。ラム、ぜーーーったい!ワシとレイさんのいるとこ邪魔しに来たりせぇへんやろなぁ?」

「何でウチが…ダーリンなら…有り得るかもしれないけど…ウチがしっかり押さえとくから心配しなくていいっちゃよ」

「そんならまぁ…そうするか…」

そしてランはケーキがたっぷり入ったバスケットを携え、ラムと一緒に諸星家へとやってきた。夜遅くなっても帰ってこないラムに、大分イライラしていたあたるだったが、ランの顔を見た途端、ころっと態度を変えた。…いつもの事であるが。

「ランちゃん、いらっしゃ〜い♪こんな夜遅くにボクに会いに来てくれるなんて〜♪」

「誰が好き好んでこんなとこに来た、思てるんじゃっ。ちょっと邪魔するでっ」

そしてランは2階にずんずん上がっていくと、押入れの襖をガラッ、と開けた。

「…おい、ラム…」

「…あっ…」

そしてランはラムの耳元でこそっと言った。

「お前、何ちゅー無神経なやっちゃ。アレの後ならちゃんとスプレー撒くなり後始末くらいしとけっ、入りにくうてしゃーないわっ」

とか何とか言いながら、ランは押入れの下段に入っている荷物をぽいぽいと放り出すと、その奥にあった空間の歪みに入っていった。

「…あっ、ランちゃ〜ん!ボクもお供しまーっす!」

「ちょっと待つっちゃ!ダーリンッ!」

「…何じゃ、ラムッ、オレは今ランちゃんを追いかけようとして急いでるんだがっ」

「…ダーリン、消臭スプレーの置き場所教えといたでしょ?何で後始末くらいしといてくれなかったっちゃ!」

「誰か来て押入れのぞくなんぞ、オレは思わなかったからなっ。オレはしっかり風呂入っといたが…それより、アレだ…何だよ、さっきの態度はっ」

「さっきの、って…」

「お前、何だか知らんが、怒っとっただろ?オレにはラムが怒る理由がイマイチ…いや、まったく!わからんっ!」

「だから、ダーリンばっかり勝手な事言ったりしたりするから、怒ってたっちゃ!」

「…いつもとそう変わらんだろうが…オレの言う事にイチイチ腹立ててたら…身が持たんぞ?」

「それじゃあ、さっきの条件は?無しって事?…しょうがないっちゃね…それじゃあ明日、ウチとデートする事っ!そしたらウチからの条件は無しにしてあげるっちゃ」

「デェトォ〜〜?明日?」

「嫌なのけ?ウチとデートするの」

「…まぁ、さっきの条件よりかは…マシ、と言えばマシだが…デートねぇ…」

「まだ何かあるのけ?」

「いっつも一緒にいて、外でなしてラムとデェトせにゃならんのじゃ」

「たまには外で、普通の恋人同士みたいにお茶飲んだり映画観たりしたいっちゃよ」

「…いつもベッタリくっついてくるくせに…オレが嫌だと言っても、ベッタリ、と、な…」

「…くすっ…ホントは嬉しいくせにっ」

「…誰がじゃ、誰がっ」

「ねぇ、ダーリン、今夜はあんまり寒くないから、ほら、夏の残りの花火、取っておいたでしょ?」

「今からか?それに夏の花火は夏やるもんだぞ?しかももう、しけっとるわ、絶対」

「ウチが乾燥剤と一緒にしまっておいたから、多分大丈夫だっちゃ。縁側でやろ、ね?ダーリン」

「まぁ寝るには、まだ早いしな…それに…」

「うん?」

「こーゆー事するのも…まだ、早いだろ?時間的に」

「あんっ、もう…ダーリンくすぐったいっちゃ…ふふっ」

“チュパッ…”

ふたりは軽い“フレンチ・キッス”をした。そしてラムはランが押入れから放り出した荷物を適当に片付け始めた。その中から夏の残りの花火を探し出して、階下の縁側に出ると、ふたりは並んで線香花火に火を着けた。

「寒くないけ?ダーリン」

「ラムは…まぁ、大丈夫か」

「やっぱり乾燥剤一緒に入れておいたから、まだ出来るっちゃね、花火」

「ああ、そうだな…」

「ほら、ダーリン、おっきな火の玉が…あっ、落ちたっちゃ…」

「線香花火っちゅーのは、そういうもんじゃ」

「ねぇ、ダーリン」

「何だ?」

「ウチがたまに縁側でひとりで日向ぼっことかしてると、いつの間にか隣に来て…座ったりしてるでしょ?どうして?」

「ん?いや…何と無くな、何と無く。他にする事ないしな」

「ふふっ…ウチはそういうダーリン、優しくて好きだっちゃ…」

「あんまそういう恥ずかしい事は、滅多な事で口にするもんじゃない、っちゅーに」

「恥ずかしいのけ?ダーリンは?」

「…ご想像にお任せします…」

「ちょっと寒いけど…あったかいっちゃね、ダーリン」

「…ん…ああ、まぁ、そうだな…花火のせいかな…」

ふたりはヒマな時間があると、時々こうして、縁側に並んで座って過ごす事もあった。どちらかが先に座っているところへ、もうひとりがやってきて、黙って腰を下ろしたり、ふたり揃って出てくる事もあった。
暖かな午後、ふたりはただ黙って、そんな風に時間を過ごす事がある。心地いいというか、リラックス出来る、というか、太陽が出ていない夜の時間でも、ふたり並んでそうやって過ごすだけで、互いに心や体がほんのり温まってくるような感じがするのだ。

「残りがあれだけだったから、もうおしまいだっちゃね。そろそろ部屋に戻るけ?ウチはお風呂に入ってくるけど」

「ああ、そうだな…」

そしてふたりは階段の下で周りを見て、誰もいない事を確かめると、会話の続きをした。

「それより押入れの中、スプレー撒いておいて欲しいっちゃ、ダーリン」

「あー、わかったわかりましたよっ」

そして階段の影に隠れて…の、軽いキッス。そしてラムは風呂に行き、あたるは部屋に戻った。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…はっ、はっ、はっ、はっ…あぁっ!はぁっ!」

ふたりは狭くて暗い押入れの中で、しっぽり、ねっとりと…抱き合っていた。ラムの声が反響して、いつもより大きく聞こえる。互いの匂いが充満して、いつもより濃厚な情交の香りに包まれる。カプセル化されたようなそんな空間で、ふたりは相手だけが今現実にいる唯一の存在、のような気すらしていた。

「あぁっ!んっ!あぁっ!んっ!あぁんっ!あぁんっ!!あぁんっ!!」

いつもより大きく聞こえるラムの悶え声が、あたるをより一層興奮させ、よりパワフルに、ラムの奥へ奥へと自身を送り込む。

「す、すごいっちゃぁ…ダーリン…すっごい…あぁっ…!すご、すぎ、てっ…あはぁぁぁっ!!」

騎乗位で悶えていたラムは、胸先が天井を向くほどカラダを仰け反らせた。
ラムの腰を抑えて、下方から突き上げるあたる。ラムはもう、自身でカラダを動かす、というより、あたるによって揺さぶられていた。

「すご、く、て…もう…イッ、ちゃう、う…イッちゃ、う、ぅ、ぅ…っ!!」

“ちゅばっ…”

ふたりして達した後、ラムはあたるにディープ・キスを贈った。

「はぁ、はぁ、はぁ…すっごく…良かったっちゃ…ダーリン…」

ラムは篭った熱に酔ったのか、ゆっくりカラダを崩していった。

行為の後。ふたり並ぶといっぱいいっぱいの押入れ内で、あたるとラムはぴったり密着して抱き合い、横になっていた。本当に小さなひそひそ声で話すふたり。

「こうしてると…ダーリンとふたりっきりだけの世界みたいだっちゃ…」

「アホぬかすな。こんなとこにずーっとおったら退屈で死んでしまうわ」

「ダーリンはウチとふたりっきりじゃ、確かに退屈しそうだっちゃねぇ。エネルギー有り余ってるし」

「お前だってつまらんだろ?空も飛べんのだぞ?タバスコも飲めんのだぞ?」

「たまにだから…こうしてるのが、すっごく気持ちいいっちゃ…」

ラムはそこまで言うと、少しずつうつらうつらしてきたようだ。やがて静かな寝息を立てて、あたるの腕の中で眠ってしまった。時々寝ぼけて、パリパリと放電しながら。その姿は、本当に安心しきって彼に全てを任せている風だった。

あたるは自分の胸に頭を預け、すやすやと眠っているラムの頭に手をやり、髪をそっと撫でたり、きゅっと軽く抱き締めたりしながら、彼女の体温と吐息を感じていた。

「放電したり、空飛べるからって…それだけで強い、ってわけじゃないんだろうなぁ…。ラムってこんなに細かったかな…胸は…デカいけどな…」

そしてあたるも直に、心地良い眠りの中へと入っていった。

=================================

「…ダーリン、ダーリンッ、ダーリンッ!!」

“バンッ!”

「…へ…?」

「今日デートするんじゃなかったのけっ?」

「…うーむ…?」

押入れの中でむっくり起き上がったあたる。腰まで掛け布団で覆い、頭をボリボリ掻きながら、まだ半分寝ぼけているようだった。

「…ああっ、そうじゃ…ほれ、近う寄れ、遠慮せんでもいいぞ…」

「んもう、寝ぼけてウチを誰だと思ってるのけ?」

「オレがまとめて…面倒見ちゃるから…な?しのぶに〜、竜ちゃ〜ん、サクラさ〜ん、了子ちゃ〜ん…」

「う、う、うぅっ!ウチの名前はっ!?ウチとした夕べの事はっ!?どうして他の女の名前なんか呼ぶっちゃーーーーっ!!」

…そしてあたるは布団ごと、黒コゲにされた。

「どうけ?ちょっとは目、覚めたけっ!?」

「いきなり電撃を目覚まし代わりにする事はなかろーがっ!!」

「寝ぼけて他の女の名前なんか呼んでるからだっちゃ!自業自得だっちゃ!!」

「しかし…アレだな…デートは行くが…お前、たまには…」

そしてあたるは、デートに行く条件を…いや、この場合は“要望”と言った方がいいだろう。ラムにある(ほぼ強引な)提案をしてきた。

「な〜んで、ウチが…。それにデートしてくれたら、エッチ無しと宿題教えないっていう条件を無しにする、って言ったのは、ウチの方だっちゃ。何でダーリンの要望なんか聞かなくちゃならないっちゃ」

「ラムはふたつ交換条件出してきただろ?だったらオレもふたつ条件、というか要望をひとつ出させてもらわんと、公平ではないではないかっ」

「…な〜んか、ダーリンに有利な気がするけど…」

「ほれほれ、あんま細かい事は考えんと。時間無くなるだろ?」

「んもうっ、しょうがないっちゃねぇ…わかったっちゃ。それじゃあウチはUFOで用意して〜いつもの公園で待ってるっちゃ。ダーリンッ、遅れたりしたら、デート終わってから電撃リンチだっちゃよ!?わかってるのけっ!?」

「へーへーわかりましたよ、遅れなきゃいいんだろ?ラムこそ準備に手間取って遅れるなよな」

そしてラムはUFOへ行き、あたるは簡単に風呂に入ってからそれなりの格好をして、公園に向かった。…もちろん途中で女の子に声を掛けるのは、忘れない。

「ねぇ〜君〜♪一緒にお茶飲まない?」

「住所と電話番号教えて♪」

…といった具合である。

そんな余計な事をしていれば、時間などあっと言う間に経ってしまう。あたるが時計を見ると、ラムとの待ち合わせ時間をとうに過ぎていた。

「うーむ、10分の遅刻か…。あ、そこのお嬢さ〜ん♪一緒にお茶飲まな〜い?」

その頃公園のラムは。

「やっぱりダーリンをちょっとでも信用したウチがバカだったっちゃ!どーせまたガールハントしてるに決まってるんだからっ!」

と、プリプリ怒りながら待っていると。

「ね〜彼女ひとり〜?ヒマだったらちょっとお茶でも付き合ってよ〜」

と、いかにもナンパそうな若者がふたり、ラムに声を掛けてきた。

「あいにくウチは、これからデートだっちゃ!さっさとアッチ行くっちゃ」

「だってさっきからもう30分以上もここにいるじゃんよ〜」

「ウチが早く来過ぎただけだっちゃっ!」

「彼氏が来るなんてウソで、ナンパされるの待ってたんじゃないの〜?」

ナンパな若者ふたりは、ラムを両側から挟みこむように囲むと、両腕を掴んで、無理矢理連れていこうとした。

「何するっちゃ!離すっちゃ!…んも〜、こーなったら〜っ!」

ラムが電撃を出そうとした、その時だった。

「あっ、ダーリンッ!もうっ、遅いんだからっ!」

「あれが…彼、氏?」

「そうだっちゃ」

「…女の考える事ってよくわかんねーよなぁ…行くか?」

「ああ…」

何故かふたりは、あたるを見た途端、拍子抜けでもしたのか、ラムの腕を離し、おとなしく去っていった。

「ダーリンが遅いから、変なのに絡まれたっちゃ!バカッ」

「電撃でもかませばよかったんじゃ」

「電撃禁止じゃなかったのけ?でも頭にきたからあのふたりに電撃お見舞いするとこだったっちゃよ」

「あ、そ…」

「自分で言っておいて、何、とぼけてるっちゃ。それに30分以上遅刻だっちゃ!どーせまた、ガールハントしてたんでしょ?あと5分して来なかったら、ウチ帰ろうと思ってたとこだっちゃ!」

「…せっかくそこまでバッチリ準備したのに…か?」

「だぁ〜って、ダーリンのリクエストだもん…うーんと頑張ってみたっちゃ。どう?」

「(ラムは変装すると、また可愛いんだよなぁ…)…んな事より、腹減らないか?」

「ウチの質問に答えてないっちゃ!どうなのけ?この格好はっ!?」

「別に服とデートするわけじゃない、っちゅーに。とにかくどっかで飯食うぞ」

「…んもうっ、ダーリンのバカッ…」

この日のラムは、あたるからの“たまには地球人の格好してこい”という要望で、コスプレ…というわけではないが、地球人風に扮装してデートにやってきたのだ。

「そんなカッコで寒くないんか?」

「いつもビキニなんだもん。ショートパンツくらいどーって事無いっちゃよ」

ラムがどのような格好かは、各々のご想像にお任せするとして。ふたりが街を歩くと、大体の男たちは振り返ってラムを見た。

(ふっふっふっ…世の男ども、羨ましかろうが…)

あたるはそんなラムと腕を組んで歩いている事で、優越感に浸っていた。そして軽く食事をし、お茶を飲んで、最後に映画を観、その日のデートは陽もとっぷり暮れた頃、ようやく終わった。
ふたりして帰路に就く。ラムは1日、放電も飛行もしなかった。そんな彼女をちらりと見ながら、あたるは思った。

(もしラムが宇宙人だとしても、何の能力も無かったとしたら、今日みたいな感じだろうなぁ…男に絡まれたり…とか、男の視線浴びたりとか…うーーーむ、変装させて、果たして正解だったものか、どーか…)

「…ウチの顔に何か付いてるのけ?」

「えっ、いや…さぁ〜て、後は風呂入って寝るだけか…」

「宿題は?」

「…あっ、そういえば…今からやるのか?宿題…」

「ウチが教えてあげるんだから、すぐに終わるっちゃよ」

「…すぐに終わらせて…後は?」

「明日学校だから…UFOに、行く?」

街灯の光りが届かないうす暗がりで、ラムがぱたりと歩みを止めた。釣られて止まったあたるは、ラムの顔を改めて見た。すると彼女の目が少し潤んでいるように…見えた。

「何だかんだ言っても、今日のダーリン、いつもより優しかったっちゃ…ウチ、嬉しかったっちゃ…。またこんな風に変装したら、優しくしてくれる?」

「…嬉しかったのか?オレはその…いつもとそう変わらんつもりで…おったが…」

「鬼族で長年地球にいた前例は今まで無いからわからないけど、もし、ウチの超能力が無くなったら…いつでも優しくしてくれる?」

「超能力が無くなったら?…ラム、お前もしかして…力が弱くなってるとか…」

「今は全然そんな事無いっちゃよ。もしも、の話。もしウチが空も飛べなくなって、電撃もうんと弱くなったら…」

「…それじゃあ、フツーだよなぁ…」

「ねぇ、もしウチがフツーになったら…いつでもダーリン、ウチの事…守ってくれる?」

「今はそうじゃないだろ。…まぁ、そうなったらそうなったで…考えとく…」

「素直に“守ってやるぞ”とか言えばいいのに。意地っ張り」

「…そういう事は黙ってするのが、男、っちゅーもんじゃ…」

「ウチが縁側とか庭にいると、ダーリンいつの間にかそこにいるでしょ?…ウチが心配?目の届くとこにいた方がいいのけ?」

「…気のせいじゃ、気のせい。あるいは偶然じゃ」

あたるはあくまで、ラムの言葉の逆、逆を言って、素直に“そうだ”と言わない。が、ラムの話を聞いていて、あたるは改めて自分の行動を思い返してみた。

(何ちゅーか、こう、目の届くとこにいるだけで…安心する、っちゅーか…リラックス出来る、っちゅーか…。傍に…おらんと…何となく…な…。もしラムがフツーになったら…もっと落ち着かんかも、しれんよなぁ…。“守って欲しい”…か…。結構…可愛い事、言うよなぁ…)

そしてラムは、あたるに軽く抱き着き、息がかかるほど顔を近づけて、言った。

「ウチもダーリンの事、ずーーーっと守ってあげるから…ダーリンも、ずーーーっと、ウチの事…守ってくれる?」

(うっ、い、いかん…こいつ目ぇ潤ませて…何ちゅー事を言うんじゃっ…も、もうっ…アカン…)
「…オレを守る、ったって、どーやって?電撃とかで、か?だったらオレは電撃も飛行能力も無いぞ?」

「ウチみたいに超能力無くたって…ダーリン、十分今までウチの事守ってくれたでしょ?今までと同じで…いいっちゃ…」

そう言われたあたるは、何故かほっとしていた。“今までと同じでいい”という言葉が…そう言ってくれるラムが、愛しくて…たまらない、と思った。
そしてふたりは…人気の有る無しお構いなしに…薄暗がりの中で、密やかなキスの味を…分け合っていた。


「やっぱいつものラムが…いいから、もうその変装、解いてもいいぞ」

「そうけ?このままじゃなくてもいいのけ?」

「何かこう…ラムとやっとる、という気が…しなくなりそうだから…」

「珍しいっちゃねぇ、他の女にちょっかい出してばっかりなのに…」

「…そういう気分の時も、あるわっ」

そしてラムはUFOのバスルームで変装をすっかり落とし、ベッドのあたるの隣に戻ってきた。

白い上掛けの中に腹這いで潜り込んだラムは、肘を着いて頭を起こしている。横で寝そべっているあたるは、ラムの背中から下を覆っている上掛けをパサリとめくって、染みひとつないきれいで滑らかな背中に、指先を這わせだした。
ラムは自分の背のスロープを軽いタッチで滑っていく、あたるの手の動きがくすぐったいのだろう。くすくす笑いながら、じゃれるようにその手をどけようとしたり、彼と軽いキッスを繰り返したりした。

「ダーリンのバカ…くすぐったいっちゃ…くすくすっ…あんっ、そんなにふざけたりしたら…イヤだっちゃ、もうっ…」

「高校生のうちからこんな事やってばっかで…まさか、ラムが来たばっかの時は、こーなるとは思ってなかったからなぁ…お前、早熟だろ?」

「その早熟のウチとこーんな事ばっかりしてるダーリンだって…すごいっちゃ。すっごくエッチで…すっごく…上手で…。それに鬼族は早熟だから、ほら、ウチの胸だって…大きいでしょ?」

「うーむ、この“たわわ”な感じが、何ともまた…」

“むにっ”

「うーーーーむ、やはりこの掴み心地は、10代にしては、罪じゃな…」

「だけど今更小さくならないっちゃよ?それとも小さい方がいいのけ?ダーリンは」

「いやっ、そうは言っとらんっ!こっ、この手のひらに収まりきらず、尚且つ重力にも負けないラムの胸は…一体どうなっておるんじゃ…っちゅーわけで今から検証しちゃるっ!」

「何バカな事言ってるっちゃ。検証って…ちゃっ!」

あたるはラムを仰向けにさせると、上から顔をのぞきこんで、早速“検証作業”に入った。

「…単体試験も大事だが…各機能の結合、総合試験、で…しっかり検証しちゃる…」

“ちゅっ、ちゅばっ…”

「…キス、の方は…どうけ?」

「十分、OKじゃ…」

「…検証の、実施者と…監督…は?」

「もちろん、オレと、ラム…だろ?それ以外に誰が、おると言うんじゃ…」

「ウチらの…エッチ、を…ウチとダーリンで、検証するなんて…変だっちゃ…くすっ…」

“ぬるり…くちゅっ…くちゅう…ちゅぶ…ねちょ…ねちっ…ねちっ…ぬちっ…”

胸を合わせ、カラダを熱くして、ディープ・キスに没頭するふたり。夢中になると口角から唾液が零れるのもお構い無しに、ふたりは濃密なくちづけを続ける。その間に理性が薄まり、カラダだけが相手を欲して、勝手に動く。

ラムは感じるままに、口内からあたるの口内へと、電気を流した。すると…。

「んふっ、んぐっ…!」

あたるの口内からラムの放電が、逆流してきたのだ。

「んっ、んんんんっ!んーーーっ!」

ラムは口内を隈なく痺れさせ、のどを通り抜けて内臓を痺れさせてくる電流で、全身をピクピクと震わせていた。

“ピクンッ”

彼女の桃紅色の乳先が、ツンと尖った。いつもと違う展開に、ラムは少々戸惑っているようだ。あたるの胸に手を当て、彼を軽く押しやり、深くて濃いキスを解くと、あたるに向かって問い掛けた。

「…どうして…ダーリンの、方からも…電気が…。まるで、放電した、みたいに…ウチのカラダのナカに…流れて、きたっちゃ…」

「ん?ああ、これこれ、これでじゃ」

あたるは怪訝そうな顔をしているラムに、舌を“ベーッ”と出して、その表面を見せた。舌の表面の中央あたりに、1センチ四方で銀色のものが貼り付いている。厚みはほとんど無いので、舌と一体になっている、といってもいいかもしれない。

「まさかまた…お雪ちゃんからもらった、とか…」

「その通りじゃ♪使いきりタイプの“蓄電シール”だそうじゃ。お雪さんとこの技術屋とかが、作ったもんらしいけどな。10枚1シートで、今試験中なんだと。で、オレにモニターをして欲しい、と…この間、な」

「もしかしてダーリン…舌の他にも、どこかに…」

「おっ、よくわかったなぁ〜♪ま、どこに貼ったかは…この続きをしてみての…お楽しみ、っちゅー事で…」

「それならそう、って言ってくれないと…ウチ、びっくりしたっちゃ」

「そうなのか?オレはてっきり悦ぶもんとばかり…」

「だって放電出来ないダーリンから放電されてきたら、驚くっちゃよ。それくらいわからないのけ?」

「ま、今のでわかったろ?っちゅー事で…続き、続きっ♪」

「…ダーリン、気楽過ぎるっちゃ…」

そう、ラムは薄々勘付いていた。あたるが他にシールを貼る場所と言ったら…大体想像がつきそうなものである。
そしてあたるは、正常位でラムに挿入すべく、彼女の陰部をたっぷり濡らして準備万端にし、さていよいよ、というところまできた。そこにラムが口を挟んできたのだ。

「ダ、ダーリン…もしかして…さっきの、シール…他に貼ってる、って…言って、たけど…まさか…」

「…イヤ、なのか?」

「…そう、じゃ、無いけど…ウチ、どうなっちゃうのか…よく、わからないから…。ねぇ…もしウチに、何かあっても…絶対、守ってくれる?ダーリン…」

「大丈夫だって、心配するなよ…。いつもだって、たまにラムの電気が逆流する事、あっただろ?」

「うん…」

ラムは少し不安げな表情で、目を潤ませ、あたるを見つめている。思わず“ドキリ”とするあたる。

「…大丈夫だって。何も無いから心配するなって…な?」

「うん…ダーリンが、そう言うなら…」

そして、挿入しながら、あたるが言葉を掛けてきた。

「…違和感、無い、だろ?」

「う、うん…」

(相変わらず…いいっ、具合にっ、締まって…くっ…)

“ぬ、ぬ、ぬ…ぬちっ、ぬちっ…”

ラムの肉のつぼみが、あたるの肉の茎によって、開かれていく。最初は入り口付近で浅い交合を続ける、ふたり。膣口を内外に擦り、肉茎が時々ラムのGスポットをかすめる。

「浅い、けどっ…あ、んっ…気持ち、いいっ、っちゃ…あ、あ…ダァ、リン…」

“パリパリパリ…”

四方八方に、ラムの感度に合わせて飛び散るスパーク。それがあたるのカラダ…逸物をも、存分に痺れさせている。

「あぁっ、あぁんっ!」

“パシィッ…パシッ、パシッ、パシッ…”

線香花火の火の玉が水の中に落ちる時の音に似た、ラムの放電。熱が一気に冷やされ、火が消える時のような…寂しく乾いた音がする。
と、ラムのカラダの中に…微かな振動が伝わってきた。

“ジジジッ…ビビッ…ビビビッ…”

「あはぁっ!いやぁっ!ウチ、の、そこっ…いっぱい、いっぱい…感じ、てっ…あぁんっ…だめっ、だめぇ…!」

あたるの股間から送られてくる、蓄電による弱いパルス。それがラムのつぼみとそのすぐ内側を、細かく振動させていたのだ。

「あはんっ、かっ、感じっ、ちゃうっ…!」

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ…」

「あぁっ…ダーリン、ダーリン…ダーリンッ…ダァ、リン…。もう、ウチ…イキ、そう…は、あ、あ…ぁ…」

“ビビビビビッ、ヴヴヴヴヴッ…”

ねっとりした蜜を絡めた逸物は、放電のパルスを発しながら、少しくぐもったような音を立てている。そしてあたるはそこから一気に攻勢を激しくしてきた。

“ヴヴヴヴヴヴヴッ…ヴヴヴヴッ…”

「ひぁあぁんっ!まっ、真っ白、にっ…ああぁぁっ…だ、め…ウ、チ…イッ、ちゃ…う…」

そしてカラダをひくつかせたラムだったが、一旦イクと、彼女の蜜の量が更に増えた。

“ぐじゅじゅじゅじゅっ…ぶじゅじゅじゅじゅっ…”

「ダァ、リン…が…白く、なって…あ、あ、あ…あ、ぁ、あ、あ…ぁ…」

“パリパリパリパリ…ヴゥゥゥゥーーーンッ…ビビビビッ!”

「ちゃあぁぁぁーーーーっ!!ダーリンッ、ダーリンッ、ダーリーーーンッ!!」

「…ラ…ムッ…うっ…」

“ひくっ、ひくっ、ひくぅっ…”

ラムはこれ以上無いほどのアクメに達したのだろう。ぐったりしたまま、カラダをびくんっ、びくんっ、ぴくぴくっ、と痙攣のように大きく小さく爆ぜさせている。
そして彼女は、少しの間、目を閉じてぐったりしたままだった。


「ダーリンのバカァ…やっぱりお雪ちゃんからもらうもの…タダでくれるものは、そうそう気安く使うもんじゃないっちゃよっ!」

「だってせっかくタダでくれたんだし、お雪さんの好意を無駄にしたら…」

「ダーリンはホンットに、女に甘いんだからっ!そのうち詐欺に遭っても知らないっちゃよっ!とにかくお雪ちゃんが“タダでくれる”段階で疑ってみないとっ!…友達だけど、昔っからお金にはうーんとシビアだから…」

「…だけど、実際どうだったんだ?アレは…」

「えっ…どう、って…う、うん…」

「良くなかったのか?もしかして…」

「…その逆だっちゃ…でもぉ…もう、こんなもの使わない方が、いいっちゃよ…ウチ、頭が真っ白になって…記憶が飛んじゃったんだもん…」

「そうかっ!そのくらいすごかったというワケかっ!そうかそうかっ♪」

「…何気楽に喜んでるっちゃ…ダーリンが良くたって…ウチも良かったけど…もう、変な小道具使うのは…当分、やめとくっちゃよ?」

「しかしあのシール、まだ10シートほど残っておるんだが…」

「なっ、何でそんなに大量にもらってくるっちゃーーーーっ!バカーーーーッ!!」

例の“蓄電シール”を剥がされたあたるは、ラムの電撃で、真っ黒コゲにされた。

「ダーリン、ウチが頭真っ白、って言っても…ちっとも気にしてくれなかったし…もし何かあったらどうするつもりだったのけっ!?ホントに何かあったら守ってくれたのけっ!?」

「し、しかしなぁ…これは、結構…使えると思うんだが…だろ?」

「そりゃ、そうかも…しれない、けどぉ…。ねぇ…ダーリン…」

「何だ?まだ…物足りんのかっ!?」

「違うっちゃ!そうじゃなくて、もしウチとダーリンが、地球人と宇宙人の立場が逆だったとしたら…どうだったと思う?上手くいってたと思うけ?」

「何じゃ、出し抜けに」

「さっきみたいにダーリンが放電してると、ウチ、あんまり放電出来なかったから…だから、もし逆の立場だったら、上手くやっていけてたのかなぁ、と思って」

「…オレの電撃にメロメロッ!という事で、上手くいってたんじゃないのか?」

「普通の地球人は、耐電性なんか無いっちゃよ?」

「ま、とにかく深くて小難しい事を考えても、しゃーないだろ?上手くいってただろ?多分」

「それもいつもの“根拠の無い自信”なのけ?ダーリンの」

「根拠はしっかりっ!あるぞっ!オレがラムの持ってくる妙なもん使ってばかりおっても、結果は悪くなかっただろ?今まで。だから平気っ!大丈夫じゃっ!!」

「…それじゃあ説得力に欠けるっちゃねぇ…。でも、ま、いいかっ。うふっ♪」

そして翌日になった。ところがラムもあたるも予想だにしなかった事が起きたのだ。

「うんしょ、うんしょ…もう、ちっとも高く飛べないっちゃ!」

「どーしたんだよ?」

「ダーリンちょっと手、出してみて?」

そしてラムはあたるの手を握ると、顔を思い切り赤くして、放電してみせた。が、懸命に出しているらしい事はわかるのだが、あたるには“ピリピリ”とした弱い刺激しか伝わってこない。

「…どーゆーこっちゃ…」

「今朝からこんな感じで…。空もうまく飛べないし…」

「…昨日の…その、後遺症…みたいなもんか?」

「さぁ…?」

「そうか…ラムが電撃も出せん、空も飛べん、という事になれば、オレのやる事はひとつっ!ガァルハントじゃあぁぁぁーーーっ!!」

あたるはぶっ壊れたような笑い声を立ててそう叫ぶと、放課後の学校から走って帰ろうとした。と、その彼をラムが大声でこう呼び止めた。

「ウチはーーーっ!今非力なフツーの女の子だっちゃーーーっ!そんなウチを放って帰るのけっ!?ダーリンの薄情者ーーーっ!!」

「…うっ…そ、そうじゃった…」

そしてあたる、ラムの元にすごすごと戻ってきた。

「ウチを守ってくれるんじゃなかったのけ?いつ回復するかわからないんだから、当分は…ウチの事、守ってもらわなくちゃ♪」

「お前なら大丈夫だろ?そんなに心配せんでもっ」

「だったらまた、地球人に変装して〜公園に行こうかなぁ〜♪変な男に絡まれたり、大勢の男の視線に晒されたりして…それでもいいんなら、ウチを放ってガールハントでも何でもしたらいいっちゃ」

「…ったく、しょーがねーなぁ…。超能力使えない間だけだからなっ!?くれぐれも言っとくがっ!」

そんな会話の後、帰路に就いたふたり。ラムは少し心細いのか、あたるにぴったりくっついて歩いている。

「…あんまベタベタしてくるな、っちゅーんじゃっ」

「何でウチにだけ、そんな事言うっちゃ…ダーリンの…バカ…」

ラムはツンとして、あたるから少し離れた。そんな彼女の怒った風な横顔をちらりと見やるあたる。

(すーぐ怒りおって、ちっとも進歩が無いっちゅーか…。しかし、まぁ…たまには、こういうのも…)

「あれ?どうしたっちゃ?…ダーリンから手を繋いでくるなんて」

「文句あるんだったら、手ぇ繋ぐのやめるぞ、今すぐっ」

「あ、ううんっ、そんな事無いっちゃ、ウチすっごく♪嬉しいっちゃ♪」

「あ、そう…」

ラムが非力でもそうでなくても。

(やっぱオレ、男だからなぁ…。ラムが超能力使えるとは言え…ひとりで外出して帰りが遅いと…)

そう、あたるは何だかんだ言いつつも、超能力で強いはずのラムを“ひとりのか弱い女の子”として見ていたのかもしれない。

帰りが遅ければ心配する、イライラする。自宅の庭にいるラムの背を、縁側からそっと見ていたい時もある。

部屋にいなければ、(きっと縁側にでも行ってんのかな…)と思い、階下に下りて彼女の姿を探す。

やがて大人になれば、その体格差も、力の差も、歴然となるだろう。

(そん時オレは…ラムを守ってやれるほどの男になってんのか?)

そんな事を思いながら、あたるは、ラムの手を握るその手に、少しだけ力を入れてみた。柔らかくて細いその手を…これからも守ってやれるのかな…と思いながら。

「ダーリン、どうしたのけ?急に黙ったりして。変なの」

「変でも何でもいいだろーが。…ラムの手、って…こんなに小さかったんだな…」

「知らなかったのけ?…あれだけ、たくさん…エッチしてるのに…んもうっ…」

近い将来。身長差が大きくなっても、あたるの肩幅が広くなっても、ラム自身はそれほど変わらないのだろう。

(ラムが今とそう変わらんとして…これからでっかくなるところといえば…胸…くらいか?あと身長と…。抱いてみるとこいつ案外…細くて、小さいんだよな…。これからずーーーっと、ラムを…守ってく…自信は、あるっ。…守るからには…せめて電撃リンチだけは…ちっと控えて欲しいわけだが…)

「ねぇ、ダーリンたら、ダーリンッ!…やっぱり今日のダーリン、変だっちゃ。また変なものでも…チェリーがくれたものでも食べたのけ?」

「ぶっ!んな気色悪いもん食うかっ!サクラさんならともかくっ!」

「またそんな事言って。でもこれからもずーーーっと、ウチとダーリンは…お互い守ったり守られたりしていくんだっちゃね、きっと♪」

「オレは男だから、ラムに守ってもらわんでも大丈夫じゃっ!」

「ふふっ…そんなところもダーリンらしくて…だーい好きっ♪」

守りたいものがある。見守っていたいものがある。ふたりは今日も縁側で、ふたりだけの静かな時を…あたるの両親やテンの目を気にしながらだが…過ごしている。

「またダーリン、後から隣に来て座って。そんなにウチが傍にいないと、心配?」

「…アホッ…」

ずっと、一緒。ずっと、お互いを守って、生きていく。

--- E N D ---

あとがき


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